ダダンさんから貰ったレストランの割引券はバラティエと呼ばれる最近オープンした海上レストランらしい。
この近隣まで行く予定の商船に便乗させてもらい私は久しぶりに一人だった。
「そういえば……ガープ中将に捕まってエースの事で大変だったから長い時間一人になるのも久しぶりかも」
買い物とかで一人の時間はあったけど長期間一人の時間は本当に久しぶりだ。サボやルフィを交えてからは更に慌ただしかったし。私は風に揺れる自身の髪越しに海をボンヤリと眺めていた。
エースの事やサボやルフィの世話を焼くのを辞めただけでこんなにもやる事が無いなんて悲しくなってくる。
先日見たエースとサボとルフィの兄弟の杯。あの子達は血は繋がってなくても兄弟になる決意をした。それは即ち私の親としての役割が終わってしまったのと同義なのでは?と考えてしまう。
エースは出自の事で悩み荒れていたけどサボやルフィとの交流で今後は改善が期待出来る。反抗期も終わるだろうから今後は自分の事は自分でしていく筈……そうなったらどうしようかな……
元々行く宛の無い旅をしていたんだし、またその旅に戻ろうかな……
そんな事を思っていたら『バラティエに着きましたよ』と船員の人が教えてくれた。私が居た位置から反対側にバラティエがあった事と私自身が思考の海に沈んでいた事から気付かなかったらしい。
「わ、凄いデザイン……」
「ちょ……アンタ、あの船に行くのかい?」
会場レストランバラティエはなんと言うか……魚をモチーフにしたファンシーな船だった。
さあ、行こう……って所で先ほどの船員とは違う船員が私を呼び止めた。
「止めた方がいい。あのレストランは最近オープンしたんだが元海賊が経営してるらしい。それに従業員もガラが悪い連中の集まりだって噂なんだ」
「ご心配ありがとうございます。でも、私は大丈夫ですので」
私の事を心配する船員を他所に私はバラティエへ移動した。並程度の海賊なら問題ないのは本当だし、ヤバそうな相手なら今後要注意店にしなきゃだからね。
「いらっしゃいませイカ野郎!」
「野郎では無いですけど……」
ガタイの良い店員が接客に来たけど少し圧倒されちゃった。ガラが少し悪い様に見てるけどニッコリと笑みを浮かべた店員さんは悪意が感じられなかったので彼なりの接客なのだろうと考えられる。
「失礼しました!では、此方へ」
「あ、どうも……」
席へ案内されメニューを見ながら店内の様子を観察。うーん、お客さんが居ない訳じゃないけど少し席に空きがある。さっきの商船の船員さんが私に噂を教えたように悪い噂が先行してお客さんが入ってないのかな?
なんて思っていたらエースと同じ年頃の子が注文を聞きに来た。
「いらっしゃいませ。何になさいますか、お嬢さん」
「あら、お世辞使うなんておませなのね」
私くらいの年齢なら『お姉さん』だろうに『お嬢さん』なんて……ちょっと嬉しいのが悔しい。最近はずっと『母さん』か「母ちゃん」って呼ばれてばかりだったからなぁ。
「真面目に接客しろチビナス」
「いでっ!?何しやがるクソジジィ!」
少し浮かれているとその子の背後から後頭部に鋭い蹴りが叩き込まれた。うわ、痛そう。
「女に現を抜かして仕事しねぇからだチビナスが!ガキが仕事中に口説こうとすんな!!」
「こんな美人が来たなら口説くしかねぇ!俺の料理を振る舞うんだ!」
「あの、私は気にして……あれ?」
なんか髭を三つ編みに編み込んだ特徴的な人が現れた。この子の事を叱ってるし、この人がオーナーなのかな?あれ、ちょっと待って……その髭に今の蹴り技って……私はソーっと顔を見上げてオーナーの顔を見て……絶句した。
「赫足のゼフ!?」
「んんぅ?……おお、あの時の海兵の嬢ちゃんか」
私は東の海で思いがけない再会を果たしたのだった。