女剣士と女勇者が出会うまでのお話   作:____―--

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アイラは練習用の剣を構える。シンシアも両手で持つほどの大きさを持った練習用の剣を同じように構えた。

 

「じゃあ、行くよ」

「うん!」

 

シンシアも返事をしてから剣を構える。静寂が二人の間を流れていく。そして、風が吹いた瞬間に二人は動き出した。

 先に動いたのはアイラ、彼女は足を踏み込んで駆け出しながら左手に持つ木刀を振り下ろす。それをシンシアは右手に持つ木刀で受け止めて押し返すと、今度は彼女の方から踏み込みつつ振り上げるように斬りかかる。

 その攻撃をアイラは後退しながら避けた。するとまた二人の間に距離ができる。今度はシンシアが前に出て距離を縮めると横薙ぎするように振るう。アイラは大きく飛び退いて回避した。

剣術の腕はシンシアの方が上である。しかし、戦闘の経験はアイラの方が豊富だ。アイラは牽制に突きを放つ。それは簡単に避けられてしまうのだが、ここで回し蹴りを繰り出してきた。

これには反応できずにシンシアは吹き飛ばされてしまった。

 

「きゃっ!ちょっと卑怯じゃない!?」

「剣の稽古ではないんだし、別にいいと思うけど?」

「むぅ……」

 

頬を膨らませるシンシアだが、すぐに気を取り直して立ち上がる。

 

「なら、こっちも!」

 

シンシアは剣を振るうと、追尾する魔法の弾が放たれた。それを見たアイラはすぐに横に飛んで避ける。魔法攻撃が来るとは思っていなかったのか、少し驚いた表情を浮かべている。

 

「これは厄介な特技ね!」

 

アイラはそう言いながらも反撃に出た。素早い連続攻撃を仕掛けるが、全てシンシアによって防がれてしまう。

 

「じゃあ、とっておきを見せてあげる!」

 

 攻撃を凌ぎきったシンシアは笑みを見せる。次の瞬間、シンシアは練習用の剣に魔力を込めて木の刀身を光らせた。そして、飛び上がって剣を上から下へと振り下ろした。

アイラは避けたと思ったが、斬った場所から魔力が爆発を起こした。

 

「くっ……!!」

 

爆風を受けて体勢が崩れたところへアイラの首に剣が当てられた。

 

「はい、私の勝ち♪」

 

嬉しそうな笑顔を見せてくるシンシアを見て、アイラは肩を落として溜息をつく。そんな二人の様子を見ていたセリーナが拍手をしながら近づいてきた。

 

「わぁ、二人とも凄い。今まで見たことない戦いだったよ」

「私は魔物の専門家だからね。人を斬るのは慣れてないし」

「私も人を斬った事なんて無いもん」

 

アイラは練習用の剣をくるりと回してから鞘に納める。一方のシンシアはまだ手に持っている練習用の剣を眺めてから近くにある木に立てかけた。

 

「でも、実戦ならアイラだね。手の内をあまり見せていないみたいだし」

 

セリーナの言葉を聞いたアイラは首を傾げた。

 

「さぁ、どうかな」

「じゃあ、剣を交えた事だし、食糧を取りに行こっか」

 

三人は森の中に入っていく。先頭にはセリーナが立ち、その後ろではアイラとシンシアが続いている。

しばらく歩くと、果物やキノコなどが多く自生している場所に辿り着いた。そこでセリーナは籠を取り出して果実などを採取していく。アイラは薬の素材になりそうなものを探し始めた。

 

「アイラは植物に詳しいの?」

「薬の材料になる植物を知っているだけだよ」

「ふーん……」

 

アイラは近くにある植物を摘んで観察し始めた。

 

「この植物があれば薬が作れるかも」

「ふーん、どんな薬?」

「秘密」

 

セリーナからの質問にアイラは答えなかった。

 また三人は森の奥地へ向かって歩き始める。先程よりも木々が増え始めており、太陽の光が遮られて薄暗い雰囲気になっている。すると、アイラの胸のペンダントが揺れ始めた。

 

「どうしたの?」

 

急に立ち止まったアイラにシンシアが声をかける。しかし、彼女は返事をせずに辺りを見渡していた。

 

「『邪悪なゲート』が近くにいるかもしれない」

 

その言葉を聞いて二人は緊張した面持ちになった。セリーナは弓を握り締め、シンシアは聖剣を抜く。

 

「どこ?」

「分からないけど、ペンダントが強く揺れる方向に向かってみる」

 

アイラは走り出す。その先に何があるか分からないまま進んでいくと、開けた場所に出た。そこには五芒星が描かれた大きな石板があり、そこからゲートが出現している。

 

「悪魔退治は得意?」

 

突然現れた黒い穴に驚くことなく、アイラは振り返らずに後ろの二人に訊いた。二人は縦に首を振る。

 

「行こう」

 

三人は一斉に駆け出した。すると、ゲートから悪魔が出現した。その数は多く、一体だけでも苦戦しそうだ。しかし、アイラは臆することなく剣を抜いた。シンシアも聖剣を両手で握って構える。

アイラは飛び込もうとした瞬間、セリーナがそれを止めた。

 

「もう少しだけ待って」

「どうして?」

「見てみればわかるよ」

 

シンシアは聖剣を構え、何かを詠唱しながら身体中に魔力を纏わせる。次の瞬間、浄化の波が放たれた。それは一直線に進みながら周囲の悪魔を飲み込んで消滅させていく。

戦いは一瞬で終わりを迎えた。辺にあるのは悪魔達の灰を風が攫っていく光景のみとなる。

 

「ね?シンシアは凄いんだよ」

エルフの女性は自慢するように言った。

「そうね。さて、後始末しなきゃ」

 

アイラはゲートの前に立つと、剣でゲートを斬り裂く。すると、空間に亀裂が入り、やがて消えていった。

「これで大丈夫。もうここには来れないはず」

アイラは振り向かずにそう言うと、二人の元へ戻ってきた。

「あ、まだ獣を狩ってなかった!」

「急ぎましょ」

 

アイラ達は美味しく食べれそうな獣を狩りに向かった。狩りはセリーナが主に担当して、アイラとシンシアが補助する形となっている。木を登り、枝の上を飛び移りながら獲物を探す。

しばらくして、セリーナは兎を見つけた。矢を引き絞ると狙いを定めて放つ。見事に命中し、仕留める事ができた。

「ごめんね、美味しく頂くから」

セリーナは申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、ナイフを刺して皮を剥ぎ取り始めた。

「手伝う?」

アイラもナイフを片手にセリーナの隣に立つ。

「ううん、大丈夫」

「分かった」

セリーナが解体作業を終えると、アイラはそれを袋の中へ入れて持ち帰る準備をした。

「よし、帰ろう。皆が心配しちゃう」

シンシアを先頭に三人はキャンプ地へと戻る。その途中も魔物に遭遇することは無かった。戻る頃には空は橙色になっており、カラスが巣へ帰ろうと飛んでいた。

 

テントに戻ると、そこにはドラン達が待っていた。

「遅いぞ!何かあったらとワシらは気が気じゃなかったんだ!!」

「ごめーん、ちょっと冒険してきちゃって」

セリーナは明るく答えると、ドランは溜息をつく。

「そう、冒険してきたの!ね、アイラ?」

「ええ、悪魔退治もしたし」

「悪魔退治!?大丈夫だったのか!怪我は!?」

「ドランは心配性なんだから、シンシアが全部やってくれたよ?」

 

「無事に帰って来れて良かったです」

火を起こしているエリオットは安堵の笑みを見せた。

「さ、今日のご飯も持ってきたし、早速鍋にしよう」

セリーナの言葉に全員が賛成した。

 

――

 

夜になると、二つのテントに別れて就寝した。アイラは見張りをすると申し出て、近くの岩場で腰掛けている。彼女はやろうと思えば不眠で活動できるような身体になっている為、一晩中起きていても問題ない。すると、テントから騎士エリオットが出てきてアイラに近づいてきた。

「あなたは、騎士の……」

「僕はエリオットです。以後、お見知りおきを」

彼は丁寧に挨拶をする。

「……何か用ですか?」

「少し、話をしたいと思いまして」

「話?」

 

アイラは彼の意図が分からず、首を傾げた。

「はい。あなたの事が気になって、色々と聞いてみようと思ったんです」

「告白なら、事前にごめんなさいと言わせてもらうけど」

アイラは淡々と答えた。

「そういうものではありません。ただ、あなたに興味があるだけです」

「興味がある?」

「はい。アイラさん、あなたは何者なんでしょうか」

「何者って……」

「失礼ながら、僕には普通の人間とは思えないのです」

「聞かされてない?私はいわゆる変異者よ」

 

アイラは自分が何者であるか答えた。しかし、彼の質問の意図が分からない。

「確かに聞きました。しかし、それだけでは納得できないんですよ」

「どういう事?」

アイラは眉間にシワを寄せた。

「僕の勘が言っているんです。アイラさんには、何か邪悪なものが憑いていると」

「邪悪とは?具体的に教えてくれない?」

アイラは彼に訊いた。

 

「それは分かりません。でも、アイラさんの身体からは何かを感じ取る事ができる。それはとても危険なものだと」

「危険……ね」

アイラは鼻で笑う。

「信じていないみたいですね」

「なら、今ここで斬るの?」

「まだそんな事はしません。ただし、あなたがシンシアに危害を加えるというのであれば……」

 エリオットは腰にある鞘に手を当てた。少しだけ動かし、刀身を少しだけ見せる。彼は小さな脅しをかけているのだ。

 

「安心して。シンシアには何もしない。約束する」

アイラは真剣な眼差しを彼に向けた。

「……常に見張っていますからね」

「構わない」

 

エリオットは立ち上がると、テントへ戻っていった。誰もがアイラを歓迎している訳では無い。彼女の事を怪しんでいる者もいる。彼女から漂う雰囲気を察知すれば、当然の事だ。

(そういう人が居ても仕方がない)

アイラはそう思いながら、空を見上げた。星が瞬いており、月は雲に隠れて見えなくなっている。日が昇るまで彼女はテントを眺めていた。

 

――

 

翌日になり、朝食を済ませた後、一行は目的地の大学に向けて出発した。道中も魔物が現れるが、セリーナが弓矢で仕留めていく。

「グールに熊にイノシシ、どれも歯ごたえがないね」

セリーナは余裕そうな表情を浮かべている。

「こんなもん、ワシらにとっては朝飯前じゃ!」

「へいへい、皆さんお強いこと」

「こんなに人数が居たら一人くらいは戦わなくても良さそうね」

アイラは銀のナイフをしまいながら言った。

 

「それにしても、灰のお嬢さん、あんた戦い慣れているな」

カルケーはアイラの戦いぶりを見て感心していた。

「訓練受けてきたからね」

「あんた、気が合いそうだな。どうだ、俺と一緒に宝探しでもしねえか?」

「あなたがハンサムだったらね」

アイラは冗談っぽく答える。

「ん?これでも俺は良い感じの面構えだと思うがねぇ?」

「まずは髭を剃ること、次にその長い髪を切らないと」

アイラはカルケーの方を見た。彼の容姿はワイルドという言葉がよく似合う。しかし、髪は伸ばしっぱなしでボサボサ、髭も手入れされていない。

「はっは!こりゃあ手厳しい!」

カルケーは豪快に笑い飛ばす。

 

「もうすぐ森を抜けるぞ」

リサンダスの言葉に全員が反応し、足早に森の中を進んでいく。そして、ついに森を抜けた。森を抜けた先は開けた場所になっており、緑の草原が広がっている。

「ん〜、森の陰鬱とした空気よりもこの空気の方が美味しい!」

セリーナは大きく深呼吸をして新鮮な空気を吸った。

「おじさん、まだ距離ある?」

シンシアがリサンダスに訊く。

「ああ、まだまだだ。もう少しかかる」

「長い旅路になるので、ゆっくり行きましょう」

エリオットは皆に声をかけた。

 

――

 

一行は近くの岩場で休憩を取る事にした。

「ここで少し一休みしよう」

皆が座って休んでいると、セリーナが立ち上がった。

 

「アイラ、ちょっと私と遊ばない?的当てしたいんだけど」

セリーナはアイラを誘う。

「いいけど……どうして?」

「アイラの腕前、見てみたいなと思って」

「分かった」

「え、アイラ、弓使えたの?」

シンシアが意外そうな顔をする。

「そこまで使える訳では無いけど、一応ね」

 

 二人は近くにあった木に印をつけ、少し離れた所へ移動する。

「ルールは簡単、木に印を付けるから、近い所に刺せた方の勝ち」

「いいけど、弓はセリーナのを使っていい?」

「勿論、使っていいよ」

 二人はコイントスで順番を取り決めると、早速勝負が始まった。先行はセリーナだ。セリーナは弓を握り締めて矢を放つ。ひゅっと風を切る音と共に放たれた矢は見事に印の中心に突き刺さる。弓の名人には勝てないな、アイラはそう思った。後攻のアイラの番だ。セリーナから弓を受け取り、弓矢を一本だけ手に取る。一回深呼吸して、アイラは狙いを定め、矢を放った。

 

「負けたね」

 

矢は印の中心より少し外れた場所に刺さっていた。

「やっぱり、弓は苦手……」

アイラは苦笑する。

「ふふん、私は何十年も弓を扱ってきたからね。そう簡単に負けるわけ無いよ。でも、その歳でその技術は凄いよ」

「そう言えばセリーナは何歳?」

 

アイラは突然、デリカシーの無い質問をした。

「女性に年齢を聞くなんて失礼じゃない?」

「まあね」

「じゃあ、私は人間で言うと何歳に見える?」

「うーん、二十くらい」

「じゃあ、それをエルフの寿命で換算すると?」

「分からない。エルフは年老いないし」

「そういう事」

セリーナは微笑む。

「じゃ、皆のところに戻ろうか」

二人はリサンダス達の元へ歩いていった。

 

一行は再び出発し、目的地に向けて歩き続ける。丘を越えると、見下ろした先には大きな建物が見えるようになった。

「あれが大学じゃ」

リサンダスが指差す先にある建物は、大学というより城に近い形をしていた。

「あそこが大学ですか」

エリオットは驚きの声を上げる。

「ああ、そうだ。あの大学は神学、哲学、歴史などあらゆる学問を教えている。学生の数も多い」

「へえ、それは凄いな」

「行きましょう」

一行は大学の門を通り抜け、中へ入る。入口には二人の衛兵が立っていたが、リサンダスが話すとすぐに通してくれた。

 

「さて、ここでまた休むとしよう。アイラ、お主はここで学者に色々聞くといい」

リサンダスはアイラに何か知ってもらいたい事があるようだ。

「誰なの?」

「お前さんが興味持ちそうな奴じゃ」

「分かった。尋ねてみる」

アイラは近くの階段を上り、学者の研究室へと向かう事にした。

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