探しモノなら異能力探偵事務所へようこそ、   作:蒼井魚

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初恋の人を探して、

 唐突に異能力に目覚めた。

 神様だとか、仙人だとか、そんな存在に出会ったこともなく、本当に唐突に能力に目覚めてしまった。

 最初の頃は紛失した物をどこにあるか直感的に見つけ出すことができる。探し物を見つけ出せるその程度の認識だった。

 でも、テレビに映る行方不明の子供の場所が鮮明に映った時、自分に「探しモノを見つける能力」が生まれたことを実感した。

 この能力をどうにか活用できないか考えた時に、探偵という選択肢が浮かんだ。

 アルバイト生活をしている自分に探偵事務所を構えることが出来るか? そんな時、本当に棚からぼた餅で叔父が持っているテナントが空いた。

 格安でテナントを借りて構えた探偵事務所、名前を【異能力探偵事務所】という自分の能力を全面に押し出した……今思えば恥ずかしい名前だ……。

 

 

「初恋の相手を探してほしい?」

 

 年齢は四十代くらいに見える男性、少しだけ方言がチラつく言葉で自分が幼少期に出会った少女、初恋の少女にまた会いたいと表現した。

 初恋とは甘酸っぱいモノだと苦笑いを見せる。

 だが、依頼者の表情は本気で初恋の相手を探したいと真面目なものだ。

 

「どうして初恋の人を?」

「……最近になって彼女が夢に出てくるようになったんです。自分は彼女と会話したことはありませんが、どうして自分の夢の中に現れるのか! それが気がかりで……」

 

 依頼者男性の真摯な言葉で受けなければならないと心が決まる。

 この場合、初恋の相手の写真だとかは無い。だから依頼者の記憶の中にある初恋の相手の記憶を手繰り寄せる。

 美しい少女の顔が見える。

 これは学校のマドンナとか呼ばれる類の人間だな、なんてゆっくりと彼女の歩みを眺める。

 優しそうな男性と腕を組み、そして純白のウェディングドレスを着て幸せそうな笑みを見せている。

 結婚、人生の新しい一歩だな……。

 ――これは酷い。

 

「依頼者さん……自分はあまりお金を持っていませんので、初恋の彼女の元へ案内するだけの行動は」

「自分が払います! 彼女に何かがあるのなら自分はいくらでも!!」

「……今聞きますか? それとも後から」

 

 依頼者の男性が生唾を飲み込んで静かに後からと告げた。

 多分、初恋の相手が悲惨な末路に到達していると感じたのだろう。だからこそ、今は胡散臭い名前の探偵の言うことを疑っていたいと心の中がグチャグチャになっている。

 でも、俺は本当に能力を持っている。だから、これは酷いとしか表現できない。

 依頼者のお財布で彼女が眠る場所へ向かった。

 

 

 新幹線に揺られて数時間、そして依頼者の顔が真っ青になっていく。

 俺が知らない筈の故郷。駅に止まり、バスに揺られて「故郷」に辿り着いた瞬間に本物だと理解してくれたみたいだ。

 そして静かに開発が進んでいない田舎道を歩き、最終的には山の中に辿り着く。

 木の棒をスコップ代わりに掘り進んでいると甲高い金属音が響き、地面の中に埋まっているドラム缶の一部が現れた。

 

「うそ……うそですよね……」

「嘘ではありません。自分の能力が正しければ……この中に貴方の初恋の相手がいます……」

 

 依頼者は崩れ落ちて静かに涙を流している。

 これは事件だ。腐った人間が自分の都合だけで起こしたやるせない事件。

 

「彼女は……この地の大地主と結婚しました。多分、貴方も知る方です」

「は……はい……」

「彼女は両親の借金を憂いて、愛の無い結婚をしました。ですが、努力して……互いに愛し合おうと思っていたようです……」

 

 依頼者はもう聞きたくないと両手で耳を隠す。

 だから、自分の心の中でドラム缶の中に詰められた理由を語ろう。

 彼女の旦那様は非常に女癖が悪く、彼女を愛そうとはしなかった。ただ、地元では一番と呼ばれる美人を嫁にしたというプライドを見せたかった。

 そして、彼女と彼から家を継ぐ男の子が生まれた。

 でも、彼女は耐えられなかった。

 旦那の浮気、義母の厳しい指導、義父の嫌らしい瞳。

 自分の有責でも離婚し息子を正しく育てる決意を固めた。そして……跡継ぎ問題で闇に屠られた。

 

「……どうして、どうして私の前に現れたんですか」

 

 か細い声で聞いてきた。

 

「……この方は――貴方のことが好きだったんです」

「……えっ?」

「貴方の優しい性格が彼女のお父さんに似ていたみたいです。だから、会話こそしていませんが……貴方に惹かれていたのは確かです。そして、彼女を思って今まで結婚してない貴方なら、伝えたいと思ったのでしょう……」

 

 彼は落ち葉を握りしめて慟哭した。

 守れなかった両思いの初恋、それをグチャグチャの気持ちで泣くしかなかった。

 こういう依頼は……年に一回くらいがいいんだけどな……。

 

 

 依頼者と彼女の悲しい物語、それは警察の介入で終わりを告げた。

 何十年も前に失踪した女性、それが数日前に発見され……失踪ではなく殺害という結論が出た。

 それ以上の詮索はこの職業をしているならいらない。

 この能力で救える存在は……生きているか死んでいるかどちらかだと思う。

 本当に……ペット探しの方が気楽でいいや……。

 異能力探偵事務所は貴方の依頼をお待ちしています。

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