数多の英雄を束ねる者   作:R1zA

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お久しぶりです。

作者が受験の間、本家に勇者王が登場したことによりモチベが完全崩壊していました。
バビロニアも文字が浮かばないので、箸休めに前々から言っていた原典召喚ネタをお一つ。


番外編Ⅱ
#1∣if√∶勇者王in原典


 

 

 英霊の座にて。

 

 

『―――』

 

 

 自身の逸話の象徴たる船にひっそりと立つ一人の男。

 その男―――イアソンは、封鎖終局神域にて生前にも行わなかった神殺しを成し遂げた。

 それも海神(ポセイドン)という特大神性の一角だ。

 その過程である意味一番の目的でもある人類最後のマスターとの『(えにし)』も紡ぐことが出来たのだが―――

 

 

 

 

 ―――呼ばれるかなあ、俺。

 

 

 

 守護英霊召喚システム・フェイト。

 カルデアが冬木の聖杯戦争を元に発明した召喚式。英霊とマスター双方の合意があって初めて召喚出来る。

 男はそんな人類最後のマスターの召喚方式を知っているが故に、縁を紡いだ所でカルデアに呼ばれる訳では無いことを分かっていた。

 双方の合意の以前に向こう側がこちら(英霊の座)に道を繋げなくてはどうしようもないからだ。

 

 

 此方側から無理矢理召喚式に割り込んでも構わないのだが、そんなことをすれば上司(アラヤ)に目を付けられて制限が掛かってしまう。

 故に向こうが自身との縁を元に道を繋がなくては、自身は只管待ちぼうけとなってしまうのだ。

 

 

 

 

 座に時間の概念は無く、どれだけ待ったか等の感覚は無いが故に待ち時間は分からないが、ふと身体が引っ張られるような感覚をおぼえる。

 ただ、自身の本能的なナニカが警鐘を鳴らしていた。

 

 

 ―――面倒事に巻き込まれるぞ、と。

 

 

 勘弁してくれと思い召喚から逃れようとするも、まるで何かの意志が働いているように身動きが取れなくなる。

 

 だが本当に止めてほしい。

 これでも獣殺し及び召喚対象としては某AUOに次ぐ皆勤賞を獲得出来ると自負している。

 これ以上は仮初の肉体であろうとも魂が抜けそうだ。

 

 

 そして男の抵抗虚しく視界が一面の白に覆われて―――

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ―――人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 その中の召喚ルームにて、人類最後のマスターとなった()()藤丸立香とマシュ・キリエライトは新たな戦力を確保するべく英霊召喚を行っていた。

 

 

 円卓の証であると同時に象徴でもある彼女の盾を触媒とし召還サークルを設置。

 廻る光輪の中心に、人理修復という大義に賛同した英霊を召喚する『守護英霊召喚システム・フェイト』。

 通常の聖杯戦争とは異なり、英霊達のどれもが一つの目的の下に召喚されるので多くのサーヴァントの召喚を可能とする。

 

 

「……」

 

 

 詠唱は必要ない。

 僅かな魔術回路と、マスターとしての資質があれば、必要な魔力は施設が補ってくれる。

 術式が開始され、召喚サークルの円に沿うように、三つの光輪が紡がれる。

 今回光輪が示した色は―――眩いまでの虹色。

 紛うことなき全世界最上級のサーヴァントが喚ばれる合図である。

 

 

「クラス:ライダー。やりましたね先輩!これはトップサーヴァント級の魔力反応です!!」

「よっしゃきたあッッ!!」 

 

 

 数多の礼装(ハズレ)を引いた末に訪れた幸運。

 霊基グラフにも登録されていない新顔で、一体どんな偉人が呼ばれたのだろうと二人は期待に胸を膨らませる。

 それに答えるかのように、高まる魔力反応による煙と光が撒き散らされ、一面の視界が覆われる。

 

 

 だがしかし、今の彼らは夢にも思わなかっただろう。

 これから召喚されるサーヴァントによって、一部の英霊達にとってはとんでもない騒動が起こることになろうとは―――

 

 

 

 

 

 

『さぁて、今回は一体全体どんなサーヴァントが呼ばれたのかなぁ―――ってあれ?』

『むむ、これは中々良いセンスの装いを―――』

 

 

 

 真っ先にその存在を認識したのは、モニタールームでコーヒーを飲みつつ様子を見ていたドクターロマンとダ・ヴィンチだった。

 光が退き、煙の晴れた召還サークルの中に無言で立っていたのは―――紺色の鎧で全身を身に包む一人の男だった。

 二人が彼を男だと認識したのは、彼が比較的背も高く体つきが良かったからであろう。

 

 

 とある国の特撮に出てくる仮面をつけたヒーローを彷彿とさせるその装いを見て、立香達男性陣は感嘆の息を漏らし、マシュは言葉を発さずとも分かる、彼の王と呼ばれる英霊の中でも一、二を争うだろうそのオーラに気圧されていた。

 そうして無意識に冷える空気の中その男は口を開く。

 

 

「―――サーヴァント:ライダー、召喚に応じ参上した。ここは一体――っておいおいまじかよ……

 

 しかし、男の雰囲気からは困惑の色が漏れ出ており、その場に居る彼らは気付くことなかったが、男の視線はただ一人―――藤丸立香に向けられていた。

 そんな男の内心はというと―――

 

『(いやぐだ男やんけェ……。ぐだ子じゃないって事は別時空?マジですか?)』

 

 言葉には出さないものの、脳内は過去最大級の動揺と混乱の渦に呑み込まれていた。

 落ち着け。慌てるなと自身に言い聞かせて、現界の際に与えられた情報を高速で整理する。

 そして、自身の置かれた状況を理解した。

 

『(―――成る程、此処は俺の生まれとは違う平行世界で、このカルデアは人理修復中(第一部進行中)。目の前のぐだ男くんは俺の知る藤丸立香とは別人か。……マジやばくね?本来の俺や皆と真名バレした状態で出くわしたらムッ殺されるんじゃね?―――よし、偽名使うか)』

 

 適応力の塊と勝手に自負しているだけあって、通常ならばブチ切れて発狂するような事態にも、ある程度の冷静さは何とか保つことが出来た。

 だが、それはそれこれはこれ。

 こちらの世界線の知り合いに正体がバレた時に碌なビジョンが浮かばなかった為、速攻で真名隠しを決意する。

 

 

 この間費した時間は数秒。

 しかしその間誰もが一言も発しなかったが故、微妙な雰囲気に居た堪れなくなったのか立香が口を開く。

 

「あ、あの……?」

『!?あ、ああ。すまない、少々考え事をしていてな。お前とはコレが初対面だろう?』(低音)

「そう―――ですね」

 

 一瞬だけ今までのことを思い返すような表情をして、そう返した立香に軽く頷き、思案を深めるような仕草をとる。

 当然アイギスに何故か搭載されているボイスチェンジャーの使用も忘れない。

 ―――まさか生前も含めての初使用がこんなくっだらない事になるとは思わなかったが。

 

 

『―――事情が変わった。人理が掛かっている以上、お前達は不審に思うかもしれないが俺の真名は暫く秘匿させてくれ』(低音)

「ん?別にいいよ?」

『ああやっぱり駄目か。でも―――っていいのか!?

 

 

 まさかのあっさり承諾。

 もっとこう、不信感に満ちた視線を向けられると思っていた身としては、嬉しさよりも意外性が勝る。

 自分から頼んでおいて理由を聞くのもアレな気もするが、一応聞いてみると―――

 

 

「え?だって皆は人理の為に態々力を貸してくれてるんだよ?だから真名くらいどうってことないよ」

「ついでに補足すると―――本来の聖杯戦争では、英霊の真名は秘匿するものです。なので真名を秘匿するのも自然なことかと」

 

 

 ということである。

 確かに実際、世界にとっての非常事態である冠位指定(グランドオーダー)時以外の聖杯戦争では、どの英霊も基本的に真名は秘匿しているが……

 ちょっとこの子たちいい人過ぎやしないだろうか。

 恐らく藤丸立香とマシュ・キリエライトの二人はどんな世界線でもこんな感じなのだろう。

 

 

 まあでもこちらとしては願ったり叶ったりなので、素直に承諾するが、二人が何処か思い悩むような表情をしていたのが気にかかる。

 

『どうした?』

「あ、いえ。その場合、ライダーさんの事を何て呼べば良いのかと考えてしまって……」

「確かに……。うーん、そのままクラス名で良いかな?」

『ふむ、そうだな。なら俺のことは―――』

 

 

 二人の視線がこちらに向いたのを確認すると、一息の間を挟んで先程考えておいた通称を口にする。

 一瞬何故かその名を口にするのを躊躇われたが、まあ多少被ってても大丈夫だろうと結論づける。

 

 

『―――「オケアノスのライダー」、とでも呼んでくれ。特に意味はないがな』

「オケアノスの……?もしかしてオケキャスの知り合いだったりする?」

『……Oh』

 

 

 あかん初手の名乗りミスった。

 

 

 まさかの考えていた中でも最悪のパターンである。

 殆どが摩耗した嘗ての記憶によれば、オケキャスとは確かあのキュケオーンの大魔女だった気がする。

 一応生前の知り合いなのでワンアウト。

 

 

 そして今の装いだと―――間違いなく誤解を生む(とある冒険野郎だと思われる)

 それも確実に。

 もしもそんなことになれば余計に殺される確率が高まってしまうということでツーアウト。

 

 

 オマケに『今の』カルデアにアレが居るということは………恐らく、というか間違いなく他のギリシャ組も居るだろう。

 仮にこの世界線の自分を始めとするアルゴノーツに正体がバレたが最期、色々問い詰められた挙げ句に何をされたか分かったものじゃない。

 少なくとも誰か(大英雄とか韋駄天とか)とシミュレーターで殺り合うことになるのは確定だろう。

 よってスリーアウトチェンジ。

 

 

『いや、ただの偶然だろう。もしも顔合わせをしようと思っていたのなら気にしなくていい、頃合いを見て挨拶に行こう』

「そう?俺は別に良いけど……」

 

 

 そう早口でまくしたてるイアソン(オケライ)を見て少し不思議そうに首を傾げる立香ではあったが、それ以上追求してくることは無かった。 

 そこで相手の気遣いが出来るのは彼の人付き合いが上手い証拠だろう。

 そんな事を考えていると、虚空から女性と思わしき人物の声が聞こえてくる。

 

 

『自己紹介は終わったかな?』

「あ、ダ・ヴィンチちゃん」

『ちょっと藤丸くーん?反応が淡白過ぎないやしないかなー?』

 

 

 軽く言葉を交わした後、こほんと軽く咳払いをして話の主導権を握ったダ・ヴィンチが話し出す。

 

『さて、オケアノスのライダーくんだったかな?真名を秘匿する例は藤丸くんが言ったオケアノスのキャスターだとか、今までにも何度かあったけど、これだけは聞いておく決まりなんだ』

『質問か。俺に答えられる範囲ならば答えよう』

 

 そう行って首肯するとダ・ヴィンチは、「ありがとう。それじゃあね―――」と続けて本題へと入った。

 

 

『ライダー。君は、カルデアに―――人理修復に助力し、マスターである藤丸立香を絶対に護ることを誓えるかな?』

『―――当然だ。元より俺が喚ばれたのはその為だろう』

『……うん。その答えが聞ければ満足だよ』

 

 

 緊張感の高まりによって室内に蔓延していた重苦しい空気が霧散し、横で内心ハラハラしながら様子を見守っていた立香とマシュもほっ、と安心の溜め息を漏らす。

 そんな中、ダ・ヴィンチが「それにしても」と補足じみたことを呟き足す。

 

 

『顔どころか肌一つ見せず、声も本来の物とは変わっている。其処まで正体をひた隠しにする辺り、有名な反英雄だったりするのかな?その鎧のデザインは見事だと思うけどね』

「ちょっとダ・ヴィンチちゃん?余計なことを聞くのはダメだよ?」

『いや、俺は大丈夫だぞマスター。というかこの偽装が分かるのか……流石万能の天才と言った所か?』

 

 立香がクラス委員長的なノリでモニタールームに居るダ・ヴィンチちゃんに咎めるような視線を向けるが、イアソンはソレを宥める。

 それより、こうもあっさり声の偽装を見破られた事の方が意外なのだが、その答えは聞くまでもなく彼女の口から語られた。

 

 

『偽装自体は限りなく完璧に近いけど、消しきれない違和感と言うものがあるからね。私以外になら直感の強いサーヴァントには僅かな可能性だけど見破られるかもしれないよ。理由は―――訳ありなんだろうし、今は聞かないでおくよ』

『そうか……忠告感謝する。こちらの事情はまあ―――その内折り合いがついたら話すさ』

『そうかい、なら楽しみにしてるよ。じゃあほらロマニ、君も挨拶しなよ』

「わ、分かってるよ。急かさないでくれレオナルド。あー、ごほん。――ロマニ・アーキマンです。カルデアの医療部門のトップを務めていたんだけど、今は一応所長代理をしています。よろしく」

 

 ロマニ・アーキマン。

 この世界線でも彼は変わっていないのだろう。

 初対面の相手にすら低く見られることもしばしばで、段々お約束ネタとなっていく男である。

 だが、それは彼が■■■■の原因を作ったために、サーヴァントであれば誰もが第一印象でロマンを『理由は分からないがコイツが悪い』と感じてしまうためだとか。

 

 

『成る程、中々大変そうだが頑張ってくれ。世話になるかもしれんからな』

『や、やったあ!初めて初対面でマトモな気遣いをしてもらえたよ!』

「あはは……、良かったねドクター」

 

 両手を上げて割と本気で喜んでいるロマニの声を聞いて、立香は何とも言えない苦笑を顔に浮かべる。

 そんなロマニの様子を見ていたダ・ヴィンチも、半ば苦笑を漏らしながらも補足を付け足す。

 

『良かったじゃないか。なにせ最近は医療部門としての仕事の殆どをあの医神に取られちゃったからね?』

『本当だよ!アッチのほうが優秀だから僕からは特に何も言えないけどさあ!?』

―――え?医神?

「アスクレピオスの事だよ。時々バーサーカーみたいになるけど、医術に関しては凄い腕なんだよ!」

 

 

 ―――ああ、そんなことは知っている。

 何せ―――生前からの仲だからネ。

 まあそんなことは言えないのだが。

 

 

 しかしコレは本格的にマズいかもしれない。

 人理修復中のカルデアに最低でも医神や大魔女が在席しているということは―――双神とか狩人とか、挙句の果てにはコッチのメディアと出くわす可能性がある。

 

 

 現界時にインストールされた、この世界線のイアソン本来の逸話的には出会い頭に殺される恐れがある。

 というかシンプルに嫌悪感満載の視線で見られたら精神的なショックで退去しそう。

 

 

「じゃあカルデアの案内をするよ!マシュも来る?」

「はい!マシュ・キリエライト、先輩のお供をします!」

 

 

 ―――早急に対策を立てなくては。

 そう思案に耽りながら、イアソン(オケライ)は元気に歩いていく二人の後を追うのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 その後、二人の説明を聞きながらボイラー室、図書室、レクリエーションルームなどを見て回っていると、今歩いている廊下の少し先に見慣れた―――見慣れすぎた顔を四つも見つけてしまった。

 

 その面々を見た二人が、喜々として声を掛けに行くが、自分としては勘弁してほしかった。

 その相手は―――

 

「お、アスクレピオスだ!」

「小さい方のメディアさんとアタランテさん、ヘラクレスさんも一緒ですね!」

『―――なんでさ』

 

 どうやら俺は運命の神に嫌われているらしい。

 いや、元々大抵の神を敬ってないので多少酷い目に合わされても仕方ないのかもしれないが。

 神なんてマフィアみたいなモノだし。

 

 

 マスター達が彼らに呼び掛けると、微笑を浮かべてこちらに振り返ってくる。

 そして振り返って来るならば、当然視線は横に居る俺にも向かってくる訳で―――

 

 

「あら……?」

『ヒェッ―――』

 

 メディア(リリィ)の双眸が仮面の奥の俺の瞳を覗き込むように見てきて、俺はまるで目薬を無理矢理に注がれたみたいな衝撃を受け、背筋が凍るような感覚をおぼえる。

 一瞬、気付かれたのかと思ったがソレは杞憂だったようで、その直後、彼女は首を傾げて俺から視線を外した。

 

 

 ……何でこんなホラー映画鑑賞中みたいな心情で生前の知り合い(別人)と会話せにゃならんのだ、俺。

 そんなことを歩きながら思っていると、四人もこちらに歩いてきて鉢合わせる形となる。

 

 

「おはようございます、メディアさん。今日はアルゴノーツのメンバーで集まっているのですか?」

「あら、マシュさんおはようございます。今日は私達、イアソンさまのお部屋でお話をしようと思いまして。……イアソンさまったら、私のことを呼び忘れていたのはいけないと思いますが!」

 

 

 その会話を横から聞いていた俺は、一応今は同じイアソンであるが故に理解した。してしまった。

 ―――多分それ、忘れてたとかじゃなくてガチで呼んでない奴だわ。

 何か呼びたくない理由でもあったのだろうか。

 

 

 ……おそらく、呼ばなくても速攻で来ることを見越して横着したというのが真相だと予想するが。

 というかそれ以外に思いつかない。

 

 

 顔を上げるとメディア含む皆が、何故か不思議そうに俺のことを見つめている。

 特におかしいことはしてないはずだが、何か琴線に触れる事でもあったのかと思っていると、メディアがおずおずと立香に問いかける。

 

「ところで、その―――横にいる方は?」

「ん?ああ、こちらはさっき来てくれたオケアノスのライダーさん。通称オケライ」

「―――オケアノスか……」

 

 そう何とも言えない微妙な声色で、アタランテが視線を明後日の方に向けて過去のことを思い返していた。

 その表情から察するに、やはり本来の俺のオケアノスでの行動は碌なモノじゃなかったのだろう。

 視線を下げると、メディアがこちらにぺこりと軽く頭を下げていた。

 

「じろじろ見ていてごめんなさい。貴方の気配が―――とある人に似ていたものですから」

『……謝る必要は無い。そのとある人とやらは貴方達にとって大切な人物なのだろう』

「まさか。無いな」

「ああ、それは無いな」 

「■■■■■」

「あはは……」

 

 ……自惚れじゃ無ければ、そのとある人はこの世界線の俺だろう。だとしたらちょっと照れる。

 だってこいつ等、俺はメディアに言ったつもりなのに態々割り込んできて言うって事はそれもう大好きじゃん。

 それが分かってるのか、立香も頬を搔きながら苦笑いしてるし。

 

 

「おーい!遅いぞお前らー!」

 

 

 ふと廊下の更に奥から自分の声と、感じられないほどのわずかな差しかない声が響いてくる。

 えらく饒舌で大きく響くその声は―――間違いなく、自分と同じ声だった。

 自分の代わりに言葉が発音されているような、不思議な感覚に脳が陥る。

 

 

 ―――しかし、本来の自分か。

 それは虹や雹のような珍しい自然現象に出会ったかのように、どうしても見過ごすことができないような好奇心……興味が湧き上がる事柄だった。

 乗組員達にも慕われている様子だし、正体こそ開かせないものの、いつか少し話をしてみたいと思う。

 僅かに身を乗り出して声のした方向を見ると―――

 

 

『―――ん?』

 

 

 変態が其処には居た。

 自身の生まれである古代ギリシャでは、砂浜に太腿の後が残っていると変態が寄ってくるという中々に可笑しいレベルで太腿は卑猥な部位的な認識だったのだが。

 あろうことか自身と同じ顔をしたこの男は、太腿を思いっきり出した露出度ハイの服を着ているではないか。

 

 その服装を見て戦慄していると、立香が耳元に小声で話しかけてくる。

 

「あー、イアソンの服装に驚いたかもしれないけど……古代ギリシャでは普通の服装らしいんだ、アレ」

『( ᐛ )パァ』

 

 いや違う絶対違う。

 アレが普通なのはHENTAIの価値観であって断じて普通の人の服装ではない。

 のどの奥に指を突っ込まれたような衝撃を受け、脳での理解が出来ず、背後には宇宙を感じた。

 

 

 

 でも他の皆は特に何も言わずイアソン(汎)と談笑をしているので、自分の方がおかしいのかと錯覚しかける。

 ―――あ、今(向こうの)俺がメディアにアームロックされてらぁ。

 

 

「ちょ、ギブギブ……息出来ない」

「駄目ですよイアソンさま。続きは部屋で話しましょう……?」

「ク、クルシイ……」

「お、おい汝ら―――はあ。すまないマスター、私達はこれで」

「う、うん……じゃあね」

 

 一つ良いだろうか。

 ―――女性ってやっぱり怖いね。

 立香も笑顔だけど頬が引き攣ってるし。

 

 

 

 とまあそんな事はあったのだが、最大の鬼門を乗り越えた俺は無事にカルデアの案内を済ますことが出来たのだとさ。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

※追記

 

このカルデアの霊基グラフに書かれたイアソンのマテリアル。

 

 

 

 

現在:オケアノスのライダー

真名:■■■■・■■■

クラス:ライダー

属性:秩序・善・地

レア度:☆5

HP/ATK:13830 / 11287

 

 

 

【クラススキル】

 

対魔力(A)

騎乗(A++)

 

【保有スキル】

 

神授の叡智(A+)

カリスマ(A)

直感(A+)

魔力放出『雷』(A)

■■■の寵愛(B-)

■■の加護(A-)

 

 

【宝具】

 

『????????』

 

ランク:A+++ 

種別:対人/対神宝具 

レンジ:1~30 

最大捕捉:300

 

 

 

『????』

 

ランク:A

種別:結界宝具

レンジ:−

最大捕捉:1

 

 

 

 

 





※このカルデアにオデュッセウスはいません

このイアソン(勇者王)が我々のカルデアに来るならば、恒常ガチャの中の0.0000001%くらいの確率で来るんじゃないかって考えたり。

イアソン(勇者王):本来の自分の服装に衝撃を受ける。
 見た目は完全に我々の知るオデュッセウスそのままであり、ボイスチェンジャーによってCV.桐本となり隙が無い。
 正体バレまであと■日。
 この世界線ではこっちがIFの可能性に含まれるため、真名が■■■■・■■■となっている。


イアソン(本来の方):異世界の自分(転生者)に変態認定を勝手に下された被害者。
 『未来は最悪だが一応王になった』という、IFの内容的に気が合うか衝突するかは勇者王に掛かっている。


次は……

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  • 原典世界召喚ネタ
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