数多の英雄を束ねる者   作:R1zA

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この話から、神話時代は多大な独自解釈+設定が出てきます。違和感を感じても、「ああ、そういうものなんだ」くらいのノリで読んでくれると助かります。


前触れ

 

 

 

 

 

―――貴方と初めに出会ったのは何時だったでしょうか。

 

 

ああそう、あれは兄様と街を歩き回っている時だった。元々その人の事は兄様から聞いていましたが、最初は只の冗談だと思っていた。

 

曰く、彼は他の人とは一風変わった価値観や考えを有しており、そのせいかは知らないがヘラとゼウスに目を付けられている。

ある日突然外出したと思えば夕方頃に帰ってきて、何をしていたかと聞けばヒュドラを一人で倒していたという。

そして兄様が森の賢者の元を離れた後も日々様々な怪物を打ち倒し、周囲にその名を轟かせている。

 

成る程、やはりいつ聞いても常軌を逸している。この世に一人で、それも難なくヒュドラを討伐出来る人間なんて……いや、神の血を持つものでさえそう沢山は居ないでしょう。

 

 

 

―――そうして私は、貴方と出会った。

 

 

 

元々彼に対して少なからず興味を抱いていたかと聞かれれば、イエス、と答えるだろう。だって、基本的に人間を嫌う兄が、彼のことを話すときだけはとても穏やかな顔をするのだ。

 

だからどのような人間(ひと)なのか気になった。

思えば私がこうして兄様以外の人間(ひと)に強く興味を抱いたのはこれが初めてだった。

 

そして貴方は開口一番に、こんなことを言ってきた。

 

 

―――なあ、コルキスまで行くのに、空を飛ぶのとドラゴンに乗るの、どっちがいいと思うよ?

 

 

瞬間、私は衝撃を受けて固まってしまった。多分横で兄様も似たような反応をしていたと思う。その時、私は兄様の言っていた『一風変わった価値観や考えを持っている』という言葉の意味を初めて理解できた気がする。

今の移動手段は船による航海だ。空を飛ぶなんて発想は誰にもなかったし、そもそも色々な場所が異界と繋がっているので、空を飛んでも意味がないからであろう。

 

そしてそれから、私達は貴方の船に乗って様々な旅をした。途中、私はボクシングが得意だったから貴方に手合わせを頼んだ。引き分けだった。そして貴方は惜しげなく私に称賛の言葉を掛けてくれた。―――嬉しかった。

思えば、私はあの頃から既に貴方に惚れていたのかもしれない。

 

だからなのかもしれない。貴方がアタランテやメディアと話して居るのを見ると言い様のない気持ちに駆られるのは。

そしてその想いは時が経つほどに膨れていった。

徐々に実感する。

 

貴方と共に戦うことが、

 

貴方と他愛のない話をすることが、

 

何よりも貴方と一緒にいることが――――――好きだ。

 

 

貴方と一緒にいる間は幸せな気分に浸ることが出来る。兄様と一緒に居るときとも違う、そんな気持ち。

 

元々私にとって、兄様以外の人間(ひと)なんて確かに神の血を強く引く私の慈愛の対象ではあるが究極的にはどうでも良かった。だから周りの全てが無彩色の風景のような物だった。

 

―――でも、貴方と出会ってから私の風景に色がついた。

貴方はとても優しいから、複数の人から好意を向けられている。それが少し気に食わないが、私は、私達は導きの星として貴方を導き、こんな日々がこれからも続けばいいと、そう思っていた。

 

 

―――でも、運命(Fate)とは残酷なものだった。

 

 

 

『ギガントマキア』、後の世で人間にそう呼ばれるようになる戦いで貴方は―――――――――

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

イアソン達が住まう人界とはまた違う、人界に長い間顕現出来ない神々が普段住まう場所、天界。

 

 

其処には、人とは一風変わった者が一人佇んでいた。尤も、実際その正体はお世辞にも人とは言えないのだが。

 

 

そして彼が見つめる先にあるのは―――何の変哲もないとある大地だった。全能の力を持ち総てを見ることが出来る彼が珍しくしっかりと其処を見据えているのは、きっと其処に凝視するほどの何かがあるということなのだろうか。

 

 

「―――遂にこの時が来てしまったか」

 

 

 

そう言葉を零す。この時(・・・)とは果たして何なのだろうか。ただ少なくともその緊張感から只事では無いことが伺える。それに、何処かそれを忌々しげに見ているようにも見える。

それはまるで、嘗て一度殺された宿敵を見るかのような目で。まあ実際に自分の本来の身体を壊されたという意味では、一度殺されたと言っても良いだろう。

 

 

「ヘラクレス、そして―――イアソン。我の子、我の(雷霆)掻き抉る時の大鎌(我の嘗ての■■)を授かりし者よ、―――今こそその役目を果たす時が来た。」

 

 

ある一点を見つめながら今このギリシャにおいての『最強』たる二人の名を口にする。背丈も、肌の色も、血筋も、仲は良いが似た部分の無い二人には何か共通点があるのだろうか。―――そして、役目とは何なのだろうか。

まあ、後世において『星座にすれば解決すると思ってるやつ』『大体ゼウスのせい』と称されるろくでなしな最高神のことだから、きっと二人にとっては碌なことでは無いだろう。

 

 

 

 

そして彼が見据える大地、その先にあるのは―――

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

―――戦っている。

 

 

ゼウス達神々が、ヘラクレスが、カストロが、ポルクスが、他のアルゴノーツの皆が、

 

 

――――――そして自分(イアソン)が。

 

 

普通に考えれば珍しい事だろう。夢の中(・・・)で第三者視点で自分を含めた物事を見るのは。

だがイアソンにとっては割とよくあることなのだ。全能神の加護を賜った頃に発現した、後世で生まれるブリテンの赤い竜(アーサー・ペンドラゴン)を上回る圧倒的な直感。

それがこうして時々、夢の中で断片的な未来視に近い出来事を映すのだ。

 

しかし今回は只事ではないだろう。いつものような今日の朝ごはんは何だろうとか、明日の天気は何だろうとかそんな能力の無駄遣いな予知では断じてない。

 

 

そう、戦っている(・・・・・)。しかも神々と共に戦っている自分達が押されているのだ。

戦っている相手には靄が掛かっているせいで何と戦っているのかは分からないが、かなりの巨体だということだけは分かった。

こうして夢に出てくるということは近いうちに、少なくとも一ヶ月以内にはこの光景が実際に起こることを示している。この予知夢は一度も外れたことが無いので、きっとどう足掻いてもこの未来は避けられないのだろう。

 

 

 

「(てか何で神々まで出たオールスター対戦になってるんですかねぇ…………特撮ものの劇場版ですか?)」

 

 

そんな馬鹿なことを考えながら見ていたイアソンだったが、此処である変化に気付く。

 

 

「(お、靄が無くなってきた――――――え、マジで?流石にソレはまずくない?)」

 

 

 

 

 

―――(もや)がなくなって見えてきたのは……複数の『何か』だった。

英雄(ヒト)でも、(かみ)でも、エネミー(魔獣)でもない存在。後世において神話や伝承にも現れない怪物。

 

 

 

 

 

 

―――『何か』以外で表すならば、人影、だろうか。

 

そう形容できる特徴を確かにソレは備えていた。数十メートルを超えるその巨躯は所々異形な部分があるが基は人型だろう。

ソレらは、その赤い双眸で果敢に戦う皆を捉えており、

その頭頂部周辺には、不気味に輝く巨大な『()』がある。

 

 

 

『『『―――――――■■■■■■■!』』』

 

 

そして、ソレらの叫びはまるで空間そのものを大きく振動させるかのような不気味さ、異質さがあった。

 

 

イアソンの目に映る視界の中では、自分達がその巨人達に苛烈な攻撃を仕掛けているが、ダメージを受けてる様子は無い。

寧ろその攻撃を吸収して徐々に巨大化しているように見える。

このままでは自分達がやられるのも時間の問題であろう。尤も、見ているだけの今のイアソンにはどうすることも出来ないのだが。

 

そうしている内に突然、視界が暗転する。空間が歪み、まるで()の中のような雑音が聞こえながら、脳裏には認識することは出来なかったが様々な情景が流れていく。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(―――嘘、だろ?なんで、みんなが)」

 

 

 

 

そして、視界が良好になった時には、目の前は惨状と化していた。

抉れた地面、怪物達の残骸、そして――――――事切れた仲間たちの姿。生き残っているのは神々やヘラクレスなどの数多の英雄達を含めても一握りの強者のみ。ここが夢の中だと分かっていても今見ているものを認識したくなくて目を逸らす。

 

そしてその先を見ると、自分の姿があった。左腕と右足は潰れ、身体中から血をこれでもかと流していたが何とか生き延びたようだ。

―――何となく今、目があったような気がする。視線を外そうとする自分の意志とは裏腹に、自分の目は自分(イアソン)を捉えて離さない。

そして、今までは雑音が入り乱れて殆ど何かを聞き取る事は出来なかったが、そのイアソン(自分)が発した言葉だけは、どうしてか鮮明に聞き取ることが出来た。

そして視界が暗転する。どうやら向こう(現実)で目が覚めたようだ。

 

 

 

 

 

 

――――――変えてみせろ。

 

 

 

その一言を心に刻みつけ、イアソンは目覚めるべく自らの意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――っ!!」

 

凄い勢いで飛び起きる。夢の内容が内容なのでまあ仕方ないかもしれない。

 

そして少しずつ眠気が覚めて、改めて先程の夢が本当に自分の未来予知(仮)で見てしまったものだと察して一言。

 

「特大の死亡フラグじゃないですかヤダー……」

 

 

ここに来てまだ其処まで言えるのが地味に凄いが、目からは光が消えかけてるので単純に諦めの境地に至っただけかもしれない。

 

「逃げることは出来る」、「自分は生き延びて居るのだから逃げれば良い」、「結局一番大切なのは自分の命だ」とそんな思いが脳裏をよぎる。

きっと此処でイアソンが折れたとしてもそれを責めようとする者は殆ど居ないだろう。誰だって自ら死地に向かってヘッドスライディングするような真似はしないし、人助けだって根底には自分の安全がある上で行うのが普通なのだから。

自らの生死を厭わない他人の救済なぞ、それを実行出来るのは聖人や異常者などのどこか歪とも言える人達しかいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――まあ、そんなことが分かっててもやるしかないけど。これあれだよね、神話でいうギガントマキアだよね?どのみちやらないと世界滅んじゃうパターンのやつだよね?

 

 

 

それでもイアソンは運命に歯向かう。仲間が死ぬと知っていて、(いや)、自分の惚れた人達(・・・・・)が傷つくと知りながらそれを見捨てられるほど自分の価値観が失われていないからだろう。

―――人達と複数形な辺りが何とも言えないが。

 

 

 

 

 

後に彼は星見屋にてこう語る。

 

 

「いやだってさ、今までそういうのと無縁だったのに突然美少女と知り合って、それで距離感が凄い近かったり色々してくれたらそりゃあ鈍感系主人公な訳じゃない普通の男なら意識するだろ?オリオンとかも言ったら多分分かってくれるはず。よって俺は悪く無いはいQED証明完了」

 

 

 

 

 

 

 

先ずイアソンはこういう時に頼りになる人を考えて、真っ先に思い浮かんだ人物のもとへ向かう事にした。様々な分野に精通している、育ての親であり師である森の賢者の所へ。

 

ただ遠い。ひたすらに遠いのだ。幼少期は気にならなかったが、ケイローン塾の家は森の奥深くにあるので、かなりの距離を動かねばならない。

神体結界と魔力放出でかっ飛んで近くまでは直ぐに移動することが出来たが、間近まで飛んでいって撃ち落とされましたは洒落にならないので、こうして歩いて向かっている。

 

 

 

 

そうして、ようやくケイローンの住む場所まで辿り着いた。何気に再会するのは4、5年ぶりなのでそわそわしている。

 

「おーい!先生、急用があるのだが」

「おい、あんた先生の知り合いか?」

「ん?」

 

 

イアソンが前を見るが、其処には誰も居ない。今度は下を見てみると、およそ4歳程の緑髪の少年がこちらを見ていた。新しいケイローン塾の入門生だろうか。

 

 

「ああ、そうなのだが先生は何処に?」

「ちょっとまってて……先生!なんか先生の知り合いって人がきたー!」

 

そう言っておおよそ3歳の少年とは思えない速さで走って行く。少しすると、ケイローンの腕を引っ張りながら戻って来た。

 

「ほら先生、こっちこっち!」

「はは、そんなに引っ張らなくても大丈夫ですよ―――!?」

 

イアソンの姿を見たケイローンは予想外の人物だったのか驚きの表情を見せるが、直ぐに嬉しそうな顔をする。

 

 

「おお!イアソンではないですか、お久しぶりですね」

「ああ、四年、いや五年か?とにかく久しぶりだな」

「いえ、私こそ会えて嬉しいです」

 

何となくイアソンがケイローンの背後をちらりと見てみると、ケンタウロスの尻尾を無意識でかブンブン振っているのが見えて、師の言葉が紛れもない本心だと思うと、少し気恥ずかしくなる。

 

「なあ先生、この人誰なんだ?」

「ふふ、実はですね……彼は貴方の父ペレウスも乗っていたあのアルゴーの船長なのですよ」

「ほんとに!?凄い!」

 

少年がキラキラした目でイアソンを見つめる。ただイアソンは途中聞き捨てならない言葉が聞こえたのを聞き逃さなかった。

 

「おい、ちょっと待てよ……父親がペレウスってことはこいつもしかして……」

「おや、知っていましたか?そうです、この子はペレウスの息子アキレウスですよ」

「―――マジで?」

 

そして再びイアソンは今も自分を見つめる少年を見る。そして心の中で一言。

 

 

―――この子が将来女装したり、戦闘狂になるのかぁ……私は悲しい。悲しいよ。

 

 

何処かの円卓に居そうな赤髪の騎士風に言ってみる。まあ実際に言わなかっただけまだマシだろう。

そして、忘れてるかもしれないが、此処には世間話をしに来たわけでは無い。

 

「―――先生、そろそろ本題に入るが構わないか?」

「―――いいでしょう。アキレウス、貴方は他の部屋に行きなさい」

「はーい」

 

 

アキレウスが去ったのを確認してから、イアソンは少しずつ話し出す。

自分は夢で時々未来が視える事。今回見た夢では何か強大な巨人が迫ってきて、最後には一部を除く殆どが死んでしまったこと。

イアソンの話を一通り聞いたケイローンが、神妙な顔つきで話し出す。

 

 

 

「―――結論から言うと、イアソン。貴方が視たというその巨人、心当たりがあるかもしれません。」

「本当か!?あれはいったい何なんだ!?」

「ほら、落ち着きなさい。順を追って説明しましょう。尤も、私も実際にそれを見たわけではないのですが」

 

 

不死の肉体を持つ神霊たるケイローンが見たこと無いと断言するもの。それは即ちケイローンが生まれる前に起こった出来事ということ。とんでもない怪物が迫ると改めて認識したイアソンは冷や汗を流す。

 

「では、先ず今のオリュンポス十二神、彼らの事を語らねばなりませんね。

 

 

 

 

 

 

―――まず、彼らの正体。それはこの世界の物ではありません。その実態は地球で発生した神々ではなく、別の宇宙から漂着した宇宙艦隊、という物らしいです。イアソン、これは冗談ではなく本当のことですよ。

 

 

ある時ゼウスと語らう機会があったのですが、その時聞いた話によれば、彼らを生み出した別の宇宙の超文明は既に滅んでおり、「母星の文明再建」を至上命題として旗艦であるカオスから送り出されたんだとか。

 

過酷な宇宙の旅の中で艦隊とやらは次第に数を減らしていき、残った十二の艦が地球に漂着した。

地球上にいた原始人類により神として崇められたことで彼らは初めて「歓び」を知り、人と共に在りたいと願うようになった。ゼウスやヘラという名前もその時に得たものである。

 

 

―――というのが、彼らオリュンポス十二神の真実です。ほら、いつまでも呆けてないで、まだ話は終わっていませんよ。

 

 

その後は人類と共に文明を築いていき、いまは無いですが大西洋のアトランティスで繁栄を極めるものの、およそ一万年前に転機が訪れたそうです。

この世界の外から何でも、巨神?と呼ばれるものが来襲し、これへの対応を誤ったことで十二神はその真体を失ってしまった。

それを悔しそうに語るゼウスはええ、大変愉快でしたよ。

 

―――以上が、このギリシャに君臨する彼らの真実です。」

 

「うっそでしょ……」

 

色々と有り得ない情報が次々と飛んできて唖然とするイアソン。前々から確かにおかしいとは思ってた。アイギスはビーム出したり飛んだりできるし、ミノス島の一件はおそらく一生忘れることは無いだろう。

しかし神々自体がメカだなんて、誰が予想出来よう。

 

「というか知ってるのなら教えて下さいよ!」

「聞かれませんでしたから。」

「そりゃあそうでしょ!神の姿自体見たことのある人が殆ど居ないんだから!」

 

まだ言いたいことは沢山あるが、ふふ、と悪戯を成功させた子供のような師の顔を見ると、何も言えなくなるイアソンなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





Q,何でギガントマキアの難易度がルナティックになってるの?

A,だいたいゼウスのせい


-追記-2/5

そういえば二部七章で勇者王が出たらしいですけど、ある意味でこの作品のイアソンとは似通っている部分もありますね。
この話に出てきた‘‘あり得ざる可能性’’を示した予知夢ですが、これが現実になっていれば異聞帯勇者王に近い結末になったかもですね。


 

どっちを先にやるか(なおどちらでも修羅場る模様)

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