ナルトが綱手に引き取られる話   作:tanaka

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今回は田中ゲンザブロー視点です。ナルト視点はありません。


ナルト、特別試験を受ける(12歳)

 

かつて、その忍、田中ゲンザブローは日常的にナルトに暴行を加えていた。

気に入らないことがあったとき目障りだと殴り、任務に失敗したらお前のせいだと蹴り、只暇潰しとして仲間と一緒にリンチする。

 

もちろん、日常的と言っても毎日ではないし、大通りで行ったことはない。ナルトへの暴行は里の掟で禁止されている。下手にやれば大変不条理なことに自分が罪を被る事になるかもしれない。あんな化け狐を守る理由が分からないが、掟ではそうなっている。

また、大通りはうちはの警務部隊が巡回をしている。あいつらは総じて頭が固く融通が通じず、自分の仕事に高過ぎる誇りを持っている。例え相手が化け狐でも暴行を加えていれば此方がしょっぴかれる可能性があった。いくらナルトを庇う里の者が少なく、通報されるリスクも少ないとは言え、ゼロではないのだ。自分の安全を考えれば、路地裏で、短時間に、バレないようにやるのが望ましい。狡猾な忍もそうやって、九尾事件の絶望と日頃の鬱憤を晴らしていた。影でこそこそとバレないようにいたぶるのが忍の性だった。

 

しかし、一つの事件が忍を狂わせた。

 

妻が死んだのだ。ナルトが里へ帰ってくる前日に。

 

事故だったのだろう。しかし、今まであらゆる不幸をナルトのせいにしてきた忍は、妻の死をナルトの帰還と結びつけた。

 

あいつのせいだ!

あいつが帰ってきたからだ!

 

心に響く自分の声を無視することはできず、忍は綱手とシズネに両手を引かれ、自来也に頭を撫でられ、笑っているナルトを睨み付ける。

 

(何故笑っている。何故あんな奴が笑っている。何故俺の妻が死んだのに化け狐なんかが笑っている。なぜだ。何故だ。ナゼダ。許せん。許せん。許せん。お前はクズで、この世の害悪で、化け狐のはずだ!忘れたっていうな思い出させてやる!)

 

しかし、復讐を誓ってもナルトは嘗てのように一人ではない。常に周りには誰かがおり、手を出すことが出来なかった。

 

どうにもならない苛立ちと復讐心が募っていく。なのに、それを発散させることが出来ない。嘗ては出来ていたはずなのに、今はできない。それが堪らなく腹立たしい。

 

(クソクソクソクソ!!どいつもこいつもあんなクズを守りやがって!!もうまとめてぶっ飛ばしてやろうか?!)

 

そんな危険で実行不可能な思考に取りつかれそうになった時、うずまきナルトがアカデミー卒業のために特別試験を受けることを聞いた。

忍はすぐに試験官に立候補した。

他にやりたがる者もいなかったので、すんなりと試験官になることができ、久しぶりに晴れやかな気分になれた。

 

それから試験までの三日間は如何にして試験でナルトを痛め付けるかを考えていた。試験の前日は薄暗い欲情のあまり寝ることも出来なかった。

そして、寝不足で隈の濃くなったギラギラとした顔のまま、アカデミーへと向かい、妻の仇と思い込もうとしているナルトと会合したのである。

 

 

 

通常、アカデミー卒業のための特別試験は細々と行われる。いくら特別試験とは言え、所詮はアカデミーの卒業試験。注目度も低く、また注目される理由もない。試験官と受験者と受験者の担任教師の三人だけで行われることが殆んどで、アカデミー教師の中ですら知らない者がいるほど影の薄い試験であった。だからこそ復讐にはうってつけだと皮算用をしていたのだが、何故こんなに人がいるのだろうか?

 

忍は試験会場をぐるりと見渡す。

 

 

試験官である自分と見届け人であるアカデミーの教師──ナルトはアカデミーに通っておらず担任がいないので此方でナルトに恨みを持つ教師を用意した──と、ナルトがいるのはいい。百歩譲って今の化け狐の実力に興味を持ったアカデミー教師(ミズキ)がいるのもいい。だが、三忍と詠われる綱手、自来也に加えて三代目火影、三忍や火影に釣られてやって来た数十人ものアカデミー生、イチャイチャパラダイスなどというふざけた本を読みながら此方に意識を向けているはたけカカシ、あまりにも観衆の目が多すぎる。これでは復讐も不正も出来そうにない。

 

くそったれ!暇人どもが!

 

忍は怒りで叫びたくなる衝動を抑えて、深く息を吐き出すことで、なんとか冷静さを取り戻す。そして、冷静になった頭で計画の修正を急ぎ行った。

 

(腹立たしいが此処でナルトに復讐をするのはやめだ。リスクが高すぎるし、やったとしても途中で止められる。試験はマニュアルに則って、不正にならない程度に厳しめに行おう。そして、ナルトを不合格にする。復讐はその後、機を見てやればいい。)

 

忍はナルトの前に立った。

 

「では、只今よりアカデミー卒業のための特別試験を行う。試験官はこの俺田中ゲンザブローが務める。試験については事前に説明されていると思うが改めて説明を行う。まず、これはアカデミー卒業のために下忍になる力を持っているかどうかを見る試験だ。アカデミーの担任教師の見届けの元、中忍と実践形式の組手を行う。幻術、忍術、体術、何を使っても構わない。勝敗に関わらす下忍に相応しい実力があると判断されれば合格となる。説明は以上だ。では、始める」

 

忍はマニュアルに則り、先手を譲り、待ちの態勢。

一方のナルトは両手で十字を作り、ナルトの基本忍術であるアレを使う。

 

「多重影分身の術!」

 

声と同時にチャクラが分割され、一瞬で50人の実体を持ったナルトが現れる。

 

「やいやいやいやい!」

「ここであったが百年目!」

「進化した俺の力を見せてやるってばよ!」

「行くぞ皆!」

「突撃だってばよ!」

「「「「うおおおおおお!!」」」」

 

忍はいきなり予想外の上級忍術に驚愕して、隙をさらす。

 

「な、なに!?影分身だと!?バカな!?あれは上忍クラスの術のはず!?なぜこんな奴が!?」

 

が、焦ったのも隙をさらしたのもほんの一瞬。すぐに忍は冷静さを取り戻し、ナルトが見えきりをやってる内に腰から刀を取り出し、本気の臨戦態勢に入る。

 

(ふん、少し焦ったが、どんなに増えようが所詮雑魚は雑魚。格の違いってやつを見せてやるよ!)

 

だが、忍はまだナルトの事を過小評価していた。ナルトの瞬身の術が思ったよりも速かったのもそうだが、本当の誤算はこの先。ナルトが攻撃範囲まで近づき、忍がナルトを殺そうとした瞬間。大爆発が起きた。

 

「分身・ナルト互乗起爆札!」

 

二代目火影千手扉間が作った忍術、互乗起爆札。その話を綱手から聞いてナルトが編み出したオリジナル忍術だ。互乗起爆札のように札が札を口寄せするのではなく、ただ単に分身がそれぞれ起爆札を持っていて、それが連爆するだけである。原理こそ単純だが、術の威力は洒落ではすまない規模。

 

一瞬室内が光に包まれ、爆風と爆音が観客席まで襲ってきた。

 

「きゃーー!」

「うお!」

「くっ」

 

観客席から悲鳴が上がる。

爆風はすぐに収まる。

しかし、舞い上がった土煙は室内に充満し続け、砂嵐のように視界を塞ぐ。

 

「おいおい、あれ死んだんじゃねえのか?」

 

キバの震え混じりの声に答えるものはいない。しかし、そう思ったのはキバだけではないようで、顔を青くさせたアカデミー生が散見される。

 

実際、彼等の心配は正しい。並の中忍に──来ると分かっているならともかく──ナルト互乗起爆札に対処することは出来ない。しかし、田中ゲンザブローは並の中忍ではなかった。上忍や特上の忍と比べれば弱いものの、その実力は木の葉の中忍の中でも上位に入る。ミズキごときとは格が違うのだ。

 

忍は熱と爆風で体を痛めながらも何とか直撃は避け、ナルトから距離をとる。幸いにして爆発の影響で視界は不良。自分も見えないが、相手からの追撃も無いだろう。立て直すなら今が好機。

 

(落ち着け!相手はナルト!冷静に戦えば勝てる相手なんだ!)

 

予想外の事態の連続で混乱する頭を何とか落ち着かせる。忍もだてに中忍なだけはなく、表面上の落ち着きはすぐに取り戻す。

そして、落ち着いたことで、漸く違和感に気付く。何かが自分の体を這いずり上がってくるような悪寒。冷たい、ひんやりとして、ヌルヌルとした感触。恐る恐る右手を見ると、そこには掌サイズの大きな蛞蝓がいた。

 

「うおおお!?」

 

忍はビックリして手を思いっきり振る。遠心力で引き剥がすための無意識下の行動だったが、蛞蝓は接着剤で付けられてるのかと思うほど強く吸着していて離れない。それどころか徐々に顔に向かって登ってきている気さえする。いや、気のせいではなく事実登ってきている!

 

「ふ、ふざけんな!くそ蛞蝓!」

 

忍は引き剥がそうとするが全く離れない。本当に蛞蝓なのかと疑いたくなるほど根性を見せ、引っ付いている。そうこうしている内に、砂埃は徐々に晴れ、試験場が黙視できるほどになり────見なければ良かったと思った。

 

「うっ………なんだよこりゃ!」

 

そこにあったのは先程までの茶色い土の地面ではなく、白と青のコントラスト。その白い物体が何でできているのかなど理解したくなかった。しかし、一目見ただけで分かってしまう。それが巨大蛞蝓の群れだと。

 

子犬サイズのものから大型犬位のサイズのもの、果ては人を一飲みに出来そうなものまで、大小様々な蛞蝓が此方に向かって行進している。既に足元近くまで来ているものもある。

忍は絶望的な顔をして、無意識に一歩後ずさる。しかし、後ろにもやはり蛞蝓はいて、進退窮まった忍は破れかぶれに刀を振り回した。しかし、切っても切っても分裂するだけで全く効いていない。

 

「な、なんだ!このふざけた蛞蝓は!」

 

剣がダメなら忍術で倒す。そう結論付け、印を組もうとして、酸のようなものが飛んできた。それは狙い違わず忍の手に当たり、ジュッという音を立てて皮膚が爛れる。

 

「ぐわあっ!!」

 

思わず肘をつく。異常な痛みに踞る忍に四方八方から蛞蝓が襲いかかる。忍は無論逃げようとしたが、抵抗むなしく、圧倒的な数と言う暴力により文字通り、押し潰された。

 

ちなみに、ここでの正解はさっさと合格を言い渡す事だったのだが、端から不合格にする気だった忍には思い付かなかったらしい。

 

その後忍は毎晩巨大蛞蝓に襲われる夢に魘され、二度とナルトに近づかなくなったという。

 

 

 

 

 

 

 




蛞蝓による圧殺
酷い終わり方だ……
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