女剣士と女勇者が出会うまでのお話   作:____―--

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II

帝国を倒しても、この世から全ての悪が消える訳では無い。それでも、希望は必ずあると思ってる。だから、私は戦うのを止めない。今日も、私は冒険に旅立つのだ。

 

 私は今、王城にいる。王様と謁見する為だ。王様は私達を広間に呼び出した。私達は片膝をつく。盗賊のカルケーは柄悪そうに片膝ついたけど、気にしない。リサンダスおじさんは対等な立場にあるのか、立っていた。すると、王様は言った。

 

「先程の遠征は良くやってくれた。皆のお陰で、帝国の復活を阻止できた。邪悪な芽は早めに摘むに限る」

 

すると、リサンダスおじさんが口を開いた。

 

「さて、これでわしらに『魔王』の情報をくれるんだろう? そろそろ教えてくれても良かろう?」

 

王様は少し間を置いてから答えた。

 

「すまんが、まだ教えられん。だが、近いうちに必ず教える時が来るだろう」

 

リサンダスおじさんは眉根を寄せながら言う。

 

「言っておくが、ワシらは駒では無いぞ。情報を教えるかどうかはそちらの自由じゃが……ワシらを振り回して欲しく無いものだな」

 

その言葉を聞いた王様は、頷いて答えた。

 

「分かっておる。さて、次の任務を与えよう。今度は火山に巣食う蛮族どもを滅ぼして欲しい。奴らは周辺の村を襲って物資を奪い、怪しげな儀式をしておる。騎士を遣わそうにも距離がありすぎる。そこでお前達に頼もうと思っている」

「はい、分かりました」

「もう下がって良いぞ」

 

私達は立ち上がって退室した。ただし、リサンダスおじさんだけは残って話を続けた。私は扉に耳を澄ませて聞く事にした。

 

「お主も変わってしまったな。共に魔王と戦おうと誓ったあの日の誓いを忘れたか?」

「私だって王だ。民を導かねばならない存在なのだ。それに後継者争いもあるし、戦後の復興計画もある。それにだ、何百年、何千年も姿を現してない脅威に怯えている暇など無い」

「しかし、誓いは誓いだろう。お主はこの国の未来の為に犠牲になろうとしているのではないか?」

「なら、お前もこの玉座で国を見てみるがいい。守るべきものは今か、数百年先の未来か?私は今を選ぶ。誰だってそうするはずだ」

 

どうやら、リサンダスおじさんは説得を諦めたようだ。そして、王様は口を開いた。

 

「今は私の任務をこなせばいい。必ず魔王の情報は伝える。その時まで待っていてくれ」

「分かった。はぁ……。では、わしらも準備に取り掛かるとするかな」

 

リサンダスおじさんは部屋から出て行こうとするようだ。私もドアから離れる事にした。

 

 荷物を整えて準備が出来たら出発し、目標は南方の火山地帯。私達は馬車に乗って進むことにした。御者はセリーナがやるみたいだ。

 

「行っていいよ」

 

セリーナが背をぽんぽんと叩くと、馬は走り出した。ゆったりとした速度で景色が流れていく。私は荷車の中で皆の様子を眺める。リサンダスおじさんとドランは静かに眠っており、カルケーさんは退屈そうにしている。エリオットは何かを考え込んでいる様子だった。

 

「エリオットは何を考えているの?」

 

私が問いかけると、彼は顔を上げて答えた。

 

「ああ、王都に戻った時、父上に挨拶してきたんですが……。まだ認めて貰えなくて……。それで、色々と考えてましてね……」

「そう……。お父さんは厳しい人だからね……」

「僕はもっと色んな人を守れるように強くなりたいです……。ただ、それだけです」

 

彼の目は真剣そのものだった。

 

「うん。きっと、大丈夫だよ。生きて頑張ってきたら、いつかは認められる日が来るよ」

 

私が励ますと、彼は微笑んだ。

 

「はい。今はあなたにお供します」

 

 私は彼に笑い返した。

 火山は大陸の南方に存在している。馬車でのんびり向かうとそれなりの時間がかかりそうだ。私達は道中の村で休憩を取ったり、野営をしたりしながら進んだ。そして、ついに火山の麓までたどり着いた。私達は火山の入口付近でテントを張って休む事にした。

 

「ふぅーっ。ようやく着いたね」

 

私は伸びをしながら言った。

 

「なあ、おじさんよ〜。高名な魔法使い何だからテレポートとか使えねぇのかよ?」

 

カルケーが文句を言うと、リサンダスおじさんは不機嫌そうに答えた。

 

「別に使ってもいいぞ。身をバラバラにされる危険性があるから使いたくないだけだ」

「まあまあ、二人共落ち着いて下さい」

 

エリオットが仲裁に入った。

 

「さて、一旦休憩しよう。ね?」

 

 セリーナが野営道具を持ってきて、テキパキと設置する。私達は焚き木を集めて、火を起こすことにした。火はおじさんがぽっと着けて、あっという間に焚火の完成だ。その頃には夜がやって来ており、空を見上げると星が瞬いていた。私は皆に話しかけた。

 

「ねえ、予知夢って信じたりする?私は時々見るんだけど」

「僕もあまり見てませんが、それがどうかしましたか?」

「ううん。何でもないの。ちょっと気になっただけ」

「話してみるのだ。わしなら力になれるかもしれないぞ」

「えっとね、私は一人でお花畑に居るの。すると、ずっと顔を見ていないはずだった幼馴染の女の子と再会するの」

「ふむ……。女神様の意志なのかもしれんな」

「女神様?」

 

リサンダスおじさんは答えた。

 

「女神は運命を司る神じゃ。お主の夢はその者の未来を示しているに違いない。お主はこれから出会うであろう」

「そうなんだ……会えるといいな」

「へ〜、ロマンティック」

 

セリーナが感心したような声を上げた。

 

「皆さん、そろそろ寝ましょう」

 

 エリオットの言葉に皆は賛成し、私達は眠りにつく事にした。寝る前、セリーナがまた話しかけて来る。

 

「ねぇ、南の大陸に行ったことはある?そこに私の故郷があるの」

「私は行ったことないけど、どんな所?」

「自然豊かで綺麗な場所。海も山も川もある。私はエルフでしょ?だから森の中で暮らしてるんだよ」

「どうして森を抜け出したの?寂しくなかったのかな……」

「森を荒らしに来た人間を追いかけた時に、運悪く捕まってしまったの。でも、ドランがたまたま助けにきてくれた。エルフとドワーフって色々とあって仲が悪いのよ。それでも、私を助けに来てくれたんだ」

 

セリーナは嬉しそうに語った。

 

「ドランは預言の使命でこの大陸を目指して旅をしてたんだって。その途中で、偶然私と出会ったみたい。それで私は外の世界が気になって森を抜け出して、彼と冒険を始めたの」

「それで、二人は私達と出会ったと?」

「そうなるね。別に私はドランのことを慕ってるとか、そういう意図はなくて、単に親友みたいな感じかな。彼も私のことを妹くらいにしか思ってないだろうし」

 

彼女は照れくさそうに笑った。

 

「ドワーフは友を裏切らない。そんな言葉があるくらいだし、彼は良い人だよね」

「うんうん。さて、寝ようか。朝起きたらもっと難しい話をしよう」

 

私は目を閉じた。翌朝、私達はテントや荷物をまとめて出発した。火山地帯は険しい地形が多く、魔物も多く出現するようだ。火山に近づくにつれて気温が上昇していく。汗が滲み出て止まらず、喉が渇いて仕方がない。

 

「熱いですね……」

 

エリオットは手で顔を扇ぎながら言った。

 

「こういう時はこうじゃ」

 

リサンダスおじさんは冷たい風を吹かせた。涼しい空気が身体中を通り抜けて気持ちいい。

 

「おぉー、すげぇな!おい!」

 

カルケーは大喜びだ。

 

「さて、今日は南の大陸の複雑な事情についてお話しよっか」

 

セリーナはそう言って、私に説明し始めた。

 

「南の大陸には色んな種族がいるの。エルフやドワーフは勿論。森の隅っこにはハーフリングが住んでいる。そして、一番の問題が野心的な人間の存在なの」

「人間?」

「そう。人間はね、他の国を征服したり、戦争を起こしたりして領土を広げようとしている。だから森を荒らされて困っているんだよね。長の指示で人間を殺した事だってある」

セリーナは気にも留めずに言った。

「人間はそういうもんだ」

 

カルケーはつまらなそうに言った。

 

「自然は自然のままにしておくべきよ。スチームタウンのように汚い煙、汚い水を垂れ流しにしているあの町なんて、本当は荒地にしてあげたいぐらい」

 

シビアな意見が彼女の口から飛び出した。

 

「とか色々あるけど、とりあえず、南の大陸は一度火がついたら大変な事になるって事だけ覚えておいてね」

 

セリーナは念を押して、話を終えた。それからしばらく歩いていると、前方に何かが見えてきた。

 

「あれは何?」

 

私が尋ねると、エリオットが答えた。

 

「そろそろですね。蛮族の溜まり場です」

 

私達の目の前には巨大な洞窟が広がっていた。奥からは獣の鳴き声が聞こえてくる。

 

「音を聞く限りそこまで複雑な構造じゃなさそうだ。一気に駆け抜けるか」

「ここで準備をしましょう。僕達は前衛で、後は後衛で」

「俺はこっそり行かしてもらうぜ。背後から攻撃する」

 

カルケーは小声で呟いた。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

リサンダスおじさんが先頭に立ち、私達が後に続く。薄暗い通路の中を進むと、大きな広場に出た。そこには沢山の蛮族が居た。蛮族達は魔物を従えている部族的な集団だった。動物の生首が祭壇に飾られており、悪寒が走った。

 

「お前らは何者だ?」

 

一人の男が問いかける。

 

「あなた達が周辺の人々を襲っているという情報を得てやって来ました」

 

エリオットは冷静な口調で答えた。

 

「何だと?俺達は平和的に暮らしているだけだ」

 

男は動揺している様子を見せた。

 

「嘘をつくな。村を襲って略奪していただろう」

「生きる為にはしょうがない事だ」

 

リサンダスおじさんは杖を構えた。

 

「ねぇ、今から人を斬るの?これ正しい事なの?」

 

私は隣で弓を構えているセリーナに尋ねた。

 

「集中して。火山に住んでいる時点でまともな人間じゃないのは分かっているでしょ?」私は深呼吸をして、意識を切り替えた。

「さぁ、行こう」

 

リサンダスおじさんが勢いよく飛び出すと、私達も続いた。

 

「行け!魔物共!」

 

男の命令と共に、魔物が一斉に襲いかかってきた。

 

 それからの戦闘は圧倒的だった。リサンダスおじさんの魔法で蛮族と呼ばれていた人達は縛られ、魔物はあっさりと倒される。皆は蛮族達を拘束した。結局、私の出番は無かった。

 

「拘束したは良いですけど、どうしましょうか……」

 

エリオットは困った表情を浮かべていた。

 

「近くの町まで運んで、衛兵に引き渡すだろう。良くて奴隷行き、最悪なら斬首だがな」

 

こんな人達を生み出したのは私達なのだろうか?もしこの人達が飢えていなければ略奪なんてしなかったかもしれない。

 

「おっと、お嬢さん。それ以上はいけねえ」

 

頭の中を読み取られたのか、カルケーは私の肩を掴んだ。

 

「ごめんなさい。つい、考え事をしていて」

「まあ、汚い所を見ても我慢する。これも大人だ」

 

彼はそう言って、私を宥めた。

 部族の人達はリサンダスおじさん、ドラン、カルケーの三人が連行する事になり、残りのメンバーは帰ってくるまで野営をする事になった。私はまだ考え事をしながら焚き木の前に座っていた。

 

「まだ悩んでいるんですか?」

 

エリオットは心配そうな顔つきをしていた。

 

「うん。あの人達はこれからどうなるのだろうって」

「それは分かりません。でも、あの人達のやった事は許されることではありません」

「そうよね……」

 

私達は黙り込んだ。

 

「それでも、皆幸せに生きられる世界があるって信じる?」

 

セリーナがまた質問をしてきた。

 

「それは……」

 

世界を救うって何?勇者が魔王を倒すとか、そんな単純な話じゃない。もっと複雑で難しい問題だ。

 

「私は……分からない」

「やっぱり」

 

セリーナは溜息をついた。

 

「割り切るしかないのよ。自分達が正しいと思う道を進む。そうすればいい」

 

彼女はそう言ったけど、諦めきれない。もし、私が女神様になったら、この世界を救えるような気がする。争いが起きないように皆の心を統制するんだ。でもそうしたら皆の自由を縛る事になる。それでは駄目だ。

 

「それでも、僕達は力があるから守る事が出来ます」

 

エリオットの言葉にハッとした。

 

「大勢を救うのは難しいでしょうが、仲間や家族ぐらいは守りたいと思っています」

 

彼の言葉を聞いて、私は決心がついた。

 

「エリオットは高貴な心を持っているんだね」

「騎士を目指していますから」

 

エリオットは照れ臭そうに笑みを見せた。

 

「私にも何か出来るかな?」

「出来ますよ。きっと」

 

エリオットの笑顔を見ると、私にも何かが出来るんじゃないかと思った。

 

「じゃあ、皆寝ましょう。エリオットは一人だけど我慢してね」

「大丈夫ですよ」

 

私達は眠りについた。

 翌朝、リサンダスおじさん達は帰って来た。

 

「ただいま戻ったぞ」

「おかえり。どうだった?」

 

シビアな口調でセリーナが尋ねると、「さぁな、向こう側の連中に任せるさ」とカルケーは答えた。

 

「僕達にはもう関係の無いことですよ」

「そうだな」

 

リサンダスおじさんはそう答えた。エリオットは少し沈んだ顔をしていた。

 

「それで、どうする?」

「一度王都へ戻ろう。報告をしなければな」

 

私達は出発した。もちろん途中で野営したり、村に泊まったりと休憩しながら進んだ。ある日、私達は村に立ち寄った。その村は小さな村で、特に何の特徴も無い村だった。私は村の様子を見ていると、一人の老人が話しかけてきた。

 

「旅の方ですか?」

「えぇ、そうです」

 

私は答えた。

 

「そうでしたか。ここには特にこれと言ったものはありませんがどうぞゆっくりしていってください」

「はい。そうさせていただきます。ところで魔物に困ったりしていませんか?」

「いえ、幸い魔物の被害は受けていませんね。おととい、一人の旅人さんが魔物を退治してくれました」

「一人で!?」

 

思わず声を上げてしまった。

 

「はい。若い女の方でしたが、とても強い人で、あっという間に倒してしまいました」

「そうだったんですね」

「もしかして知り合いだったのか?」

 

リサンダスおじさんは不思議そうな顔つきをした。

 

「ううん。違うけど、ちょっと気になって」

 

私は少し動揺した。何となく、知っているような感覚がしたのだ。

 

「そう言えば、この村を出て森に入ると花畑があります。良かったら行ってみて下さい」

「森は迷いやすいですか?」

「いえ、そこまで深くないですし、一本道なので迷うことは無いと思います」

「ありがとうございます」

 

他の皆は村で休息を取っている中、私一人で森の中に入った。森はそこまで暗くなく、道もはっきりしているので迷わずに進むことが出来た。しばらく歩くと、綺麗なお花畑があった。

 

「ここか……」

 

辺り一面色とりどりの花々が咲いていた。その時、頭にノイズが走った。

 

(走って。彼女が待っている)

 

頭の中に誰かの声が聞こえてくる。私はこの景色を見た事があるような気がした。思い出せないけど、確かに見たことがある。私は歩きながら考えた。歩けば歩くほど、何かに引っ張られるような感覚を覚えた。

 

「待ってて」

 

自然とその言葉を口に出した。そして私は花畑の中を走り出した。




20221029:名前を変更
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