ONE PIECE 盃を交わした三兄弟の母   作:残月

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もう一人の息子

 

 

 

ガープ中将からもう一人の子供の面倒を見ろと言われた時は眩暈がした。私は今、ただでさえ反抗期のエースに胃を痛めているのに。

しかもこの子はガープ中将の孫で、あの革命家ドラゴンの息子なのだと言う。その事を煎餅を齧りながらカミングアウトされた私はガープ中将に右フックを叩き込んでから今後の子育てに頭を悩ませるのだった。

 

 

「しかもシャンクスから帽子をね……」

 

 

私は手元の手配書に目を落とす。そこには『赤髪のシャンクス』と『道化のバギー』の懸賞金が載った手配書がある。二人ともロジャー船長の公開処刑の後にそれぞれ海賊として独立するなんて言ってたけど手配書に載るまでに立派になったんだと実感させられてしまう。懸賞金の差は目を瞑るべきなんだろうね。

 

 

「あの時……二人の誘いに乗っていたらもっと違うのかな……」

 

 

ロジャー船長の公開処刑の後に二人に「俺の船に来い」と口説かれていた。あの時は保留にしてもらったけど二人の誘いに頷いていたらとIFの未来を想像して反れていた思考を戻そうと頭を振る。

話を戻すけどルフィは海賊に憧れてなりたがってはいるもののガープ中将のお孫さんだけあって破天荒な所と素直な所が同居している良い子だ。

でもシャンクスとの出会いで海賊になりたいという気持ちが強くなってしまった為にガープ中将が意識矯正と修行の為にフーシャ村からダダンさんのアジトへと、住む場所を変えたらしい。ついでに一般常識を教えてやってくれとガープ中将に言われたけど順序がバラバラの気がする。

 

 

「ガープ中将に紹介されてから母ちゃんって呼ばれたのはびっくりしちゃったな……」

 

 

飲んでいたお酒のグラスを傾ける。ルフィを連れたガープ中将が「このレイラが暫く、お前の母親じゃ!」と言うとルフィは「母ちゃん?」と素直に受け入れた。

その後の事は筆舌に尽くし難い。ルフィは良い子には違いないけどガープ中将の思惑とは真逆に「海賊になりたい!」と言い、エースはルフィへの当たりが強いか無視するかの二択。エースの相棒のサボはまだマシな態度とは言えるけどエースを思ってかルフィへの対応は良いとは言えない。ダダンさんもエースをガープ中将から押し付けられているからエースやルフィには良い印象を持ってない。せめて私だけでもルフィに優しくしなきゃと思っていたんだけど、それがエースの反抗心に更に火を付けてしまう。

最近のエースは私への態度も相当悪くなってきてる。

 

 

「はぁ……」

 

 

海兵だった頃は飲まなかったお酒も最近では嗜む様になった。ダダンさんの様にタバコは吸わないけどお酒は凄く飲むようになってしまった。

海軍の上司に『酒が飲みたくなるのは気分が良い時か、辛い事から逃げる為だ』なんて言っていたけど気持ちが分かる様になってしまった。

私はエースの母親の代わりをしているけど母親には成りきれてない。主にガープ中将がエースに父親の事をカミングアウトした所為だけど。

 

 

そんな事を思って日々を過ごしていたけどエース、サボ、ルフィが私のお酒を盗んで兄弟の盃を交わしていた。あれだけ歪みあっていた三人が仲良く兄弟になってこれからを過ごせるのなら良い事だとは思う……でも、お母さんには何も言ってくれないんだねエース。

 

 

私はあの子の母親で良いのかな……わからなくなっちゃった。悩んでいるとダダンさんから「アンタは育児で疲れてんだから、ちょっと気晴らしに行ってきな」と、とあるレストランの食事券をくれた。そんな気分にはなれなかったけどダダンさんが気を遣ってくれたのだし、行く事にした。

 

 

「えーっとレストラン……バラティエか」

 

 

私は食事券に記されたレストランの名前を確認してからダダンさんのアジトを後にした。

 

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