ONE PIECE 盃を交わした三兄弟の母   作:残月

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以前、思い付いて中途半端だった短編を仕上げたので投稿。



プロローグ

 

 

 

 

 

私の名はレイラ。海軍の新兵だったが最近、海軍をクビになった。正確には上司に退職届を書いた書類と拳を叩き込んで海軍支部を出た。

 

 

事の起こりは海賊王ゴールド・ロジャーの公開処刑があった日だった。

私はロジャー海賊団とは交流があった。交流と言っても私はガープ中将の部下として船に乗り、何度もロジャー海賊団相手にやりあったのだ。新人の私がロジャー海賊団とやり合うなんて無謀だったが、相手にも新人がいたらしく私は赤髪や赤鼻と戦う事が多かった。

そんな、ある日……ロジャーが海軍に自首をしたと驚きの報告があった。その頃、私は研修でガープ中将の下から離れていて詳しい話は聞けなかったがロジャーは海軍に自首をして捕まったらしい。

そして海軍は暴走を始めた。いや、正確には世界政府か……裁判等の過程を飛ばしてロジャー船長を処刑すると言い出したのだ。海軍は海賊を許さないのはまだ分かるが無抵抗な相手を殺そうなど言語道断だ。以前にも海軍は『世界に危機を齎すかも知れない』と言う理由から民間人の虐殺や島を爆弾で吹っ飛ばしたりと世間には公開されていない事を色々とやらかしている。『正義の為』その言葉を免罪符に海軍はやりたい放題と言える。

そしてガープ中将の下で働く最中、私は天竜人の横暴を散々見せつけられた。アレを見てしまうと海軍の掲げる正義など薄っぺらい物に見えてしまう。

 

そんな海軍の正義に疑問を持ち始めていた私の心にトドメを刺したのはロジャー船長公開処刑の事だった。

私はローグタウンの広場に設置された処刑場でロジャー船長の最後を看取った。ロジャー船長とは何度も殺されかけた仲ではあるがガープ中将と共に馬鹿話に何度も付き合わされた。

 

ロジャー海賊団の人達の大半は海賊ではあるが悪い人ではない。何度も殺されかけ、逮捕しようと追いかけっこを繰り返した最中で芽生えた妙な友情なのだろう。特に赤髪と赤鼻はロジャー船長に憧れていたし、私もそれは理解していた。カリスマと言うべきなのだろうか、人を惹きつける何かを持っている……敵ながらそんな風に思わせる人。

 

そんなロジャー船長の最後を見て、精神的にへこんだ上に配属先の馬鹿上司達が「海賊王は我々に屈したのだ!正義の勝ちだ!!」「犯罪者の末路なぞ、こんなものよ!」「所詮は海賊。我々の敵ではない」等と自分達は何もしていないくせに大きな態度を取っていた。

これが私の中で残っていた海軍の正義を信じられなくなった瞬間だった。翌日に私は辞表を書いた後、上司に拳を添えて提出させてもらった。

 

それからどうしたか……よく覚えていない。海軍を辞めた私は当てのない旅に出た。ロジャー海賊団の様に気ままに旅をするのも悪くないと思ったからだ。

旅は数ヶ月程した。商船に乗り、用心棒として働きながら様々な島を巡った。その途中で海軍時代に知り合った同僚の人や捕らえた海賊の残党とかとも顔を合わせた。

赤髪のシャンクスや赤鼻のバギーともあって近況を話したりする仲にもなった。どちらからも「海賊にならないか?」「俺の船に来いよ」と誘われたが断った。私はまだ何事も吹っ切れていないのだ。

 

旅の途中で会った知り合いには「随分と雰囲気が変わったな」「目が死んでるぞ」等と言われた。その辺りは私自身自覚がある。海軍で正義を掲げ純粋に生きていた私は世界政府や海軍の在り方に絶望と呆れを感じた。信じていたモノに裏切られた私の心は錆びついてしまったのだろう。以前は楽しかったり、嬉しかった物の大半がつまらなくなってしまったんだから。

 

 

そんな日々を過ごしてニ年が過ぎようとしていた頃……私の前にガープ中将が現れた。それも部下を連れずに一人で私の旅先に現れた。

 

 

「おおっ、探したぞレイラ」

「ガープ中将、私はもう海軍を辞めた身……って、なんで私を捕まえるんですか?」

 

 

ニカッと笑うガープ中将は私を捕まえると即座に脇に抱えると豪快に笑う。

 

 

「お前さんが目的もなく死んだ目で旅をしてると聞いたもんじゃからな!仕事を与えてやろうと思ったんじゃ!やり甲斐があるぞー!ぶわっはっはっはっ!」

「いえ、ガープ中将……人の話を聞いてください。まあ、そろそろ腰を据えて仕事をしようとは思ってたからいいんですけどね」

 

 

ガープ中将は多分、私が旅の途中で会った海軍の友人から話を聞いたのだろう。多分、クザンさん辺りかな。私の胸ばかり見て話しをするもんだから目潰しをして逃げたんだけど恨まれたらしい。

ガープ中将から仕事の紹介って事は海賊か山賊の討伐任務とかだろうと予想をする。海軍を辞した身だから賞金稼ぎにでもなれって事なのか、または溜まりに溜まった書類仕事を手伝えって事なのだろうか。

 

そんな事をぼんやりと考えてる内に私は軍艦に乗せられ、東の海のゴア王国へと連行されていた。ゴア王国に到着するや否やフーシャ村やコルボ山と言った王都から外れた農村地帯を歩かされ辿り着いたのは山の中の住処だった。そこには山賊らしき人達が数名いて私はその前に立たされる。

そしてそこで私は赤ん坊を抱っこさせられた。

 

 

「その子の名はエース。ワシの孫じゃ。レイラ、お前さんが母親代わりになって育ててやってくれ!」

「な、何を言ってるんですかガープ中将!?そもそも誰の子ですか!?」

「何言ってやがるんだいガープさん!?厄介ごとを増やさないでくれよ!」

 

 

ガープ中将の発言に驚く私と山賊らしき女性。名はダダンと言うらしい。

 

 

「安心せい!レイラは元海軍でお前さん達よりも強いから手は掛からん!」

「アタシ達にとっちゃ厄ネタじゃねーか、巫山戯んな!」

「寧ろ、海軍辞めてから再就職先が山賊で子育てになってる私の身にもなってください!」

 

 

ガープ中将が笑い飛ばすが、ダダンさんと私は揃ってツッコミを入れる。するとガープ中将は真面目な顔付きになり、口角を上げて笑った。

 

 

「今はまだ、この子の素姓は明かせなんだがワシの孫みたいなもんなんじゃ……託された思いと命を繋いではくれんか?」

「ガープ中将……」

「ガープさん……」

 

 

ガープ中将の態度に私もダダンさんも言葉を失う。ガープ中将は基本的に破天荒でやることなす事が豪快かつ子供みたいな人。その人がこんなに真面目になるなんて私は初めて見た。私は赤ん坊を抱きしめる力が自然と強くなっていた。

 

 

「ガープ中将……私はもう海軍を辞めた身です。貴方の命令に従う義務はもうありませんが……この子の母親の代わりを受け入れたいと思います。でも、いつかはこの子の素性も教えてくださいね」

「ったく……アタシ等を見逃してもらってる恩もあるから引き受けてやるよ。ちくしょうが……」

「そうかそうか、引き受けてくれるか……」

 

 

私とダダンさんの考えは同じだったみたいで珍しく真面目なガープ中将の心に私達も心打たれた。笑顔で返答するとガープ中将もニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「じゃ、後は任せた!それとレイラ……ワシはエースと遊ぶから、この決算書類を処理してくれ!」

「孫の前でいきなり不正を働くな、馬鹿ジジイ!」

「「「いきなりデンジャラス!?」」」

 

 

ガープ中将が何処からか未処理の書類を取り出したのでエースを抱っこしたまま蹴りを叩き込んだ。ダダン一家の皆さんは私のツッコミに驚いて足並みの揃ったリアクションを披露している。

 

 

「そういえばそうでしたね、ガープ中将……貴方は書類仕事をギリギリまでサボったり逃げたりして期限ギリギリになってから私の所に持ってくる人でした。中将クラスの人にしか見てはいけない書類を新人が処理しなくてはいけない、あの苦労を思い出しましたよ。あの頃、何回呼び出しを食らった事か……」

「ま、待てレイラ……ワシも好きで仕事をサボった訳じゃないぞ……そのアレじゃ……ごめんなさい……」

「ガープさんが怯えてんぞ……」

「おお、母親としてのプレッシャーを発してるじゃニーか」

「既に祖父と母親の力関係が確立してやがる……」

 

 

辞表を提出した時の上司もクソだったけど、この人も大概クソなのを思い出した私はあの頃の恨みも含めて本気で蹴りを叩き込んでガープ中将は最後は謝ってきた。ダダンさんや部下の人も私に怯えている様だ。

 

 

「はぁ……確かに貴方に任せていたら、この子がマトモに育ちそうにありませんね。と言う訳で私も此処にご厄介になりますのでヨロシクお願いしますね」

「しれっと住むつもりなのかよ!」

 

 

私の発言にダダンさんがツッコミを入れ、私は笑ってしまう。ガープ中将に無理矢理連れてこられたけど、この子を育てる事が今の私の生きる意味になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

◆◇10年後◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「母さん!ルフィがガープのジジィに!」

「かぁちゃーん!」

「孫を風船に括り付けて空の彼方に飛ばそうとするなアホ中将!」

「孫を強い男に育てようとして何が悪い!」

「ああ、もう……ジジィも母さんもエースも暴れんなら家から離れた所でやってくれよ……」

 

 

エースの叫びとルフィの悲鳴に家から外に出るとガープ中将がルフィの体に大量の風船を括り付けて空の彼方に飛ばそうとしているのを見て、私はガープ中将を殴り飛ばそうとするが、ガープ中将は私の拳を受け止めると即座に戦闘体制に入る。それを見てエースが私に加勢してサボはルフィに括り付けられていた風船を外していた。

 

毎日、エース、サボ、ルフィの面倒を見て、たまに来るガープ中将を殴って、ダダンさんと愚痴を言い合って、近隣の山賊や海賊を潰す。それが今の私の日常だった。

 

まさか、この数年後にエース達が海賊としてデビューした事でガープ中将と大揉めする事になるんだけど今の私はそんな事も知らずに幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『レイラ』

海軍の新兵だったが世界政府や海軍の考え方に賛同できず、海軍を辞めた海兵。新兵の頃はガープの部隊に配属されるなど将来が有望視されていた。

海軍を辞めた後はニ年程放浪の様な旅をしていたがガープに捕まり、エースの母親代わりをする事になる。

当初は嫌々だったが徐々に母親らしくなっていき、最終的には立派なシングルマザーとなった。

エース、サボ、ルフィからは慕われており、それぞれから「母さん」「母ちゃん」と呼ばれている。

エース、サボ、ルフィの特訓相手を務める事が多く、三対一でも軽くあしらったりする事が出来る。厳しく訓練をする反面、ガープの無茶苦茶な訓練は率先してツッコミを入れに行くなど良識的な面も持ち合わせる。またガープとはエースを通じて義理の親子関係となった為、容赦無いツッコミを入れる事もある。

またシャンクス、バギーとは同年代で彼等がロジャー海賊団の見習いだった頃から腐れ縁が生まれており、レイラが海兵を辞めた際には二人から「海賊にならないか?」と誘われていた。

 

新兵の頃はショートカットの茶髪だったが現在はロングヘアーになっており、癖っ毛の為にウェーブがかかっている。

目に力がなく、無気力に見える上に目の下のクマが目立つ。

普段は物静かだがツッコミを入れる時は苛烈。

スタイルも良く、美人と言える容姿だが何処か残念な雰囲気が出ており所謂、残念美人。

 

新聞を読むのが好きでニュースクーを餌付けして新聞を運ばせている。

山賊であるダダン一家に身を寄せているが実力的に一番強い為、行き過ぎた山賊行為は止めている。ダダン一家との仲は良好でダダンとは遠慮なくなんでも言い合える仲となっている。

 

悪魔の実は食べておらず、武器術や徒手空拳に優れている。

普段着はワイシャツにスラックスかロングのタイトスカートを履いている。これは海軍だった頃の服装の名残で他の服をあまり着た事が無かった為である。

 

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