ネルギガンテの親となった男の話   作:ムラムリ

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MHR:SBにネルギガンテが登場する時は、スマブラにセフィロスが登場した時のように、ラスボスを屠りながら登場して欲しいという願い。
壁に張り付いたラスボスの上から唐突に体を出して、地面に叩きつけてそのまま押さえつけて喉笛を食い千切ってから、プレイヤー達に吼えて、そこから連戦になって欲しい。

評価もfavも結構付いちゃって、こりゃあ、さっさと投稿しないとなと頑張りました。
皆もネルギガンテ好きなんですね。


2.

 陸珊瑚の台地から龍結晶の地へと、数日歩き通した。

 地面の質も、その陸珊瑚が積み重なって出来た脆くも分厚いものから、柱状奇岩による、幾何学的でありながらも自然の産物である岩石の硬質なものへと変わっていく。

 また、見られる小型モンスターもケルビやシャムオスから、ガストドンやバルノスといった種になっていった。

 歩いて、時折休んで、再び歩く。驚く程素直に付いてくるネルギガンテと共に、ひたすらに歩く。

 腹が減れば適当にそう言った小型モンスターを狩って食べる。時折、鞄に詰め込んできた古龍の素材をネルギガンテに与えながらも、そう言った小型モンスターも問題なく食べる事に心底ほっとする。

 古龍しか食わないような偏食家だったとしたら、今からでも諦めるか迷っていただろうから。

 生まれて間もないネルギガンテが一日中歩いても余り疲れた素振りも見せない事と、月が丸く輝き始める時期だった事もあり、夜もある程度は歩き続け、そして静かに眠る。

 欲を言えばネルギガンテを抱いて眠りたいと思ったが、目に見える早さでネルギガンテの角や棘は硬く伸び始めており、そんな事をすれば朝には失血死していてもおかしくなかった。

 初日に抱いておくべきだったな、と酷く後悔した。

 

*

 

 高く聳える龍結晶が大きく見える場所にまで辿り着くと、リオレウス亜種が寝床で寛いでいるのを見つけた。

 こぢんまりとしたその寝床は、空から見ても気付きにくいような、拠点とするにはうってつけの場所だった。

 暫く観察して、番が居ない事を確認する。

 一人で亜種の番の両方を相手取るのは流石に厳しいものもあったが、一匹だけならばと、堂々と姿を表す。

「……!? ガアアアアッ!!」

 寝床にまで唐突に現れた狩人に対して、リオレウス亜種は激しい怒りを露にする。

 だが、飛び立った直後に閃光を喰らい、地に落とされ。そしてどうにか立ち上がった時には、既に首筋に刃が食い込んでいた。

「う、らあっ!」

 リオレウス亜種が振り払うよりも早く、狩人が怪力の種を噛み砕きながら強引に振り切れば、太い血管が引き千切れた感触と共に、どばっと血が吹き出していく。

「ガッ!? ……カ……」

 リオレウス亜種は、狩人に気付いてから一分も経たずして、何も出来ないままに命を狩られた。

 狩人はその返り血をたっぷりと浴びてしまっていたが、近くに竜結晶の地から流れてきたであろう温泉がある事も既に確認しており、そう気にせず、片手剣にべっとりと付いた血をまず払う。

「ふー……。まあ、これでやっと一休み出来る」

 隠れてろと言ったネルギガンテも顔を出して「グルルッ」と嬉しげに狩人に喉を鳴らしてから、リオレウス亜種を貪り始めた。

「……食料にもひとまずは困らないか」

 むちむちっ、ぶぢぃっ! ぐちゅ、ぐちゅ、ごくんっ。

 狩人が切り裂いた首筋から顔を突っ込んで一心不乱に肉を食うネルギガンテ。

 そのトゲトゲな尻尾が嬉しげに揺れていた。

「……それにしても、少し疲れたな」

 幾日もとにかく歩き続けて、そしてリオレウス亜種との戦闘。

 一瞬で終えたとは言え、奇襲が決まっていなかったら長期戦になった挙句に、ネルギガンテの無事すらも保証できていなかっただろう。

 ……ネルギガンテが満腹になったなら、温泉にまで連れて行こう。

 爆炎を操るテオ・テスカトルや、錆びやすい鋼の体を持つクシャルダオラならともかく、己が肉体のみで戦うネルギガンテなら、きっと気に入るだろうから。

 

 並び立つ柱状奇岩や龍結晶の隙間を縫うようにあった温泉は、大型モンスターが入るには狭過ぎるものだ。

 ネルギガンテも、きっと一年、いや、数ヶ月と経たずとして入る事は出来なくなるであろう、その位の隠れた秘湯。

 竜結晶の地に住まうガジャブーが使った痕跡もあるにはあったが、龍結晶の地からやや離れた場所だからか、最後に使ったのもきっと、狩人達がここを本格的に調査し始める前のような古いものだった。

「ゔ〜……」

 入っていようと思えば一時間でも二時間でも入っていられそうな温さ。

 数日振りに体を洗ってリラックスしてしまえば、すぐに眠気が訪れてきてしまった。

 どうにも、と言うべきか、それともやはり、か。自分の感じる以上に疲労が溜まっていたらしい。

 ネルギガンテも疲れていたようで、最初こそは水飛沫を上げまくっていたものの、段々と動きが緩慢になっていった。

「……全く」

 そのまま溺れてしまいそうになっているネルギガンテを、浅い場所に仰向けにしておく。

「グ……ゥ……」

 そうすれば、もう四肢も動かす事も余りなく、次第に穏やかな寝息を立て始める。

 ……本当に、俺は親として見做されているんだな。

 初めて見た生き物を親と見てしまう。そんな生態の生き物も居るには居るが、あの獰猛なネルギガンテがそんな同じ生態だとは余り思えない。意外と知性もある古龍でもあると聞いているし。

 それに俺がネルギガンテを一人で育てると決意した理由は……独占したいから、という母性には程遠いようなものであって。

 じゃあ、何で俺は親として見做されているのだろう。

「…………」

 でも、考える気力も今はなかった。

 どっと押し寄せてきた疲労は、すぐに体を起こす事も辛くなってきてしまう。

 周りに他の大型モンスターの痕跡も見当たらなかった。自分も寝てしまおうか。いや、でも……。

 そう思っている内に、狩人も眠りに落ちてしまった。

 

*

 

*

 

 刻んだ日数が五十を超えた。

 狩人との密やかな生活も、特にアステラの誰かに気付かれる事もなく、ガジャブー達に邪魔される事もなく続いている。

 リオレウス亜種の鱗から肉から内蔵から骨までの殆ど全てを腹へと収めたネルギガンテはもう、狩人を背中に乗せたまま歩ける程に重く、大きくなっていた。

 また、狩人の言葉も幾つかは理解し、そしてまだ自らが竜にも劣る存在であるとも理解している。

 だが……そこで成長の勢いが一気に衰えていた。

 原因は、明白だった。

 鞄に詰めてきた古龍の素材はもう既に空っぽだった。空っぽになってから、ネルギガンテの成長は衰えてしまった。

 やはり、ネルギガンテにとって古龍を捕食する事は必要不可欠なのだろう。

 生きる為だけならば、小型モンスターばかりを食らっていても問題ないのだろう。ただ、強く成長する為には古龍を食らう必要がある。

 毎日与えていたのは少量ではあったが、その間はぐんぐん成長していた。だから多くは必要としないのだろうけれど、それでも必要である事には変わりない。

 その古龍を探す為に、狩人はこの頃は縄張りにネルギガンテを置いて、遠くへと出掛ける事が多くなっていた。

 

*

 

 自分だけで過ごす一日はとても退屈だった。

 やれる事なんて限られていて、でも僕はまだまだ弱い事なんて分かりきっていて。

 どうして僕の体と親の体が、どこからどこまでも違うのか。疑問に思った事もあるけれど、それは些細な事だった。

 親は、強かったから。初めて見た時から、何となく感じていた。付いていけば大丈夫だと。

 それは正しかったともすぐに分かった。

 まだ、自分というものをはっきりと自覚する前ですらあったけれど、それでもはっきりと覚えている。

 その体より何倍も大きな竜を、一撃で、簡単に仕留めてみせた。

 とても格好良かった。心から信頼出来ると思った。

 今となっては、僕は親の大きさを追い越してしまっている。でも、僕はあの竜を、あんな簡単に仕留める事は出来ない。

 この体の戦い方は、親の戦い方と全く違うものになるけれど。それでも、少なくとも、この親を頼っていれば僕は大きくなれる。自分で自分の食べ物を獲れるようになるまで、安全で居られる。

 だから、僕と親が全く違う事なんて、些細な事だった。

 でも、退屈なのには変わりなかった。

 僕の親は、とても小さかった。だからか、縄張りもとても小さかった。

 その中では走る事も飛ぶ事も大して出来なかった。

 

 ある程度大きくなってからは、親は竜を仕留めた時の武器ではなくて、木の枝を使って戦ってくれた。

 でも、どうやっても僕はその体に触れる事すら出来なかった。小さくてひょろ長い体、今の僕でも間違って思い切り殴ってしまったらぐちゃぐちゃになってしまいそうなのに、親はそんな事も全く恐れなかった。

 突っ込めば頭を踏んで飛び越されて。叩こうとすれば、ひょいと避けられて首に棒を当てられて。棘を飛ばしても一本も刺さらない。

 どうしたら触る事が出来るのか、考えても考えても分からない。

 分からなくて、他の事をしたくなる。

 この翼はもう自由自在に空を飛べるんだろうか?

 この前脚は、全力で物を叩いたらどれだけの破壊力を見せてくれるのだろう?

 思いっきり駆けたら、どれだけ速く走れるのだろう?

 この身に生える棘は、敵にきちんと突き刺さってくれるんだろうか?

 どれもこれも、僕より小さくなってしまった親の縄張りでは、出来る訳もなかった。

 外に出て、親が仕留めたあの竜みたいのに、もし出遭ってしまったなら。

 まだ、僕は勝てる気がしなかった。

「グゥゥ」

 早く、大きくなりたかった。早く、強くなりたかった。早く、とにかく早く。

 でも、その為には特別な食べ物が必要な事を僕の体は知っていた。親もそれを知っていた。そして、親が僕を置いて外に出るのもその為なのだという事を、僕は理解していた。

 でも。

「……グゥ」

 退屈で、寂しかった。

 早く帰ってきて欲しかった。

 

*

 

 日が沈む頃。

「ただいま」

 いつもよりやや遅くに狩人が帰ってくると、空から見えないような竜結晶の陰で体を丸めていたネルギガンテが嬉々として走ってきた。

「すまんな、今日は遅くなった。飯にしよう」

 飯として引きずってきたのは、ガストドンを二匹。この位なら今のネルギガンテでも簡単に倒せるだろうが、ここは古龍同士での縄張り争いが起こる事もある龍結晶の地だ。せめて、もう少し大きくなってからでないと外には出せなかった。

 丸一匹はネルギガンテに渡して、もう一匹は切り分けて、肉焼きセットを出して焼いていこうとした時。

「…………?」

 ネルギガンテはガストドンに齧り付く前に、狩人から何かしらの匂いを嗅ぎつけた。

「……食ってから渡そうと思ったんだけどな」

 そう言って、狩人はポーチから拾ってきたそれをネルギガンテの前に出した。

 それは、美しい蒼をした毛髪。龍結晶の地を訪れたナナ・テスカトリから抜け落ちた鬣。

 たった数本であれど強い存在感を示すそれは、紛れもなく古龍としての力を秘めた代物だった。

 狩人はネルギガンテと目を合わせて、既に決意を固めた事を伝えながら言った。

「近い内に、俺はナナ・テスカトリに挑む。

 耐熱の装衣も持ってきているし、特別強い個体でもなければ俺一人でも勝てると思うからな」

 言葉までは理解しなくとも、意図は理解したのか。

 ネルギガンテは、俺とその鬣を何度も見返してから、まだ竜にも通用するかどうか分からない自身の小さい体を見つめた。

「大丈夫さ。絶対に帰ってくるから、お前はここで馳走を楽しみに待ってれば良いんだ。だから、ほら、食えよ」

 そう言って、ネルギガンテの口に強引にその鬣を突っ込んだ。

「……グゥ」

 それでも、ネルギガンテは不安そうに狩人を見つめてくる。

「らしくないぞ、ほら。さっさと食え」

 そうして、狩人も肉を焼くのに戻る。

「…………」

 互いに黙る。肉を食い千切り、肉を焼く音ばかりが静かに響く。

 狩人自身も酷な事をしていると思っていた。

 このネルギガンテは生まれて一年どころか、百日も経っていないのだ。

 人間ならば、まだ一人では立つ事はおろか、自分の意志を示す事すら出来ない。だから、ネルギガンテがこんな短期間でこれ程に大きく、賢くなっている方が異常だ。そう思う方が自然だった。

 けれど、狩人はそれに頼るしかなかった。

 こんな日々が、いつまでも続けられる保証はどこにもなかったから。

 古龍を喰らう事で加速度的に強く、賢くなれるのならば、それに頼って一刻も早く、己が居なくとも生きられるようにしなくてはいけなかった。

 ……結局、何をしているんだろうな、俺は。

 ネルギガンテを独占したくて、アステラすらも捨てた。

 だが今となっては、一刻も早くネルギガンテを独り立ちさせようとしている。

 けれど、でも。

 たった五十日と言えど、ネルギガンテと共に過ごせる日々は何にも代え難いものだった。だから、後悔はない。

 

 殆ど無言のまま、けれどその日もネルギガンテと模擬戦を少しばかり行い、それからすっかり狭くなった温泉に共に入り。

 夜、焚き火も消して共に眠ろうとした時。

 ガストドンの毛皮の上で横になったばかりの狩人を、ネルギガンテが爪で軽く叩いた。

「……ん? 何だ? お、おい!?」

 ネルギガンテは狩人を掴み、仰向けになった自分の上に乗せて、抱き締めた。

「おい、放せよ。おい…………全く」

 がっちりと胸と手の内に抑え込まれて、けれど狩人は強くは抵抗しなかった。

 ネルギガンテと言えど、小さい頃はこうして親に甘える時間があるのかもしれなかったし、それに何より、ネルギガンテに抱かれて眠るなど、夢にも思わなかった事で。

 インナーしか着ていない体に、ネルギガンテの鼓動と、今でさえ人を軽く超える屈強な筋肉を備える胸板の分厚さと、意外にも柔らかい肉球の心地よさと、その全身の熱が鮮明に伝わってきて。

 正直、とても興奮してしまっていた。

 ……落ち着け、落ち着け、俺。

 そう思おうとも、心臓は狩猟の時よりも激しく鼓動してしまい。

「……ヴゥ?」

 ネルギガンテが嫌なのか? と言うように寝たまま聞いてきた。

「いや、良いんだ。とても嬉しいんだ、だからこのままで頼む。うん、このままで良いから、気にせず寝てくれ。頼む」

「…………?」

 結局、その日は殆ど眠れずに終わり、ナナ・テスカトリに挑むのは翌日以降に持ち越す事にした。




ネルギガンテに抱かれて寝たいなーっていう妄想からの小説なので、本懐は遂げましたね。
これ、夢小説と言っても過言ではないのでは。

今作においてのネルギガンテの設定:
古龍に串刺しにした棘が、古龍のエネルギーを吸い取りながら、ネルギガンテと化していく。
棘同士のエネルギーの奪い合いになる為、敗北した棘は抜け落ちる。
キリンなら一匹しか生まれないけど、テオ・テスカトルとかだったら数匹は生まれる。
アン・イシュワルダ、ムフェト・ジーヴァとかの超巨大古龍だったら二桁行くか……?
生まれた後も、強く成長する為には古龍を捕食する事を必要とするので、暫くは親の庇護の元で暮らす。ある程度育ったら親に追い出される。狩りの仕方とかは教えて貰えないというか、普通に食っていくだけならパワーだけで何とでもなるので、教える必要がない。

ネルギガンテをメインとした中編、長編の小説を書くのはこれで3つ目だけど、
前作(ティガレックスとネルギガンテになる狩人の話)では狩人を生きたままネルギガンテにTFさせて、
前々作(古龍を描く狩人)では無性生殖というのを知らずに有性生殖させて。
自分でやっておきながら、一匹に対してよくもまあ、こんなバリエーション豊かにやるわ。
前作も前々作も、まあ、平均評価8.5~で品質は保証出来るので、もし良かったら見てね。
そして沼に嵌ってネルギガンテの小説書いてね。

(健全に)抱き抱えられて眠りたい

  • テオ・テスカトル
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  • バルファルク
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