ONE PIECE 盃を交わした三兄弟の母   作:残月

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エースの5歳から10歳の頃の話です


俺の母さん

 

 

 

 

 

◆◇sideエース◆◇

 

 

 

俺の母さんは変な人だ。そもそも俺には母さんが二人いる。

俺を産んでくれたオフクロと育ててくれた母さんだ。育ての母さんは元海軍でガープのジジイに頼まれて俺の子育てをさせられているとダダンが言っていた。

母さんは元々優秀な海軍だったが気に食わない事があって海軍を辞めたとダダンやジジイから聞かされていた。他の山賊達も「余程な事があったんだろう」なんて言ってたけど……

 

 

「はーい、ありがとね。またヨロシク」

「クワァー!」

 

 

ニュースクーを餌付けして新聞を運ばせ、のほほんと新聞を読む母さんからは、そんな『余程の事』を感じる事が出来なかった。そもそも本当に元海兵なのかも怪しいとさえ思っている。だが実力は折り紙付きで以前、不意打ちで攻撃を仕掛けたら、まるで何も無かったかの様に俺の攻撃は流された。何が起きたのかも理解出来なかったが母さんは俺の攻撃を察知して、僅かな動きで避けたらしい。その動きは誰にも見えなかったので、俺がポカンとして立ち尽くしていた時に母さんが教えてくれた。

目の下にクマを作り、気怠げな雰囲気のまま新聞を読み始めた母さん。のんびりと過ごす母さんは俺と似ていない。

 

そもそも俺が母さんと血の繋がりが無い事を知ったのは五歳かそこらくらいの時だった。時折、俺と母さんの様子を見に来るガープのジジイの一言だった。

 

 

◆◇

 

 

『お前さんとレイラは血は繋がってないぞ。お前の父の名は海賊王ゴールド・ロジャーじゃ。母の名はポートガス・D・ルージュじゃぞ』

『えっ……』

『ガープ中将……エースの両親の事はエースが10歳になってから話すと以前決めた筈では?』

 

 

ガープのジジイがダダンのアジトに顔を出して飯を食ってる時の会話だった。山賊の新入りだった誰かが『レイラとエースは親子なのに似てねーな』の一言にジジイがポロッと溢したのだ。

 

 

『あ、そうじゃった。うん、今の無……ぐぼはっ!?』

『うっかりで子供の人生を左右させかねない情報をカミングアウトしないで頂けますか?』

 

 

ジジイは母さんの一撃でダダンのアジトから外へと殴り飛ばされていた。

 

 

『エースを強い海兵にしたいと言うなら模範となる存在になってくださいね。それなのに出自によるトラウマを生み出すとか何を考えているんですか?』

『ま、待てレイラ……ワシはぬわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 

母さんがそのままアジトから出て行きジジイと言い争う声が聞こえたと思ったら数分で静かになって満足そうな母さんとボロボロになったジジイが戻ってきた。

 

 

◆◇

 

 

 

そんな事もあって俺は母さんが分からなくなった。俺の父親やオフクロの話を聞こうと思ったが母さんは『エースが10歳になったらね』と断られた。俺は答えがもっと早く知りたくてダダン達や不確かな物の終着駅のゴロツキ共にゴールド・ロジャーの話を聞いた。そこで聞かされた話に俺は絶望した。俺は望まれずに生まれたんだと。

 

その頃から俺は母さんとマトモに話せなくなった。母さんは変わらずに話しかけたり俺の世話を焼こうとするけど俺は拒み続けた。

あれなら数年経ち、俺が10歳になったが俺は母さんにロジャーの話は聞いていない。もうロジャーの話は聞きたくなかったからだ。母さんから、この話はしなかった。多分、俺が聞きに来るのを待っているのだろう。

スラム街で知り合ったサボとコンビを組む様になってから母さんの不意を突こうと仕掛けたが母さんはいつも通りだった。布団を干そうとしていた母さんを背後から奇襲したが母さんは俺とサボの攻撃を避け、手にした布団たたきでカウンターを決められた。

 

 

「エース、やんちゃも良いけど怪我はしない様にね。それと意味もなく他人に喧嘩を売らない事。サボはエースが無茶しない様に見ててね」

「あ、はい……」

「母さんに乗せられんなサボ!」

 

 

母さんは特訓以外じゃ俺達がどれだけ襲っても最低限の反撃しかしない。俺達が母さんに致命傷を与えられない雑魚ってのもあるんだろうけど甘く見られてるみたいでイライラする。

 

そんな日々が続いたある日、ジジイが俺よりも小さな子供を連れてきた。ルフィと言う名でジジイの孫らしい。悪魔の実を食ったゴム人間だと言う事とルフィを鍛えて欲しいと頼むとジジイはサッサッと居なくなってしまった。多分、母さんに殴られるのを避ける為だと言う俺の予想は正しいだろう。

 

このクソガキは妙なガキで俺と友達になりたいとほざいたり、俺の後を追い回したりしていた。俺の後を追って谷に落ちたり、崖から実を滑らしたりしては泣きながら母さんやダダンの部下の治療を受けたりしていた。

だが、俺がこのクソガキが一番気に食わない理由は……

 

 

「なぁ、母ちゃん俺腹減ったぞー」

「じゃあ、ご飯にしようか。私も海賊を仕留めてきたから懐に余裕があるし」

「その『ちょっと鳥を仕留めたから』くらいの感覚で海賊を狩るんじゃニーよ」

「あの子に目を付けられた海賊の方が不憫だね。その懸賞金がアタシ等の生活費になってるから助かってるけどさ」

 

 

クソガキは母さんを気軽に『母ちゃん』と呼ぶし母さんも受け入れている。ダダンの部下もダダンも母さんに逆らえないからクソガキの事は悪い対応はしてないみたいだし。だがイライラする……あのクソガキが母さんの名を読んで母さんが笑っている、その姿に。

 

 

そんな日々が続いた、ある日。俺とサボは海賊ブルージャムの部下のポルシェーミから金を奪った。大金を得た事に喜んでいた俺とサボだが、クソガキがポルシェーミに目を付けられ連れて行かれた。クソガキは泣き虫だからポルシェーミに俺達の財宝の在処を全て話してしまうだろうと考えた俺とサボは急いで隠した財宝を別の場所に移動させる事を決めた。

だが、ポルシェーミやその部下はいつまで経っても俺達を探しに来なかった。財宝を粗方移動させ終えた俺の所に慌てた様子で来て、クソガキがまだ俺達の隠した財宝の在処を話していないのだと言う。

 

俺とサボはクソガキを助けに行った。クソガキは吊るされた状態でポルシェーミから拷問を受けていた。意外な事にクソガキは口を未だに割らずに俺達の事を話さなかったのだ。

 

俺とサボはクソガキ……ルフィを助けた。その後、俺達は兄弟になった。ルフィは俺が必要だと言い、俺は心底嬉しかった。ロジャーに纏わる悪口を聞き続けた俺には誰かに頼られるのさ初めてだったかも知れない。

 

俺達は母さんの酒を盗み盃を交わした。血は繋がってないけど兄弟になる為に。

盃を交わした後の事だったが、木陰に隠れながら母さんが俺達の事を見ていた。

 

 

「良かったね……エース」

 

 

嬉しそうに、それでいながら寂しそうに微笑んだ母さんの顔が印象的だった。

ルフィの事ばかり気に掛けてばかりで母さんの事をすっかり忘れてた。でも今更、母さんになんて言えばいいんだろう……謝り方もわからねぇ……

 

 

「エースも思春期って奴かねぇ」

「お頭、やっぱ聞かせた方がいいんじゃニーか?」

「そうですよ。エースはレイラの事を誤解してばかりじょないですか!」

 

 

母さんの事に悩んでいるとダダンのアジトでダダンが部下と何か話し合っているのが聞こえた。俺の知らない母さんの秘密があるってのか?

 

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