高円寺家嫡男は拗らせ系男子という概念 作:sparekey@設定厨
僕が平田洋介のことを考えてたら
いつの間にか教室の端っこから自己紹介するようになったらしく
背の低い女の子がボソボソと呟くように話してた。
「あの……えっと、いの、い」
一目で見て分かる程にテンパっているイノなんたら少女。
そんな彼女の様子を見て「がんばれー」「ゆっくりでいいよー」なんて心配混じりの声援もあれば
馬鹿にしたような嘲笑混じりに応援をする人間までいた。
と、いうかさっきまで僕の陰口叩いてた粕やんけ。
別に僕は誰がどうなろうと関係ないけど。
逆に言えば、ここで意固地になってまで
この胸くそ悪い空気のなか過ごす必要もない
パァァン
立ち上がって一拍手すれば周囲の人間は僕に注目する。
突然の奇行で先程まで彼女に注目していた視線がすべてなくなったのを確認してから
僕は教室の対角線上にいてる彼女の目をしっかり見て挨拶をする。
「僕は高円寺司や。
高円寺財閥嫡男でゆくゆくは高円寺家を背負う人間や。
趣味は茶道をたしなむ程度に。
スポーツ全般は基本得意やから何でもできるかな。
好きな食べ物は、ハヤシライス。
この前人生で初めて食べて感動してからはそれがいっちゃん好きや。
君の名前はなんて言うん?」
「えっ……?」
驚いて固まっている彼女に
なるべく優しい音で声をかける。
「えっと、イノ……かしら?がしら?どっちで読むんかな?」
「あっ、えっと井の頭です。井の頭心でしゅ」
緊張はまだ解けてないみたいやけど
彼女の視線はしっかり僕の目を見てる。
そこから普通に話すように、会話を楽しむように進めていく。
「僕は茶道とか好きやけど、こころちゃんは何が好きなん?」
「あっ、えっと編み物が得意です。」
相づちうって、解りやすいリアクションで
すこしでもこの子の緊張が溶けるように
周囲の目線が気にならんくらい僕に集中させる。
「そっか、そっか。編み物は僕やったことないわ。
逆に心ちゃんは茶道ってやったことある?」
「すみません、あのしゃかしゃかするお茶のヤツですよね……?
テレビでしか見たことないです。」
「しゃ、しゃかしゃかかぁ。
なかなかおもろい表現するやん。
謝ることなんてないんよ?
だって僕も編み物言われても全然わからんもん。
けど、それなら機会があれば僕に一杯立てさせてや。
ここで手にはいるかわからんけど僕の好物の和菓子とお茶は格別やから。」
打算的なきっかけの会話やったけど
この子のリアクション、愛理みたいで面白いわ。
思わず本心から微笑んでまう。
「ぜ、ぜひお願いします‼」
「そんときに心ちゃんの編み物のことも教えてな?」
めっちゃえぇ返事しながら片手を天高く伸ばす心ちゃんが面白すぎて
予想外に癒されてもうたわ。
「はい‼」
「お互い知らんこと教え合えるんはこういう機会の醍醐味やね。
茶聖の御人も言うてたもん。一瞬一瞬の出会いを大事にってな。
ほな、みんなも心ちゃんのええとこたくさん知れたやろうし
次の人に譲ろうか?」
そう言って終わろうとすると、キョロキョロ辺りを確認して
やっと自分が自己紹介してたことを思い出したみたいや。
「え?……あ、あぁ‼ありがとうございます‼」
「ほな、次は心ちゃんの後ろの子頼むわ。」
そう言って座る。
なんやあの子すっごい天然さんやなぁ。
あんな子が身内におったら人生楽しそうやわ。
社交辞令やのうてほんまにお茶にでも誘ってみよかな。
愛理とも相性良さそうやし。
× × ×
そんなこんなで自己紹介も問題なく終わって
入学式も筒がなく終わって無事に寮に帰宅。
寮は生活に必要なもんは一通り用意されとって
消耗品なんかを各自で買いにいかなあかん。
僕はその前にさっき寮のフロントで渡されたマニュアルに
目を通してる途中で致命的なミスをおかしていることに気がついた
「あかん。ここ、寮の癖に自炊必須やんけ。」
先入観なんか、僕の想像力のなさがあかんのか
寮って普通ご飯作ってくれる食堂みたいなもんあるんちゃうんかいな。
「完璧にご飯のこと忘れとったわ。どないしよ。」
時刻は既にお昼を過ぎた頃合い
自炊経験なんて学校で習った家庭科の授業だけや。
唯一の経験も僕は味見係やったし……。
「とりあえず、ご飯屋さん探そ。」
重い体を引きずるようにトボトボと部屋の外へでる。
明日から自炊の練習せなあかんやん。
ただでさえ最初の一ヶ月は忙しいのに。
行動予定の見直しを考えながら一階のフロントまで出ると
後ろから突然声をかけられた。
「やっと見つけた。」
「桔梗ちゃんやん。急にどないしたん?」
汗ばむ額をぬぐいながら桔梗ちゃんは荷物を持って僕に話しかけてくる。
なんや変なところ見られてもうたな。
「ご、ご飯。どうせ忘れてるでしょ。
寮では自炊だってさっきマニュアル見て慌てて買い物行って来たの。」
「えぇ、なんや君あの気持ち悪いヒロインモードみたいなんで話してたやん。
友達付き合いとかで出掛ける思うてたわ。」
何でか桔梗ちゃんは頬をピクピクさせて
苦笑いしながら荷物を僕に渡した。
「なんなんこれ、ご飯作ってくれるん?」
「どうせ司は作れないでしょ。前も酷かったもん。」
まぁ、それは言い返せへん……。
それに話したいこともあったし丁度ええわ。
「ほな部屋行こか。僕も君に教えておきたいことあるし。」
「朝に言ってたやつだよね?私も相談あるし、ご飯は任せて。」
僕は何とかご飯にありつけそうで安心やわ。
桔梗ちゃんのご飯なら安心やしね。
この学校のこと。
一ヶ月後のこと。
学校内の要注意人物。
特別試験のこと。
そして何より僕がここに来た理由。
今日は長くなりそうや。
×
Greeting
この話が面白かった、続きが読みたい、応援している
などありましたら高評価・お気に入り登録よろしくお願いします。
モチベーションに繋がります。
×