女剣士と女勇者が出会うまでのお話   作:____―--

26 / 61
2

「ここで待ってて、ちょっと話してくるから」

 

私はそう言ってカリード達を部屋の外で待機させた。ここは町にある大きな宿屋。手紙の事を市長に聞いてみたところ、例の組織と繋がっている男がこの宿にいるという情報を得たのだ。扉を開け部屋に入ると、男が驚いた顔でこちらを見てきた。

 

「誰なんだお前!どうしてここに!」

 

男は私を見て明らかに動揺している様子だった。そんな男に対して私はこう言った。

 

「ちょっと手紙の事で話したい事があるんだけど……いい?」

 

すると男は魔法を詠唱しようとしたので、首を掴んで声を出せないようにした。そしてそのまま壁に押し当てた。

 

「ぐっ……」

 

苦しそうな表情を浮かべる男に対し、私は淡々と質問をした。

 

「さて、『ルクス・エテルナ』はどういう組織なのか教えてくれる?」

 

しかし男は黙ったままだった。

 

「何も言わないなら、魔法使って吐かせるまでよ」

 

隠していた『ドミネーション』のスクロールを取り出し、発動させようとしたその時だった。

 

「ま、待ってくれ!!話す!!」

 

観念して白状する気になったようだ。それを聞いて私は手を離し、男を解放した。

 

「ゲホッゴホ……。くそ、なんなんだよ一体!?」

 

咳き込みながら悪態をつく男に対し、私は質問を続けた。

 

「それであなた達は何者?」

 

私がそう聞くと、男は少し考えた後答え始めた。

 

「よく分からねえ組織なんだよ。俺も詳しくは知らねえんだが、どうやら帝国の復活を目論む奴らの集まりらしいぜ?俺はただ雇われてるだけだから詳しい事は知らないけどな」

「まだ時間はあるし、じっくり聞かせてもらうわね」

 

それからしばらく尋問を続け、組織についての情報を色々聞き出した。まず、構成人数は計り知れないほど多く、各地で暗躍している事。その目的は帝国の再興である事などだ。三つの組織に分かれており、それぞれがリーダーによって統率されているらしい。宗教、盗賊、暗殺者の三つだそうだ。

また、この組織は表には出ておらず、裏社会で活動しているらしく、その実態はほとんど知られていないようであった。その三組織の上に立つ存在がいるのかと思ったのだが、それは分からないと言う。他にも、盗賊たちのキャンプ場が北の方に存在している事も分かった。

 

「なあ、これでいいよな?もう帰してくれないか?」

「早く行きなさい」

 

私はそう言い放ち、男を追い出すようにして外に出した。そしてカリード達の元に戻り事情を説明した。

 

「なるほど、そういう事か……」

「で、そのキャンプに突撃するの?」

「そうね。どうにかして潜入しよう。」

「盗賊の拠点ですよね……。少なくとも数十人以上いるでしょうし、かなり危険では……」

「どこか町で準備してから行った方がいいと思う」

 

四人の意見を聞き、私もそれに賛成だった。いくらなんでも無策のまま突っ込むわけにもいかないだろう。

 

「ポーションやスクロールを買い揃えてから行こう」

 

皆バラバラになって買い物を始めた。私はスクロールを売っている屋台に向かい、そこでいくつか購入することにした。目的は当然……

 

「すいません、『ヘイスト』のスクロールありますか?」

「あるけど、いくつ欲しいんだ?」

「5つ欲しいんですけど」

「5つか、そんなには置いてないなぁ……今在庫があるのはこれくらいだけど、それでも良いかい?」

 

店主は棚に並んでいるスクロールを指差す。そこには3つのスクロールがあった。

 

「じゃあ、あるだけ下さい」

「375GPが三つで1125GPになるぞ」

「分かった」

 

かなりの出費になるが、命の方が大事だから仕方がない。誤ってスクロールを開かないように注意しながらしまった。あと二つはポーションで補充しようということで、次に薬屋に向かった。何でもいいから足を速くするようなものがあればいい。私が考えている計画を実行するために必要だったからだ。

 

「失礼、スピードアップポーションは無いですか?」

「ええ、何本あったかな……」

 

店の奥に入っていった店員さんはすぐに戻ってきた。手には三本の瓶を持っている。

 

「使い方は分かるよね?効果は一分しか持たないから、使うタイミングを考えないとダメだよ」

「ええ、二本買います」

 

価格は750GPが二つとスクロールと比べればかなり割高だが、背に腹は変えられない。金貨を渡して買うことにした。

 

「まいどありー!」

 

その後、いくつかの店で必要なものを購入していった。色々買い物していると、カリードがやってきた。

 

「お待たせ!こっちも終わったぜ!」

「何か買ったの?」

「ああ、回復アイテムとかいろいろな」

「私も同じ。他の皆も集めよう」

「おう!」

「ブランカは教会にいそうだし、先にそっちに行ってみよう」

「了解」

 

私たちは教会の方に向かって歩き出した。この町は人口は百人程度の小さな町で、あまり大きくはない。なのですぐに到着した。中は数人程度しかいないようだ。シスターや神父が祈りに来た人たちの対応をしている。椅子に座っている人も何人かいたので、その中に探していた人物がいた。私達は彼女の傍に座り話しかけた。

 

「色んな種類の神様が居るのに、この教会で大丈夫なの?」

「大丈夫です……。この教会は黄金の女神様をお祀りしているんですよ」

「三神が合っていれば問題ないってことか」

「そうですね……。そう言えば、神父からスクロールが置いてあると聞きました。お金の引き換えに貰えるらしいのです」

「へぇ、そうなのね」

「はい、石化した人間を元に戻せるスクロールもあるようです。魔法だと貴重なので、こういう時に役立ちそうですね」

「確かにそうかも。でも、今はバジリスクとかを相手にするわけでもないし、買わないでおこう」

「分かりました。もう、集まりますか?私はいつでも行けます」

 

そう言って彼女は立ち上がった。

 

「行こうぜ」

 

カリードも立ち上がり、私達は外に出て集合場所に向かう事にした。

町の入り口に着くと、既に二人が待っていた。

 

「ごめん、遅くなった」

 

私が謝ると、

 

「別にいいよ。それより準備は出来た?」

「ええ、もちろん」

「よし、それじゃあ出発しようぜ。ちょっと長い旅になっちゃうかもな」

「そうだね……。気をつけて行こう」

 

こうして私達は盗賊のキャンプ地を目指して出発した。地図の距離的に一日はかかるらしいので、野営を挟みながら進む事になった。標識を頼りに道なりに進むので、危険な獣や魔物に出会う事もなく順調に進んで行った。

 

「ずっと北に進むんですか?結構遠いですよね……」

「ずっと北だね。まずは道なりにすすもう」

「ねえ、なんか話しない?このままずっと無言で歩くのは辛いよ……」

「それなら俺が面白い話をしてやるよ」

そう言ったのはカリードだった。

 

「そうね、お願い」

「任せておきな。俺は商人の家に生まれたんだ。親父に商売について叩き込まれていたんだ。だから、色々な商品を見たり、売ったりしてきたんだ」

「特に詳しい品は?」

「絵画や陶芸品だね。美術品を扱ってきたんだ。特にカトラの方にある美術品が好きかな。透き通るガラスで作られた花瓶なんて最高だったよ」

「どうして商人から冒険者に?」

「派閥争いに負けたんだよ……。うちの家は代々商人の家系だったんだけど、貴族との付き合いが上手くなくてさ、それで潰されちゃったわけ。まあ、そんな話はいいか……。とにかく、そのせいで没落しちまったんだ。さらに、残った美術品も全部贋作だってバレちまって、大損したんだ。結局、100GPぐらいを手に街を抜け出したんだ……。そこからは色々あって、今に至るという感じかな……」

「大変だったのね」

「ああ、あの時は本当に辛かった……。だけど、今の生活も悪くないと思ってる。仲間もいるし、毎日が楽しい。だから、大金持ったら何か事業を立ち上げて、今度こそ成功させるつもりなんだ」

「頑張れ」

「応援しています!」

 

こうして道を歩いていると、向こう側から騎馬兵の列が近づいてきた。先頭の騎士は中々上質な鎧を身につけている。後続も似たような装備をしていた。どうやら騎士の集団のようだ。肩には狼の紋章が描かれている。

 

「あれは……騎士団か?」

「みたいね。そばに寄りましょう……」

 

兵列の邪魔にならないように脇に寄る。兵は私達を無視して過ぎ去ろうとした。しかし、一人だけこちらに寄ってきて話しかけてきたのだ。

 

「君たち、この辺では見ない顔だが、どこから来た?」

「ここから南の村に」

「そうか、この辺りは盗賊たちが出没するから注意しろ」

「え?盗賊達を退治しにきたんじゃないんですか?」

「いや違う。我々の任務は人探しだ。捜索隊として派遣されたわけだ」

「そうなんですか」

「ああ、この先に行くのはオススメできない。引き返すことをおすすめする」

 

それだけ言うと、馬に乗ったまま去っていった。

 

「何なんだろう?」

 

私はカリードが話している間、騎士を観察していた。鎧や剣などに目立った汚れは無い事から、血を流すようなことがあったとは考えにくい。馬の蹄跡を辿ればどこに行っていたか分かるだろうが、確かめる時間は恐らくない。それにしても規律の取れた組織だと思った。きっと練度も高いだろう。

 

「引き返せって言われても、行くしかないよね」

「そうだな。行こう」

 

再び歩き始める。しばらくすると、道が途絶える場所に入った。これ以上先を行くなら森の中を突っ切るしか無いようだ。

 

「ここで野営はどう?明日に突っ込むということで」

「そうするか」

「分かりました」

 

私たちは野営の準備を始めた。食事は干し肉とパンと水だけだ。保存食なので味は良くないが、仕方がない。夜になり、火を囲んで食事をした後、交代で見張りをする事になった。見張りは私が一晩中行うことになった。眠らないでも支障をきたさない体質なので問題はない。薪を失った火を消して、暗闇の中でじっとしていた。目も体質で暗視できるので問題なく見える。すると、布の音とともにネイラがテントの中から出てきた。

 

「眠れないの?」

「まあね。って暗っ!え、全然見えないじゃん」

「松明持つ?」

「いいよ、すぐ寝るし」

 

彼女は私の隣に座ると、空を見上げた。

 

「今夜は曇り空ね」

「残念ね。星が見えると思ったのに」

「そうだね……」

 

ネイラは姿勢を変えて、私の方に体を向けた。

 

「実はね、私、あなたに謝りたいことがあるの」

「謝る?」

「うん。私、実は帝国の実験体だったんだ」

「奇遇ね。私もなの」

「え!?」

 

彼女は驚いた様子で私を見た。

 

「ネイラの境遇を聞いてもいい?私も話すから」

 

彼女は小さくうなずく。

 

「分かった……」

 

それから、お互いの事情を話し合った。彼女の過去を聞いてみると、彼女も小さな村出身の孤児だったらしい。ある日、教会に保護されたのだが、教会から洗礼の儀式という事で帝国の施設に連れて行かれたという。そこで人体改造の実験台になったらしい。帝国は人間を強化させる研究を行っているようで、その被験者に選ばれたのだ。

 

「それで、どんな風に強化されたの?筋力とか魔力?」

「今までは何もできなかった。けど、穢れを注入されてから魔法が使えるようになったの。でも、ちょっと不安定でね」

「実験を受けてから、帝国に従軍してたの?」

「まあね。私も『デモニアの戦い』に駆り出されたんだけど、途中で王国軍の魔法使いから逃げろと指示されて、それで逃げ出したの」

「それであの大暴走から生き延びたんだね」

「そうね。それで、今はこうして自由の身よ。故郷の村に帰ろうにも、今となっては地図から消えてるし、帰る方法も無いんだけどね……」

「故郷無しは同じね。今度は私からも聞いていい?」

「なに?」

「帝国の施設の場所とか、人物とか、覚えているものがあれば教えて欲しいの」

「思い出せるかな……。待って」

 

ネイラは地図を広げたけど、暗闇で何も見えなかった。私は指先から火を灯した。

 

「それで、何か思い出せる?」

「確か、この辺りだったと思う」

 

彼女が示した場所は、ここから西にある山脈を超えた所だった。

 

「そこはまったく開拓されていない場所だったはず」

「そうなの?でもそこにあったような……。間違っていたらごめんなさい」

「大丈夫。ありがとう」

 

私は彼女に礼を言うと、ネイラはテントの中に戻った。

翌朝、出発の準備をしていると、カリードがやってきた。

 

「おはよう。昨日はよく眠れたか?」

「それ見張りをしていた私に聞く?」

「悪い、忘れてた」

 

彼は苦笑いを浮かべながら言った。

 

「準備を済ませたら、森の中に入ろう」

「了解」

 

私たちは森に入る前に、食料や装備の確認を行った。そして、森の中へと入っていく。森の中は薄暗く、木漏れ日の光が差し込んでいる。この先に例のキャンプがあると信じたい。私は盗賊に出会う前に、カリード達に伝えることにした。

 

「ちょっといい?これから盗賊に出会うかもしれないけど、すぐに手を出さないで。私が話をするから」

「どうしてだ?」

「私に作戦があるの」

 

私はカリード達に作戦について伝えた。次に、ポーチからヘイストのスクロールを三つネイラに渡し、カリードとエルドスにはスピードポーションを渡しておいた。

 

「じゃあ、皆悪い顔をお願いね」

 

私がそう言うと、カリードは変顔を、ネイラは悪そうな表情を作った。

 

「何だこの顔は……」

 

エルドスが困惑している。

 

「さあ、盗賊が来るまで行こう」

 

私たちが進んでいくと、茂みの奥で音が聞こえてきた。どうやら向こうがこちらに気付いたようだ。

 

「おい!お前たち、止まれ!」

 

茂みの陰から現れたのは、ボロ布を纏った男だった。手には剣を持っている。

 

「何者だ!どこから来た!ここが俺達の縄張りだと知って入ってきたのか?言え!言わないと命は無いぞ」

 

男は剣を突きつけて脅してきた。

 

「私達は盗賊団の噂を聞きつけてやってきた盗賊なんです。ボスはいますか?仲間に入れて欲しいんです」

 

私ははったりをかます。

 

「じゃあ、お頭の名前は言えるか?特徴は?」

 

男が質問攻めしてくる。私は手紙や尋問の内容を思い出しながら必死に答えた。

 

「ボスはベイレン、確か左頬に傷があります。特徴……髪の色は黒、年齢は三十代くらいです。あと、とても強い人だって聞きました」

「なるほどな。よし、ついてこい」

「え?」

 

あっさり信用された。

 

「早くしろ!殺されたいのか?」

「はい……」

 

私たちは男の後を追った。しばらく進むと、開けた場所に出た。そこには、十以上のテントが張られており、多くの盗賊たちがたむろしていた。その中で一際大きいテントの前で立っていた。

 

「こんな盗賊達と相手したくないよね……」

 

ネイラが小声で呟く。確かにそうだ。だが、作戦通りに行けばそこまで相手にしなくても済むはずだ。ブランカも足が微かに震えて怯えている。

 

「よし、腕試しを行う。幹部のレンソンがお前らの内一人と戦う。腕が認められれば、そのまま入団できる。分かったな」

「分かった。私が行く」

 

私は前に出た。

 

「ほう、女とはな。名前は?」

「私はヘンリーと言います」

 

わざと偽名を使った。

 

「男っぽい名前だな。まあいいか。武器は何を使う?」

 

私は腰に下げていたロングソードを手に取った。

 

「これでいいなら」

「問題ない」

 

レンソンはハルバードを片手に持って構えた。ハルバードは上質なもので出来ていると考えられる。金属の艶が綺麗だ。

 

「では、始めよう」

「よろしく」

 

私は剣を構えた。

 

「いくぜっ!!」

 

彼がハルバートを振り下ろすと、風圧で地面の砂埃が舞い上がった。私は後ろに避けると、ハルバートは地面に突き刺さる。幹部でもこの程度の練度なのか。軍の方がもっと綺麗に戦える。でも……

 

「くっ、これが幹部の実力なのね……」

 

そう、私はわざと苦戦する演技をした。

 

「はぁ、はぁ……」

 

私は息切れする振りをして、ハルバードを避ける。剣はわざと当てずっぽうに振る。

 

「なんだ?もう終わりか?」

「まだよ!」

 

私は剣を振って攻撃するが、簡単に避けられてしまう。

 

「そんなんじゃ当たらねえよ!」

 

彼は私の攻撃を軽々と避けていく。

 

「そろそろ終わらせるか」

 

彼は勢いよく突進してきた。

 

「死ね!!!」

 

私はタイミングを見計らって、ハルバードをいなすように剣で受け流した。すると、彼は姿勢を崩して倒れ込んだ。私はすかさず彼の首元に剣を当てて動きを封じた。

 

「これでどう?」

 

私は彼に問いかけた。

 

「……」

 

彼は悔しそうな表情を浮かべた。

 

「合格だ。お前は今日から俺たちの仲間だ。ボスがテントで待っている。付いて来てくれ」

 

そういうとレンソンは立ち上がって、テントの中に入って行った。私たちはその後をついていく事にした。その時、私はカリード達に目配せした。実行の時は近いぞと。テントに入ると、まずは盗賊の位置を確認した。入り口に二人、奥の方に三人いる。奥の中央に居るのが恐らくベイレン、その右側がレンソン。左側は幹部だろうけど、名前はどうでもいい。

 

「お前がレンソンを破った女か」

 

ベイレンが話しかけてきた。彼は質の良さそうな椅子に座っており、大きな斧が立てかけられている。

 

「ええ、そうです」

「……女というのはどうも気に食わんな」

「それはどうして?」

 

私がそう聞くと、ベイレンは眉間にシワを寄せて睨んできた。

 

「どうしてだと?南の鉱山を占領してやったというのに、解放した奴が居てな。そいつはどうやら女らしいんだ」

「へえ、そうなんですか」

 

いつでも剣が抜けるような体勢で、話を聞き流すふりをする。カリード達も少しずつ殺気を私に伝わせてくる。

 

「お前、まさかとは思うが、鉱山をやった連中じゃないのか?」

 

私は、口角を上げて答えた。

 

「正解」

 

ベイレンが斧を掴もうとした瞬間、私は剣を抜いて瞬時にベイレンの首を斬りつけた。ベイレンの首が宙に舞う。

 

「野郎!」

 

レンソン、他の幹部が武器を構えようとした時、私はもうレンソンを斬っていた。カリード達も武器を構え、後ろの盗賊達と戦い始めた。

 

「く、くそ!何が起こってやがる!?」

 

幹部が慌てながらクロスボウを撃ってきた。私はそれを弾きながら幹部に近づく。幹部は怯えながら逃げようとするが、すぐに追いつき、背中に刃を突き立てた。

 

「ぐあぁ!く、来るな……助け……ぎゃあああ!」

 

私は無言で幹部の心臓を突き刺し、止めをさす。カリードは盗賊二人相手に苦戦中だったが、そこにネイラのマジックミサイルが飛んできたのだが……。

 

「ごめん!魔法が暴走した!」

 

ネイラの魔法は気まぐれを起こし、雷を纏ったマジックミサイルが盗賊の一人に直撃する。盗賊が叫ぶと、そのまま倒れた。カリードは盗賊の剣を避けつつ、隙を見て反撃している。エルドスもダガーで盗賊を倒していた。

 

「終わったね」

 

テント内の盗賊は全滅させたが、すぐに増援はくるはず。

 

「ネイラ、大仕事よ。ヘイストのスクロールを自身とブランカにかけて。エルドス、空っぽのポーチをこっちに寄越して!戦利品をなるべく回収する!」

「分かった、ベイレンの椅子の後ろに箱が置いてある」

「分かった。なら!」

 

ベイレンが持っていた斧を使って、鍵のかかっていそうな箱を強引に叩き切った。中には金貨が大量に入っており、他にも宝石類が入っていた。そして、重要な手紙を見つけた。

 

「これは私が」

 

ポーチに金貨や宝石を詰め込み、斧やハルバードは価値がありそうなので背に担いだ。

 

「ネイラ!魔法はかけた!?」

「うん、大丈夫だよ」

「エルドス、カリードもポーションは飲んだ?」

「おう、問題ないぜ」

「よし、先に逃げて!囲まれないように上手く道に戻るのよ!」

「分かった!」

「アイラ!無事で居てね!」

 

カリード達は急いでテントの外へ出ていった。外から盗賊たちの声が聞こえた。

 

「追え!」

「駄目だ!あいつら足が速すぎる!」

「ちくしょう!」

 

私は戦利品をポーチに詰め込み、一杯にしたところで外に出た。そこにはカリード達を逃した盗賊達が待ち構えており、その数は二十人程だった。

 

「おい!一人逃げ遅れたやつがいたぞ!捕まえろ!!」

 

私は剣を鞘から抜いて構えた。

 

「……いいの?私はあなた達のお頭、幹部、全員殺したんだけど?」

「うるせぇ!!てめぇら、ぶっ殺しちまえ!!」

 

一対多数は基本不利だけど、この人数差ならば、勝てる見込みはある。私は腰にあった爆弾を地面に叩きつけて爆発させる。すると、土煙が舞い上がり、視界が悪くなった。私を見失っているうちに、私は彼らの背後に回り斬り捨て、斬り捨て、斬り伏せていく。盗賊達の悲鳴が響き渡る。そして、煙が晴れるころには、返り血を浴びた私と、盗賊達の死体が私の周りに転がっていた。

 

「……まだやるの?」

 

私は剣についた血を振り払う。

 

「ば、化け物だ!逃げるぞ!」

 

生き残った盗賊は一目散に逃げていった。

 

「さて、そろそろ帰らないと心配されるね」

 

私は死体の山を放置し、カリード達を追いかけた。足跡をたどって少し走ると、すぐにカリード達と合流できた。

 

「良かった、無事で……って、凄い血を……」

「ちょっと盗賊達とやり合ってね」

「ケガは?」

「全然」

「さっき、盗賊達が怯えながら逃げていくのを見かけたけど……」

「これで盗賊団は壊滅ね」

「そうだな!俺らの勝利だな」

 

カリードは嬉しそうに言った。

 

「それに」

 

私は宝一杯のポーチをエルドスに渡した。

 

「これ、戦利品」

「うわ、すげえな!こんなにか!」

「報酬は山分けで」

「もちろんだぜ」

 

するとブランカが口を開いた。

 

「あの、まずは近くの川でその血が付いた服を洗いませんか……?血は不浄なものですので」

「今日の野営は川の近くが良いな」

「賛成です」

 

私達は川の近くで野宿する事にした。時刻は夜あたり、月明かりを頼りに私は近くの川で水浴びをすることにした。傍にはブランカが居てくれている。彼女は私の護衛役を買って出たのだ。

 

「わざわざここまで来なくても良かったのに」

「いえ……。私も汚れていたので……」

 

川の流れは穏やかで、水音も静寂な森に溶け込むように消えて行った。シャツは洗って近くの木に干したので、今は上半身裸、下にズボンを履いている状態。ブランカは替えの服に着替えて、私の隣で座っている。

 

「ガラビニエリの方には、地面から沸いた熱い水に浸かるという文化があるらしいですね」

「ブランカは東の方知っているの?」

「いえ、ただ本を見た程度の知識なのですが……」

「いつか、東の方も行ってみたいと思う?」

「はい、あそこには美味しいものが沢山あるそうで……。あっ、すいません、食べ物の話は関係ありませんでしたね」

「いや、聞きたかったね。私も美味しいもの食べたいし」

「アイラさんはどんな料理が好きですか?」

「実はお肉」

「お肉ですか、貴族などが食べそうなイメージがありますが」

「だよね。実はソースがかけられたり、香辛料とかがかかったお肉が好きなの。また食べたいけれど、そんなに食べられないし」

「贅沢ですね……。貴族の出では無い事が驚きです……」

「依頼で時々、ご馳走を食べられるくらいかな」

「アイラさんの腕前になると、どの依頼を受けても稼げるでしょうね」

 

私は苦笑いを浮かべた。

 

「稼げてもいろいろ使わなきゃいけないし、あまり自由にお金は使わえない。今回の地味に出費が大きかったし」

「どんな出費を……?」

「ポーション、スクロールを用意するだけで数千GPは払ったかな」

「そんなに!?私達が稼いでも、そんな額払えるかどうか」

「まぁ、今回は特別だからね。生き残るための投資」

「アイラさんのそういう所、素敵だと思います」

「経験を積んだ余裕だからね」

「そういえば、アイラさんは冒険者になって長いんですか?」

「冒険者では無いって。幼い頃から剣を振ってきたからその経験だし」

「そうなんですね……」

 

私は浸かっていた足を出して、布で拭く。そして近くにあった替えのシャツを着ける。

 

「そろそろ戻ろう。みんな待っているだろうから」

 

私は野営地に戻ると、そこにはカリード達が居た。

 

「おう、アイラ!遅かったじゃねえか!」

「待たせて悪かったね。さて、奪った書類を拝見しようか」

 

私はベイレンが持っていた手紙を取り出した。そこには、ルクス・エテルナの傘下組織が『ケネブレス・ゲート』という大都市を拠点にしている事や、資金源などの情報が書かれていた。

 

「ケネブレス・ゲート……。沿岸に面しており、貿易が盛んだと聞いたことがあります。旧帝国領でしたが、戦争の被害をあまり受けなかった都市としても有名です」

「次の目的地はそこだな。ここから更に南行って、大陸の南東部へ向かえば着くはずだ」

「いいね!一度行ってみたかったんだー!」

「なら、次はそこへ行こうぜ!」

 

カリードは楽しそうに言った。

 

「決まりね」

 

そんなに楽しい事じゃないんだからと窘めようと思ったが、私はあえて何も言わないことにした。そう言えば、彼らはずっと私に頼ってばかりのような気がする。たまには彼ら中心で物事を進めてみるのも良いかもしれない。未来の事を考えながら、私は眠りについた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。