数多の英雄を束ねる者   作:R1zA

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感想見てたらやっぱり勇者王に対する反響が大きくて笑ってしまった……。
それを受けて気がついたら予定のなかったロボの構想と設定まで考えてしまったという事実。
なお実際に出すにはクロスオーバータグが必要になる可能性がある模様。


第五幕/意図

 

 

 

 

「全く、アステリオスったら心配させないでよ!」

「………ぅ」

 

 

 そうエウリュアレが傷付いた身体で浜辺に座り込むアステリオスに言う。心做しかアステリオスが小さく見えるのは気の所為ではあるまい。

 

 ―――アルゴノーツとの会合の後、一同は先程までイアソン達が滞在していたワイバーンの島へと辿り着いていた。

 現在は浜辺に降り立ち、『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』の損傷具合を確かめている。

 

 

「本当、どこの世界にガレオン船を持ち上げて泳ごうとするバカが居るの、このバカ!」

「………ここ、に、いる」

「威張る所じゃないでしょ!?―――もう、あなた、私を肩に乗せる役割があるのを忘れたの?そら、汚れた身体を拭きなさい」

 

 

 そう言ってエウリュアレが布でアステリオスの身体を拭こうとしているのを見ていたイアソンは、二人の元へと歩み寄る。

 

 

「少しいいか?」

「―――あら、私達の後に生まれた勇者様じゃない?いくら私が美しいとはいえ、今は忙しいから後にして下さる?」

「え、何お前自意識過剰なの?―――用があるのはそっちだ」

 

 

 そう言いアステリオスを指差す。

 するとアステリオスは不思議そうにイアソンの側を向いた。その様子を見ていたロマンは不安そうに声を漏らす。

 

 

『こ、これ大丈夫かなぁ……』

「?何故ですか、ドクター。キャプテン・イアソンは先程までの間で信用に足る人物だとわかった筈ですが……。それにアステリオスさんを甲板に運んだのもイアソンさんですし……」

『いや、それは僕も分かっているし、あの勇者王を疑うなんて罰当たりなことをするつもりはないさ。……でも、アルゴノーツの中にはアステリオスと縁の深い英雄が居るからね。確か―――』

怪物(ミノタウロス)殺しで知られているテセウス、ですね……」

 

 

 ―――テセウス。ギリシャ神話において『怪物(ミノタウロス)』殺しにおいて名を馳せたアルゴノーツの一人。

 そんな人物と過ごしていた彼ならば、アステリオスに対しても何か思う所があってもおかしくないのでは―――

 

 

 そんな不必要な緊張感を抱えながらも、立香達はその様子を見守る。

 そしてイアソンがアステリオスに手を伸ばし―――

 

 

 

「―――『雷光(アステリオス)』、か。いい名じゃないか……よくやったな、アステリオス」

「……ぅ?……ん」

 

 

 アステリオスの肩にその手を起き、何処か感慨深い顔を浮かべながら彼を称える。

 アステリオスは困惑気味な表情を浮かべながらも、眼の前の不思議な雰囲気を纏う男からの称えの声を受け取った。

 そしてアステリオスの身体を少し眺めて一言。

 

 

「んー……メディアに治してもらうか、本職のアイツを呼ぶか……いや、このくらいならアイツに治療を任せるまでも無いか―――メディア、頼む」

「―――ええ、分かったわ。さあ坊や、傷を見せなさい」

 

 

 イアソンの呼び声に応じて空間転移で現れたメディア。そして早速魔術で治療に取り掛かる。

 嘗ての船に乗っていた頃からピカイチだった治癒魔術の腕は更に磨かれている。直にアステリオスの傷は完治するだろう。

 

 

『―――いやちょっと待ってくれ!しれっと空間転移なんて魔法級の高度な技術をしないでくれないか!?それにメディアだって!?』

「コルキスの王女メディア、ギリシャ最高峰の魔術師の一角ですね……!」

 

 

 またしても現れた大物に揺れるカルデア一行。

 というかアルゴノーツ一行と出会ってから驚いてしかいない気がするのは気の所為か。

 

 

「煩いぞロマンとやら。……あと俺は味方に害を加えるような奴だと思われてるようだな……?」

『あ、もしかして聞かれてたぁ!?御免なさい許して!』

 

 

 ロマンの慌てる様を見て内心面白がりながら、イアソンは視線を立香とマシュに向ける。

 視線を向けられた二人は緊張してか棒のように背筋を伸ばした。

 

 

「―――改めて此方側の自己紹介といくか。丁度全員居るわけだしな。―――先ず、其処の双子の兄妹がディオスクロイ。兄がカストロ、妹がポルクスだな」

 

 

 そう名前を挙げられた二人。

 それに対し片方は視線を向けられて煩わしそうな顔をし、もう片方はニコリと微笑んだ。

 

 

「ディオスクロイ……!確か、双子座の元となった英雄でしたね」

『―――そんな、彼らは神霊の筈なのに何故喚ばれているんだ……?エウリュアレや彼女(ステンノ)とは勝手が違う筈……』

「黙れ、姿を見せぬ人間。我らは今ここに居る。それ以上でもそれ以下でもあるまい」

「―――まあ、そうですね。私達はイアソンの呼び声に応じただけですし、詳しいことは分かりません」

 

 

 そう二人が言うと、はあ。と溜息を吐きロマンはこれ以上の追求を止めた。諦めた。

 ―――何か聞き捨てならないようなワードが出ていた気がするが、もう聞きたくなかった。これ以上は驚きで喉が枯れる。

 

 

「それと、メディアにアタランテだな。……何か言いたいことはあるか?」

「………別の特異点では迷惑を掛けた。今回は目的を共にする仲間として、汝らにもどうか信用して欲しい」

 

 

 そう言い彼女がぺこりと頭を下げると、二人は慌て気味に返事をする。

 

 

「い、いえ、アタランテさんに非は無いと思います。……というか、記憶が有るのですか!?」

「いや、記憶は無い。そこで私がどういう立場に居て、何を行ったのかを朧気に覚えているだけだ」

 

 そう彼女が答えて会話が途切れた直後、立香がそういえば、と何かを思い出した素振りを見せる。

 

 

「―――メディアさんって、アルトリアとエミヤやクー・フーリンが言ってた人だよね?」

「あ、そうですね、先輩。それに加えて小次郎さんが、『キャスターとバーサーカーは来ないのか』とぼやいていたのを聴いた覚えがあります」

「そんな事を―――てかヘラクレスそっちにも喚ばれてないのかよ……」

 

 

 曰く、二つの特異点とその他諸々を攻略したカルデアには、今の時点でもかなりの数の英霊が揃っているらしいが、召喚されていない人も居るには居るらしい。

 顎に手を当ててイアソンが唸っていると、おずおずとマシュがイアソンに話し掛ける。

 

 

「イ、イアソンさん。―――あちらの熊に先程から話しかけている女性は?」

「アレは只の痛い女だ。気にしなくていい」

「ちょっと!流石に酷いと思うんですけど!?」

 

 

 どうやら彼女にも聴こえていたらしく、イアソンは短く舌打ちする。そして憂鬱そうで面倒な表情を浮かべながら溜め息を吐き、ぶっきらぼうにマシュに言う。

 

 

「―――コレの真名が知りたいなら直接聞け。後悔しても知らんがな」

「は、はあ。分かりました……」

 

 

 そう言ってアルテミスを指差したイアソンに対し、マシュと立香は困惑気味に頷きながらもアルテミスの方を向く。

 

 

「えっと、私はマシュ・キリエライト。先輩――マスターのサーヴァントです」

「私は藤丸立香!宜しく!」

「ほほう、立香ちゃんにマシュちゃんね。………二人共独身?」

 

 

 開口一番にオリオンが二人を口説きに掛かった瞬間、オリオンがアルテミスに掴まれ、その頭を思いっきり握られる。

 

 

「もう、ダーリンったら、何さり気なくナンパしようとしてるのかな?ホントに困っちゃうなー!」

「ああごめんなさいごめんなさい!……確かに胸とか脚とかガン見してたのは認めるけども……ぷぎゅる!?」

「「―――」」

 

 

 そんな夫婦漫才?を見せつけられた二人は呆気に取られた。

 ソレを見ていたイアソンはオリオンに対して呆れたような顔をし、アタランテは二人に同情的な視線を向けた。

 

 

「先輩、私こんなに途方に暮れるのは初めてです。―――あ、いえ。あの黒なんとかと会ったときも途方に暮れました。暮れっぱなしです」

「何か、今回の特異点は全体的にネジが緩んでるんじゃないかなあ……」

 

 

 そう言って二人は項垂れながらも、めげずにオリオン夫婦に話し掛ける。

 

 

「……真名をお伺いしても?」

「え、私?アルテミスだけど?」

「はあ!?」

「嘘でしょ!?」

「フォウ!?(マジで!?)」

『何ぃ!?』

「………」

 

 

 彼女の口から語られた衝撃的なビッグネームに一同は騒然とする。横で話を聴いていたエウリュアレなんかは絶句し、よく分かってないアステリオスが唯一の癒しだった。

 

「で、ではそちらのぬいぐるみさんは……?」

「こっち?私の恋人、オリオンよ。……ダーリンが召喚されるって聞いて不安になったから私が代わってあげることにしたの!」

『あ、ああ。成る程。神霊のランクダウンによる代理英霊召喚か………そういう例も無いわけではないらしいが……』

 

 

 またもや明かされるビッグネーム。ギリシャ最高峰の狩人が一角、『三つ星の狩人(トライスター)』オリオン。

 残念ながら姿はぬいぐるみだが。……ぬいぐるみだが。

 

 

「ドーモ、オリオンです。聖杯戦争に召喚されてたらヘンな生き物になってました。……変な生き物に……。変な……」

「あー……ドンマイ?」

 

 

 自分の状況を再確認してショックのあまり項垂れるオリオンを励ます立香。

 そしてオリオンが補足を入れる。

 

 

「あ、ちなみに俺は限りなく役立たずなので。彼女なりアルゴノーツなりに超依存しなければ生きていけないので」

「ふふ、もっと私に依存してくれていいのよ?」

「自立したいなァ……」

 

 

 そんなオリオンの心の声が垂れ流されていると、船の確認が終わったのかドレイクがやって来る。

 

 

「なんだい、アタシ抜きではしゃいじゃってさ」

「あ、ドレイクさん。船は―――」

「駄目だね。とてもじゃないけど動けやしない。―――修繕作業自体は何とかなるけど、材料も足りないしね……」

「―――有り余ったワイバーンの鱗くらいならあるぞ?」

 

 

 そうイアソンが言うと、突然立香の頭の中で静電気がはじけたような感覚が訪れた。

 

 

「そうだ……!それなら…!」

「先輩、急にどうしたんですか?」

「今思いついたんだけど、ワイバーンの鱗で船を補修(・・・・・・・・・・・・)すればいい(・・・・・)んじゃないかな?」

「―――それです!!」

 

 

 胸に天来の啓示のごとく浮かんできた考え。立香は我ながらの妙案に内心一人で感心していた。

 

 

「はあ?鱗でアタシの船を修理するってこと?」

「……あら、いいわね。竜種の鱗ってのは、鎧にすれば鋼より頑丈よ。……ただ、相当な力を持つものでないと加工は難しいのだけど……」

 

 そうエウリュアレが言っていると、体の傷が跡形も無くなっていたアステリオスがメディアに連れられてやって来た。

 

 

「えうりゅあれ、なお、して、もらった」

「―――あ、あなたがいたわね。やれる?」

「……う」

 

 

 アステリオスが自信ありげに頷いて、ドレイクも異論は無かったことから、ワイバーンの鱗を使って船の補修をすることが決まった。

 

 

「えっと、確か船底の方に鱗は積んであった筈だよな………」

「いつの間に鱗を使って船を直すなんて話になったのよ………

 ―――これだけ有れば大丈夫?」

 

 

 そう言ってメディアが空に向かって魔法陣を敷くと、其処から大きな音を立てて豪雨のように鱗が降ってくる。

 

 

「おぉ……。やっぱあの頃よりも腕が上がってる……。ありがとな、助かる」

「ふふ、どういたしまして」

 

 

 二人がそう言葉を掛け合う中、立香達は山のように積み上げられた鱗を呆けたようにキョトンと口を半開きにして眺めていた。

 

 

「私の予想の何倍もあった……」

「そうですね………。レオナルド技術長、これだけあれば修繕には十分だと思いますか?」

『ううむ、その鱗の数なら加工分の縮小を加味しても十分足りるレベルだろう。問題ないよ』

「―――なら、早速取り掛かるとするか!アステリオス、飯食ったらウチの鍛冶(オヤジ)に会わせてやるよ!」

 

 

 ドレイクの船員の海賊がアステリオスにそう言ったのを皮切りに、船員たちによる修繕作業が始まった。

 その間、アステリオス以外特に手伝うこともない立香達とアルゴノーツ一同は黒髭に対する作戦を考えることに。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「―――船の性能にそれ程違いは無かった。問題はあの装甲の厚さかねぇ」

「はい。こちらの砲弾は全く通用しませんでした。……ドクター、黒髭について詳しく教えて下さい。カルデアのデータの方が正確でしょうから」

『ああ、黒髭はそこにいるフランシス・ドレイクの百年後に生まれる海賊だね』

 

 

 ―――曰く、本名エドワード・ティーチ。カリブ海を支配下においた海賊の一人。

 黒髭の異名を持ち、世界で最も有名な海賊。海賊というイメージを決定付けた大悪党。

 船を襲う際、抵抗しなければ無傷で解放したが、抵抗すれば皆殺し。

 

 そして彼の持つ三百人の手下を乗せた黒髭の愛用の船、その名を『アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)』。

 

 その船を旗船として大船団を作り上げた黒髭は、まさに最強最悪の海賊の一人として君臨したという。

 

 

『―――そんな大海賊が、ねぇ。まさか……ねぇ』

「……その先は言わないでください。あまり思い出したくないサーヴァントなので」

「脳内からアレの姿は消去したわ。はて、何かあったかしら?」

 

 

 しらばっくれたように彼女は言う。

 尤も、黒なんとかの事を思い出したくないというのはこの場にいる全員が共通する考えだったが。

 

 

「……ドクター、宝具として可能性のあるエピソードはありますか?」

『幾つかあるにはあるが……やはり、あの船そのものが宝具という可能性が一番高いと思う。―――戦闘中、魔力の反応を計測していたけど、あの船が一番大きかった』

「大方、あの船に秘密があるんだろ。―――…例えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とか、な」

 

 

 何処か確信したように言うイアソンの発言を聞き、皆の瞳孔が僅かに揺れる。

 彼の推測には、言葉では言い表せないようなどこか強い説得力があったからだ。

 

 

「――…ドクター」

『……ああ、その通りだ。確かに、君たちがエイリークを倒した瞬間、明らかに船が帯びていた魔力が弱まっている。勇者王の仮説は合っている可能性が高い』

「当然でしょう?イアソンは凄いのですから」

「何故お前が誇らしげに言う……」

 

 

 まるで自分のことのように、誇らしげに胸を張るポルクスを見てイアソンの脳裏に疑問符が浮かんだが、周りを軽く見回すと他のアルゴノーツの皆も似たような反応をして頷いているので、そういうものなのだと思うことにした。

 そんな彼らを見て立香がぽつりと言う。

 

 

「いやあ、イアソン様もこうして助言はしてくれる(・・・・・・・・)んだね。ありがとう!」

「まあ、これくらいはするのが筋ってもんだろ。……サボり宣言をしたやつに礼を言う必要は無いと思うがな」

「あはは……」

 

 そう言われて頬をかく立香。ただ、イアソンの言うサボり宣言(・・・・・)とは何か。

 それはこの話し合いの最初にあった出来事―――

 

 

 

 

 


 

 

 

「―――先に言っておくが、次の黒髭戦、俺は何もしない。お前達の力で突破しろ」

『………え?』

「はあ?アンタ何言ってんだい?」

 

 

 最初に口にされたイアソンの一言によってカルデア側の空気が凍りつく。

 訳がわからない、といった風に困惑の表情を浮かべていた。

 

 

「……ッ!何故ですか、勇者王。今は人理の……」

「―――いや、別に世界を救う気はないとかそういう意味じゃなくてだな?これは一応お前らの為なんだが……」

『……理由を聞いても良いかな?』

 

 

 勿論、とイアソンは言うと、カルデア一同の方にその作り物と見紛うような秀麗な顔を向け、口を開く。

 

 

「……分かっていると思うが、向こうは三騎に対して此方は九騎。普通に考えてもまず負けることはない。……そうだろ?」

 

 

 イアソンの問いに立香達は頷く。

 当然の事だ。三と九、三倍の兵力差であり兵の質もこちらが勝っていると来たら逆に負ける方法を考えるほうが難しい。

 しかし、とイアソンは続け、その翠緑の瞳を鋭く光らせてこう言った。

 

 

本当にそれで良いのか(・・・・・・・・・・)?」

「……?どういうことですか?」

「確かにここで全員で突貫すればいとも簡単に黒髭達は倒せるだろう。何なら俺一人でも十分に出来る。ただし―――その戦法が何時までも通じると思うか?………(いな)。」

 

 

 そう言われた二人の瞳孔が無意識に見開かれ、瞳が揺らぐ。

 そしてそのまま彼女らに反論の余地を一切持たせず、イアソンの扇動は続く。

 

 

 

 

 

「成る程、確かにこの特異点では俺達がいる。

 

 

 

 

 

 

 ―――でも、戦力が十分に揃わない状況だったら?

 

 

 

 

 

 ―――相手の戦力がこちらを上回っていたら?

 

 

 

 

 たらればの話だと思うなよ?……まあどんな状況だろうと勝ち筋は当然ある。但し、それを掴み取るには、そんな状況に対応出来る経験と直感が必要不可欠だがな……」

 

 

 そこまで言い切ったイアソンは、もう分かるだろ?と言わんばかりの表情で立香を見つめる。

 そしてその話を聞き、一つの考えに至った立香はおずおずと口を開く。

 

 

「……つまり、イアソンは私達にその『経験』を積ませようとしているってこと?」

「まあ概ねその通りだな」

『……待ってくれ!それだと立香ちゃん達への負担が増えるし万が一のことがある。それは医師としても現カルデアのトップとしても容認できない!』

 

 

 そう言ってロマンはイアソンに対して反対を唱える。

 一理ある。元からカルデアAチームに所属しており、とある英霊をその身に宿したマシュは兎も角、立香に関しては元々魔術のまの字も知らなかったような一般人なのだ。

 

 

 そんな彼女に対して必要以上の負担を強いるのが堪えるのは根が善人であるからか。

 モニターに映るロマンの様子を見て、立香はロマンを手で制し、ふんという顔つきで話し出す。

 

 

「いや……大丈夫。私やるよ!イアソンが私達にそう言うってことは出来るって事だよね?―――ならやってみせるよ!バレー部の底力見せてやるんだから!」

「えっと、バレー部はよくわかりませんが……。先輩が言うのならこのマシュ・キリエライト、全力で貴方をお守りします!」

 

 

 そう言って二人は心を奮い立たせ、元気そうに意気込む。それを見たロマンは溜息を吐き、諦めたように口を開く。

 

 

『―――やれやれ。これはもうボクが何を言っても意味がなさそうだね……』

「安心しろ。万が一、いや億が一、あいつらには傷一つつけさせない程度にはフォローしてやるから」

『………貴方がそういうのなら大丈夫だろう。お願いします、勇者王』

 

 

 そう言われたイアソンはそうか、と一言返し、今尚楽しそうにじゃれ合う立香達の所から離れて、少し離れたところに居たディオスクロイの元へと移動する。

 

 

「―――どう見る」

「?イアソン、突然どうしました?」

「あいつらの事だよ。あの二人」

 

 

 そう言って立香達の方に視線を向ける。そしてそれを聞いて二人は特に悩む素振りも見せずにこう言った。

 

 

「決まっているだろう。お前と同じで、神の血も引かぬただの人間だ」

「その通りです、兄様。彼女らは今を生きる人間。私が、我等が守護し、導くべき者たち」

「だよなぁ……」

 

 

 そう言って、楽しそうな表情を浮かべる立香達を見つめる。

 

 

 彼女は本来この場にいるような人間ではない筈なのだ。

 ただの一般枠であり一般人でありながらも精神は逸般人。それが彼女であり藤丸立香。

 

 己の弱さを言い訳にせず前に出る決断力、そして自分が一番苦しい状況であっても他者の恩義や想いなどに応えようとする強い気持ちを以って再び立ち向かう。

 

 そして自分に出来る事を出来る範囲で努力し、出来ない事は出来る範囲に収めようと最善を尽くし、人の敬遠する役割も進んで請け負い、何度酷い目に遭っても立ち上がり続けながら、どれほど過酷で絶望的な状況を前にしても諦めずに足掻き続ける。

 

 

 それが後に顕となる彼女の在り方であり、到底普通の人物に行えるとは思わない。

 

 

 まるで、初めからこの立場(カルデアのマスター)に立つことを想定されていたかのような―――

 

 

「そうだな、まるで―――」

 

 

 

 ――――――英雄みたいだ。

 

 

 

 そう頭の中でだけ口にして、イアソンはディオスクロイを引き連れて彼女らの元へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 





 何気にぐだーずってかなりイカれてると思う。あそこまで善属性で居続けた後、第二部を挫折しながらも乗り越えられるんだから。
 個人的作者がなりたくない人物トップでもある。


 藤丸立香:ご存知GOの主人公。本作では漫画版のバレー部に所属している物を多少参考に。かなりの逸般的メンタルだが、其処まで人間辞めてはない。


 イアソン:しっかりやってヌルゲー化させても良かったが、自分が爆死で喚ばれない可能性を考慮して、黒髭程度は倒して貰うことに。なおもう少ししたらそんな事は言ってられなくなる模様。

次は……

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