これで本当に最後です
あとイメージ絵描きました
カノンという少女には謎が多い。IS学園に在籍していながら、ISを纏っているところをクラスメイトすら見たことがない。足音を立てず、動いているため、突然横を通り過ぎることがある。織斑一夏の周りに集まって暴れる女子を一声で鎮静化する。織斑千冬によく絡まれている。たまに世界一のお尋ね者が土下座しにくる。見たこともないスーツ姿の女性がたまに大事そうな話をしにくる。
数多く語られることはあるが、まず語るべき一番の話題と言えばこれである。
織斑一夏の恋人である。
そう、世界唯一のIS男性操縦者である彼の恋人であるという話である。これについては本人が入学初日の自己紹介でそう言ったため、間違いのない真実だろう。
『……中学出身、織斑一夏です。趣味は家事全般と鍛錬、そこに座ってる月宮華音とは、その恋人なので、よろしくお願いします』
何故自己紹介でこんなことを言ったのか、これについては新聞部のK氏が初めて取材した時に解答を得ている。
『いや、中学時代は華音が女子にももててたんで、牽制というか、なんというか、その……』
という理由らしい。女子高と言っても過言ではない、この学園にもそういう趣味の女子は少なからずいるため、この牽制はある意味間違った行為ではないだろう。月宮華音という少女は古風な容姿で、昔の女学生を思わせるところがある。そんな少女に少女文学のような付き合いを期待してしまう女子がいても仕方ないのかもしれない。
この時の記事は大好評ではあったが、織斑一夏という人物がしっかり独占欲のある男の子だったことに盛り上がる女子の方が大多数だった。彼女たちは現代の女子であって、少女文学が流行した大正時代の少女ではないのだから仕方ない。ただ、その片隅で華音を狙っていたお姉さま方が肩を落としていたのは印象的だった。
織斑一夏と月宮華音は恋人同士ではあるのだが、普段校内では付かず離れずの距離を保っているように思えた。昼食などでは一緒にいるが、その時には他の仲のいい女子も一緒であるし、放課後にISの練習をする時には自身は見ているだけで、他の専用機持ちに任せている。
彼女自身、他の女子とも話はするし、常に一緒というわけではないのだ。ただ、一夏が悩んでいたり、助けが必要な時には必ず傍にいる。そして、手助けも必要に応じてそっと後押しをするだけだったりなど、塩梅を間違えることがない。夫を立てる良妻といった風なのである。その姿はどっち狙いの女子も、狙うのを諦めさせる破壊力があった。
話は再び入学初日に戻るのだが、この日織斑一夏は緊張していた。華音の箒という知り合いがいたから、なんとか平静を保てたが見世物にされているような気分がしていたのは確かだ。
最初の休み時間に箒と話し、次の休み時間には自分のところにきたイギリス代表候補を名乗る少女の会話の中で華音に助けられた。入学までの短い期間の間に、華音に教わる形で勉強もしてはいたが、各国の代表候補の顔までは覚えていなかった。そこで、華音が一夏にそっと、目の前の女性がEUで行われている重要なプラン、その試作機に関わる人物であることなどを教わり、なんとか事なきを得たのだ。
だが、問題は再び起こった。クラス代表という、クラス委員のようなものを決める場にて、一夏が他薦を受けることになってしまったのだ。ただ、男と言うだけで他薦を受け、多くの支持を受けることが、イギリス少女には癇に障ったのだろう。彼女はその場で立ち上がり、罵倒を始めてしまった。
これには一夏も頭にきて言い返そうとするのだが、いつの間にか傍にきていた華音に袖を掴まれ落ち着くことができた。
『オルコットさんがお怒りなのは重々承知の上で申し上げますね。このクラスの大半は日本国籍の方なので、先ほどの物言いは如何なものと思います』
正論である。さすがにそれを言われてしまえば、イギリス少女、セシリアも頭を下げるしかない。そもそも、IS開発者もIS最強も日本人なのだから、自分の言動が癇癪でしかないことは冷静になれば嫌でも理解できてしまう。
『クラス代表はめんどくさいので、もう、試合でも何でもして白黒つけなさい』
頭が冷えたのは、この言葉を言った時の華音が、どこからか取り出したコインを素手で握りつぶしたからでもある。華音としてはサーカス呼ばわりされたので、サーカスらしく芸を見せただけのつもりだったのだが、織斑姉弟以外の全員の表情が酷いことになった。
尚、後々友人になったセシリアがその真相を知った時は
『あれは芸とは言いませんわ! 私、脅迫されたと思って本気で怖かったんですのよ!』
と、見事な反応を返したらしい。
このように、彼女は前に出る時、後ろからそっと支える時をわきまえて行動している。
さて、この少女だが、一夏の恋人言うだけでなく、面白い話もいくつか存在している。前述のいくつかの話もそうなのだが、自販機の使い方がわからず立ち往生していただとか、キーボードを打つ速度が異常に遅いだとか、機械関係の面白話が多い。
『やればできると思うんだけど、カノンって変なとこでアナログ趣味だからやる気ないんじゃない?』
とは二組のクラス代表の言である。さすがに墨と筆のみではなく、ペン類は使うが、前者の方が好みだったり、アナログな物の方が好みではあるようだ。IS学園購買の墨汁の売り上げの大半は彼女である。
ここまでくると、彼女の生家というものが気になってくるのだが、それについてはかつてとある少女が探りを入れたことがある。
『えっ!? 華音の家、あ、えーと、あー、うん、フツウノイエカナ』
新聞部のK氏が一夏に聞いた時はこのようにはぐらかされてしまった。
『カノンノイエ? ワタシシラナイアルヨー』
二組クラス代表も同様である。K氏が二人目に当たった後、部室に戻った際に何故か部室から親友の生徒会長が出てきて、すぐに部長から月宮の家を探るのを禁止された。
『こればっかりは庇えないから』
すれ違った際に聞いた親友のその一言、その取材を中止するのに躊躇いはなかった。
『うちですか? 両親ともに漫画家で、年中締め切りに追われて修羅場やっていますよ』
尚、のほほんとした少女が興味本位で質問した際の解答がこちらです。
『シメキリ、シメキリハイヤァ』
『コッチガベタデ、コッチノトーンハ……』
たまたま来訪した際にむりやりアシスタントさせられた友人二名がこちらです。
『いや、だって、下手につついて怒りを買ったら怖いじゃない』
一年にビビり散らす最強(笑)さんがこちらです。
『お姉ちゃん、ツキノセ先生の漫画は面白いんだよ?』
ビビり散らす姉に、ガチトーンで怒りを露わにする、しっかりサインをもらった妹がこちらです。
とまぁ、彼女の家庭環境はこんな感じなので、修羅場なこと以外は普通なのである。彼女のことが大分わかって来たと思う。それでは世界最強と兎、この二人に焦点を当ててみようと思う。
世界最強は事あるごとに、彼女に勝負を挑む。聞いた話では、以前彼女に負けたことがあるらしい。織斑千冬信者からすれば、ISに乗ってないから手加減みたいなもの、とのことで、敗北とは認めないらしい。
『のんちゃんのIS戦闘? そんなの無理に決まってるじゃん。ISの方がもたないんだよ。凡人ってほんとバカだよねー。つまり、そもそもIS操縦者じゃ、勝負の土俵にすら立ててないんだよ。ISを動かすだけで壊せるようになってようやくってこと。最近ちーちゃんもその兆候はあるけどまだだねー』
兎さんのコメントがこちらです。さらっと、世界最強が人間やめそうになっているという話が出ているが聞かなかったことにした方がいいだろう。IS製作者直々の言葉に信者達も黙ることしかできなかった。
尚、『のんちゃん』という呼び方は華音の最初の一文字だと、『かーちゃん』になってしまうためこのようにしたらしい。
『アイツに勝つためなら人間くらいいくらでもやめてやるさ。折角今まで見失っていた上が見つかったんだ。今は存分に追いかける側を楽しませてもらおう』
世界最強に火を点けた少女、天災が土俵にすら立てない少女、それが月宮華音である。時折、IS委員会の人たちが頭を下げに来たり、スーツの女性が会いに来たりする。噂では某国大統領が直々にパーティーの招待状を送ったとも聞いた。更に最近、IS委員会主導で地球規模の国家間条約が一つ作られようとしているらしい。その名は……
『織斑一夏及び月宮華音完全不可侵条約』
である。この条約要は、この二人に絶対危害を加えるなよ、というものである。
国家単位で彼女にビビり散らしてる証拠である。ドイツは特にこの条約の成立を強く望んでいるらしいのだが、以前IS学園学年別トーナメントでの某事故後にドイツの一部地域の地図が書き換わったこととは無関係と思いたい。翌日も彼女は普通に授業に出ていたし、当日の夜に散歩に出かけて朝に帰って来たのは偶然だよ。
『あ、私はIS装備開発メーカーの『みつるぎ』の渉外担当をしています、巻紙礼子です。月宮さんに少し相談があって、たまにこうして伺わせてもらっています』
たまに来るスーツの女性はISの装備開発をしているメーカーの人らしい。何か、生徒会長がお茶を吹いていた気がするけど、気にしない様にしよう。尚、この『みつるぎ』というメーカーは新進気鋭の実在する会社である。まるで、実際に何度も実戦で使って実験したかのような資料と、まるで各国の技術を盗み見たかのような一歩進んだ技術が売りのメーカーである。社長のミュゼ・ゴルディ氏が美人であることも有名である。
月宮華音の謎を深める一因となっているのが、この『みつるぎ』である。ISに乗らない彼女が何故、関係をもっているのか。テストパイロット説、開発関係者説、裏のトップ説、など、噂だけは色々あるのだが、その答えは出ていない。
さて、残すところ、彼女の話も残り一つとなった。それは、暴走超特急と言ってもいい、一夏の周りの女性陣との関係である。一言で言えば友人である。
『まぁ、なんだかんだで世話にはなってるな。姉さんのあの姿を見たおかげで、少しだけあの人に優しくしようという気が起きたし』
『一夏さんの隣にいるのは羨ましいですが、それは実力で勝ち取ったもの。それならば、私も実力で奪うまでですわ』
『なんだかんだ言っても、親友なのよね。酢豚より味噌汁の練習しろって昔はうるさかったけど、最近はそんなこともないし』
『お父さんのこととか、色々世話になったからね。いや、まさかデュノア社社長をここまで引きずってくるとは思わなかったなぁ……』
『クラリッサに彼女の話をすると、何故か可哀想な者でも相手にするような話し方になるのはなんでなんだ?』
『ツキノセ先生、応援してるっ!』
『まっ、世の中、持ちつ持たれつってことで、お互いうまくやっていきたいわね。簪ちゃんの件ではお世話になったし、特にご両親に』
以上がその女性陣の評価である。一人両親のファンが混じっていたかもしれないが、見なかったことにしてあげよう。皆に認められつつ、時に恐れられてもいて、感謝もされている。なんとも、不思議な評価である。
『先生のこと、ちゃんと労わってくれて、授業もちゃんと受けてくれて、色々相談にも乗ってくれて……、本当にいい生徒なんですよ』
とは副担任の山田先生の談である。相談に乗ってもらうのは如何なものかとも思うが、相手が月宮華音なら仕方ない……のか? 尚、他の教師陣からも信頼が篤く、また近年増え続けている女尊主義者には恐れられている面もある。
某国の首相が彼女と手紙のやり取りをした直後、主義者の政治家が軒並み不正発覚で辞任する事態がおきたとかなんとか……。これは余談だろう。
身体能力、行動力、人脈、カリスマ、あらゆる面で謎が残るが、これについては本人がこう語っている。
『愛があればなんでもできるんですよ。そう、愛があればね。フフ……』
今日も彼女は少し離れた場所から恋人を見つめている。愛おしそうに、切なそうに、ただ彼に熱のこもった視線を向ける。その瞳には彼しか映っていない。その心には彼しか住んでいない。まるで神に全て捧げる巫女のような、恋焦がれる少女のような。濡羽色の髪を揺らし、彼女は今日も愛しい人を想い続ける。
「一夏ァアッ、お前と言うやつはっ! どうして、そう、いつも、いつも……」
あ、表情が歪んだ。これは怒っていますね。この声は篠ノ之さんかな?
華音の秘密に迫るだけ
IS原作の話の大半はのんちゃんパワーで消し飛んだんで続きとかないです
華音をとにかくチートに、とにかく最強にと考えて、方々を巻き込んでみました