高円寺家嫡男は拗らせ系男子という概念   作:sparekey@設定厨

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EP 僕と桔梗

 

「うっまぁ。」

 

そう言ってハヤシライスを頬張る。

僕が産まれて初めて食べたハヤシライスは櫛田家のハヤシライスや。

 

僕は元々ビーフストロガノフが重たくて苦手で

そのパチもんみたいなハヤシライスが出てきたときは

わざわざ家に来て桔梗ちゃんに作ってもろたもん残すのも

気ぃ悪いやろうし、そう思うて渋々食べたのが切っ掛けやった。

 

 

僕は全国のハヤシさんに謝った。

めっちゃ美味しいやんこれ。

 

櫛田家のハヤシライスがたまたま僕に合ったのか

それとも家のビーフストロガノフが合わんのか分からんけど

 

そっから何回か家で作ってもろた。

 

 

「相変わらず美味しそうに食べるよね。」

謙遜か?一瞬そう思うたけどそんな気を今さら使う仲でもないし

本音で言うてんのやろうね。

 

「いやあ、僕桔梗ちゃんの作るご飯でハヤシライスがいっちゃん好きやわ。」

 

「ふーん、、あっそ。」

 

そんな他愛ない話をしながら食べる遅めの昼食。

僕は行儀悪いと思いながらこの学校のことを話した。

 

・この学校は君らが考えているような楽園ではないこと。

・毎年退学者を数名絶対に出しているということ。

・教師ないし運営側は君の中学校でのやらかしを把握していること

・そして、それは恐らく生徒がポイントで購入できるということ。

 

 

 

「なにそれ……せっかく誰もいないここ高育校に来たのに。

なぜか堀北はいるし、学校が生徒の秘密を売る?ふざけんなよくそが。」

 

おぉ、やっぱ桔梗ちゃんはそっちの方が違和感ないわ。

僕の知ってる桔梗ちゃんはいつもそっちの桔梗ちゃんやったし。

 

僕は最後の一口を頬張り、桔梗ちゃんにこれからの方針を話始める。

 

 

「堀北ってあれやろ?僕らの中学で特進クラスやった頭のええ子。

なんやそれでいきなり『はじめまして』なんて言うて来たんかいな。」

 

 

まるで日が沈んだような昏い瞳で桔梗ちゃんは床を見つめる。

 

 

沈黙。そして一言。

 

 

 

「うん。そう。」

 

 

 

僕は別にこの子にそこまで深く関わろうとは思ってない。

桔梗ちゃんがたまたま傷ついて投げやりになったタイミングで

僕がたまたま君の傷口を知った上で気にせぇへん人種やっただけや。

 

だから別に咎める必要はないんやけど……。

 

なんやもったいないやん。

自分のエゴを自覚しながら足掻く人間同類

しょうもない考えで潰れてまうんわ。

 

だから、ついつい口に出してまう。

 

「君が何を考えてるんかよう分からんけど、しょうもないこと考えるんはやめや。」

 

「……。」

 

 

俯く桔梗ちゃんは何を考えてんのかわからへん。

だから両頬を持って無理矢理顔を上げさせる。

 

 

「君の武器はなんや?

君の武器は味方をぎょーさん作れることやろ?

 

アホみたいに勉強しか出来へん女に君が負けるかいな。

君はいつもみたいに胡散臭い顔で笑ってたらええねん。

 

そしたら周りが勝手に着いてくるわ。」

 

 

「司は私の味方でいてくれる?」

「愛理の次くらいには大事にしたるわ。」

 

そう言うと桔梗ちゃんはやっと笑った。

 

「なにそれサイテー、」

ぶうたれながら笑う桔梗は目を赤くさせて洗面所に向かった。

 

トラウマか知らんけど面倒なことにならんとええけどなぁ。

 

 

――なんせ、さっき言うてた堀北鈴音。

 

学力成績はAクラス並み言う話や。

身体能力も決して悪うない。

 

人間関係にはちょっと難があるらしいけど……

何よりあの今期生徒会長の妹や。

 

 

僕が生徒会長狙ってる言うたら堀北はどんな反応するんかな。

これ以上、面倒なことにならんとええけど。

 

 

×  ×  ×

 

 

「とりあえず僕が一ヶ月でやろう思うてることはこんな感じや。」

「えぇ……。これ、本当に出来るの?」

 

今月の大まかな行動予定を桔梗と共有したら

疑心感満載という程の目で見られた。

 

 

「っていうかさ、愛理ちゃんを紹介はしてくれないの?

私、司から紹介されないと……。

こっちから接触するのも変な感じにならない?」

 

「なんや気ぃ使わせて悪いな。

でもなぁ……愛理から言われたんや。

 

僕が愛理の傍おったら僕を通しての人柄しか見えへんから言うてたわ。

 

よう分からんけど愛理がそう決めたんなら仕方ないわ。」

 

 

 

……ふざけんなよ

 

「何か言うたか?」

 

僕がそう返せば、桔梗ちゃんは困ったように笑いながら答える。

 

 

「うーん。私は言ってることすこし分かるかなって……。

ほら、司は茶柱先生と一悶着あったから

ちょっとクラスで浮いてるけど

 

あれがなかったら平田君みたいに

女の子にキャーキャー言われてたと思うよ?

 

そうなったらさ、愛理ちゃんに近寄ってくる女の子って

司目当ての女の子ばっかになりそうな気がするんだよね。」

 

 

「そういうもんかなぁ。」

 

「そーいうもんなの。」

 

 

「女の子って結構シビアだよ。

何て言うかマウント取り合う感じ。

 

仲良く見えてもお互いの中で言葉にしなくても

無意識に上下関係みたいなのが出来上がっちゃってたりするし。

 

司が言ってた実力至上主義の学校の正体の件を知ってたのなら

尚更早めに見極めたい気持ちだけは分かるかな。」

 

 

それはそれで鬱陶しいな。

近寄ってきた所で僕が愛理以外を見ることはないけど

まぁ、愛理が選んだんならそれでええわ。

 

 

「ほな、一ヶ月後にでも機会作ってみるわ。

それよりいまは僕の方を手伝ってくれや。

桔梗の方もついでに手伝ったるから。」

 

 

「もちろん。精々私のために、私を上手く使ってね。」

 

 

僕らの目的は一致してる。

僕は迎えたい結末の過程として

桔梗はそれそのものが存在意義故に

 

 

――――まずはクラスを二分させる。

 

 

 

×

 






Tips
高円寺司と櫛田桔梗の相性値は
今作ぶっちぎりで一番です。

お互いを補完し合いながら相乗効果で圧倒的な結果を残します。
他の追随を許しません。



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