高円寺家嫡男は拗らせ系男子という概念   作:sparekey@設定厨

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EP 茶柱佐枝という女

EP04 茶柱佐枝という女

 

教室にはDクラスを担当する茶柱佐枝教員が

自己紹介も兼ねたこの学園の基本的なルールの説明しはじめた。

 

「新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝。

教科は日本史を担当している。

 

この学校は三年間クラス替えが存在しない。

よって三年間、私が担任を勤めることになる。よろしく。」

 

酷く胸元の開いたスーツを着こなし

綺麗にまとめられたポニーテール、すこしキツイ印象を与えそうな目元に固い口調。

相反するような服装のルーズさとの印象のアンバランスさから

彼女の癖の強さを感じる。

 

 

「今から一時間後に入学式が体育館で行われる。

その前にこの高育校の特殊なルールについて資料を配布する。」

 

その資料にかかれてる内容は

以前入学案内に同封していた資料に書かれていることと

ほとんどおんなじやった。

 

追記で書かれてる、Sシステムについてと学生証端末については

後々にでもよく目を通してないとあかん。

 

 

茶柱教員の説明は簡単に言うと

他校にはない本校独自のルール説明やった。

要約すると――

 

・敷地内にある寮での生活を義務付けること。

・敷地外に許可なく出ることを禁止。

・特例を除き、外部との連絡は一切禁じていること。

 

 

そして肝心要のSシステムと学生証端末について。

 

「今配った学生証端末には10万ポイント既に入っている。

 

このポイントは1ポイントにつき1円の価値があり

学園では毎月1日にポイントが自動的に振り込まれる仕組みになっている」

 

 

学生証端末に入っている金額に周囲は騒がしいけど、僕からしたら少なすぎる。

こんなんええとこで飯食べたら一回でなくなってまうやん。

そんなことを考えながら茶柱教員の説明に耳を傾ける。

 

 

「このポイントは敷地内の施設、サービス全てで使うことができ

学生証端末を通したり、提示することで使用可能だ。

まぁ、一度使ってみればわかるとは思う。

 

そしてこの学園の敷地内においてポイントで買えないものはなく何でも購入可能だ。」

 

 

どこもかしこも喜色一面という様子で

気の早いヤツは既に何を買うかの相談なんてはじめてるわ。

まぁ、一般的に学生のお小遣いが月十万円相当は十分多いやろうからなぁ。

来月に貰えるかはわからんけどね。

 

 

騒ぐ生徒を特にたしなめることなく茶柱教員はポイントの説明を続けた。

 

「ポイントの支給額に驚いたか?

この学園では実力で生徒を測る。

入学を果たしたお前たちにはそれだけの価値と可能性があると

学校が判断したと。遠慮することなく使え。

 

このポイントは卒業後にはすべて学校が回収することになっている。

現金化なんて出来ないから、ポイントを貯めても得はない。」

 

クラスの大半はもうロクに聞いてないんちゃう?

それくらい浮かれに浮かれ、みんな端末に夢中だった。

 

まぁ、この高校は倍率が異常に高く設定されていて

合格した先にこんな楽園みたいな生活できるんやから

そら、そうなるやろうなぁ。

……ほんま可哀想に。

 

 

「もし、ポイントを使う必要がないと思ったものは誰かに譲っても構わない。

だが、カツアゲや脅迫のように無理に奪うような真似はするなよ。

 

この学校はいじめ問題にだけは敏感だからな。なにか質問は?」

 

 

僕はすぐさま手を挙げる。

すぐにでも教室から出ていきたそうにしてるけど絶対に逃がさんで。

 

「聞きたいことというか言いたいことは3つ。

 

学園規則で緊急時での外部との連絡とありますが

どの程度でそれを判断すればいいのか。

また、その時に学園側が緊急時ではないと判断したときの罰則等について。」

 

 

茶柱は間を置かずにスムーズに答える。

まるでこの質問に対するマニュアルでもあるかのように。

 

「緊急時における外部との連絡、とあるが詳しく言うと緊急時には学園を経由してそれらの各機関に連絡する、という手順になる。

よってそのパターンでの罰則は発生しない。

 

まぁ、イタズラ目的やあまりにも悪意を持って何度もかけた場合は別だがな。」

 

 

「次に先程先生の言いはった『実力で生徒を測る』その評価結果が『10万ポイント』とのことでしたが

 

その解釈やとあの辺いてるアホみたいな面したボンクラ男子生徒と

僕が同価値や言うてるように聞こえるんですけど

その解釈に間違いはないですか?」

 

僕は最後方窓際で騒ぐ男子生徒を指差しながら言うた。

 

 

山内春樹

僕がこの学園で唯一入学前から決めていた排除対象。

 

父様曰く

――覗きの常習犯で佐倉愛理くんみたいに気の弱い女生徒に何度も言い寄っては断られる度に相手をボロカスに扱き下ろすような粕の中の粕。

この学園に入学したら彼のような人間が愛理くんに近寄らないように気を付けなさい。

 

 

僕は別に愛理が特別気が弱いとは思わんけど

父様の情報収集能力がずば抜けてんのは知ってる。

 

高円寺財閥がここまで飛躍したんも

父様個人のそういった能力の高さがあったからや。

 

 

 

故に、山内春樹。

お前には絶対に消えてもらう。

見極めるなんて悠長なことはせん。

出来るだけ最速最短距離で排除、もしくは無力化させる。

 

 

僕が思考にふけってる傍らで

茶柱教員が初めて言葉を詰まらせとった。

 

「……そういう解釈になるな。」

 

「それって流石におかしないですか?

見た目や成績、内申に課外活動での実績。

もっと分かりやすい目安で言えば稼いできたお金。

 

こう見えて僕は既に学生しながら社会でお金を稼いでます。

一般的な高校一年生と既に社会にも出て大金を稼いだ実績のある僕。

 

それで平等に10万ポイント言うのは

さすがに計算が合わんのとちゃいますか?」

 

 

会社だってそうや。

前職での実績や経験に資格。

それらによっては待遇や立場も変わってくる。

それは給与という面においても当然変わってくる筈や。

 

 

茶柱教員は表情を変えずに

 

「この学校ではありとあらゆることが評価対象とされている。

未だ中学生のお前が稼いだ金額などたかが知れている。

その稼いだ金額がお前の言うその辺の男子高校生の将来性と比較した結果

等価値と判断したまでだ。」

 

 

これは……

僕は中学生の時に年間38万を優に越えてる金額を稼いでる。

中学生は義務教育やから副業扱いになるけど

 

それを教員側は知らん……?

運営側が知らんのはがっつり納税してることからありえへんと考えて

教員側は生徒の個人情報に制限があるんか……。

 

これを知れたのはデカイな。

漏らしてもええ情報とあかん情報見極めなあかんわ。

 

 

「国公立は非公務員型の法人職員やから

給与は大まかにしか分からんけど800万あったらええほうやろ?

 

僕の昨年度の給与とライセンス使用料とか全部合算したら

2億5千万越えてるんやけど。」

 

 

「それは……。」

 

「さっきの評価のうんぬんの話に戻すけど

 

茶柱教員が僕を評価する側やとして

君より稼いでる僕を正しく評価できるとは思えんねんけど。

 

ほんでもってこうやって実際に、実績や評価を比較してみても

ここにおる生徒全員が等しく僕と同等の能力や結果を残せるとは思えないんやけど……。

うーん、いまいち納得できへんなぁ。

 

 

それとも、平等じゃないと困る理由でもあるんやろうか。」

 

 

「……猜疑心が過ぎた考え方だな。」

 

 

 

「例えば

これは入学出来たことへのご褒美ではなく

試験のようなものの一貫だとしたら?

 

それなら平等性を重視する理由も

先ほど茶柱教員が言いよった『入学を果たしたお前たちにはそれだけの価値と可能性があると学校が判断したということだ。』というのも違う解釈ができますわ。

 

だって、入学した生徒にしか試験資格なんて得られへんもんね。」

 

 

「どちらにせよ、お前に与えられたポイントは10万でそれは変わらない。」

 

 

「……まともに答える気がないならええですよ。

納得できる理由を自力で探すだけや。

 

ほな、もう1つ。

さっき言ってた敷地内のもんは何でもポイントで購入できる言うてましたけど

僕、そこの席がいいんやけどなんポイントなん?」

 

僕が指を指したのは山内春樹のいる最後方窓際の席。

ここが全体が見渡せる唯一の座席。

 

そう思って茶柱教員を見ると猛獣のような笑顔を見せて笑っていた。

獲物を見つけたような、捕食者の表情。

 

「ほう、よく気がついたな。

もちろんそういったことにもポイントは使える。

 

とは言え、毎度同じような注文をされて手間をかけられるのも面倒だ。

5万ポイントで手を打とう。」

 

 

高すぎやろうが。

こいつさっきの仕返しか?

 

そない高いなら買わんわ、とは言えんところが辛いな。

この買い物は後々の大きい伏線にもなるし。

 

「ほな、入金しときます。」

「……参考までにどうしてこの席を買おうと思ったのか話してみろ。」

 

僕は文句たれる前にさっさと入金手続きを済ませる。

 

それにしてもなんや、僕がほんまに買わんと思ってたんかな?

それともこの席を5万で買う理由が検討つかんから教えろいうことか?

 

 

「逆に聞きますけど、話さな売らんつもりでしょうか?」

「例えば、その席なら授業を真面目に聞かなくてもバレにくいからなんて理由なら教師として口を挟みたくはなる。当然のことだろう?」

 

「すくなくともそないな理由ではないですよ。僕に必要やからです。

それで、どうするんですか?

ポイントはもう払ったんや売るんか、売らんのか。はっきりせぇや。」

 

 

眉間に皺を寄せて考え込むフリ【・・】をする茶柱教員。

 

 

学園の規則は公平にする必要がある。

すくなくとも、外から見たときに公平に見えへんと

この実力主義の競い合いの結果が根底から歪むからや。

 

この学園の運営にどれだけの勢力の人間が関わってる思うてんねん。

それが『贔屓してたから結果が正しく出ませんでした~』じゃ大問題や。

 

 

公平性のない結果に誰が実力を見出だせんねんいう話やな。

 

だから教員一同は個人的な裁量権は持ってるやろうけど

それは過度な権力を与えられてるわけではない。

 

結果が教員個人の思想や欲望によって変わらんとするためにもな。

 

 

せやから茶柱は席を売るしかない。

にもかかわらずこうやって考え込んでるフリをするのは

僕の思考や推察してることを他の生徒に見抜かせようとするためや。

 

 

心底アホらしい。

さっきも警告したやろうが

 

それはお前が僕の実力を上回ってるのが大前提やろうが。

 

運営側の人間が見極める能力を持っていて、初めて成り立つのがこの学園の教育システム。

僕みたいな人種にとって餌場にも等しいわ。

 

 

 

 

お前ら全員出し抜いて全部結果で黙らせたる。

 

絶対に佐倉愛理を退学にはさせへんからな。

 

 

 

 

×





Tips
高円寺司はこのままでは佐倉愛理が退学させられてしまうことを知っています。

佐倉愛理がこの学園を退学させられたとしても
決して不幸になるとは限りません。

役者や芸能人の仕事に専念できて
むしろより良い結果に繋がるかもしれません。


ですが高円寺司は絶対にそれを許容できないのです。

どうしても許せないのです。


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