マワルセカイ   作:夏春冬秋

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約半年ぶりなのやばい……
お手数ですが少し流れを変えているので、最初の方から読み直していただけると幸いです。(書いた本人も続き書くにあたって読み直しました)

映画まだ見れてない上にゲームの方も追えてないので、原作との設定の矛盾はご了承ください。いつか軌道修正すると思います。
年内には映画・原作再履修して続きをかければなと思っております……




1-10月⑤

「服よし。ノートよし。ペンよし。──うん、準備完了」

 

 フェニックスワンダーランドに視察へ向かう前日の夜。

 えななん神のお恵みにより服を手にすることのできた私に死角はなかった。

 

『モバイルバッテリー、忘れてるよ』

「うわマジだ」

 

 訂正、バリバリあった。

 

「個人でふら〜っと視察に行くことはあっても、正式に招かれて視察に行くのって初めてだからなぁ〜……」

『ついでに名刺も忘れてるよ』

「Oh……」

 

 テーブルの上で横たわるスマホから、椅子に座り優雅なティータイムをキメているミクが次々に指摘をとばす。

 今日は優雅なドレス姿だ。フリフリしててフワフワで、あんまり肌の出ないタイプ。

 

「……前にレーシング衣装、エッチだって言ったの気にしてる?」

『記憶、消したい?』

「めっそうもございません……」

 

 にっこり笑顔に感じる確かな圧。触れると消される!

 

「……ところでさ。あれから、仕事の話してこないよね」

 

 話題転換のついでに、前々から気になっていたことについて尋ねる。

 私がこの初音ミクと交わしたある種の契約。記憶を消さないことを条件に、セカイで生じるバグを防ぐお仕事。

 最初の方こそメッセージアプリで指示はあったけれど、その後一切音沙汰がない。いや、こうして夜中に雑談したり、作業中にSNS見ようとしたらとても良い笑顔で『先生、進捗どうですか?』なんて脅してくるけれど。

 

『うん? 今、絶賛お仕事中だよ?』

「は?」

 

 なにを言ってるんだこいつ? という顔をするミク。同じ顔をする私。

 

『小さめのは私が処理した方が早いからそうしてるけど、ワンダーランドのセカイに起きたバグはマワルに消してもらってるよ?』

「え、は? ワンダーランドって……も、もしかしてワンダーステージのみんなの事!?」

『そう。……あれ? ていうか言ってなかったっけ?』

「言ってないですけど!? なんも聞いてないです!!」

 

 スマホを掴んでガクガク揺さぶる私。とぼけた顔をしていたミクは一転してにっこり笑顔になり、

 

 

『じゃあ見た方が早いかもね』

 

 パチン、という指をならす音と共にセカイが変わる。

 

 

「ほら、マワル。あれを見て」

 

 いつの間にか等身大になっていたミクが指さす先には、

 

「…………なに、アレ(・・)

 

 

 地面がバラバラに崩れさり、全てのアトラクションが空中分解した、変わり果てた“ワンダーランド(ゆめのくに)”の姿があった。

 

 

「ワンダーランドのセカイだよ」

「そんなわけ──だって前見た時はジェットコースターだって動いてたのに」

 

 以前は真上に設置されていたのがミクの左後ろに変わっているけれど、それどころじゃない変わりように絶句する。

 

「残念だけどこれが現実。……って言っても、あの惨状はミライの姿であって今は違うんだけどね」

 

 パチン、と再び指が鳴らされる。

 強いノイズが視界を横切ったかと思うと、一瞬のうちに現実に戻っていた。

 

「ミライの……」

『そう。このまま、マワルが何もしなかったミライの姿』

 

 ベッドにへたり込んだ私を横目で見ながら、小さくなったミクが言う。

 

『言ったでしょ? (バグ)だって。バグはセカイをコワシて、タベて、後に残るのは意味の無い欠片だけ』

「…………」

 

 淡々とミクが告げる。まるで紙芝居でも読むように、決まった筋書きを読んでいるように。

 

『──けれど、マワルが動けば話は別』

 

 いつものようにミクが笑う。

 

『頼りにしてるから、しっかりお仕事してね?』

「………いえすまむ」

 

 混乱する頭から絞り出された返事は、とてもとても掠れていた。

 

 

 

 

 

『まあそうは言っても、今のマワルに出来ることなんてほぼ無いんだけどね?』

「ええ!? い、今の流れだと、完全に私が唯一の希望! やらなきゃやられる! くらいの感じじゃなかった!?」

『そんなわけないでしょ? マワルはあくまでも予備プラン。元々、私一人で解決するつもりだったし』

「えぇ……?」

 

 完全に力が抜けてベッドに倒れ込んだ私の口から、掠れた声が漏れる。

 いや、あんな脅しみたいなこと言われて『あ、とりあえず座っといてくれる?』で終わるの?

 

『防ぐ手段は沢山ある。今回の場合はそのひとつがマワルってだけ。──だからあんまり気にせずに、けど気を抜かずに頑張ってきてね?』

「注文が難しすぎるぅ……」

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 ミクさんの言うことが気になりつつも、情報量にパンクしていた脳は直ぐにシャットダウンしたのでよく寝れた。

 身支度を整えて時計を見ると、集合時間まで1時間は余裕があったけれど、何があるとも分からないので家を出ることに。

 

「いってきま〜す」

「──ん、姉ちゃんどっか行くの?」

「うん。友達とフェニックスワンダーランドにね。視察含めたプライベートって感じかな」

「ふーん。気をつけてな」

「あんがとねぇ。あたしゃいい孫をもって嬉しいよぉ」

「ばあちゃんかよ……」

 

 と、智也と軽口を交わしつつ玄関から出る。

 

「……10月のはずだけど、まだ暑いなぁ」

 

 予報だと日中は20度後半まで上がるらしい。いやぁ、えななん神の服装選びは天気予報さえも考慮されていて実に快適だ。メッセでムンブロのクーポン送っとこ。

 

 ぺこん。

 

『ありがと。ちょうど友達と来てるから、ありがたく使わせてもらうわ』

 

 爆速でメッセージが帰ってきた。そして数秒して、件の友達とのツーショットも送られてくる。

 可愛らしい服の女の子だ。うわ顔がいい。朝からいいものを拝ませてもらった……。

 

「──さて、気合い入れていきますかね」

 

 ミクの言っていたことはハチャメチャに気になるし気が重いけれど、それはそれとして今日はお仕事。

 幼馴染2人のメンツを潰さぬためにも、張り切って行くしかない!

 

「えい、えい、おー!」

 

 ……うーん、1人だと寂しいな。後で類と寧々にもやってもらおう。

 

 

 

 

 

 

「やるわけないけど」

「うーん、僕としては賛成だけど」

「はいはーい! 私もやる!」

「もちろん、俺もだ!」

「は? いやちょ」

 

 

「「「えい! えい! おぉー!!!」」」

 

 

「う、っるさい!」

「ははは」

 

 耳を塞ぐ寧々と、いつの間にか耳栓をしていた類を横目に、私とえむちゃんと天馬くん(声デカ三人衆)は円陣を組んで気合を入れまくった。

 ……気合を入れすぎて待ち合わせ場所の駅で駅員さんに怒られたけど、それはご愛嬌だ。

 

 

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