そうして集まった英雄達だが、イアソンに先ず待っていたのは結構な数の質問攻めだった。
本当にヒュドラを倒したのか?ドラゴンを素手で何体も倒してきたのか?などなど、正直事実であるのだが証明する手段が無い。だが彼らはイアソンが無意識に放っている覇気から、噂は真実だと察していた。
「ふむ……どうやら噂の実力は本当の様だな。ここで戦いを挑むのは筋…決闘を申し込む!ヘラクレス―――そして、イアソン!」
声を上げたのは英雄ペレウス。将来の子供のアキレウスに似た爽やかな顔して爆弾発言しやがったぞこいつ。
「ああ、構わな………いや、待って。ちょっと待て。ヘラクレスに決闘を挑むのは俺も十分分かる。強いしな。だがなぜその決闘に俺も含まれている!?おかしいだろ!」
「おかしくなどない!強き武人に勝負を挑むのは同じ武人として当然の事であろうに。―――あのヒュドラを倒したのが本当であるならばな!」
ペレウスの言葉を皮切りに、次々と他の英雄達にも俺も俺もと決闘を申し込み、最終的に一人ずつは面倒くさいからと乱闘になった。
とは言っても事実上、沢山の英雄達VSイアソンである。最早只のリンチ状態。
「―――まあ、こうなるのが分かっていたとはいえ、ご愁傷さまだな。」
「あーこれやばいやつだな、うん……。分かったよ!―――こうなったら全員ぶっ倒してやるよぉぉ!」
やけくそ気味なイアソンの叫びが決め手となり、決闘が決まった。これが後に語られる、アルゴナウタイの大乱戦である。
◆◆◆◆◆◆
流石に街中で戦うと、イオルコスが地図から消滅してしまうので、イアソンを含めた英雄達は移動し、近場にあった人気の無い草原へと決闘の場所を移し、開始の合図もなく戦いを始めた。
けれど、それは決闘と呼ばれるような物では無かった。その光景はどちらかと言えば、蹂躙劇と称したほうが良いかもしれない。
各々が、自身の武技に誇りを持ち、英雄と呼ばれるに相応しい、それ相応の力を有していた。
だが十二の偉業を成し遂げて無敵の肉体を持つヘラクレスの前では、全てが児戯に等しく、彼らは大した傷をつけることさえ敵わず、一瞬で蹴散らされてしまったのだ。
そしてイアソンも戦闘が始まった瞬間、何処からともなく大鎌を取り出し、全方位から来る剣、弓矢、槍などのあらゆる攻撃を圧倒的技量を持って打ち破り、相手を蹴散らして行く。
―――そうして、気付けばその場に立っている者は二人を除いて居なくなった。
「どうやら、残ったのは我々だけの様だな。」
「―――不本意ながらその様だな、ヘラクレス。あの数の強者に襲われて大きな怪我が一つも無いとはな……素晴らしい、流石は生きた伝説といったところか。」
「驚いているのはこちらもだ。そちらの方こそ、我が一撃を受け止めてなお、微動だにしないとは―――面白い。」
ヘラクレスは自身が力を込めて振り下ろした斧を大鎌の柄で受け止め、微動だにしないイアソンを称え、内心歓喜していた。武人として自身と鎬を削れる者が現れたことに喜びを噛み締める。
そんな中イアソンは正直、魔力放出や強化を掛けて漸く受け止めることの出来たヘラクレスの力が凄すぎて内心焦ったのは言うまでもないが、久々に互角の相手と戦えるこの状況に心躍り、無意識に笑みを浮かべる。
そして身体に雷を纏い飛び上がり、思いきり横薙ぎに鎌を振るう。ヘラクレスは大きくバックステップをしてそれを回避。
イアソンが雷撃を放つがヘラクレスは大きく飛び上がり回避しながら、弓に矢を数本つがえて放つ。
一切のブレなく放たれた弓矢は一直線にイアソンに向かうが、大鎌を構え直したイアソンは、瞬く間に全ての矢を両断する。
二人の激しい攻防による衝撃の余波とイアソンの雷が辺りに飛散し、掘り起こされた地面や瓦礫を含んだ強烈な烈風となり周りに居た者たちを襲う。
何とかその場に踏みとどまっている者や、衝撃に耐えられず何メートルか吹き飛ばされた者たちも中には居た。
しかし、誰一人としてその事に関して文句を言う者も、この状況で声を上げる者も居なかった。
皆、眼前で行われている戦いの苛烈さ、凄まじさに唖然としながらも、その戦いを食い入るように見ていたからだ。
二人は彼らの目では捕捉できない程の速さで戦っている。
雷をその身に纏い、速度を上げているイアソンに関しては、まるで一筋の光のように見えた。
実は、ヘラクレスの動体視力を持ってしてもイアソンの姿を完全に捉えられている訳では無い。
イアソンを遥かに上回る経験による長年の戦士としての勘を駆使して、彼の次の攻撃を予測して鎌を躱し、時折斧で受け流し、カウンターを入れようとしていた。
その二人の戦いぶりは、さながら神同士の戦いのようにも見える。
だが、お互いにこのままでは永久に決着がつかないことを察していた。
それに周囲の地形も初めとは似ても似つかない程に抉れてしまった。
この戦いに終止符を打つには、何方かが決定的な一撃を浴びせるしか無い。
そして先に動きを見せたのは――ヘラクレスだった。
ヘラクレスはイアソンから少し距離を取ると落ち着いた声音でありながらも、確かな意志の強さを秘めた声で言う。
「貴殿のその強さ―――感服した。故に我が流派、その一端を貴殿にお見せしよう。」
そうヘラクレスが言った瞬間、イアソンの脳裏に直感があるビジョンを浮かべ瞬間、戦慄する。
それは竜の形をしたホーミングレーザーが九発同時に放たれ、自分が射殺されている姿だった。
イアソンは本気で危機を察知し、ヘラクレスから距離を取る。そして、自身の雷を収束してとっさに出せる最大の一撃を用意する。
「
「
瞬間、
「――――
「―――――
九つの竜と、圧倒的熱量の雷がぶつかり合った。拮抗する二つの力。その圧倒的威力で起きた余波が近くの丘を消し飛ばした。
それを見た英雄達は震えた。余波であれならばその中心はどうなっているのかと。
暫く拮抗した二つの力だが、次第に変化が訪れる。九つの竜の勢いが次第に失速し、最終的に蒼雷がヘラクレスごと竜を飲み込んだ。砂埃のせいで、周りからは様子が確認出来ない。
「―――よもや、我が肉体に傷を負わせるとはな。」
「あ、悪い!結構火傷してるけど大丈夫か?」
「謝る必要は無い、もとより最初に全力を出そうとしたのは私だ。貴方はそれを迎え撃っただけに過ぎない。」
「………やっぱり、あれちょっと殺しに来てたよな。普通に死んだと思ったんだが。」
「それに関してはすまない。…この辺りで決闘は終わりにしないか?これ以上は歯止めが利かなくなりそうでな。」
「ハハッ、違いないな。」
そう言って二人は元々あった草原が跡形も無くなってしまったクレーター、夕焼けの下で笑いながら固く握手を交わした。その光景に、見ていた英雄達や神々はいたく感動したという。
ただ、ヘラクレスが思ったより重症なのと、身体に大した怪我は無かったものの、精神的な疲れでイアソンが気絶したので、アスクレピオスに冒険が始まる前からお世話になる羽目になるのであった。
そして次の日、回復したイアソンは皆を集めて船長を決める会議を開いた。
「――やっぱり、ここはヘラクレスが船長をするのが無難じゃないか?経験、実力の面でも一番だ。」
そうイアソンが提案するが、
「いや、私はそんな柄では無いから遠慮しよう。それに、…これは貴方の始めた冒険だ。貴方が船長をやるべきだろう。」
「そうだぞ、それにお前先生から操船の技術べた褒めされてたじゃん。最適な人選だろ。」
と、ヘラクレスとカストロに言われてしまい、イアソンは異論がないかを他の面々に尋ねる。
そして、一人挙手する者がいた。アタランテだ。ちなみにケモミミは後世の伝承でついたものなので、今は無い。
「私自身は何方が船長であっても異論は無いが、ヘラクレス殿の言う通り、これは汝が始める冒険だ。汝が船長をやるのが筋だろう。」
「―――ああ、その通りだな。皆、頼む。俺についてきてくれ!これは今までにない大冒険、成し遂げれば最高の偉業だぞぉぉ!!」
アタランテの言葉で決心がついたのか、イアソンが皆に向かって声を上げる。その宣言に対する返答は歓声という形で返された。
◆◆◆◆◆◆
●月○日 曇り
アルゴスさん曰く、もうすぐ船が完成するそうだ。あとあのヘラクレスとの大決戦を神々が見ていたらしく、色んな神が俺のもとに来てくれた。例えばアポロンは「―――クソ、あと六年早ければ。」と言って帰って行った。うん、もう二度と来なくていいよ。対してアテナは何か凄い盾のような何かをくれた。銘を『
……何で神様は俺にこんな軽いノリで明らかにやばそうな物をくれるの?何か怖くなって来たんですけど。対価で早死にしそう。
でもこれすっごく便利。展開したら周囲をファン○ルみたいに動いて、エネルギーバリアみたいなの出して弓矢とか全部防いでくれる。
でもヘラクレスの一撃を耐えれるか検証したら、なんかミシミシ言いだしたから急いで中断した。これは間違いなくヘラクレスのほうがおかしい。
てかエネルギーバリアみたいなやつ出したりするファン○ルとか、某正義の味方の投影する
あとヘラクレスといえば、ヒュラスって言う美少年と一緒なんだけど、ヘラクレスがヒュラスにメロメロなんだよね。ほら、昔も書いた気がする此処の
……これから俺はヘラクレスを純粋な目で見れないかもしれない。いや、ここでは普通だから否定はしないけども。何というか、個人的な気分の問題で。
▼月△日 晴れ
ついに船が完成し、出発の日になった。完成した船はアルゴスの名に因んでアルゴー号と名付けられ、女神アテナの祝福を受けた俺達はコルキスにある金羊の皮を求めて出発した。総勢五十人の大人数である。
でも船長って意外と大変。この時期はまだ帆船だから帆を俺達がコントロールしなきゃならんし、乗組員たちは全員が我の強い英雄達だ。もうアタランテやポルクスがナンパされたり、それでカストロがブチギレたり、俺が頑張って止めたりと初日から内輪揉めで疲れるとは思わなかった。おかげで早速アスクレピオスのお世話になった。え?ストレスが原因?そんなのは自分が一番分かっとるわ。
☆月★日 曇り
オルフェウスの竪琴で気分を盛り上げながら数日の航海の後に俺達が最初にたどり着いた島、レムノス島。でもさ……このレムノス島、とんでもない呪われた島だったよ。
少し昔話的な事をしようか。
曰く、俺たちが来るしばらく前、島の男たちはトラキアってとこと戦争して、戦利品として若い女たちを連れて帰りました。男たちは妻を忘れて若い娘とお楽しみの日々。
そしてキレた妻達によって事件は起きた。「わたしという妻がありながら最低!ぶっ殺してやる!」と、一致団結して夫たちに酒を飲ませ、酔ったところを皆殺し。生き残った男たちも「こいつらやべえよ…」とビビって逃亡。こうして、島は女だけになってしまったのでした。おしまい。
うん、終わってる。男もそうだけど、ここの女性たち過激派すぎんだろ。そりゃあ男は寄り付かんわ。
正直絶対に行きたく無いが、残念なことに丁度嵐が起き始めていたため、その島に留まらないと船が沈没する。
数日で終わる冒険とか笑えないので、何とかしてレムノス島に泊まる事を島の彼女たちに許して貰おうとしたのだが、そうは問屋が卸さないと彼女たちと勝負する羽目になったよ。まあ勝負の末、当たり前だけど此方が勝利して島に入る事は出来たが、美女しかいなくて男に餓えてる島、基本的にプレイボーイな英雄達。
あとは、……分かるね?
♢月❖日 雨
まあそういう状況だから、皆の下半身の管理はゆるゆる。男ならヘラクレスと俺以外はそれはもうお盛んだった。いつもはシスコン野郎のカストロも今日は珍しく行ってた。アスクレピオスもまあノリノリ……では無かった。ヘラクレスはヒュラス(男)LOVEだからね。しょうがないね。
それでまあやることも無いし、同じく用事の無いアタランテやポルクスと遊んだり、時折ゴミを見る目で皆を見つめて過ごしていた。
地味に特技の一つの竪笛を披露したときは結構驚かれたが、ウケは良かった。キャラじゃないとでも言いたかったのか、おい。此処じゃあこれくらいしか趣味がないんだよ。料理はまあ、うん……キレなかった俺を敬って欲しい。マジで。
そんなこんなでそこそこ平和に過ごしていたのだが、島の女王が誘ってきたのでいよいよ他人事じゃあ無くなってしまった。
丁重にお断りしてやろうと思ったが、予言者であるイドモン氏が断っては駄目だよというから、仕方なく、
グッバイ、俺の長らく守ってきた貞操よ……
α月β日 晴れ
こんなところに居られるか!俺は帰らせてもらう!って言うことでさっさとこんな島はおさらばしたいので、ヘラクレスと結託して当初の目的を忘れかけている馬鹿どもの部屋のドアを叩きまくった。
何とか夕方までに全員を叩き起こすことが出来たので、喝を入れて早速出発。ちなみにカストロはポルクスにしばかれてた。ざまぁ。
いやはや、嵐を凌ぐだけの予定が一週間も滞在してしまうとははねえ……。何か一年間あの島でハッスルしてるビジョンが視えたんだけど。絶対にお断りだわ。しかも女王はあの一夜でデキたらしいし。
■月□日 曇り
あれから約十二日程。嵐に見舞われながらも俺達はキオス島という島に辿り着いた。俺含めた皆は連日の嵐でかなり参っていて、ここで水の補給をしないといけない。
ただ、またここで面倒なことが起きた。ヘラクレスはヒュラスとお楽しみタイムをしようとして島に上陸したのだが、俺はやけに嫌な予感がしたので泉に水を汲みに行ったヒュラスを追いかけていった。するとなんということでしょう。ニンフ(泉の妖精)がヒュラスを泉に引きずり込もうとしているではありませんか。
ちょ、待てよと言わんばかりに俺は引き止めようとしたのだが―――
―――なんということでしょう(二回目)。ニンフ達は俺を見るなり一緒に引きずり込もうとしているではありませんか。なんでさ、何が『――――――イイ。』だよ。俺はどこぞの正義の味方みたいな女難の相なんて持ってねえんだよォォ!!
まあ何とかヒュラスを引き上げて、船に逃げ帰ることに成功。ヒュラスが居なくて焦っていたヘラクレスに伝えると、本気で感謝され、号泣しながら二人は抱き合っていた。
……俺は一体何を見せられているんだろう。
取り敢えずこれ以上居ても碌なことが無いと思った俺達は、急いで船を出航させようとしたが、なんということでしょう(三回目)。……このくだり飽きてきたな。
まあとにかく、俺達を、というより一目惚れしたヒュラスを逃がしたくないニンフの手によって神もどきが召喚されてきました。―――でもなあ、こっちにはヒュラスを取られかけてブチ切れたヘラクレスが居るんだよォ!俺達に勝ちたかったら本物の神を連れて来やがれってんだよ。
そんなわけで、俺とヘラクレスの同時攻撃で即、殲滅した。……明らかにヘラクレスの
▽月△日 晴れ
ちょっと皆マジでそろそろ自重しない?海の上でアタランテ達にナンパして俺が鎮めるって流れ何回目だと思ってるのよ。最近はなんか半分おふざけみたいになってるし。ほら、もう弓取り出そうとしてるからやめてやめて。
それのおかげで好感度が上がったのか知らんが元々若干男嫌い気味な性格だったのに時々デレてくれるようになったじゃねえか。
こんなこともう止めるんだ!(建前)。
いいぞもっとやれ(本音)。
◐月◑日 晴れ
なんやかんやあって俺達はビテュニアって言う、訳の分かんない土地にたどり着いた。ここの王は、海の神ポセイドンの息子アミュコスというらしい。
こいつは大変な力自慢で、この土地を通る旅人に必ずボクシングの試合を申し込み、負けたら殺すという普通にクソ野郎だった。マジで何がしたいのお前。こちとら水の補給に来ただけなのに迷惑極まりねえよ。
そして俺たちにもボクシングの試合を申し込んできた。良いだろう、ならばこちらはボクシングの達人ポルクスを投入してやろうではないか。
カストロには最初反対されたが、よく聞いてほしい。前一度軽く手合わせしたことがあったんだけど、もうめっちゃ強かったから。だから彼女の実力は信頼出来るし、勝つと俺は信じている。もし万が一傷一つでもつけられたらリンチする。分かったなシスコン。
そう力説したらカストロも渋々引き下がってくれた。なんか若干ポルクスが照れてた気もするが気の所為でしょう。なのでアタランテさん足踏まないで。
最初はポルクスが女だから舐めていたようだが、試合が始まった瞬間に『あ、こいつやべえわ』と気づいたようだがもう遅い。次の瞬間、ポルクスの拳が顎の骨を砕き、耳にもう一発打ち込んでいた。多分最後の一発はオーバーキルだね。
何はともあれ、俺達は水を貰ってさっさと次の地へ出発した。大丈夫、多分死んでないから。
イアソン:女神アテナからアイギスを貰った。やっぱり俺に神は何かさせたいんじゃないかと考える。あながち間違ってない。アポロンからは成人してたからギリギリのラインで見逃して貰えた。やったね。
何気にヘラとアテナ、そしてちゃっかりアフロディーテから加護を貰っている。これは史実でも変わらないのだが、特にアテナ辺りからの加護がちょっと強すぎる気がする。
ギリシャの文明がおかしいことに漸く気づき出す。早く気づいたほうが身のためだよ。
どっちを先にやるか(なおどちらでも修羅場る模様)
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Apocrypha
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GrandOrder