転生したら故郷が滅んだ
悪魔の実。それは、とある漫画に登場する特殊な果実である。海の悪魔の化身とも言われ、一口食えば、人知を超えた悪魔の如き不思議な力を得る代わりに、一生海を泳げなくなるカナヅチになってしまう。加えて、水が溜まっている場所に体の大部分が浸かると力が抜けてしまうというデメリットも存在する。また、悪魔の実には種類が存在し、食べた実の種類に応じた能力を得ることができる。主に、超人(パラミシア)系、動物(ゾオン)系、自然(ロギア)系の3つに大別することができる。
超人(パラミシア)系は人智を超えた能力が身に付く種である。確認されている数は最も多いともされている。能力者の身体そのものが変化する場合もあるが、基本的には原形を留める能力である。
動物(ゾオン)系は、動物への変身能力が身に付く種である。能力者は、通常時の形態である「人型」、完全に動物の姿となる「獣型」、中間形態である「人獣型」の計3つの形態に変形できる。また、希少なものとして「幻獣種」と「古代種」が存在する。
自然(ロギア)系は身体を自然物そのものに変化させ、自在に操れるようになる種である。三種の中では最も希少であるとされ、能力者の実体を原形を留めない自然物に変えることで、通常の物理攻撃を受け流すことが可能である。
少々長くなってしまったが、悪魔の実とは大凡このようなものである。
「それで? その『ONEPIECE』という作品に登場する悪魔の実が欲しいと?」
「加えて言うなら本編、外伝、小説、二次創作含めた全てに登場する悪魔の実が欲しいです」
「おぬし、よくこの要望が通ると思ったの……」
「やっぱダメですかね……?」
「まぁ良いけど」
「いや、良いのかよ!」
遊戯の神と名乗る女性に、特典として好きなものを言えと言われた俺は、悪魔の実が欲しいことを伝えた。悪魔の実、一度は食べてみたいと思ってたんだ。
「ふむ……権能を使ってその漫画の知識を一通り取得したが、悪魔の実は基本一人一つとなっているようだが……どうするつもりじゃ?」
「あっ……えっと……」
「…………お主、考えておらんかったな。仕方ない、いくらでも食えるような肉体にしてやる。転生した途端に複数食べて木端微塵はわしも困るからの」
「ありがとうございます!」
危なかった……せっかく転生できるのにまた死ぬところだった。ダイビング中に足つって溺死した結果、ここにいるわけだけど、転生した途端に木端微塵は遠慮願いたい。
「さて……特典は決めたから、後は世界だけじゃのう」
「世界ですか……?」
「うむ。ということで、これを回せ」
ポンッという軽快な音ともにガシャポンが俺の目の前に出現した。中を覗いてみたが、真っ暗で何も見えない。
「覗いてもおぬしには見えんぞ。それより、さっさと回さんか」
「あっ、すいません」
ガチャ……ガチャ……ポンッ! 回し終わると、なんのカバーも付いていない取り出し口からコロコロとカプセルが出てくる。遊戯の神を名乗る女性……長いから遊戯の神でいいか……が出てきたカプセルを手に取り、パカッと開くと中から紙が出てきた。
紙の内容を確認した遊戯の神は、眉間にシワを寄せてむむむと呻り、しばらくして表情を戻した。
一体どんな世界だったんだ……怖ェよ。
「まぁ、これはこれで良いか」
「あの〜、どんな世界だったのでしょうか?」
「教えぬ、その方が面白くなりそうじゃからの」
「えぇ……」
「安心せい。前世の記憶は持ち越せるし、言語も理解し話せるようにしといてやる。…………さて、これで全ての準備は整った。後は、おぬしが転生するだけじゃ」
待って、どんな世界に転生するのかわからないって怖いんだけど!? 悪魔の実の能力があっても、ドラゴンボール並にインフレが凄い世界だったら無理だと思うのですが!
「まだ、心の準備が……」
「はぁ…………仕方ない。では1、2、3、の合図で転生させるから、3数える間に準備せよ」
「はい!」
「うむ。では……1!」
遊戯の神がカウントした瞬間、さっきまであったはずの床が消え、下へ下へと落ちていく。
ああああああッ!! 2と3はどうしたんですかァー!?
落ちながら意識が薄れていく中でそう叫んだ俺は、遊戯の神が小さく呟いた言葉をなんとか聞き取り、そのまま意識が暗転した。
「貴様の住んでいた世界にはこんな言葉がある。『知らねーな、そんな数字。男はな1だけ覚えとけば生きていけるんだよ』ということで、1だけ覚えて生きるといい」
とっつぁん!
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そんなこんなで転生して10年。俺は今、アナザーディメンションにいる。え、どういうことかって? しょうがねぇなぁ……これまで経緯を説明しよう。
まず、俺はそこそこ裕福な家に生まれた。しかも、空飛ぶ車やバイクがあったり、魔術が存在していたり、惑星間ワープ技術を持っていたりと前世よりも遥かに文明が発達した世界だったから、何不自由ない生活を送ることができたんだ。ただ、特典である悪魔の実が最初から俺に備わっているわけじゃなくて、一つ一つ食べなきゃいけなかったのは苦痛というか、苦行というか、地獄だった。
そう……俺は致命的なことを忘れていたんだ。悪魔の実は…………恐ろしく不味いということを!あの肉体を極限まで鍛え上げていたCP9ですら、咳き込むほどの不味さなのだ。俺はそれを数えきれない程食べなければならなかった。まぁ、自業自得なんだが。3年かけてなんとか全ての悪魔の実を食べきった俺は、4年かけて全て悪魔の実の能力を把握し使えるようにした。一部に至っては覚醒すらしたから驚き。
まとめると、3歳の頃から吐き気を我慢しながら悪魔の実を食べ始め、10歳になる頃には能力が使用可能になったわけだ。他にも学校とか親とかいろいろあるが、今は省く。本題は、何故俺がアナザーディメンションにいるのかだからな。簡潔に言えば、生きるためだ。
具体的には、俺が生まれた世界……というより惑星が実験事故で文明ごと滅んだんだよね。正確には、現在進行系だけど。政府が主導して研究者達に開発させていたマスタークラウンという道具が、使用実験で暴走。マスタークラウンは無限の力を秘めていて、今まで開発されていたどんな兵器も通じなかった。結局、暴走は止められずに研究施設は崩壊。その後は暴走する無限の力が惑星を侵食していき、その影響によって次々とアナザーディメンションのディメンションホールが開いて人や建築物、様々なものがアナザーディメンションに飲み込まれていった。俺は、研究者だった両親が作った特殊な道具に乗せられてディメンションホールに入り、このアナザーディメンションへ。両親は暴走をなんとか止めるために残った。ちなみに、アナザーディメンションとはとある異空間のことを指す。詳しく言うなら、様々な場所、時間、次元、世界に繫がっている謎の異空間だ。
「父さん……母さん……」
何度止められようとも、どこで拾ってきたかもわからず見たこともない果実を齧り続けた俺に愛想を尽かさず、愛情を注いでくれた両親。正直、迷惑しかかけてこなかったから、もっと何か出来ることがあったんじゃないかって後悔してる。
「わかってる、父さんと母さんの思いは無駄にはしない」
今戻ったところで、無限の力を止められるような力は俺にはないし、両親も望んでないだろう。アナザーディメンションの特性上、ここに残り続けることもできない。ならば、無限の力の影響が出にくい遥か彼方を目指して、このアナザーディメンション内を進むしかない。
「さよなら……父さん、母さん。今までありがとう。さよなら……我が故郷……ハルカンドラ……」
滅びゆく現世での生まれ故郷を去り、両親が作った天翔ける舟ローアに乗って、俺は旅に出たのだ。
あっ、ちなみに俺が転生したこの世界、『星のカービィ』の世界っぽい。
ハルカンドラについて詳しく語られていないから、独自解釈で過去を捏造。