女剣士と女勇者が出会うまでのお話   作:____―--

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翌日、アブデルの鷹の本拠へ訪ねることにした。アブデルの鷹とは、平民上がりで成り上がった英雄、『アブデル・ジュムール』が作った傭兵団である。主な仕事としては治安の維持で、他にも、スラム層の救済活動もしている。

 

「おい!ここに何の用だ!ここはお前みたいな荒くれ者が来るところじゃねぇぞ!!」

入り口にいた門番の男が大きな声で言う。

 

「待って、私は『トロイ・ブラザーズ』の事で知ったことがあるから聞きに来ただけよ」

私がそういうと、男はすぐに表情を変えた。

 

「何?それは重要な事だ。中に入れ」

男は私達の人数を確認すると、中に入れてくれた。勿論、通るか分からないはったりだったが……。

中に入ると、そこには数人の男たちがいた。恐らく全員が傭兵だろう。

 

「……なるほどな。上の大公公務室へ行くがいい。俺の方からも話しておこう」

男が案内してくれるらしく、奥へと進んでいく。そして、ある部屋の前に着くと扉を開ける。すると中には一人の男性が座っていた。おそらく彼がリーダーであろう。

 

「君たちか。いつか私の元へ来ると思っていたよ。まぁ座りたまえ」

私たちはソファーに座って話すことにした。テーブルの上には温かい飲み物が置いてある。

「さて、まずは自己紹介をしておこう。私はエルグランダ、他の者にはグランド・デューク=エルグランダと呼ばせている。また、ケネブレス・ゲートの七議員の一人でもある」

 

やはり大物だった。この都市を仕切る一人だったとは。

「君たちの事は裏で聞いている。鉱山の件、盗賊キャンプの件はこちらでも把握済みだ。で、今回はトロイ・ブラザーズの事で話したい事があるそうだね?」

「ええ、彼らに怪しい動きが無いか調べて欲しいのです」

エルグランダは少し考え込むような仕草をする。

 

「確かに彼らの行動には不審な点がある。だが、それが彼らの仕業だという証拠はない。しかし、こちらからスパイを送り込んでも消息が掴めなかった」

「どうにか情報を掴めない?」

私は食い下がるように言う。

「うむ……そうだな……」

しばらく沈黙が続く。するとエルグランダが口を開いた。

 

「次の会合で、トロイ・ブラザーズが話し合うことになっている。その時に潜入してみよう」

「その会合は?」

「明日の昼、議会宮殿の一室で開かれる予定になっている。我々の兵も護衛で出すが、もしかすると『ネズミ』が紛れ込んでいる可能性もある。招待状は私で書いておくから、裏で潜入してもらいたい」

「『ネズミ』というのは?」

「君らも知っているだろう。公で口に出すのは難しいが」

「なるほど」

 

ルクス・エテルナがこの傭兵団の中にも紛れている可能性があるということだろう。

「では頼むぞ。報酬については後日伝える」

「ええ、分かった。……カリード達は先に戻ってて」

「ん?アイラどうしたんだ?」

 

カリードが首を傾げる。他の二人も同様だ。

「ちょっと野暮用を思い出しちゃって……」

「そうなのか?」

カリード達が不思議そうな顔で見つめてくる。

「うん。すぐ追いつくから」

皆を先に行かせてから、私は一人この公務室に残った。

 

「それで、何か御用ですか?」

「トロイ・ブラザーズの本拠に潜入できる方法は無い?」

「潜入か……」

 

エルグランダは机から一枚の紙を取り出す。そこには地図らしきものが書かれていた。

 

「ちなみに何をする気かね?場合によっては許可できないのだが」

「トロイ・ブラザーズの内情をもっと知りたくて」

 

エルグランダは建物の構造が書かれた紙に指をさす。

 

「下水道のここに脆い壁がある。そこから地下へ潜れば行けるはずだ」

「分かった。今夜一人で行ってみる」

「危険だぞ。何が起こるか分からん」

「危険は承知の上です」

「……くれぐれも無理はしないように」

 

私は公務室を出て、外に出るとカリード達が待っていた。

 

「何を話していたんだ?」

「別に何も。夜、私居ないからよろしく」

「ええっ!?」

 

カリードが驚く。他の三人も同様に驚いていた。

 

「大丈夫。朝にはしっかり帰っているから」

 

――

 

夜になったら、黒いフードを深く被り、スラムを通って下水道までやってきた。やはり夜の街だからか、松明を持ったアブデルの鷹や、黒い恰好をした悪漢などがたくさんいる。指定された場所に近づくと、私は壁に手を当てながら歩いて行く。するとある場所で明らかに脆い部分を見つけた。

私は腕に力を込め、慎重に壁を壊す。中に入ると、そこには人が一人通れそうな道があった。ゆっくり進むと、少し広い空間に出る。恐らくトロイ・ブラザーズの本拠の地下だ。地下は監獄のような造りになっていて、鉄格子の中に何人か閉じ込められている。

 

「だ、誰だ?」

 

監獄の中に囚われている一人の男が声をかけてきた。

 

「さあ?それよりあなたは誰?」

「元々幹部だったが、策略に嵌って捕まった。今はただの囚人だよ」

「策略?」

「ああ、ドッペルゲンガーだ。少しずつ俺達の組織がドッペルゲンガーに乗っとられていった」

「ドッペルゲンガー……。本当だったのね」

「今となっては傀儡だ。連中はもうこの街の実権を握ろうとしている。トロイ・ブラザーズをやったら、今度は傭兵団、造船所、色んな所を乗っ取って、最後は国そのものを手に入れるつもりだ」

「……なるほど。この監獄に居る連中は皆、本物という事?」

 

男は黙ったままうなずく。大体わかった以上ここは用無しだ。上は見張りが居るかもしれない。ポーチから透明のポーションを取り出し、飲み干した。

 

「き、消えた……」

 

男の声は聞こえたが、私は次の階へ向かった。見張りは警戒心が薄く、簡単に上へと登れた。それにしてもドッペルゲンガーは本当に見分けがつかない。気味が悪かった。

 

最上階にたどり着くと、扉があり、鍵が掛かっていた。恐らくこの先がトロイ・ブラザーズのトップの部屋だろう。私は強引に扉を開けると、中には誰もいなかった。部屋は綺麗で、豪華な装飾品が飾られていた。おそらく夜だから寝ているのだろう。私は机に近づいて引き出しを開けると、中には大量の書類が入っていた。そして、一際目立つのは一つの書類だった。私はそれを開けて中身を確認する。

 

『今回の会合の主な目標』大きな文字でそう書かれていた。私は読むことにした。書類によると、今回の会合で鉄の独占を企むのは勿論だが、他にもある。掃除リストと書かれた欄には、今回の会合に参加する一部のメンバーの名前が書かれている。その中には七議員もリストの中に混じっている。また、トロイ・ブラザーズ側として参加するメンバーの名簿もあった。様々な名前が書かれているが、その名前の隣に奇妙な印が付いているものと付いていないものがあった。どういうものか分からないが、重要な情報である事は間違いないだろう。

 

「とりあえずこれだけあれば証拠になるはず……」

 

すると、扉が強引に開けられていることを不審に思ったガードが部屋に入ってきた。

 

「これは……侵入者か!?」

 

まだ透明化は解けてないので、ガードの隣をそっと通り抜け、再び地下へ降りる。幸い、警戒はされたものの、発見されることは避けられた。地下の牢屋に戻ると、囚われていた本物の人間達を解放させる事にした。

 

「ん?戻ってきたのか?」

 

私は扉を強引に開け、手枷を剣で破壊して外す。

 

「急に開放して、どうしたんだ?」

「あなた達には証人になってもらう。さ、私が入ってきた道から脱出して。リーダーはどこに?」

「リーダーは……残念ながら、殺されたよ」

 

そう言って幹部は向こうにある死体に指を刺した。

 

「あの人は……?」

「あいつがボスだ」

「そう……」

 

私はその死体の前に立ち、じっくり観察する。

 

「おい、何をしている?」

「……酷い臭い。死後数週間ってところか。腹部を刺され、出血多量で死んだみたい。槍のような太いもので刺されただろうから、傷口は貫通してる……」

「何でそんな事が分かるんだ?」

「そんな事はどうでもいい。リーダーの名前は?顔は覚えてる?」

「ああ、ジ・アイという名前で呼ばれていたが、本名はリヒテルだ」

「リヒテル……」

 

私は名簿に書類を通すと、リヒテルの名前の横に奇妙な印が付いていた。

 

「あなたの名前は?」

「俺はダーニだ」

「そう……」

 

私はもう一度、名簿に目を通す。すると、やはりダーニの横にも謎の印がついていた。

 

「何か分かったか?」

「……なるほど」

 

私は名簿を持って、ダーニに見せた。するとダーニも気づいたのか、驚いた顔をする。

 

「分かったぞ。ドッペルゲンガーで成り代わった奴に印がついてたんだ」

「そういうこと」

「でもどうすれば……」

「とりあえずアブデルの鷹に匿ってもらって。いつか証人として出てきて欲しい」

「分かった。他の連中も開放するんだな?」

 

私はうなずいた。

 

「じゃあ先行ってる」

 

この後、こっそりと他の人々も解放させ、脱出した後、私も下水道を通って、アブデルの鷹に戻った。司令部は夜なのに、大公公務室は明かりが灯っている。

 

「戻ったか。先程、トロイ・ブラザーズの構成員が私のところにやってきて何事かと思ったぞ。それで、首尾は?」

 

公務室の机の上にランタンが置いてあり、そこからほのかな光が灯っていた。私は手に入れた書類を机の上に置く。

 

「トロイ・ブラザーズの者の一部がドッペルゲンガーに成り代わっているみたい。いつか証人として使えると思うから、丁重に保護して」

「ふむ……。それは興味深いな。すぐに手配しよう。それだけかね?」

「今のところは」

「では今日はもう遅い。ゆっくり休むといい」

「分かった」

 

夜になってかなり過ぎたはず。どれくらい寝れるだろうか。私はウッドロック・インの部屋に戻り、ベッドに横になった。ネイラとブランカは静かに息をたてて眠っている。

 

「おやすみ」

 

私はそう呟いて目を閉じた。

 

――

 

「アイラさーん、起きて下さーい。今日は重要な日だぞー」

 

誰かに揺り起こされて、目が覚める。ネイラの声が聞こえてきた。

 

「ん……?」

 

私は眠たい瞼を擦ると、そこにはネイラの顔があった。

 

「珍しいね、普段は一番早く起きるのに」

「ちょっと、夜遊びしすぎてね……」

「はいはい、面白い冗談ですね。さ、スープ飲んだら議会宮殿行きますよ」

 

私はうなずくと、着替えて朝食を食べながらカリード達と話す。

 

「昨日は遅かったな。何をしていた?」

「ちょっと気になったことがあったから調べてた」

「そうか。準備ができたら議会宮殿に向かおう。もしかすると戦いになるかもしれないから、覚悟しておいてくれ」

「わかった」

 

私はうなずくと、急いで支度をして、皆と一緒に議会宮殿に向かった。議会宮殿の前にはやはりアブデルの鷹達が警備をしていて、中に入ろうとする人をチェックしていた。

 

「君達は?」

「あー、エルグランダ大公からお願いされてきたんだが……」

「招待状は?」

「そんなの貰ってないけど……」

 

私がそう言うと、後ろからエルグランダ大公の声が聞こえた。

 

「待て、君達はこっちに来なさい」

 

エルグランダはそう言って、私達を連れて、別の入り口に向かう。そして、そこから入るように指示された。

 

「どうしてここに?」

「ここからだと議会宮殿の二階に通じており、高い場所から全体を把握できる。それに、君達は私達と別行動をしてもらう」

「分かった」

 

大公が指示した通り、別の入り口から宮殿の中に入って、階段を登る。すると、そこは会合を見下ろして見られるようになっていた。

 

「かなり混んでいるな。乱戦になるかもしれない」

「だとしたら、あまり魔法は使えないな」

「七議員の方は絶対に守りましょう……。一人でも欠けたら、大変なことになります」

「そうね」

 

少しすれば会合が始まった。

 

「全員集まったようですね。これから今回の議題について話し合いを行いたいと思います」

 

話を進めるのは七議員の一人であるベールンだった。

 

「最近物騒ですわね……」

「ドッペルゲンガーの噂も聞きますし……」

「このままでは、この国も危ないのではないでしょうか?」

 

貴族からひそひそと声が聞こえる。私達は不審な人物が居ないか会場内をじっと観察していた。

 

「それについては、こちらで調査を進めています。皆さんにはご迷惑をおかけしないように致しますので……」

「しかし、その噂が本当なら、我々が狙われる可能性もあるのではないですか?」

 

一人の男がそう言った。すると、他の者達がざわめき始める。

 

「お静かに!まだ確証があるわけではありません!」

 

ベールンはそう叫んで、騒ぎを収めようとするが、収まる気配がない。

 

「静粛に!!今は会議中だぞ!!」

 

すると、エルグランダが一喝して、場が一気に鎮まった。

 

「失礼しました。他に何かある方は?」

「鉱山の一件で鉄不足が深刻になっていることに関してはどうする?現在、鉄は需要が供給を大きく上回っている状態だが、これではいずれ破綻してしまう」

 

別の者が手を挙げて発言した。それは……。

 

「商業ギルド、トロイ・ブラザーズのリヒテルだ。鉄の件に関してだが、現在鉄の独自ルートを開拓しており、近いうちに流通させる予定だ。数週間以内で安定するだろう」

「その独自ルートとは?どれだけの量を供給できますかな?また、価格はいくらになりますか?」

「独自ルートとして、まず私達が所有する鉱山の深部に更なる鉱脈を発見した。そこで採掘される鉄鉱石の量はかなり多い。また、他鉱山の買収も進めているので、価格も抑えられる。安定した量を確保できるはずだ」

「待ちなさい」

七議員の一人、クラスティス公爵が口を開いた。

「確かに供給されるのはよしとしましょう。だが、最近ライバルである商業ギルドが所有する鉱山が次々と閉鎖される事件が起きているのは知っていますか?あなた達は鉄を独占しようと考えてるんじゃありませんか?」

「それは違う。私達トロイ・ブラザーズは、ただ良質な鉄鉱を安価に提供したいだけだ。独占など考えてはいない」

「そうでしょうか?あまりにも不自然すぎる。もし、本当にそうだとしたら、何故、今まで黙っていたんですか?」

「それは……。他の連中に妨害されて、思うように動けなかったからだ」

議論が熱くなっていく中、私はリヒテルの真上に来るように移動を始めていた。

「それと、最近トロイ・ブラザーズの者が下水道で遺体として発見される事件がありました。内部も乱れているのにこのような強硬策が取れるなんて、やはり怪しい」

「それは誤解だ。私達はそのようなことはしていない」

「では、潔白を証明するために、今ここで証明してみせてください」

「待て」

エルグランダが立ち上がった。

 

「証明する必要はない。連れて来るんだ」

 

すると、ダーニが傭兵達に身を守られながら姿を現わす。

 

「……確か、この会合にダーニは参加していたな。だが、二人いるようだ」

 

するとダーニが告発を始めた。

 

「リヒテルは殺された。数週間前にな」

「どういうことだ!?」

「それは事実だ。今朝、本拠地に押し入って確認したところ、死体があった。それがトロイ・ブラザーズのボス、リヒテルの死体だ。他にも構成員が抜け出し、私の元に来て、保護を頼んできた」

 

リヒテルの表情は少しずつ歪んでいく。

 

「そんなことをやってない。デタラメを言うな」

「嘘をついても無駄です。もう証拠は上がっております」

 

ベールンの言葉を聞いた途端、リヒテルは手を上げ、振り下ろした。

 

「殺れ」

 

それと同時に私は叫んだ。

 

「今よ!」

 

すると、カリードとエルドスが二階から飛び降りてきた。今まで化けていたドッペルゲンガーは魔物としての姿を現し、七議員目がけて襲いかかった。会場内は混乱に陥り、悲鳴が響き渡る。ドッペルゲンガーは人に化ける事だけが得意なので、戦い方に関してはひっかきに気を付ければ問題ない程度の強さしかない。カリード達は人々を守るように動き回り、ドッペルゲンガーを仕留めていく。

私はリヒテルの後ろに立ち、剣を突きつける。

 

「動くな」

「貴様、いつの間に……」

「さっきからずっといた。あんたが化けの皮を剥がすのを待ってた」

「何だと……!?」

「いいから質問に答えて。勿論、ルクス・エテルナについての事だけど」

「いいだろう」

「あんたの目的は何?誰に指示された?」

「俺の目的はこの都市を支配すること。指示したのはルイン・チルドレンだ」

 

ルインという言葉に反応して私は拳を握りしめる。

 

「ルイン・チルドレンというのは?」

「ルクス・エテルナを支配する七人の穢れた連中だ。俺はその一人から依頼された」

「その目的は?」

「帝国の再興だ。そのためにこの国を支配しようとしている」

「随分と色々話してくれるのね」

「お前もいつか消されるからな。せいぜい、今の内に楽しんでおくといい」

 

そう言って、リヒテルは大きなドッペルゲンガーとしての姿を表し、背後に居た私に向けてひっかこうとしてきた。

しかし、その爪が私に当たることはなかった。私は軽々と剣でドッペルゲンガーの腕を切り落とし、首を跳ね飛ばす。カリード達の様子を見てみるが、どうやら無事のようだ。

 

「皆は?」

「しっかり守り切ったぜ。怪我人もいない」

「良かった」

 

私は安堵して息をつく。すると、クラスティス公爵がカリードに丁寧に頭を下げてきた。

 

「ありがとうございます。あなたが居なければ、どうなっていたことか」

「いえ、俺たちが出来る事はこれくらいしかありませんので」

カリードと公爵が話していると、討ち損ねたドッペルゲンガーが立ち上がった。

「くくく……。失敗したなら、アレを呼ぶしかあるまい。この街もいずれ血の海に沈めてやる……」

「まだ生きていたのか。一体何をする気だ」

「いずれ分かる。それまで、精一杯足掻いて生き延びるんだな……。ふっ、ハハハッ!!」

ドッペルゲンガーは四本足で走り出し、窓を破って外に出ていった。

「カリード達は後で来て!私が追いかける!」

 

私は奴を追いかけた。ドアを荒々しく開けて外に出ると、ドッペルゲンガーがある場所に向かって走っているのを見つけた。魔物が街中を走っていることで、街中大騒ぎになっている。

 

「魔物だー!逃げろ!」

人々が叫び声を上げて逃げる中、私もその後を追う。

「待ちなさい!」

そして、ある建物の中に入り込んだ。そこは何の変哲もない、ただの倉庫。

「こんなところに……。いや、待って。これは……」

 

私のペンダントが揺れる。倉庫に近づけば近づくほどに激しくなっていく。急いで扉を開けた。すると、そこには……。

 

「何もない?」

「お、おい!あんた冒険者か!?さっき魔物が入って地下に降りたぞ!」

 

倉庫で作業していたであろう男に話しかけられる。

 

「地下?」

「ああ、普段は使われてないはずなんだが、最近怪しい連中が出入りしていて、何かやってるようで気味が悪いんだよ」

「分かった。ありがとう」

 

私は礼を告げ、その場所に向かった。すると、階段が見つかり、下に降りていく。地下は暗く、単なる荷物置き場に思えたが、壁に穴が空いているのを見つけ、入ると、奥には広い空間が広がっていた。ケネブレス・ゲートの地下にしてはあまりに広すぎる空間だった。

 

遠くには朽ちた神殿のような建物が見える。あれは恐らく、数千年も前に滅びたとされる古代遺跡。ペンダントは時と共に揺れも大きくなってきており、危機感を募らせている。このままだと街に大きな危険が及ぶかもしれない。そこにカリード達が息を切らせながらやって来た。

 

「はぁはぁ……。ここにいたのか」

「わぁ……。この街の地下にこんな空間があったなんて……」

ネイラが感心した様子で言う。

 

「ここは一体?」

「分からない。でも、強い魔力を向こうから感じる。止めないとこの街に大きな被害がもたらされるかも」

「なら、行かないとな」

 

カリードは剣を構え、戦闘態勢に入る。

 

「今までで一番苦しい戦いになるかも。いい?」

「分かってる。もう覚悟は出来てる」

 

エルドスは短剣を構える。

 

「私も頑張ります……!」

「よし、行こう!」

 

カリードの声と共に私達はケネブレス・ゲートの遥か地下にある空間に足を踏み入れた。

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