マワルセカイ   作:夏春冬秋

6 / 6
約半年ぶりなのやばい……
お手数ですが少し流れを変えているので、最初の方から読み直していただけると幸いです。(書いた本人も続き書くにあたって読み直しました)

映画まだ見れてない上にゲームの方も追えてないので、原作との設定の矛盾はご了承ください。いつか軌道修正すると思います。
年内には映画・原作再履修して続きをかければなと思っております……




1-10月⑤

「服よし。ノートよし。ペンよし。──うん、準備完了」

 

 フェニックスワンダーランドに視察へ向かう前日の夜。

 えななん神のお恵みにより服を手にすることのできた私に死角はなかった。

 

『モバイルバッテリー、忘れてるよ』

「うわマジだ」

 

 訂正、バリバリあった。

 

「個人でふら〜っと視察に行くことはあっても、正式に招かれて視察に行くのって初めてだからなぁ〜……」

『ついでに名刺も忘れてるよ』

「Oh……」

 

 テーブルの上で横たわるスマホから、椅子に座り優雅なティータイムをキメているミクが次々に指摘をとばす。

 今日は優雅なドレス姿だ。フリフリしててフワフワで、あんまり肌の出ないタイプ。

 

「……前にレーシング衣装、エッチだって言ったの気にしてる?」

『記憶、消したい?』

「めっそうもございません……」

 

 にっこり笑顔に感じる確かな圧。触れると消される!

 

「……ところでさ。あれから、仕事の話してこないよね」

 

 話題転換のついでに、前々から気になっていたことについて尋ねる。

 私がこの初音ミクと交わしたある種の契約。記憶を消さないことを条件に、セカイで生じるバグを防ぐお仕事。

 最初の方こそメッセージアプリで指示はあったけれど、その後一切音沙汰がない。いや、こうして夜中に雑談したり、作業中にSNS見ようとしたらとても良い笑顔で『先生、進捗どうですか?』なんて脅してくるけれど。

 

『うん? 今、絶賛お仕事中だよ?』

「は?」

 

 なにを言ってるんだこいつ? という顔をするミク。同じ顔をする私。

 

『小さめのは私が処理した方が早いからそうしてるけど、ワンダーランドのセカイに起きたバグはマワルに消してもらってるよ?』

「え、は? ワンダーランドって……も、もしかしてワンダーステージのみんなの事!?」

『そう。……あれ? ていうか言ってなかったっけ?』

「言ってないですけど!? なんも聞いてないです!!」

 

 スマホを掴んでガクガク揺さぶる私。とぼけた顔をしていたミクは一転してにっこり笑顔になり、

 

 

『じゃあ見た方が早いかもね』

 

 パチン、という指をならす音と共にセカイが変わる。

 

 

「ほら、マワル。あれを見て」

 

 いつの間にか等身大になっていたミクが指さす先には、

 

「…………なに、アレ(・・)

 

 

 地面がバラバラに崩れさり、全てのアトラクションが空中分解した、変わり果てた“ワンダーランド(ゆめのくに)”の姿があった。

 

 

「ワンダーランドのセカイだよ」

「そんなわけ──だって前見た時はジェットコースターだって動いてたのに」

 

 以前は真上に設置されていたのがミクの左後ろに変わっているけれど、それどころじゃない変わりように絶句する。

 

「残念だけどこれが現実。……って言っても、あの惨状はミライの姿であって今は違うんだけどね」

 

 パチン、と再び指が鳴らされる。

 強いノイズが視界を横切ったかと思うと、一瞬のうちに現実に戻っていた。

 

「ミライの……」

『そう。このまま、マワルが何もしなかったミライの姿』

 

 ベッドにへたり込んだ私を横目で見ながら、小さくなったミクが言う。

 

『言ったでしょ? (バグ)だって。バグはセカイをコワシて、タベて、後に残るのは意味の無い欠片だけ』

「…………」

 

 淡々とミクが告げる。まるで紙芝居でも読むように、決まった筋書きを読んでいるように。

 

『──けれど、マワルが動けば話は別』

 

 いつものようにミクが笑う。

 

『頼りにしてるから、しっかりお仕事してね?』

「………いえすまむ」

 

 混乱する頭から絞り出された返事は、とてもとても掠れていた。

 

 

 

 

 

『まあそうは言っても、今のマワルに出来ることなんてほぼ無いんだけどね?』

「ええ!? い、今の流れだと、完全に私が唯一の希望! やらなきゃやられる! くらいの感じじゃなかった!?」

『そんなわけないでしょ? マワルはあくまでも予備プラン。元々、私一人で解決するつもりだったし』

「えぇ……?」

 

 完全に力が抜けてベッドに倒れ込んだ私の口から、掠れた声が漏れる。

 いや、あんな脅しみたいなこと言われて『あ、とりあえず座っといてくれる?』で終わるの?

 

『防ぐ手段は沢山ある。今回の場合はそのひとつがマワルってだけ。──だからあんまり気にせずに、けど気を抜かずに頑張ってきてね?』

「注文が難しすぎるぅ……」

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 ミクさんの言うことが気になりつつも、情報量にパンクしていた脳は直ぐにシャットダウンしたのでよく寝れた。

 身支度を整えて時計を見ると、集合時間まで1時間は余裕があったけれど、何があるとも分からないので家を出ることに。

 

「いってきま〜す」

「──ん、姉ちゃんどっか行くの?」

「うん。友達とフェニックスワンダーランドにね。視察含めたプライベートって感じかな」

「ふーん。気をつけてな」

「あんがとねぇ。あたしゃいい孫をもって嬉しいよぉ」

「ばあちゃんかよ……」

 

 と、智也と軽口を交わしつつ玄関から出る。

 

「……10月のはずだけど、まだ暑いなぁ」

 

 予報だと日中は20度後半まで上がるらしい。いやぁ、えななん神の服装選びは天気予報さえも考慮されていて実に快適だ。メッセでムンブロのクーポン送っとこ。

 

 ぺこん。

 

『ありがと。ちょうど友達と来てるから、ありがたく使わせてもらうわ』

 

 爆速でメッセージが帰ってきた。そして数秒して、件の友達とのツーショットも送られてくる。

 可愛らしい服の女の子だ。うわ顔がいい。朝からいいものを拝ませてもらった……。

 

「──さて、気合い入れていきますかね」

 

 ミクの言っていたことはハチャメチャに気になるし気が重いけれど、それはそれとして今日はお仕事。

 幼馴染2人のメンツを潰さぬためにも、張り切って行くしかない!

 

「えい、えい、おー!」

 

 ……うーん、1人だと寂しいな。後で類と寧々にもやってもらおう。

 

 

 

 

 

 

「やるわけないけど」

「うーん、僕としては賛成だけど」

「はいはーい! 私もやる!」

「もちろん、俺もだ!」

「は? いやちょ」

 

 

「「「えい! えい! おぉー!!!」」」

 

 

「う、っるさい!」

「ははは」

 

 耳を塞ぐ寧々と、いつの間にか耳栓をしていた類を横目に、私とえむちゃんと天馬くん(声デカ三人衆)は円陣を組んで気合を入れまくった。

 ……気合を入れすぎて待ち合わせ場所の駅で駅員さんに怒られたけど、それはご愛嬌だ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

華喰蟲よ、樒の葉を食め(作者:夜雫の夢)(原作:プロジェクトセカイ)

▼中性中立の厭世家となった雫さんとそんな雫さんに性癖をメキョっと壊滅させられた被害者たちのお話です。▼


総合評価:1956/評価:9/連載:13話/更新日時:2026年05月15日(金) 12:00 小説情報

B組モブによる観察日記(作者:急にアクセル踏むタイプの人)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

よう実世界にts転生し、Bクラスに配属されたオリ主が送る淡々とした日常を記した日記。▼※独自設定注意。▼※主人公原作知識なし。▼※ts要素も薄いかもしれません。


総合評価:1841/評価:8.84/連載:1話/更新日時:2026年03月13日(金) 21:00 小説情報

魔女教大罪司教『傲慢』担当になってしまったTS僕っ子ロリ(作者:あのさぁBOT)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

主人公スバルが座っていたかもしれない、大罪司教の空席『傲慢』。▼その席に一足早く座っちゃったTS僕っ子ロリの話。▼アニメ勢のにわかです。原作と違う点があっても許して▼(以下微ネタバレ注意)▼主人公描いてみました。少しでも想像の手助けになると幸いです。▼絵柄は合わせてないです(怠惰)▼↓▼【挿絵表示】▼


総合評価:6972/評価:8.73/連載:14話/更新日時:2026年05月18日(月) 12:06 小説情報

好奇心の下僕(作者:かんぱにい)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

「勝利は既に俺の手の中にある。▼だったら、その過程で何をしようと何も問題はない」


総合評価:4013/評価:8.65/連載:12話/更新日時:2026年02月20日(金) 21:00 小説情報

親友のスパダリに勝ってハッピーエンドを迎えたい(作者:スイートズッキー)(原作:超かぐや姫!)

輪廻の外から出てきた男が、親友のスパダリと一緒にハッピーエンドを迎えにいく話。


総合評価:12847/評価:9.17/完結:36話/更新日時:2026年05月11日(月) 23:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>