数多の英雄を束ねる者   作:R1zA

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第六幕/アン女王への復讐

 

 

 

 黒髭に対する作戦会議を終えた翌日。

 一同は一日掛けて修復された『黄金の鹿号(ゴールデンハインド)』を眺めていた。

 

 

「―――よし、加工及び補修完了!船底の穴も完全に埋めて、水漏れもなし!……ついでに、余った鱗を衝角(ラム)に装備させたよ。面白いことになりそうだ!」

「たった一日でよく直りましたね……」

「なに、それもこれもアステリオスのお陰さ。……さあ、今回も頼むよアステリオス!怪力無双、勇猛果敢なアンタの出番さ!」

「う、うぅぅぅぅ―――ッッ!!」

 

 

 アステリオスが雄叫びを上げながら、『黄金の鹿号(ゴールデンハインド)』を海へと押し出す。

 ガレオン船を一人の力で押し出すなんて出鱈目も、極めて高いランクの「天性の魔」を有し、人の身では絶対に到達することが不可能なランクの筋力と耐久力に到達したアステリオスには造作もない。

 

 

「おぉおおお……!すっっげぇぇえええええ!!―――くそう、悔しいけど格好いいぜアステリオス……!憧れるわ……男として……」

「う……う…」

 

 

 ドレイクの船員達が尊敬の念を抱いた視線をアステリオスに向け、それに対してアステリオスは照れくさそうに頰をかいた。

 

 

「ようし野郎ども!あの黒髭野郎に復讐だ!心配するな。今回アタシたちにはアタシたち海賊の祖先とも言える奴等がついている!―――行くぞ!ついてきな!」

 

 

 ドレイクの掛け声に船員が歓声をあげる。士気は今までの中でも最高と言っていい。

 

 

「ねーねー、ダーリン。あれやろうよ、あれ。―――船の帆先で、両腕を伸ばすアレ」

「うん、勝手にどうぞ。いま丁度船長が後ろで縄持って待機してるからカモメに気をつけてやってね」

「抱きしめてくれないの!?ひどい!」

「ぬいぐるみに無茶言うなや!」

「―――おい、俺達も出航するから来い。さもないと船首に縄で括り付けて女神像の代わりにする」

 

 

 イアソンの鶴の一声により、その様子を想像したのか震えたアルテミスが素早い動きでアタランテの後ろに隠れる。

 心做しかアタランテの耳が平らに倒れている様に見えたが。

 

 

「―――助けてアタランテ!貴方の恋人(・・)が怖いの!」

「なっ―――ッッッ!?」

『―――は?』

 

 

 あの女神は今イアソンを指さして何と言った?

 恋人?恋人?コイビト?

 その言葉が彼女らの脳内で幾度となく反響し、羨望と嫉妬に満ちた感情に駆られていく。

 そして突如言い様のない悪寒を感じたカストロは隣の妹から数歩距離をとった。

 

 

「―――アルテミス姉様?少し宜しいですか?」 

「姉様……!――なあに?ポルクスちゃん!」

 

 

 姉様と言う響きが気に入ったのか心做しか目を輝かせながらポルクスの呼びかけに応じるアルテミス。

 但し顔は笑顔でも目が一切笑っていなかったのだが、駄女神がそれに気づくことはなかった。

 そうしてその中にメディアも入って女性陣だけでひそひそ話を始める。

 

 

「………なあオリオン」

「……何だ船長」

「あいつら何話してると思う?」

「自分の胸に手を当てて考えてみたら分かるんじゃないですかねぇ」

 

 

 そんな事をイアソンの肩に避難していたオリオンと話していると、会話を終えたのかアルテミスがこちらを向いて、何処か「私は分かってるわ」と言いたげな笑みを浮かべてイアソンに対してサムズアップした。

 

 

「―――何に対するGOサインなんだ……アレ」

「さあ……俺達には分からん類のモンだろ」

 

 

 そしてその一連の流れを見ていた海賊の一人が、困惑気味に口を開く。

 

 

「あの、姉御。何ですかアレ」

「気にしなくていいよ。ただの修羅場さ。……アッチの生き物も無害だから放置しておきな、アタシはフォウの方が可愛いと思うけど」

「フォウ!(あんな奴と一緒にすんな!)」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ウッヒッヒッヒッヒ……ヒョッホッホッホッホ…………」

 

 

 視点は移ろい黒髭陣営。

 その船長である黒髭は――――――寝ていた。それはもう何とも言えない寝言のようなナニカを発しながらぐっすりと。

 

 

「―――はっ!?……おぉ、夢から覚めてしまえばハーレムは遥か彼方。だけど近くには内容はともかくハーレムを実現させた奴がいる気配。チクショウ、羨ましい。

 ―――そしてここにいるのは先生と二人だけの空間を作り出している百合ップルだけである。……まぁ?拙者百合もいけるでござるがぁ……一人はさみしいなぁ」

 

 

 チラッ。効果音をつけるならそんな所だろうか。

 つぶらな様でそうじゃない瞳をアンとメアリーに向けながらそこそこ大きい声で独り言を発する。

 

 

「―――すごい、アン。この船長、同衾を求めてるよ」

「好感度がゼロどころかマイナスに達しているのに大した発想だと思いますわ。―――というかその夢に、私達出てきていませんよね?出てたら、夢を忘れるまで銃床で殴り続けますが」

 

 

 そう二人に言われると黒髭はうーん、と唸りながら先程まで見ていた夢の内容を思い返す。

 そして何ともないように一言。

 

 

「んー……出てきたヒロインが多すぎて覚えてないですなぁ」

「―――凄い、アン。この船長、僕たちを有象無象のモブヒロインにしたよ」

「うん♪やっぱり殺しましょう♪」

「あ、怒る所そこでござるのね」

 

 

 最早アウトオブ眼中という、(悪い意味で)百点満点の回答をした黒髭に対してマスケット銃の銃口を向けるアンだったが、周囲の警戒に当たっていたヘクトールの一声によって状況は変わる。

 

 

「……おい船長さん、敵がおいでなすったようですよ。例のフランシス・ドレイクとアルゴノーツが」

「―――マジ!?エウリュアレちゃん、来たの!?聖杯も!?………でも何か難易度ハードモードになってない?」

「ハハッ、その通り。それにしても一日でやってくるとは、かなり早いリベンジだ」

「―――ヒャッホー!出迎え準備ですぞ、皆のもの!」

 

 

 そう黒髭が号令をかけると、部下の海賊達は一斉に動き出し、アンとメアリーは肩をすくめながら口を開く。

 

 

「やれやれ、しょうがない。お仕事するか」

「はあ……しょうがないわねえ。………それにしても、『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』が先行して来るなんてね。てっきりアルゴー号が先行してきたと思ってたわ」

 

 

 そうアンが言うと、ヘクトールは何処か得心のいかないような顔をしてアルゴー号の方を見つめた。

 

 

「―――確かにその通りだ。一番注目すべきのは、アルゴー船の動向。あちらの船長は攻めも守りも、そして頭脳も超一流。………守るだけのオジサンや基本的に攻めるだけのあいつ(アキレウス)とは比べ物にならないからねぇ。今回も何かしら考えてもきた筈さ―――まあ、オジサンの知ったことじゃないがねぇ」

 

 

 それを聞いて、今一度『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』を眺めた瞬間、向こう側の行動が読めずに黒髭は怪訝そうな顔をする。

 

 

「んんんぅぅ?無策に真っ直ぐ突っ込んでくるつもりですかな?―――BBAらしからぬ所業ですな。愚直なまでの特攻とは!」

「そうでもなさそうだよ、船長。船首に居るの、君がご執心のサーヴァントじゃないか?」

「―――ファ!?ボキのエウリュアレちゃんがどうしたの!?船首!船首に居るの!?」

 

 

 そう言って黒髭は、自身の船の船首の辺りまで駆けて、遠目に『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』を見つめながらエウリュアレに向かって叫ぼうとした瞬間―――

 

 

「―――あれ?」

 

 

 自身のすぐ近くの甲板に刺さっていたのは………矢だった。間違いなくエウリュアレが所持している弓矢の矢だった。

 

 

 


 

 

 

「―――ちっ、外れたか。いえ、むしろ外してしまったような気さえするわ。……なんかこう、矢が汚れる的な」

「すみません、そこは真剣に仕留めていただけますか。使い捨てなんだから我慢して……」

 

 

 舌打ちするエウリュアレに対して、そうマシュが諫める様に言う。

 そしてその様子を見ていた立香が続々と予め決めておいた指示を出す。

 

 

「よし、エウリュアレはそのまま撃ち続けて!もう少ししたらアタランテはオリオン達が乗り込む迄に宝具をお願い!」

「了解した」

「わかってるわよ。……まあ、黒髭本人に当てるより―――別の誰かにぶつけたほうがいいのよ。私の“(ほうぐ)”って」

 

 

 そうやって呟く様に言いながら放ったエウリュアレの弓矢が黒髭の船の海賊に当たると―――

 

 

「……あ、あ、あ、あ……。あぁぁぁぁぁぁぁッッ!?お前ら……お前ら!エウリュアレ様の為に、死ねッ!!」

 

 

 彼女の持つ魅了(チャーム)の力に掛かった海賊が、気が狂った様に叫び、黒髭に対してカトラスを向けた瞬間――――――黒髭の右腕に付いている鉤爪が海賊の胸を貫いていた。

 

 

「あ……れ?船長、何でオレを―――」

「ほーら、だから言ったじゃん?エウリュアレ氏の矢に当たったら即座にブチ殺すって。全く、返り血で濡れちゃったヨ……」

「ア、アイアイサー!!」

 

 

 ―――エウリュアレの矢に当たったら即座にブチ殺す。

 即ち、黒髭は矢を食らう前からエウリュアレの特性に気がついていたというわけで。

 恐るべき洞察力とその頭脳。腐っても英雄として座に登録されただけはある。

 

 

「アン氏、アン氏〜」

「何ですか船長。それと気持ち悪い声で呼ぶのをやめてください」

「いや、まあ取り敢えず撃ってちょんまげ()」

「………誰かさんの余計な茶々が入らなければ、そうするつもりでした」

「よっろしくぅ!」

 

 

 そんな会話を繰り広げた後、黒髭はドレイク達の方を見ながら眉間にくっきりと皺を寄せる。

 

 

「―――さてさて。まさかBBAちゃん、これだけじゃないよねぇ?」

「……あったりめえだろうが、このボケ船長。―――立香!」

「アタランテ、お願い!」

 

 

 立香の掛け声を耳にしたアタランテは、アルゴー船の船首に立ち、“天穹の弓(タウロポロス)”に矢をつがえる。

 ―――その矢は宝具に非ず。それこそは『弓に矢を番え、放つという術理』そのものが具現化した宝具。

 

 

「―――我が弓と矢を以って、太陽神アポロンと月女神アルテミスの加護を願い奉る。」

「きゃっ、願われちゃった♡」

「ごはっ―――ッッ!?……この災厄を以下略!!

    ―――『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』―――ッッ!!」

 

 

 駄女神(アルテミス)のせいで(精神的に)自傷ダメージを負いながらも宙へと放たれた一射は、荒ぶる神々による敵方への災厄という形、豪雨のような光の矢となって黒髭の船へと降りそそぐ。

 

 

 

「がっ、あぁぁぁぁぁぁッッ!!矢が……肩に刺さって……」

「ちょ、またこれでござるか!……おい、これは最悪食らってもいいからエウリュアレ氏の矢には当たんなよ!」

『アイアイサー!』

 

 

 

 それを何処かギャグ調な動きで甲板を駆けて避け回りながら黒髭が海賊達に指示を出す。

 因みにヘクトールとアンメアは既に甲板の下に退避していた。

 

 

 そして降りそそぐ矢の脅威が去った直後、間髪入れずに新たな気配が上から接近しているのを感じ取り、上を見上げる。

 ……そこには海面を走ってきたアルテミスの姿があった。

 

 

「ハァイ♪」

「おお……天使……。―――じゃなくて誰ナノジャ!?」

「私、オリオンでーす!……取り敢えずここにいる全員、射殺しちゃうゾ☆」

 

 

 そう言い終わると同時に、アルテミスの放った弓矢がアタランテの宝具を受けて既に満身創痍だった海賊の一人の心臓を射抜く。

 そうして再び矢を放ち、五、六人程射殺した直後に、メアリーが駆け上がって来て、カトラスをアルテミスに対して突き立てる。

 

 

「あぁら、人間さん。接近戦に持ち込まれると、私、困っちゃう」

「見た感じ、アーチャーだろうからね……ッッ!?」

 

 

 アルテミスに再び斬りかかろうとしたメアリーに対して、アルゴー船の方から弓矢が飛来するが、横に跳ぶことで何とかそれを回避する。

 

 

「くそ、何とかあっちの人達も倒さないと……!とにかく、先ずは貴方を……!」

「……残念。だったら私、逃げちゃうわ」

「何……!?」

「アルテミス!準備出来たと伝えろ!」

 

 

 甲板の下から現れたオリオンが、そう言ってアルテミスの頭の上に跳び乗る。

 そしてそれを確認したアルテミスは、ドレイク達がいる方向を向き、大声で合図を出した。

 

 

「さあ、もう一人の船長さーん!やっちゃって――!!」

 

 

 それを聞いたドレイクは、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべながら、『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』を黒髭の『アン女王の復讐号(クイーンアンズ・リベンジ)』へと直進させる。

 

 

「……操舵手、取舵一杯!角度をつけて、衝角で土手っ腹食い破るよ―――!!」

「あいよ、姉御!!……取舵、いっぱあああい!!」

 

 

 そうしてかなりの速度を出しながらも黒髭達へと迫る中、黒髭達の船の中は軽いパニック状態に陥っていた。

 言わずもがな黒髭がオリオンが甲板の下から出てきた理由に気がついたからである。

 

 

 

「―――オー、マイ、ガッ!!あのチビやってくれたなあ!?……総員、対ショック体勢ー!爆発するですぞおぉぉぉぉぉぉ―――ッッ!!」

「―――え?」

「そうか、火薬庫がやられたか!」

 

 

 ―――瞬間、船は今までで最大の衝撃と揺れに襲われた。

 その余震で黒髭達の船が揺れる中、『黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)』は突貫する。

 

 

「よし、いっけぇぇぇ―――ッッ!!」

「―――やれやれ、これはもう遅いですなあ」

 

 

 ワイバーンの鱗で補強されたことにより、鋼鉄を上回る硬さを手に入れた衝角が黒髭の船を襲う。

 二連続できた巨大な衝撃に、海賊たちの中には転んでしまった人もちらほら居た。

 

 

「やった!大成功ね、ダーリン!」

「し、死ぬかと思った!火薬庫で、導火線に、火をつけて全力で逃げろって!船長よりも人使い、いや熊使いが荒いなあ!」

「貴様ら……!」

 

 

 今回立香達が考案した作戦。

 それはオリオンがポセイドンの血筋を引くが為に、水の上を歩けるという特性を利用した内部工作。

 事前にイアソンが『オリオン達は馬車馬の様に使ってやれ』と言っていたので、其処から連想した結果今回の作戦の考案に至った。

 

 

 アタランテが手伝っていたのは、“一応”信奉する女神一人を最前線に出すのは如何なものかと考えたことによる自主的な手伝いだった。

 ―――そのせいで再び心にダメージを負ったのだが。

 

 

 

 閑話休題(話を戻そう)

 

 

 手慣れた手付きで黒髭たちの船と自分たちの船を網で繋いだドレイク達は、マシュとドレイクを筆頭として黒髭達の船へと乗り込まんとしていた。

 

 

「さて、掠奪開始だ。行くぞ!アタシの頼れるアホウ共!」

「ううぅぅぅぅぅッッ!」

「行きなさい、アステリオス!」

「マスター!」

「うん……黒髭を、倒そう!」

 

 

 立香の声に応じ意気軒昂とした彼女らは、一斉に黒髭達の船へと駆け込んだ。

 

 

 

 


 

 

 

「………ん?」

 

 

 甲板で腕を組み、立香達をほんの少し離れた所から眺めていると、誰かがこの船に乗り込んできた気配を感じた。

 

 

「ごきげんよう、こちらの船長さん?」

「―――女海賊か。何故こちらに来る、黒髭の手助けはしないのか?」

「まあ、ティーチならゴキブリみたいに生き延びるでしょうし―――」

「たとえ何もしてなくても、お前がいる限り僕達に勝ち目は無い!だから切り刻んでやる……!」

「そうか……。メディア、アタランテ、手出しはするなよ…―――来い、女海賊」

「言われなくとも……!」

 

 

 そう言ってメアリーが大きく踏み込み、イアソンに向かってカトラスを振りかぶるが―――聞こえたのは甲高い金属音だけだった。

 

 

「―――まあ、俺が相手をするとは一言も言ってないんだがな?」

「なっ……!?」

 

 

 彼女の視界には、自身の目にも止まらぬ速さで接近し、剣を打ち付けてきたポルクスの姿があった。

 

 

「―――貴方、今イアソンに剣を向けましたね?……ならば私の守護対象ではありません。殺します」

「くっ……強い……!」

 

 

 二人は幾度となく剣戟を繰り広げるが、メアリーが次第に押されていく。

 当然といえば当然だ。

 片やその剣技の腕前はヘラクレスとも十全にやり合える実力のある神話の英雄。

 片や名を馳せたとは言えども所詮は近代に生まれた女海賊の一人。

 

 その差は歴然だった。

 しかし、彼女の真髄は相棒であるアンとの連携攻撃。それを駆使すれば格上相手にも肉薄できる可能性はある。

 

 ポルクスと切り合う中、メアリーが動いた。

 

 

「―――今だよ!アン!」

「はーい。撃ちますよ!」

 

 

 そうアンが言うや否やメアリーは即座に真横に飛んだ。

 そしてメアリーが退いたポルクスの視界に映ったのは、自身の目の前に迫るマスケット銃の弾。

 これこそが二人一緒に座に登録されたアンとメアリーの真髄。以心伝心を体現したかのような連携攻撃。

 

 

 ―――しかし今回は相手が悪かった。

 

 

「―――嘘」

「―――申し訳ないですが、二人一組というのは、貴方達だけの特性ではないのですよ――ッ!」

「あっ、剣が……!」

 

 

 ポルクスの額を撃ち抜かんとしていた銃弾は、横合いから投げられた光の円盤によって弾かれた。

 その先には返ってきた円盤を掴むカストロの姿。

 

 

 そして必殺と思っていた一撃を防がれたことに対する動揺をポルクスに突かれ、もとから強度で劣っていたカトラスを真っ二つに折られてしまう。

 

 

 

 ―――彼等は文字通りの二人組、夜空に輝く双子座の元となった英雄。

 連携と言う面も含めて、完全上位互換とも言える二人に、アンとメアリーは追い詰められていた。

 

 

「―――いや、まだ行ける!アン!」

「ええ、未だ船長が戦っているというのに、途中で諦める訳にはいきません!」

「―――ほう、少しは骨のある人間ではないか。……だが、一介の海賊が神に敵う筈があるまい」

「やってみないと……わからないだろ!」

 

 

 そう言ってメアリーがディオスクロイに対して突貫する――――――と見せかけて、折れたカトラスを宙に投げた。

 

 

「―――せめて一矢報いて見せる!……アン!」

「ええ、任せて!」

 

 

 そうしてアンが放った銃弾が、空中でメアリーの投げたカトラスの刃の部分に当たって跳弾し、一直線にイアソン(・・・・)の元へと向かう(・・・・・・・)

 

 

 ―――だが、そんな絶技を行っても、その壁は余りにも高すぎた。

 

 

「―――悪いな。初めからお前たちが俺を倒す事は不可能だったんだよ」

「―――海賊よ、貴方の力に敬意を評します。……死ね」

「人間よ、俺の予想以上の実力だった。……相手が悪かったがな」

 

 

 その銃弾は、イアソンに当たる前に、イアソンの前に張られた透明な壁……メディアの結界に当たって跳ね返る。

 そうして丸腰になったメアリーと、アンの霊核をカストロとポルクスが同時に貫くことによって決着はついた。

 

 

「……あぁ、神にはやっぱり届かなかったか……」

「えぇ……船長を残して先に逝ってしまうのは少し、残念ね」

 

 

 

 

 ―――それだけ言い残して、規格外の連携を見せつけた二人の女海賊はこの特異点から完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 






イアソン:後方腕組面してずっと見てた。正直アンメアコンビが予想以上に強くて驚いた。あと今度アタランテにはアップルパイでも作ってやろうと考えた。

アタランテ:アルテミスが心配だったから手伝いをしたけど、やっぱりショックで崩れ落ちそうになった。でもイアソンが慰めてくれるから結構役得なのではと最近思い始めた。


次は……

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