世界を救うって、どういう事だろう。私は何をすればいいのかな?今分かっていることは、王様を頼りにするしか無いということだけ……。
「深い事は考えんでいいぞ」
いつの間にか後ろに立っていた魔法使いのおじいさん、リサンダスはそう言った。
「複雑な事はわしらに任しておけばよいのだ」
「そうそう、あんたみたいなお嬢さんには荷が重いさ」
柄の悪そうな盗賊、カルケーは私の頭をぽんと叩いた。
「……さて、次はどこに行くの?教えてくれる?」
綺麗なエルフの女性、セリーナは私に聞いた。
「はい!まずは山を越えようと思います!」
「よし!気合い入れて行くとするか!」
ドワーフの戦士、ドランは大きな声で叫んだ。それに合わせて、人間の騎士、エリオットも立ち上がった。
「はい、僕も準備は出来ていますよ」
野営の片付けが終わり、私たちは出発の準備をしていた。
「行きましょう」
私がそういうと、皆はうんとうなずき歩き出した。今回の勅命は山奥に潜む闇の組織を討伐する事だった。王様によると、帝国の残党らしい組織が居て、アジトと思われる場所から魔物が大量に湧き出ているらしい。それを退治して欲しいという依頼だ。どうやらこの世界に魔王と呼ばれる邪悪な存在が復活しようとしているようだ。詳しい話は分からないけど、今はとにかく敵を倒すしかなかった。
山道に入ると、辺り一面草木で覆われていた。獣道を進むこと数時間、ようやく目的地に到着した。そこは洞窟の入り口で、中からは異様な気配を感じた。
「ここですね……」
エリオットは剣を構えながら呟くように言う。私も背にある聖剣を握りしめ、いつでも戦える体勢を整えた。
「先陣はわしに任せてくれんかのう」
ドランが斧を持ちながら前に出た。
「じゃあ、俺らは援護射撃をするぜ」
カルケーの言葉と同時に、他のみんなも武器を構えた。
「では行くぞ……!」
ドランを先頭に洞窟の中へ入っていった。
洞窟の中は暗く、腰にあるランタンの灯りだけが頼りだった。
「へへっ、こういう場所こそお宝があるってもんだ」
盗賊であるカルケーは鼻歌を歌いながら歩く。すると、前方から大きな影が現れた。それは巨大な蜘蛛のような姿をしていた。
「ジャイアントスパイダー!毒に気をつけるのだ!」
知識が豊富なリサンダスが叫ぶ。それと同時に、ジャイアントスパイダーの攻撃が始まった。糸を出し攻撃してくる他、口から吐き出す溶解液にも注意しなければいけない。前衛に私、エリオット、ドランと続き、後衛にはリサンダスとセリーナ、カルケーがいた。
まず、エリオットが大きめの盾を持って私達の前に立った。溶解液が盾にぶつかる音が聞こえる。次にドランが前に飛び出し、思い切り斧を振り下ろした。刃はスパイダーの足を落としたが、一本落とした程度では動きを止めることは出来なかった。
次にセリーナが弓を構え、矢を放った。弓矢はスパイダーの胴体に突き刺さり、苦しそうにしている隙を狙って私は聖剣を振った。軌道から魔法の玉が数個現れ、玉はスパイダーに向かって飛んでいった。そして爆発した。煙の中から現れたスパイダーはまだ生きていたものの、かなり弱っていた。
「これで一点ね!」
セリーナがドランを踏み台にして飛び上がり、空中で回転しながら弓を引き絞る。放たれた矢は見事頭部に命中し、そのまま倒れ込んだ。
「おい!わしの獲物じゃぞ!」
ドランは文句を垂れながらも倒れたスパイダーに接近し、とどめをさすために斧を大きく振りかぶって勢いよく叩きつけた。真っ二つになったスパイダーはそのまま動かなくなった。
「よっし!倒したな!じゃあお宝お宝……!」
カルケーは嬉々として近くに置いてある宝箱に近づいた。
「全く、けしからん。欲にまみれた人間め……」
リサンダスは呆れながら言った。カルケーは小道具を取りだし、鍵開けを始めた。その様子を見て、エリオットは苦笑いを浮かべる。
「また罠に引っかからないと良いのですが……」
「大丈夫だよきっと」
私は笑顔で答える。けど、前に宝箱の罠解除に失敗して石弓の矢が飛んできたり、宝箱が爆発するなんて事もあった……。あの時は本当に驚いたけど、今回は大丈夫だろうと思う。
しばらく待っていると、カチャリという音と共に蓋が開かれた。中には金貨や宝石などが入っていた。
「ビンゴ!」
カルケーはガッツポーズをしながら言った。それを見てエリオットはため息をつく。
「取ってもよろしいのでしょうか……」
「誰の物でも無いなら早い者勝ちでしょ?」
セリーナはそう言いながら、早速金目の物を袋に入れていた。私も少しだけ頂いた。私達は何度も遺跡や洞窟などを歩いてきたから、こういった事には慣れている。『強い剣が欲しいなら遺跡の奥へ潜れ』こういった所を探索したことのある人なら一度は聞いたことがある言葉だ。魔物などを倒すと、時々丁度いい場所に宝箱が置いてある事がある。よく分からないことだけど。その時、大抵は何かしら入っている。
「はぁ……。先を急ぐぞ」
リサンダスおじさんは杖を支えにしながら歩き出した。私達も後に続いた。
その後も魔物を倒しながら奥へと進んでいくと、広い空間に出た。そこには魔法陣があり、それを囲むように黒装に身を包んだ者達が立っていた。すると、一人の男がこちらに気づいたようで近づいて来た。顔はフードに隠れていて見えない。声色からして男だと分かった。
「貴様らは勘違いしてるだろうが、もう私達は止められない……!」
男は叫びながら剣を抜いて襲いかかってきた。
「皆!戦闘準備だ!」
エリオットの声と同時に私も剣を抜き、応戦しようとした。しかし、私より先にドランが斧で剣を受け止めた。
「わしに任せろ!お前さんたちは下がっていろ」
ドランは力任せに斧を振り回し、相手を吹き飛ばした。
「儀式を止めて!」
私はそう叫んだが、男はニヤッとした表情を見せた。
「だから、もう遅いんだよ!」
すると、魔法陣から腕が伸びてきて、男の身体を掴んだ。そして……。
「えっ……」
何かが弾ける音とともに赤い液体が飛び散った。魔法陣からは複数の腕が伸びてきて、信者達を捕らえていく。その光景を見た時、全身に鳥肌が立ち、背筋が凍りつくような感覚に襲われた。魔法陣が少しずつ、赤に染まっていく。
「見てはいけません!」
エリオットが私を抱き寄せてくれた。
「何が起こっているの!?」
セリーナが叫ぶ。
そして、全ての信者の気配が消えた時、おぞましい魔力が地の底から湧き上がってくるのを感じた。
「……これは、まずいのう」
ドランは斧を構え、警戒している。
「来るぞ……。構えるのだ……!」
リサンダスの言葉と同時に、巨大な影が現れた。それは上位の悪魔であるデーモンだった。角があり、腕が沢山あり、背中には翼が生えていた。
「前衛は僕が行きます!」
大盾を持ったエリオットが前に出る。セリーナは弓を構え、矢を放った。矢は突き刺さったものの、あまり効いている様子は無かった。私は剣から魔法弾を放ち、距離を保ちながら牽制した。
「相手は悪魔、勇気ある君の力なら倒せるはずだ!」
リサンダスおじさんはそう言って、魔法を放った。白い光を放つ稲妻が走り、デーモンを直撃した。
「何、今の魔法!?」
「『ボルト・オブ・ディバイン』じゃ!悪魔には聖なる力が有効だ!」
ドランは斧を握りしめ、突進していった。
「斧が届かん!これだから羽の生えた奴は嫌いなのじゃ!」
そう言いながらも、果敢に攻めていった。
「じゃあ、私が貰っちゃってもいい?」
セリーナは矢を引き絞りながら言った。
「ここだけは譲るぞ!」
セリーナは矢を放った。矢は見事に命中したが、まだ倒れなかった。
「しぶといね……」
次の瞬間、デーモンは目にも止まらぬ速さで動き出し、一瞬にして距離を詰めてきた。
「うわっ!」
私は咄嵯に剣を前に出してガードした。凄まじい衝撃と共に吹き飛ばされた。壁に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫!それより気をつけて!」
エリオットとセリーナが心配してくれている。でも、そんな事を言っている場合じゃない。あのデーモンは魔法を唱えようとしていて、それを阻止しないといけない。セリーナの弓矢で邪魔しようとしても避けられてしまうし、私の魔法では威力不足だ……。どうすれば……。
「ワシが行く!」
ドランは斧を振り回しながら突っ込んでいった。しかし、デーモンの尻尾による薙ぎ払いによって、弾き返されてしまった。
「くそぉ……」
ドランは悔しそうな声をあげた。
「君しか居ないだろう。立ち上がるんだ!」
リサンダスおじさんが私の手を掴んで引っ張り上げてくれた。そして、デーモンの方へ私は走った。
「私だって……やれる!」
魔法弾を放ちながら接近していく。リサンダスおじさんも私に魔法を唱え、援護してくれた。デーモンの尻尾が私に向かって振り下ろされる。しかし、当てようとした部位が急速に樹皮のように硬くなり、攻撃を防いだ。この魔法は『バークスキン』だろう。そして私は飛び上がった。剣を上段に構え、渾身の一撃を喰らわせた。刃は光の軌道を描き、デーモンの体を切り裂いた。
「これで、終わり!」
デーモンは悲鳴を轟かせながら倒れた。
「よし、魔法陣を封印するぞ!」
リサンダスおじさんは杖を振り、『ディスペル・マジック』の魔法を唱えた。魔法陣から放たれていた禍々しいオーラが消え去った。
「これでよし、だな」
カルケーが満足げに言う。
「カルケー!?どこに居たの?」
「いやぁ、俺だと戦力不足だと思って隠れてたんだ」
「まったく、この臆病者め!お前さんはいつもそうだ!」
ドランが怒鳴ると、カルケーは縮こまった。
「まあまあ……。とにかく、無事に終わったんですからいいでしょう」
エリオットが仲裁に入った。
「……うん、終わったね」
「じゃあ、帰ろうか」
私達は魔法陣を後にして、洞窟を出た。外は既に日が落ちていて、真っ暗になっていた。
「ここから近くの町はないかな?」
「ここら辺では無さそうじゃな。また野営となるのう」
リサンダスの言葉に、セリーナはため息をついた。
「今日はもう疲れちゃったよ」
セリーナがぼやく。確かに、戦闘の後でかなり疲労が溜まっている。
「とりあえず、すぐに野営の準備をしましょう」
エリオットが提案すると、皆は同意した。
火を囲んで、私達は夕食を食べていた。
「あちこち行ったけど、魔王への手がかり、全然見つかんないよな〜」
カルケーは肉の串焼きを口に運びながら言った。
「仕方ありません。まだ始まったばかりですからね」
エリオットの言葉を聞いたドランは、呆れたような表情を浮かべる。
「何を悠長なこと言っておるか!早く見つけねば、世界が滅ぶかもしれんのだ!」
ドランはそう言って、スープを飲み干した。
「そんなに焦ってもしょうがないでしょ?ほら、落ち着いて食べなって」
セリーナはパンをちぎり、口に入れた。
「そうですよ。食事は楽しくしないと」
私はパンを頬張って、飲み込んだ。
「むぅ……わかった」
ドランは少し不満そうだったが、納得したようだ。
「皆、出来るだけのことはしておる。これ以上を求めるのは酷な話じゃな……」
リサンダスおじさんはそう言って水を飲んだ。
「とりあえず、明日は王城へ向かって帰りましょう。王様にも報告しなくてはいけませんしね……」
エリオットは言った。
「賛成〜」
セリーナは元気よく手を挙げた。
「じゃあ、みんな寝よう。私はもう眠いや……」
私は欠伸をしながら言った。
「見張りはどうしますか?」
「わしに任せておけ」
リサンダスおじさんは杖で地面に何かを描いた。
「これは?」
「簡易的な結界魔法だ。これで魔物が近寄らん」
「へぇ〜便利だね」
セリーナは感心していた。
「結界は明日の朝に解けるから安心せい」
「ありがとうございます」
「では、ワシは先に休むとしよう」
リサンダスは立ち上がり、テントに入っていった。
「僕達も休みますか……」
私達は男女混合のパーティとなっている。なので、テントは二つに別れている。
「じゃあ、一緒に寝よっか」
セリーナは私の手を掴んで引っ張ってきた。
「いいけど……」
「よし、決まり!」
こうして、私とセリーナは毛布にくるまって横になる。すると、隣りのセリーナが話しかけてきた。
「ねぇ、私達の旅の目的、覚えてる?」
「えっと……確か、魔王を倒すこと、だったよね?」
私は自信なさげに答えた。
「そうそう。でもさ、魔王を倒しても本当に平和が訪れるのかな」
セリーナは私を試すような目線で見つめてくる。
「どういう事?」
私は首を傾げた。
「魔王を倒したところで全ての戦争に決着がつくわけじゃないと思うの。また人々は争いを始めるんじゃないかな」
セリーナの言葉を聞いて、私は黙ってしまった。
「というのを祖先から聞いたんだけどね」
彼女は悪戯っぽく笑った。
「え、えっと……」
「人間は私からすれば短い寿命、だからすぐに答えを見つけたがる」
人間より長く生きるエルフの彼女の言葉には重みがあった。
「そう、だね……。難しい問題だと思う」
私が答えると、彼女は満足そうな顔をした。
「うんうん、君はまだ幼いし、これから考えればいいんだよ」
セリーナは優しく微笑んだ。
「……うん」
なんだか、恥ずかしくなってきた。
「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」
セリーナは目を閉じた。
「そうだね……。おやすみなさい」
「おやすみ」
私達は眠りについた。
三人以上のキャラクターを動かすのは苦手だと感じる。
20221029:名前が気に入らなかったので変更