【桐香】
「ねぇ、ここ最近点数が低迷気味だと思わない?」
【郁子】
「イクたちが迷走気味だからだと思うよ」
【桐香】
「はぁ……ギャグって難しいのね」
【郁子】
「そうだねぇ」
【シューベルト】
「…………」
【シューベルト】
「あの、少々よろしいでしょうか」
【桐香】
「はい。どうかしましたか中村さん」
【シューベルト】
「僕は一体どういった用件で呼び出されたのでしょうか? いまだによく分かっていないのですが……」
【郁子】
「えっとね、トーカちゃんがギャグをやりたいって言ってよく三人で会議してたんだけど、レイちゃんが今日は訓練でどうしても時間が取れないらしくて」
【桐香】
「それで礼の代理として中村さんに来てもらいました」
【シューベルト】
「なるほど、ギャグですか……さすがはSSビッグスリーのお三方。自ら体を張るとは――高い志をお持ちですね」
【桐香】
「"人の上に立つ"とはそういうものですから」
【郁子】
「そんな大層な話じゃなくない?」
【シューベルト】
「それで今回は僕を含めたここの三人でなんらかのギャグを考えよう、ということでしょうか」
【桐香】
「えぇ。ぜひ中村さんのお力を頂戴したく思います」
【郁子】
「でもどうするの? いろいろやってきたけど他に打つ手ある?」
【桐香】
「これまでの失敗原因について私なりに考えてみたのだけど……やはり、"笑い"に対する理解が足りていなかったからだと思うの」
【桐香】
「そこで根本に立ち返って"笑い"の理論について少し調べてきたわ」
【シューベルト】
「さすがは我らが生徒会長……勉強熱心ですね。僕のデータも見習ってほしいものです」
【郁子】
「どういう意味?」
【桐香】
「ひとつ分かったのは――笑いの基本は『緊張の緩和』である、ということよ」
【シューベルト】
「それはたしか……落語家の桂枝雀が提唱した理論ですね」
【郁子】
「へぇ、ナカムラくん知ってるんだ?」
【桐香】
「笑いが起こるメカニズムのひとつとして有名そうよ。でもあくまで生理的な笑いの話だから、すべての笑いに適用されるものではないらしいわ」
【シューベルト】
「なんだって……!? 僕のデータにないぞ!?」
【郁子】
「イクの知ってるナカムラくんでちょっと安心した」
【桐香】
「肝心要なのが『緩和』。いわゆる笑いの部分ね」
【桐香】
「理論に沿って言えば、『笑えない』とは緊張がまさって緩和しないということ。一方、私たちはSS――人の上に立つ組織――の人間だから、緊張が勝ちやすいと言える」
【桐香】
「つまり……『笑える』ようにするには、私たちの場合は『緩和』をより強化しなければならない――ということよ」
【郁子】
「その理屈ホントに合ってる? ぜんぜんピンとこないんですケド」
【シューベルト】
「となると、我々がすべきことはひとつ――"SSの緊張"を上回るレベルの『緩和』を身に纏う。そういうことですね、会長?」
【桐香】
「えぇ。畢竟、いまの私たちにはもっと見た目のインパクトが必要ということになります」
【郁子】
「え? そういう話?」
【桐香】
「だって今まではその辺り意識したことなかったでしょう?」
【郁子】
「たしかにそうだけど……肝心なのってホントにそこなのかなぁ」
【シューベルト】
「たとえば馬の被り物をした会長が生徒会室でじっとしていたらどう思うかな?」
【郁子】
「あ、なるほど!」
【桐香】
「納得するのね」
【シューベルト】
「どうやら方向性は定まったようですが、具体的にはどうしましょうか」
【桐香】
「そこは私に考えがあります。……まず、中村さんは髪と顎髭を伸ばしてきてください。それと眼鏡も外してもらいます」
【桐香】
「あとは髪を黒に染めていただいて……こちらの派手な服に着替えてください」
【郁子】
「オーダー細かくない?」
【シューベルト】
「一体どんなギャグをなさるつもりなのかよくわかりませんが承知いたしました。早速準備に取りかかりましょう」
【桐香】
「私と郁子は……髪を染めて派手な服に着替えるくらいかしら」
【郁子】
「あたしたちだけめっちゃ楽じゃん。……なんかごめんね、ナカムラくん」
【シューベルト】
「ははっ、僕は構わないよ。たしかに僕のデータにはない話だが、こういうのも意外と楽しそうじゃないか?」
【郁子】
「モチベーション高いねぇ」
【桐香】
「ふふっ……今度こそは上手く"キメて"みせるわ」
【郁子】
「変なフラグを立てないで」
◆◆◆
【桐香】
「みなさん……忙しい中、再度集まっていただきありがとうございます」
【桐香】
「イチから"笑い"について勉強し直し……今度は一ヶ月の準備期間を経て生み出した超絶オモロギャグ――披露します」
【桐香】
「――――打首獄門同好会」
【淳之介】
「0点」