数多の英雄を束ねる者   作:R1zA

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反響思ってたより大きくてビビッた……


#3∣三日目

 

 

 ドーモ、イアソン=デス。

 あの軽い能力チェックの後、「じゃあ早速シミュレーターに行ってみよう!」と言われるがまま、馴染みも無ければ顔見知りでもない──―いやまあ俺の身元が不明なんだから当然何だけども。

 とにかくそんな面々と共に速攻でオケアノスに放り出された。……大方、俺が宝具として船を持っていると言ったのがオケアノスになった原因だろう。

 

 

 あと名前。

 

 

 そんなこんなで、今は俺の呼び出したアルゴーに乗船している訳だ。 乗せているパーティメンバーには一切知り合いがおらず、これといったコミュニケーションもなかった。

 

 船の方は光の帆(ビームセイル)を展開したりしなければ、パッと見は超兵器でも何でもない普通の船なので大丈夫。

 

 

 ……大丈夫だよな? 

 

 

「あ、出てきたよ。皆行けそう?」

 

 

 視線の先には、大量のエネミーを乗せた海賊船が。

 藤丸の言葉に頷く俺達は、それぞれの役割を果たすべく散開していく。

 ……でもその前に。

 

 

「マスター」

「何?」

「ここに喚ばれてから最初の戦闘だから、どれだけ戦えるか試したい。だから……()()()()()使()()()()?」

「まあ良いけど……。もし危険だと思ったら──」

「その時は構わん。お前の判断に任せる」

 

 

 敵を一掃するなら、宝具が一番手っ取り早い。

 それは当然の事だが……俺個人のリスクを踏まえると、何か割に合わないと思うんだよ、うん。

 個人でもいけるなら魔力の節約にもなるし宝具なんかいらないと思うんだ(建前)。

 

 

『──―いやホント誰来るかも分からんから止めて(本音)』

 

 

 そんな本音は心の奥底に捨て置くとして、さっさと己の役割を果たすとしよう。

 掻き抉る時の大鎌(アダマント)を右手に顕現させて、内に秘めた魔力の一端を開放する。

 

 

 

 

「──―雷霆(ケラウノス)

 

 

 その言葉がトリガーとなって、このサーヴァントとしての仮初めの肉体を構成する魔力が鳴動し、隆起して、完全に己が力の一部となった権能が起動する。

 

 

 出力は……大体全力の半分といった所か。

 本来の力を出せない縛り込みでもこれなら、その辺のエネミーの殲滅なんて容易──なんならお釣りが来る程だ。

 

 

 自身の顔を覆う鎧の裏で、申し分なしと慊焉たる笑みを浮かべた俺は──―数十の敵集団の中へと分け入った。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 ──―一言。

 ただ一言唱えただけで、周囲の空気が一変した。

 

 

『──―雷霆(ケラウノス)

 

 

 彼が何と唱えたかは藤丸はおろか、カルデアの司令室からも聞き取れなかったが、この言葉と共に周囲の空気がビリビリと震え、大気中の魔力が爆発的に増大し、その衝撃波で海原には大波が発生した。

 

 

 

 

 オケアノスのライダー。

 真名も、宝具も、姿さえ晒そうとしない異色の英霊。

 霊基グラフのマテリアルからして不確定要素の塊であり、彼の持つ特異性に少なからず疑念の声を漏らす職員も居たのは間違いない。

 

 彼の纏う雰囲気が他の英霊達とは一線を画していたのも、その不気味さを助長させた。

 例えるならばそれは──―英雄王や騎士王(異説)、征服王に太陽王等の、人理に鮮烈たる偉業を遺した王者達と同質のソレ。

 

 

 ──―即ち、世界最高峰のカリスマ。

 

 

 ステータスもかなりの高水準で、神話を由来とする英霊だと断ずるのにはそう時間はかからなかった。

 その戦闘力はカルデアからして未知数だったが……

 

 

「凄……」

 

 

 間近でソレを見た藤丸が、畏怖の混じった声を漏らす。

 その英霊(サーヴァント)の戦いを例えるならば──―一筋の閃光。

 視力の強化をして尚、マトモに姿を視認することさえ出来ぬ、蒼き雷の輝きであった。

 

 

 光の速さで立ち塞がる敵をちぎっては投げちぎっては投げ……瞬きする間も無く数隻の船が同時に沈む。

 大量のワイバーンが来たかと思えば、放たれた雷撃と鎧からの光線によって殆どが焼き払われた。

 凡百の敵を寄せ付けぬその圧倒的力は、英霊の中でも上澄みの更に上澄み──―まさしく大英雄の域にある。

 

 

 今までに何度もこのレベルの戦いを見てきたとはいえ、人智を超えた力の合戦に早々慣れる筈も無い。

 藤丸は無意識に感嘆の息を吐いた。

 

 

 だが幸か不幸か、その濃密な魔力に引き寄せられて、新たな()がやってくる。

 いち早くそれを感知したロマニが、藤丸へと伝達する。

 

 

『……!? 藤丸くん、大型の竜種が来たよ! 数は十匹……十だって? これ設定間違えてるんじゃないのかい!?』

「うん、ちょっと多くない……?」

 

 

 所謂ボスとして配置される規格の竜種が十。

 そしてその竜達は全て──―エネミーを一掃して一度止まっていたオケアノスのライダーの方へと殺到する。

 流石に不味いと直感で感じた藤丸は──オケアノスのライダーの宝具の使用を決意した。

 

 

「──令呪を以て命ず! ライダー、宝具開放!」

「──マジで? ……いや、了解した」

 

 

 右手の甲に浮かんだ令呪の線の一つが消えて、膨大な量の魔力がオケアノスのライダーへと供給された。

()()()やけに宝具を出し渋っていた気がするが、それは一体何でだったのか。 

 今の藤丸に知る由はない。

 

 

 

 

『──―来ちゃったよ。しかも令呪で。 いや戦況を見た上での判断なのは分かるよ。本来はそっち(指揮官)側だし俺。

 ……ちゃうねん。 俺別にダ○ョウ倶楽部とかじゃないから、『するな=しろ』の等式成立しないのよ。 クラス︰【コメディー(お笑い芸人)】のサーヴァントとかじゃないから。文句言っても仕方ないからやるけどさ』

 

 

 内心で長めの愚痴をこぼしながら、向き直る。

 初期に居た敵を全滅させて地に足ついていた男の視線の先には──―上空を飛び回る竜の集団。

 耳を劈くような鳴き声を響かせて、間違いなくこの場における最大の脅威である男を排除せんと動こうとしていた。

 

 

 だが既に、宝具の発動準備は整っている。

 

 

「──―さあ集え、数多の冒険を共にした英雄達。即ち我ら、アルゴノーツ!」

 

 

 魔力の高まりと共に、宝具発動の詠唱を紡ぐ。

 半分以上は端折ったが、大した影響は無い。

 問題はこの馬鹿がつい思い切りアルゴノーツって叫んでしまった事だが、藤丸達とはかなり距離が離れていたから聞こえていなかったのでモーマンタイ。

 

 

 男はそう内心で弁明する事だろう。 

 

 

「────―」

 

 

 ……冷静に考えれば正直な所、別にバレたっていいのだ。

 自身が死ぬ訳でも無く、是が非でも隠し通さねばならぬ理由なんて物も存在しない。 本当にちょっとした騒ぎになるだけだ。

 英霊の別側面(オルタ)やifの姿だって既に吐き捨てる程存在している故、打ち明けてもカルデアからは直ぐに受け入れられるだろう。

 

 

 ──―どうしたものか。

 客観的に見ると、本当に秘匿する理由が存在しない。

 

 

 ただ何となく黙っていた方が良さそうという己の直感に従った末、自分から言い出す機会を失った馬鹿野郎。

 それが現在の自身の姿であり、その行動は誰から見ても……もはや自分から見ても不可解な物。

 

 

 故に一言で纏めよう。

 ──―もう引くに引けないマジ無理助けて。

 

 

『……欲を言うなら来るのはこのカルデアに居ないメンバーで、なおかつ空気を読んでいい感じに偽装してくれそうな面子であってくださいお願いします』

 

 

 そんな叶うかも定かではない万感の思いを込めて、ヤケクソ気味に宝具を展開した。

 

 

「──―天上引き裂きし煌々の船(アストラプスィテ・アルゴー)

 

 

 ……誰かが来た気配を感じると共に、再び雷霆を纏って目の前の竜達へと前進する。

 そして自身に随伴してくる()()()()に、()()()()()()()()を見て、心の内で乾いた笑いが込み上がってくる。

 

 

『……百点満点の人選だよコンチクショー』

 

 

 雷霆は全てを消し去る程の勢いで荒れ狂い、双神は目にも止まらぬ速さで戦場を駆け回る。

 黄金の鳥は正面から竜の膂力を上回る力で捻じ伏せて、各々が敵を蹂躙していく姿がそこにはあった。

 

 

 遠目から──―藤丸達の位置から見れば炎の鳥と光の線が動き回っているようにしか見えず、動きを目で追うので精一杯だろう。

 他に比べて、この状況下をゴリ押しで有耶無耶にするにはうってつけの存在だった訳だ。

 

 

 ……きっと、魔力や霊基パターンはデータとして保存されるが。

 どっちも神霊という点を加味したら、結局巡り巡って自身の怪しさを倍増させて己の正体を明かす道から更に一歩離れたとも言えるだろう。

 

 

 そんな事を考えて、イアソンは半ば八つ当たり気味にドラゴン達を切り刻み、火や雷で焼いたり炙ったりして──―ふと気づいた頃には、竜達は皆揃って息絶えていた。

 原型など留めていなかったのだが。

 

 

「……終わりだな」

『この面子で二分かぁ……早いのか遅いのか微妙に分からんラインって凄いモヤモヤする』

 

 

 今回の功労者その一ことカストロが、自身の事を呆れた目で見てくる。

 何故かとイアソンは考えたが、己の胸に手を当てて考えてみれば

 

 

「……また面倒事に巻き込まれているらしいな」

「またって何だよまたって……いやでもマジで助かったわ」

「別に構わん」

 

 カストロとポルクスの二人は、自身の権能の宝具で光の速さに達する事が可能であり、それが先程の光の正体な訳だ。

 使い続けると反動で霊基に傷を負って退去することになるが、どのみち魔力が尽きるか、役目が終われば帰還するイアソンの宝具で喚ばれた場合は、反動などのことを考えなくて済む故に権能の性能をフルに発揮できる。

 

 

「……むう。イアソン、私の事を忘れていませんか?」

「それは無いから安心しろ。 助かった、ポルクス」

「当然の事です。ですが──―」

 

 

 そこで一度言葉を区切る。

 何だ、と思った瞬間、互いの頭がくっ付くほどに顔が近づく。

 彼女は仮面越しに、彼の耳へ触れるように囁やいた。

 

 

 

「──―この対価はまた近い内に、ですね?」

 

 

 

「……こういう時はちゃっかりしてるよな、お前」

「だって私、神様ですもの」

 

 

 実際その声色には若干の呆れの色が混じっている物の、煙たがっているような姿勢は無い。

 

 

 彼女は神、半神である。

 れっきとした神霊として座に記録されている彼女らは、本来ならば人間が……否、魔術師のサーヴァントでさえ現世に喚ぶことなど限りなく不可能に近い。

 

 

 一人の男を除いて、だが。

 

 

 ただ一つの例外、英霊イアソンの宝具による招集にのみ、神霊ディオスクロイは──―アルゴノーツの英霊達は、無条件に召喚に応じるのだ。

 

 嘗て生前に育んだ強固な縁。

 仮にこの絆を裂こうとしても、未来永劫決して切れることのない魂レベルでの誓いである。

 

 

『あまり自覚してないようですが……、神を──女神をこんなに好き勝手扱えるのなんて、貴方くらいなのですよ? 当然、相応の対価があっても良いと思うのです』

『別に良いぞ』

 

 

 ──以前何処かでそんな話をしてから、時々彼女達はイアソンに召喚の対価を強請るようになった。

 といっても、そう大層なものではない、些細な願いばかりであったが。

 

 

 生前では終ぞ実現しなかった、穏やかな日常。

 

 

 ──もう、貴方が『あの時』のように一人で離れないように。

 

 ──例え何があろうとも、二度と()()はさせない。させて堪るものか。

 

 私は貴方の──―貴方の為に在る神だから。

 

 

 

 気まぐれか、それとも当時の彼女の纏う不穏なオーラに押されてかは不明だが、彼もそれを了承した。

 因みに答えは前者で、内心では『役得じゃん。むしろこっちが得しちゃってるけど良いんかこれ』とも考えていたが、そんな能天気にも程がある域にある彼の内心のソレを知るものは誰一人居ない。

 

 

「……おい、時間だぞ」

「そうですね、兄様。……では」

 

 

 ここで宝具からの魔力供給が尽きたのか、光の粒子となり退去する二人。 

 ……自身が感じる気配から、少し離れた場所に居たカイニスも既に退去していることが分かった。

 

 

 そして『また』とポルクスが言うように、同じ軸のイアソンが続けて宝具を使用した場合、尚且つその場に同一の英霊が居ない場合のみ限定して、召喚の記憶が引き継がれる。

 本当、つくづく万能な宝具である。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

「……戻るか」

『もういっその事バレた方が楽になれるんだよなぁ』

 

 

 実際、バレた時の騒動さえ乗り越えれば、この張り詰めた空気から逃れられる。

 だが、正体を秘匿した理由の一つとして、ある懸念点があった。

 

 

『……てか、結局俺って何のために此処に呼ばれたん? あのぐだ子との縁は持ってるけど、ここのぐだ男は初対面だし。確か型月の鯖召喚のルールで間接的にも縁が一切生まれないやつは呼べましぇーん的なのあったよな?』

 

 

 朧げな記憶を引っ張り出し、生まれた疑念を言語化する。

 この身は確かに『藤丸立香』と縁を結びはしたが、この世界の『藤丸立香』ではない。

 故に召喚などされることなく、これからも縁を結ぶことは無かったはずだ。

 それでも引きずり出されるように己が呼ばれたと言う事は、自身にまつわる類で、それだけの理由が存在するという事なのだろう。

 

 だが──

 

 

「──真実は誰にも分からない、か」

『こればっかりはそれらしい証拠もないししゃーなしか。……気長に行くしかないよなぁ』

 

 

 ……一応今回の目的は果たしたので、藤丸の元へと戻る。

 戻ってきたイアソンの存在に気づいた藤丸は、笑顔でイアソンへと話し掛ける。

 

 

「お疲れ様。ごめん、勝手に宝具使わせちゃって」

「……いや、構わない。あの時のお前の指揮官としての対応は正解だ。気にしなくていい」

「それなら良かった、ありがとう。……ちなみになんだけどさ」

「……どうした?」

 

 

 一拍の間を挟み、藤丸が言葉を紡ぐ。

 

 

「さっきドクターが『これは……神霊の反応!? 彼は神霊、それも戦闘に長けた存在を喚ぶ宝具を持つのかい!?』って言ってたから、どんなのか気になってさ」

「成る程な。……というか声真似上手くないか」

「まあね」 

 

 

 成る程。

 謎のサーヴァントが本来呼べない神霊を、それも疑似サーヴァントでもないのに普通に喚べてるのは、この時期のカルデアからすれば凄いことになるらしい。

 きっと二年もすればその常識は塵一片すら残らない程に粉砕玉砕大喝采されるのだろうが、今この場にそれを指摘できる者は存在しない。

 

 

「……何の神か、か。強いて言うなら片方が航海に関しての守護神的な存在だ。もう一人は──俺も分からん」

「そうなの?」

「まあ、よくある話だろ」

『だって俺の知ってるカイネウス(カイニス)人間だし。 多分神って言ったら言ったでブチ切れられるし』

 

 

 実際、(彼女)を神霊としてなら兎も角、神として扱うのは(彼女)にとっての地雷であった。

 なんなら神という存在そのものが地雷である。

 

 

 見え透いた地雷を踏みに行くほど、イアソンは愚かではなかった。

 

 

「というか、そんな人達を呼べるオケライって何者なの? やっぱり気になる……全然分かんないけど」

「……念の為言っとくが、俺は神なんて大層な物じゃないぞ。(肉体的には)れっきとした人間だし、アレが例外なだけだ」

「へぇー」

 

 

 ……この男をただの人間として定義して良いのかは不明だが、彼等はそんな会話をしながらカルデアへと帰還する。

 だがその後にお開きとなった直後、イアソン的には死刑宣告にも近い通達を、藤丸から受けることとなった。

 

 

「あ、今回の効率が過去最速級で良かったらしいから、ライダーは明日から周回組ね」

「やめれ」

『マジでやめて』

 

 

 ……周回組一軍、投入である。

 そしてこれだけは、後に彼の正体が割れた後も終ぞ変更されることはなかったらしい。

 

 

 

 後に彼は語った。

 ──この辺りで潔くバラしておけば良かったと。

 

 

 そう言うに至る原因は、この日から四日後に訪れる。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 彼がカルデアに召喚されてから五日が経ち、漸くこのカルデアでの生活にも慣れてきたと思っていた最中のことだった。

 

 

 

「微小特異点が発生したって、本当?」

「残念ながら本当だよ、藤丸君」

 

 

 

 藤丸の問いにそう返したダ・ウィンチが、管制室に集まった面子を見る。

 藤丸とマシュという基本メンバーはさておき、問題は招集されたサーヴァントだ。

 

 

「君たちが集められた理由は分かっているね?」

「──当然分かっているぞ、ダ・ウィンチ。大方、その特異点に同行できるのが私と、そこのサーヴァントだけだと言うのだろう?」

「あれ、今日のイアソンやけに乗り気だね。どうしたの?」

「乗り気なわけがあるかバカ。 ヘラクレスではなく私が呼ばれている時点で、何かあるとすぐに分かる。──勿論、オレが最前線に立つのは断固としてお断りだからな!」

「うん、確かにいつも通りだね」

 

 

 そう。

 今回管制室に召集されたサーヴァントは僅か二騎。

 しかも、セイバー:イアソンと、ライダー:イアソン(異説)という実質的な同一人物であった。

 それを知っているのはイアソン(異説)本人のみだが。

 

 

「じゃあ、ここからはロマニに任せようかな。後よろしくねー」

「え、僕? ……さっき聞いたばかりだと思うけど、今回のミッションは突然発生した微小特異点の修復。 発生地点は──ギリシャ」

 

 

 ソレを聞き、うへえと顔を顰めるイアソン(セイバー)。

 よりによって何でオレ一人なんだとでも思っているのだろう。

 対してイアソン(ライダー)はというと、

 

 

『絶対これアレじゃん。(イアソン)に関係する類の特異点じゃん。本来の俺いるし』

 

 

 

 実質的に同行可能なサーヴァントがイアソンのみという事は、必ずそうでなくてはならない理由があるはずだ。

 座標がギリシャである辺りも、この仮説の信憑性を高めている。

 

 

 

「同行サーヴァントはイアソンとオケアノスのライダーの二人。これはイアソンが言った通り、この特異点に入れる霊基に条件があって、そこに君たちニ騎の霊基が合致したという訳だ。 ……いつもよりも厳しい環境下だ、僕たちも最大のサポートをする。頑張ってくれ、藤丸君」

「了解です、ドクター」

 

 

 そうして藤丸達がレイシフトの準備を進める中、イアソン(異説)に話し掛ける者がいた。

 イアソン(セイバー)である。

 

 

「おい、そこの鎧野郎」

「……鎧野郎は酷くないか?」

「貴様が真名を明かしていないから、こっちもどう呼べばいいか分からん。……オケアノスのライダーだったか? とにかく我慢しろ」

「それもそうか」

 

 

 謎にあっさり納得したイアソン(騎)を見て、ええ……と一瞬困惑しかけるイアソン(剣)だったが、すぐに立て直して本題へと入る。

 

 

「シールダーはマスターを守る役割があるのは知っているな?」

「ああ」

「そして私は前線には出れない」

「出ろよ。いや出ろや」

 

 

 辺りに一瞬、静寂が訪れた。

 

 

「指揮官だから! オレは本来指揮官だから! ……それに、お前がかなりの強さを持つことはそこそこカルデアに知られている」

「……つまり?」

「私の護衛を任せた」

「分かった」

『いや何でだよ、別にいいけど』

 

 

 何となくだが、実際は自分も普通に戦って活躍するのだろう。

 そんなある種の確信にも近い直感に従い、オリジナルの自分に話を合わせる。

 

 

「ならば俺の指揮はお前に任せた。指揮官としては間違いなくお前の方が上だ」

「当然だろう? オレはアルゴノーツの船長。最強の味方を使うのなら、相応の能力が必要だ。というか無いという事聞いてくれないし」

「……そうだな」

 

 

 ──俺も船長だよって顔を晒したら面白そうだと思ったが、止めておく。

 指揮官としてならオリジナルの方が上というのも事実だ。

 正体を明かすにしても今ではない。

 

 

 

 

 そうして、彼らは特異点へと向かう。

 その先でイアソン(騎)は、己の仮説が的中していたことを理解することとなる。

 

 

 

 自分が何故召喚されたのか。

 その答え合わせが今、行われようとしていた。

 

 

 

 

 




ある日のカルデア(inぐだ子)
「なあカストロ」
「何だ」
「俺、ドッキリを仕掛けようと思ってさ」
「……言ってみろ」
「まず俺が全身血だらけになって倒れて―――」
「……止めておけ。いやマジで止めろ、死ぬぞ」




活動報告にコメントしてくれた皆様、ありがとうございますm(_ _)m
番外をダラダラ続けるのもアレなので恐らくあと二話くらいで締められるようにします。

次は……

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