女剣士と女勇者が出会うまでのお話   作:____―--

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二人の旅路

宿の中、二人の少女が目を覚ました。一人は金髪の少女で、もう一人は白い髪の少女だ。

 

「マーナも早起きなのね」

 

 金髪の少女をマーナと呼んだ白髪の少女は、ベッドから降りて窓の外を見た。ちょうど太陽が昇り始めたところだった。

 

「おはよ、アイラ……。でも、朝は苦手なの……」

 

 そう言って金髪の少女もベッドから出て伸びをした。そして二人は着替え始める。アイラはマーナが着替える様子をじっと見ていた。

 

「どうしたの?」

「いや、結構いい胸持ってるんだねって」

 

  そう言うとアイラは平気で、安直にマーナの胸を触った。

 

「ちょっ、バカ!何触ってんのよ!」

 

 顔を真っ赤にしたマーナは慌てて自分の胸を隠した。しかしアイラは気にせず言った。

 

「あれ、嫌だった?」

「嫌に決まってるでしょ!?」

 

 マーナは恥ずかしさを隠すように怒鳴ると急いで着替え始めた。アイラは自分の胸に手を当てながら呟いた。

 

「……私の方はあまり無いけど、マーナは大きいなぁ」

 

――

 

 朝の支度を整え、二人は外へと出た。

 

「さて、今日は何するの?」

 

 マーナの言葉にアイラは少し考えて答えた。

 

「今日も依頼をこなしながら放浪かな」

 

 その言葉を聞いてマーナはため息をつくと言った。

 

「本当に目的もなく歩くのね」

「目的はあるけど……」

 

 そう言ったアイラの表情は険しそうだった。それを見てマーナは首を傾げた。

 

「何かあったの?あたしには話せないようなこと?」

 

 心配そうな顔で言うマーナに対してアイラは首を振ると答えた。

 

「本当にしょうもない事」

 

 それだけ言うと彼女は歩き始めた。マーナはそんな彼女の後ろ姿を見て絶対何かあると確信しながらついていった。

 

「森に入るの?」

 

 しばらく歩いて、目の前に森が見えてきたところでマーナは聞いた。それに対してアイラはうなずいて答える。

 

「ええ、近道で遺跡を通るのが一番早く着くと思うから」

 

 彼女が言っている遺跡は森の深い所にある古い遺跡の事である。人の手を離れてから長い時間が経過しており、何が起きているのか分からない場所だ。時々、ギルドの冒険者が派遣されて調査が行われる事もあるが、皆傷だらけで帰ってくるという事から誰も行きたがらない場所である。

 

「げっ、ここ通るの……」

「通るだけよ?深い所まで潜る気は無いし」

 

 嫌そうな声を出すマーナとは対照的にアイラの声はとても落ち着いているものだった。

 

「嫌なところね……」

 

 そう言いながらもマーナは渋々といった感じで森の中へと入っていった。森の中は薄暗く、足元にも注意して進まないと転んでしまいそうだ。二人は慎重に進んで行く。

 

「アイラはこういう所慣れてるの?」

「慣れてる。森や暗い迷宮は特に」

 

 そう言ってアイラは剣を抜いて辺りを警戒していた。その様子を見てマーナも腰の短剣を抜く。

 

「ねえ、前から思ってたんだけど、そんなに強いなら冒険者にでもなった方が良かったんじゃない?」

 

 マーナの問いにアイラは首を振って否定した。

 

「冒険者になると、自由が無くなる。私の目的と合わない。でも、『情報』を教えてくれると言われたら、私は迷わず冒険者になるかもね」

 

 そう言ってアイラは笑みを浮かべた。しばらくして二人は遺跡の前にたどり着いた。そこは苔に覆われた巨大な石柱が立ち並ぶ場所で、建てられてからかなりの時代が経っている事が分かるほど朽ち果てている部分があった。

 

「相変わらず気味が悪いわね」

 

 マーナが周りを見ながら言った。確かに不気味な雰囲気だがアイラは気にしていない様子だった。

 

「行きましょう」

 

 二人とも遺跡の中に入っていった。中に入るとそこはかなり広い空間になっていた。天井は高く、壁や床には彫刻が施されている。そして至る所に謎の文字が書かれた石碑が置かれていた。

 

「こんな所にずっと居たら気が狂いそうになるわね」

「迷宮の狂気ね」

「へ?」

 

 突然アイラが言った言葉にマーナは間の抜けた声で反応してしまった。

 

「いつ自分の命が脅かされるか分からない状況で、太陽の光が届かない場所にずっと居ると精神がおかしくなってくる事があるらしい」

「それって……病気?」

 

 マーナの言葉にアイラは首をかしげた。

 

「どうだろう。まだ学術的に証明されてるわけじゃないけど。進もう」

 

 アイラはマーナの手を引いて奥の方へと進んだ。そして一番大きな空間に入った時、マーナが言った。

 

「……何か聞こえる」

 

 マーナの言う通り、耳を澄ますと何か羽音のような音が聞こえて来た。

 

「……コウモリかしら?」

 

 マーナが言ったその時だった。突如として二人の前に黒い影が現れた。それは人型に翼を持った怪物だった。

 

「悪魔!?」

 

 マーナが驚いて叫ぶと同時にアイラはマーナの前に出て剣を構えた。しかし、その瞬間、アイラは全身を強い衝撃に襲われた。アイラは吹き飛ばされると壁に叩きつけられた。

 

「アイラ!」

「大丈夫、『アーマー』を唱えていたから」

「魔法使えたの!?」

「ええ、と言っても数える程度しか!」

 

 アイラは直ぐ立ち上がるとすぐさま反撃に出た。素早く間合いに入り込むとその勢いのまま斬りかかる。避けられてしまうが、それを読んでいたか、腰のベルトから小型のナイフを取り出して投げつけた。ナイフは悪魔の身体に突き刺さった。悪魔は悲鳴を上げる。

 

「今のうちに」

 

 アイラの言葉を聞いてマーナは慌てて『マジックミサイル』を唱えた。マーナの放った魔法の玉が複数、アイラの攻撃によって怯んでいる悪魔に向かって飛んで行った。悪魔は避けようとしたが間に合わず直撃を受けてしまった。さらに追い打ちをかけるようにアイラの剣による一撃を受けて、ついにその体は崩れ落ちた。

 

「やった?」

 

 マーナは恐る恐る近づいた。

 

「念の為」

 

 アイラはそう言って悪魔の首を斬り落とした。これで悪魔が再び起き上がることは無くなった。

 

「ふう、何とか倒せた」

 

 マーナは安堵のため息をつくとその場に座り込んだ。

 

「まだ戦い慣れていないようね」

「人とやり合うことはあったけど、これが初実戦なのよ」

 

 アイラの指摘に対してマーナはやや自嘲気味な口調で答えた。

 

「魔法はどれくらい使える?」

「そこそこ。隕石を落としたり、ドラゴンを召喚するものを使えないけど」

「それくらいなら十分ね」

 

 アイラはそう言いながら辺りを見回した。

 

「どうかしたの?」

「まだ行ける?遺跡の地下で何かが蠢くような気配がした。急ごうと思って」

「分かったわ」

 

 二人は早歩きで遺跡の奥へと向かった。通過するだけのルートを通っているので、ずっと直線の通路が続いている。しばらく歩いていると、マーナがアイラに話しかけた。

 

「ここ、ドワーフが作った遺跡みたいね……。ドワーフって山の中に住む種族じゃなかったっけ?」

「そうだけど、彼らは地下にも住んでる。ここは彼らが住んでいた場所かもしれない」

「ふーん……」

 

 マーナはあまり興味無さそうに返事をした。

 

「ねぇ……」

「なに?」

 

 マーナの呼びかけにアイラは振り返らずに答える。

 

「何となくここら辺で魔力が濃くなってる気がするんだけど」

 

 そう言って辺りをキョロキョロと見回す。

 

「そのようね」

 

 アイラは背中の鞘から剣を抜くと言った。すると近くにあった骨がカタカタと動き出した。

 

「スケルトン!?」

 

 マーナが驚いて叫んだ。

 

「私から離れないで」

 

 辺りにあった骨が動き出し、アイラ達を囲むようにスケルトン達が立ち上がった。

 

「か、囲まれているわよ!?」

「そこで魔法でしょ?」

 

 アイラの言葉にマーナがハッとする。

 

「この場を切り抜けられる魔法とかないの?」

「あるにはあるけど……ちょっと時間がかかるわ」

 

 マーナの返答にアイラは頷いた。

 

「時間稼ぎするから」

 

 アイラは剣を構えるとスケルトン達の方へ駆けだしていった。マーナは詠唱を始めた。アイラは迫りくるスケルトン達に次々と攻撃を加えていくが、その度に別の個体が立ち上がって行くためキリが無かった。

 

(このままだとジリ貧……)

 

 すると、

 

「痺れたらごめん!」

 

 マーナが叫ぶと同時に、『チェインライトニング』の魔法が唱えられ、電撃が走った。

 

「待って、それ事前に言ってくれな……あばば!?」

 

 突然の出来事にアイラは思わず変な声を出してしまった。しかし、そのおかげで多くのスケルトンが灰に変わっていった。

 

「ごめん!早く行こう!」

 

 マーナは痺れているアイラの手を掴んで走り出すと、そのまま遺跡の外へと飛び出した。ちなみにマーナは雷対策に魔法がかけられた手袋を嵌めていた。

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 外に出るとマーナは膝に手を当てて呼吸を整え始めた。

 

「まだ、痺れるかも……」

 

 アイラも息を切らせながら言った。

 

「大丈夫?」

 

 マーナが心配して顔を覗き込むが、アイラは大丈夫と手で制した。

 

「ごめんなさい、まだ魔法の制御が出来てなくて」

「いいえ、助かった」

 

 アイラはそう言うと辺りを見渡した。

 

「うん、ちゃんと通り抜けられた」

 

 二人が立っている場所は山の向こう側だった。

 

「良かった、無事に通れて」

「まだ村まで距離はある。歩きましょう」

 

 アイラの提案にマーナは同意し、二人は再び歩き出した。

 

「次の目的地は?教えてよ」

「近くの村で休憩して、街に向かうつもり」

「ずっと歩き続けるの!?」

「旅は初めて?なら仕方ない」

 

 アイラはそう言ってマーナを宥めた。

 

「こういう時、馬とかいればいいのにな……なんて」

「そうね、馬は乗った事ある。かなり便利よ」

 

 アイラの言葉を聞いてマーナが目を輝かせた。

 

「そうなんだ、どんな感じ?」

「まず、疲れないし、荷物を運ぶのにとても役立つ。でもお金がかかる」

「そう……。なら、依頼を沢山こなしてお金を貯めれば、買えるようになる?」

 

 マーナの質問に対してアイラは首をかしげた。

 

「冒険者ギルドに入って契約戦士になる?私は大反対だけど」

「そんなに嫌なの?」

 

 するとアイラはやれやれ感を醸しながら答えた。

 

「私、強過ぎるからすぐにプラチナ行っちゃうし、そうなったら上のゴタゴタに巻き込まれるじゃん」

「あ〜……」

 

 マーナは納得したような表情を浮かべたと思ったらツッコミを入れた。

 

「って、それ気持ち悪い!まるで自分、強いんでって言ってるようなもんじゃない!もっと言い方があるでしょ!?」

「気持ち悪いは傷つく……」

 

 アイラはそう言いながらも落ち込んだ様子は無かった。

 

「あ、そうだ!一万持っていたよね、あれどうしたの?」

「まだあるけど?」

「それで馬を買えばいいのよ!次の町で探しましょ!」

「そうね、そうしましょう」

 

 マーナの言葉にアイラは同意した。

 

「じゃあ、もう一つ森を抜けましょう。今度は気を引き締めてね、結構危険な地域だから」

「えーっ!?回り道しようよ〜」

「それだと山登ることになるけど?」

「どっちも嫌だぁ……」

「大丈夫。私が守ってあげるから」

 

 二人は再び森の中へ入っていった。

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