武装神姫 battle Master's 輪舞極戦譚   作:鳴神 青審

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第一幕〖忍んで生きる〗

今日は高校三年生としての学生生活の初日、朝早く目を覚ました段階では、この日も何時もと同じ様に何事もなく僅かに余裕を持って登校する筈だったのだが、今朝は妹に再び竹刀を持って立ち上がらないかと呼び止められてしまった故に珍しく遅刻寸前。

 

徒歩にしては長い登校ルートを駆け抜けながら、何故今日に限ってと咲樹を呪ってしまう。咲樹の神姫、天城に対しても同様に文句を唱えたくなったが、二人の性格をよく知っており、俺を心配してくれてのものだと理解してしまった手前責めるのは悪いと自己完結させてすぐに自身を落ち着かせる。

 

だが、今はそんなことに思い耽っている場合ではない。新たな一年の開始に遅刻なんてしよう物ならどの程度の傷が内申に響くか分からない。

 

特別優秀な成績を持つわけではなく、補填できる分野がないのでマイナス点はできる限り避けなくてならないのだ。

 

道中赤信号を見せ付けられる歩道で携帯端末を垣間見ると、割りと全力に近い疾走をしていたためか時間に再び余裕が生まれており、後は小走りか強歩で問題はない程度だ分かり、思わず安堵の息を吐き漏らす。

 

信号が間も無く青へと変わり、小走りで横断歩道を渡る。幾つもの十字路を形成している居住区の先にある学校目指し、暫しまた一心不乱に駆け抜いていくが、二つ程抜けた先の次の十字路で俺は、石塀で死角となって見えなかった右の歩道から現れた人と運悪く衝突してしまった。

 

「きゃっ?!」

 

金切り声と言える程甲高い、女性の悲鳴を聴覚で捉えながら互いに衝突の反動で尻餅を着く。

 

此方は大して痛くはなかったが、相手は女性なのでそうとは限らない。

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

ぶつけた額を軽く撫でながら顔を女性に向けると、女性、いや見覚えのあった隣町の高校の制服に身を包む、恐らくは同い年くらいの女生徒も同じ様に額を撫でながら俺に顔を向けてきた。

 

「痛ったた……何なのよ……。」

 

金色の髪を靡かせながら、女生徒の碧眼は此方を睨み付けており、俺の謝罪への返答もなければ己に非はなしと言うかのように謝罪も返さなかった。

 

「ちょっと、気を付けなさいよね。怪我でもしたらどう責任取るのよ?」

 

「悪かったよ。今回は急いていた俺の不注意が強い、仰る通り次は気を付ける。」

 

先に立ち上がった俺は女生徒へ謝意を込めて手を差し伸べるが、女生徒はこれを華麗にスルーして独りで立ち上がる。

 

何だかなぁ……でもまぁ取り敢えず落ち着け俺、まだ憤りを覚える時じゃない。そう頭に言い聞かせる。

 

女生徒にフラれたので、俺は自分の鞄を拾い上げるのだが、ポケットから携帯端末を落としていたのにも気付き、直ぐ様拾う。ホーム画面を照らし出すと、残りの距離を踏まえるとまた遅刻しそうな時刻になっていることに気付いた。今のトラブルで思いの外時間を取られてしまっていたようだ。

 

幸い女生徒は活気に満々ていて怪我もない。私物を破損させた様子もないので先に送った謝罪で〆として俺は再び学校へと駆け出す。

 

「あっ!ちょっと待ちなさい!」

 

「悪い、今急いでるんだ。また今度な。」

 

悪いが牙丸出しのやんちゃな犬に構っている暇なんて俺にはない、なんて柄にもなく心中で悪態をつきながらその場から逃れる。

 

またも通学路を駆け抜けて凡そ10分、漸く学校の校門前へと到達した。これから学業の開始を告げるチャイムが鳴る頃だと言うのに、既になかなかの量の汗が肌を潤している。

 

運動系の部活に入部はしておらず、課目に体育がない限りは着替えの類いは持ち込まない。そして今日は体育は無いので勿論体操着ないし着替えは持っていない。故に取り敢えずはハンカチで顔だけでも丹念に拭くことにした。

 

さっさと入校して内履へ履き替え、折り返し階段をハイテンポで登りきり新しい教室へと入室。チラリと黒板の上に掛けられている時計を覗くと長い針は後5分でHRの開始のチャイムを流す時刻を示している。軽い筆記用具を用意して席に座るだけなら充分すぎる時間の余裕具合に安堵の息を漏らしてしまう。

 

「やぁ、おはよう。」

 

予め決められている自分の席へと歩を進めていた時に、左手隣席の友人、堺 晴義に声を掛けられた。

 

俺も一言「おはよう。」と返してから着席する。

 

「珍しいね、君がギリギリに登校してくるなんて。」

 

「それが今日はどうやら厄日みたいでな……朝っぱらから妹や神姫に呼び止められるわ、登校中に隣町の学校の女生徒と衝突事故は起きるわで新学期早々酷い目に会った。」

 

「あっはは、君にしては刺激的な朝だね。」

 

「本当さ全く……まぁ、こっからはまた何時も通りだろうけどな。」

 

てかそうであって貰わなくては大変困る。今回は普段の登校ペースが崩れたから予想外の遭遇をしたのであって、今後は多分こんなことはないのだから。故にあの子との出会いなんて今日が最初で最後でしかない。そう思い耽りながら俺はあの女生徒の顔を仄かに思い出していた。

 

「そうだね、取り敢えず、今年も同じクラスだから卒業までよろしく。」

 

「あぁ、よろしく頼むよ。」

 

等と雑談を終えたタイミングで丁度良くHR開始のチャイムが鳴り始め、それとほぼ同時に入室してきた教員の先導の下に新たな一年の学校生活は始まった。

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