マワルセカイ   作:夏春冬秋

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書きたくなった分だけ書きました。最近プロセカエアプなので口調おかしかったらごめんなさい。


1-10月④

「──うん、こんなもんかな」

 

 ワンダーステージのみんな、ひいてはフェニックスワンダーランドとの契約を結んでから5日。

 さっそく脚本の初稿を書き上げた私は、マネージャーに初稿を添付したメールを送信して一息ついていた。

 

『早いね。さすがマワル』

「……人がSNS見ようとした時に限って、誰かさんが邪魔し続けてくれたおかげでね」

『感謝してくれてもいいよ?』

「アリガトウゴザイマス」

 

 ふふん、とミクが得意げに口角を上げる。目は相変わらず笑っていない。

 ……今日は和服テイストな衣装だ。最近色んなところで衣装の情報を集めているのか、段々とアレンジも覚えてきてオシャレさんになってきている。

 一体誰に似たのやら。いや私の子とかそんなんじゃないけど、私ってば服装センスだけは壊滅的だって絵名に太鼓判押されてて──あ゛。

 

「ステージ視察に行く時用の服見繕うの忘れてた……」

 

 

 

 

 

くるりん『たすけてえなな〜ん!!!れ!!』

 

えななん『文字すらうるさいのは才能よね』

 

くるりん『えななん神。一生のお願いがごさいます』

 

えななん『チャット検索しただけで20件はヒットするわよ、一生のお願い』

 

くるりん『スタイリッシュかつフォーマルで最もプリミティブでスコティッシュなフォールドな服を選んでください』

 

えななん『長い10文字』

 

くるりん『ビジネス+カジュアル』

 

えななん『明日16時駅前』

 

くるりん『(感謝スタンプ連打)』

 

─あなたはブロックされています─

 

くるりん『ひぃん』

 

 

 

 

 

「ムンフロの季節限定フラペチーノでいかがでしょうか……」

「よろしい」

 

 翌日。指定の時間より10分早めに着いたはずなのに、既に居た絵名に平身低頭でお願いしたところ、お許しが出たので一安心。

 いやまあ人目もあるから土下座とかはしないけど、心持ちは命乞いする蛇に睨まれた蛙だ。

 

「今回の新作、美味しいって評判だし色合いも可愛いから映えるのよね」

「あ、わかる。白いクリームにピンクのソースって綺麗だよね」

 

 と、そんな雑談をしながら──途中何度か脇見をしてその度に絵名に引っ張られながら──歩くこと数分。目的地らしい洋服屋さんに到着した。

 

「で、ビジネス+カジュアル? だっけ」

「うん。詳細は省くけど、仕事で遊園地のショウステージを観に行くんだよね。ビジネスではあるけど、遊園地だから制服とかスーツは違うかなって……」

「……ま、アンタのセンスじゃ良いとこジャケットにパンツ合わせるくらいでしょうね。それも上下灰色」

「う゛っ……え、絵名は私のこと大好きだよねぇ〜?」

 

 図星を突かれた苦し紛れの反撃は、ハンッと鼻で笑われてしまった。ぐぬぬ……。

 

「──とりあえず、これとこれ、それからこれも。試着してきて」

「はやっ。えっ、ええ? こ、これ着るの? 私が?」

「いいから、さっさと、行ってこい」

 

 素早い動きで選ばれた服を押し付けられて、絵名に背中を押されて試着室に押し込まれる。

 渡されたのは……なんて言ったらいいのか。白くてふわふわしたワンピースと、桃色のカーディガン?みたいな羽織るやつ。それから下に着込むであろうTシャツ的なやつだ。

 

「え、絵名。えなーっ。私ファッション音痴だから着方わかんないっ」

『はあ? ……まったく、しょうがないわね』

 

 服を両手にオロオロして助けを求めると、閉まっていたカーテンがシャッと勢いよく開かれた。

 そこには、今の一瞬で取ってこれるとは思えない程の量の服を抱えた絵名がいい笑顔で立っていた。

 

「脱いで」

「…………や、やだっ」

「いいから脱げ」

「ひぃんっ」

 

 嫌な予感がして精一杯みせた抵抗は、絵名の有無を言わせぬ圧の笑顔でかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

「ま、こんなもんでしょ」

「おお……」

 

 数時間はかかると覚悟していたのだが、わずか30分ほどで私は最終形態になっていた。

 上はカッターシャツに薄めのニットカーディガン。下はなんかスカートにも見えるショートパンツ。プラスして黒ニーソだ。

 

「なんかよくわかんないけど……シンプルな感じ?」

「素人目にはそうでしょうね」

「素人は黙っとれ──って感じ?」

「…………そうよ」

 

 嘘つけその目は絶対違うでしょ。今の絶対、めんどくさいからそういうことにしとこって意図の『そうよ』でしょ?

 ……とはいえ、カッターシャツなら仕事の打ち合わせとかでたまに着るから気慣れてるし、視察の日は少し肌寒い天気になるらしいからこのカーディガンあると良さそうだし。……こ、この丈のショートパンツは履いたことないし、ニーソも普段はタイツ派だからなんか、こう、なんか……!

 

「お、お会計してくる……」

 

 ちょっぴり恥ずかしい気持ちを抑えながら、でも絵名が選んでくれた服だから間違いは無いし、と自分を言い聞かせながら私は試着室に引っ込んだ。

 

「お会計がこちらになります」

「お、おお……」

 

 お会計時にちょっとビビる金額だったけれど、必要経費と割り切っていたのでまあすんなりお会計はできた。

 不思議だよね、服って。ガチャ10連よりも高い服しか置いてないお店ばっかりだもんね。……そう考えるとガチャって安いのか? いやそんなわけはないか。

 

 

 

 

 

「……ん〜。まあまあね」

「そだねぇ」

 

 お買い物も一段落して、近くのムンフロに入った私たちはさっそく季節限定フラペチーノを頂いたのだが。

 SNSで騒がれていたほどでは無いかな、と2人で首を傾げていた。

 

「あ、でもこういうのあるよね。期待値上がりすぎて、あれ?ってなること」

「……ちょっと分かるかも。映え重視で味は二の次っていうのも多いから、あんまり期待することは無いけど」

「さっき山ほど写真撮ってたもんねえ」

 

 私は、買って、受けって、座って飲む。だけど、絵名は受け取って座った後に、無限に写真を撮りまくってた。

 自撮り、商品だけ、ついでに私と一緒のツーショも山ほど。100枚は余裕で撮ってたんじゃないかな?

 

「今日はありがとね、絵名」

「……何よ急に。真面目な顔して」

 

 一息ついたところで、改めてお礼を言う。

 

「急だったのはこっちだよ。私ってばファッションセンス皆無だからさ、絵名が居てくれてほんとに助かっちゃった」

「…………あっそ」

 

 ニコニコ笑顔を向ける私に対して、絵名はぷいっと顔を逸らしてしまう。可愛いけれど、それはそれ。まだ言うことはある。

 

「絵名が悩んでるの気づいてたけど、無理やり誘っちゃってごめんね」

「っ──なん、で」

「分かるよ。だってずっと絵名の事見てたからさ」

 

 チャットじゃ分からなくても、顔を合わせたらすぐ分かった。

 何か分からないけど悩み事があって、それを隠しながら、けれど隠しきれなくてたまにボーッとしてることもあった。

 

「どうしたの、とか。相談乗るよ、とかは言わないよ」

 

 多分、今の絵名に一番必要な言葉は。

 

「私は絵名が好き。絵名の絵が、大好き。それだけは嘘じゃないから、信じて欲しいな」

「…………っ」

 

 ガタンッ、と勢いよく絵名が立ち上がった。

 

「…………帰る」

「うん」

 

 私にギリギリ聞こえるくらいの小さな声量で告げられた別れの言葉に、またねと手を振る。

 そのまま背を向けて去っていく絵名を見送りながら、ズズズと残ったフラペチーノを飲み干していく。まあまあ美味しい。まあまあね。

 

「…………?」

 

 ふと、出口付近で絵名が立ち止まった。

 くるりとこちらに向き直り、瞬間迷うような素振りを見せてから、

 

『ありがと』

 

 声には出さず、口パクだけでそう言った……ように見えた。

 

「…………推しのデレを肴に飲むフラペチーノ最高かよ」

 

 味は星3。思い出補正込みで星5です。

 ……ところで悩みってなんだったんだろうね? 分かんないけど解決したなら私は満足です。

 

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