まさかの再会に私は頭が痛くなっていた。
『赫足のゼフ』グランドラインでも猛威を振るった海賊の一人で私も海兵だった頃に何度か戦った事がある。あの頃でも勝てなかった相手だ。まあ、海賊から足を洗ったなら今戦う理由は無いんだけど。それに赫足のゼフも片足が義足になってて戦えないだろうし。
「驚かされたぞ、新兵の嬢ちゃんが海軍を辞めたとはな。あの時はすまなかったな。あの時は互いに敵同士だったんだからな」
「まあ……色々ありまして。気にしないで下さい。私と言うか同僚がちょっと殺されかけただけですから」
「ちょっと、で済ましていい話じゃないだろ!」
お客さんも居ない事もあって私は赫足のゼフ……今は料理長のゼフ……いや、長いからゼフさんで良いか。ゼフさんと同じテーブルで今までの事を話していた。海軍を辞めた時の事や今は諸事情で子育てをしている事を。
そんな話をしていたら先程の小さなコックであるサンジ君がツッコミを入れに来た。
「ジジイ、このお姉さんに何しやがった!」
「海賊と海軍の間柄だったんだ、やる事は殺し合いに決まってんだろ」
「ベテラン海賊と海軍の新兵だったからねー。当時は実力差も歴然だったし」
あの見事な蹴り技に何度叩き伏せられた事か。うーん、あの頃が懐かしい。
「サッサっと料理を作って来いチビナス!」
「うるせぇ、ジジィ!見てろよ!お姉さん、すぐに作って来ますから!」
「落ち着いて。慌てなくていいよー」
喧嘩するゼフさんとサンジ君。うーん、喧嘩するけど仲の良い親子って感じね。
「あの……ゼフさん。ゼフさんはサンジ君の為に片足を……」
「全部がそうって訳じゃねーさ。俺は料理人だ。手を失う訳にはいかんだろ。それにこんな足でもボケ共を蹴り飛ばすには十分さ」
先程私の話をした後にゼフさんから話を少しだけ聞いていた。仕方ない事情もあったんだろうけどゼフさんもシャンクスと同じ様に次の世代の為に犠牲になる事を選んだ。
義足になってからも蹴りの鋭さは健在のご様子でサンジ君や従業員の人達が何人かは蹴られていた。義足でも痛いだろうに。
「それで?嬢ちゃんの方は何を悩んでる?目に光が無くなった経緯はわかったがそれとは別に悩みがあるんじゃないか?」
「そう……ですね……実は……」
私はゼフさんにエース達の話をした。義理の息子達の反抗期や子育てに自信が無くなった事を。勿論エースやルフィが誰の子供だとかは伏せてだけど。エースとルフィは昔世話になった人の子供を預かったと説明してある。
するとゼフさんは呆れた様子で溜め息を吐いた。
「そりゃその小僧共にも問題はあっただろうが、お前さんにも問題はあるな。過去に世話になった奴の子供ってんでソイツと子供を比較したり必要以上に気を使ってんじゃないか?子供ってのは大人が思ってる以上に敏感なんだ。それをその小僧は感じてんじゃないか?」
「それは……」
ゼフさんに指摘されて初めて気付かされたかもしれない。確かに私はガープ中将が余計なカミングアウトとした所為でエースに対して必要以上に親の事を意識していたのかも。エースがロジャー船長の事を気にするからなるべく触れない様にしてたけど逆効果だったのかな……
「あ、ジジィ!何レディを泣かせてやがる!」
「黙れチビナス!大人のやり取りに口出しするんじゃねぇ!」
「私とエースに足りないのはこんな関係性なのかしら……」
思い悩んで涙を浮かべた私を見たサンジ君がゼフさんに噛み付いて蹴り飛ばされてる。そう言えば私はエース達に戦闘訓練はしてたけど喧嘩した事は無かったっけ。ガープ中将とは何度か殴り合ったけど。
私そっちのけで喧嘩するゼフさんとサンジ君に私は微笑ましい光景を見ている気分になっていた。
ああ、この二人は血は繋がってないけど本当の親子の様になっているのだと。
暫く離れ離れだけどエース達はちゃんとご飯食べてるかしら?ちょっと心配になってきたわね。
◇◆sideエース◇◆
母さんと話が出来ないまま数日が経過した。母さんが用事があるから出掛けたとダダンから聞かされ、モヤモヤしたまま時間だけが過ぎていく。早く母さんと話がしたいってのに……
「こりゃあ!待たんかガキ共!」
「「「ギャァァァァァァァァァァッ!?」」」
俺とサボとルフィは山の中でガープのジジィに追いかけ回されていた。
母さんが用事があるから出掛けたとダダンから聞かされた数日後にガープのジジイが来た。定期的に俺達の様子を見に来るジジイは俺達が海賊になる話をしている時に現れ、それに激怒して指導の名の下に追いかけ回されていた。
「そりゃあ!」
「ヒィィィィィっ!?」
ジジイの拳がルフィの頭を掠める。ルフィは悲鳴を上げながら間一髪避けたが背後の大木が叩き折れた。
「とりゃあ!」
「ギャァァァァァァァっ!」
そのジジイの標的が俺に変わった。素早い動きで拳が撃ち抜かれて俺の脇腹を掠って大岩を砕く。バケモンかよ!?
「そりゃそりゃそりゃ!」
「どわわわわわわっ!?」
ジジイに捕まったサボは回転を加えられながら投げ飛ばされていた。
普段なら止めてくれる母さんが居ないからジジイの暴走は止まらない。ジジイは母さんが居ない事で止めに入る人が居ないからかノリノリで俺達に攻撃を重ねてくる。
「まだまだ!ぶわっはっはっはっ!」
「「「ギャァァァァァァァァァァッ!!」」」
ジジイの拳が振り抜かれる度に森の木々が薙ぎ倒されていく。
ジジイの特訓という名の暴走は母さんが止めてくれていたから手加減された物だったのだと今更ながら俺達は思い知らされていた。
母さん、話がしたいのとジジイの暴走を止めて欲しいから早く帰って来てくれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!