異世界召喚
「修学旅行で行くのがスカイツリーではなく、東京タワーとは……」
私は鯨井白、高校二年生だ。今日は高校の修学旅行で遥々東京までやって来て、事前に決められたコースをグループごとに移動していた。私達のグループはコースに従って東京タワーの展望室に来ている。
東京タワーから見下ろす景色は、世界の広さと人間の矮小さを知ることができて面白いが、東京タワーよりも高いスカイツリーならもっと良いものが見れそうだと思う。残念ながら、修学旅行の日程では行くことが無いけれど。
———お……い、たす……て……———
ん?
望遠鏡を覗き込みながらニンゲン観察モニ○リングを行ってると、何処からか声が聞こえた気がした。
観察を止めて周囲を確認しても、少し離れたところに私のグループと観光客がちらほらいるだけだ。聞き間違いか何かだろう。再び観察の続きをしよう。そう思った時だった。
———お願い、セフィーロを助けて! 伝説の魔法騎士達よ!———
眩い光と共に助けを求める少女の声が聞こえてきた。
うぅ……眩しい! 一体、誰なんだ……どうしてこんなに光ってるんだ……目をつぶす気か?
しかし、声の主は私の疑問に応えてくれなかった。そして、光が収まると同時に今度は浮遊感が私を襲った。だが、浮遊感が襲ってきたのはほんの一瞬。気がつけば、私は遥かなる大地へと落下していた。
「「「うわあああああああ!?!?」」」
なんだ!? 私以外の叫び声!?
同時に重なる叫び声。その声に驚いて周囲を見ると、私と同じように落下している見慣れぬ制服を着た女の子が三名いた。あの子達の格好を見る限り、私と同じよう過程を辿ったと考えられる。だとすると、誰もパラシュートに値する物を持っていないわけだ。…………これは死んだかな?
「「「うっ!」」」
おっと危ない、受け身をとらないと。
偶然、デカいトビウオがやってきて、自由落下していた私たちは避けることができず、トビウオの背中に落ちた。しかし、トビウオの背中は思いの外柔らかく、スーパーヒーロー着地をしても大した衝撃はこなかった。
「何これぇ?」
「大きいトビウオのようですわね」
「どうなってるんだ、一体ここはどこなんだぁー!」
三人のカラフルな少女達が、トビウオの背中で混乱し、叫んでいる。かく言う私自身も、この非現実的な状況に動揺を隠せていない。まるで、ネット小説で流行っている異世界召喚もののように感じる。目に映る光景も、宙に浮く岩や島など地球ではありえないものばかりで、ますますそう思わせる。魔法とかあるんだろうか。あるんだったら是非使ってみたい。ゲームとか漫画とか小説に出てくるような魔法が使えたら最高だな。
「「グエッ!」」
「キャッ!」
宙を泳ぐように進むトビウオの背中で風景をしばらく観察していると、トビウオが崖に近づき、その上に私達を落としていった。幸い、草が生えていたからクッション代わりになって大した衝撃は受けなかったが、受け身を取れなかった少女達はカエルが潰れたような声をあげている。だが、怪我はなさそうに見えた。
周囲を確認してみると、この崖の反対側には森が広がっているということがわかった。崖の下にも森が広がっているのが見えたが、この崖の高さが数百メートルくらいはありそうで、飛び降りた場合は確実に死ぬだろうなと思った。
「何なのよここ! 一体どうなっちゃったのよ!?」
「東京じゃないことは確かですね」
「そんなの見りゃわかるわよ!」
「さっきのトビウオに乗ってる時、空に浮かんでる島が見えた。遠くには火山も」
青い髪の子はまだ現実を受け入れられてないのか、騒ぎまくっている。それに、メガネをかけた子が冷静に合いの手を入れている感じだな。赤い髪の子は、私と同じように非現実的な光景を見たらしい。
君も見えたのかい? ならば、おそらくここは地球ではない別の星、あるいは世界の可能性があるね。
「別の世界?」
うん。私達の知る物理法則では到底あり得ない現象が次々と起きていることも踏まえれば、その可能性はより高くなっていると思うよ。
私は、赤い髪の子の疑問に対してそう答えた。実際、東京タワーにいたはずなのに、眩い光と声が聞こえたと思ったら空中に投げ出されるとか、デカいトビウオがいるとか、空に島が浮かんでるとか信じられん現象が連続で起きて確認しているからな。……そういえば、この子達は東京タワーでは見かけなかったが、全員違う場所から連れてこられたのだろうか? あるいは、私が見逃していただけか。
「なるほど…………そうだ! 自己紹介しよう!」
「自己紹介!? あなた、こんな時に何呑気なこと言ってんのよ!」
「そうですか? 名案だと思いますが」
「どこがよ!」
「東京タワーからここに来たのはワタクシ達四人だけのようですし、これからどうするか、とにかく四人で協力していくしかありませんわ」
「だから、それにはまず自己紹介!」
「……わかったわよ」
「貴方もよろしいですか?」
異論はないよ。
私に問いかけてきたメガネの子にそう答えた。そして、始まった四人だけの自己紹介。青い髪の子は龍崎海、メガネの子は鳳凰寺風、赤い髪の元気な子は獅童光という名前で、三人とも中学二年生のようだった。途中、獅童光が自己紹介で年齢を言ったときに、身長のせいで龍崎海と鳳凰寺風は小学生だと誤解していたことが判明していた。実は、私もそう思っていたのだが、口には出さなかった。沈黙は金、だからな。
私は鯨井白、高校二年だ。君達より二つ年上ということになるね。
「「高校二年!?」」
「年上でしたのね……」
私が自己紹介をすると、一様に驚く三人。私が自己紹介するまで三人とも中学二年だったから「この流れからするとこの人も同い年なのでは?」と思っていたらしい。まぁ、そう考えても仕方ないと思う。
「うわあああああああッ!?」
「「ッ!? 」」
突然ニュッと現れた先程のトビウオ。それに驚いた龍崎海が、私達の背後にある森に向かって逃げ、木の後ろにヒョコッと隠れた。龍崎海が「早く逃げなさい!」と木を盾にして隠れながら言ってきたが、私を含めて誰も逃げることはなかった。むしろ、獅童光の方は、積極的にトビウオに近づいて触り、トビウオの顔面を撫でている。「大丈夫! この子、大人しいよ」と、獅童光はトビウオを撫でながら言うが、この世界のトビウオの生態を知らない状態では大人しくともあまり近づきたくはないな。毒とかあるかもしれないし。……毒で思い出したが、虫刺されとかにも気をつけないといけないな。異世界の人間である私達は、この世界特有の病原菌やウイルスに対して何の抗体も持っていない。下手すれば死んでしまうだろう。
「
獅童光の言葉によって多少安心した龍崎海がこちらに戻ってきて、トビウオに「私達を東京に戻して」と猫撫で声で言った瞬間だった。森の方から声がすると同時に、トビウオが何かに吸い込まれるようにして森の方へと消えていった。背後の森へと振り返ると、森の入り口に長い杖のような物を持ち、白いローブを着た変な角をつけている白髪の少年が立っていた。
「お前達はもう戻れん」
「ちょっと! どういうことよそれ!」
「戻れないって……」
「あなたは何者なんですの?」
いきなり重要発言をする少年。まるで私達がどういう経緯でここにいるのかを知っているかのような発言だ。ここに来る際に聞こえた声は少女の声だったが、その少女と何かしら関わりがあるか、あるいはこの少年が私達を召喚したのか。
「私は導師クレフ、お前達を導く者だ。お前達は元の世界には戻れん、このセフィーロを救うまでは」
レイアース観て思ったんですけど、本来死なない人物が死んだり、無事な人が石化したりと原作の流れとは違うアニオリ展開が多くて驚きました。