「そういえば……貴方はどうやってこの世界に来たのですか?」
あれからボーッとしながら二人してしばらく海を眺めてたら、アクアさんが質問してきた。
闇の回廊を通って来たんだけど、そのまま伝えて大丈夫かなぁ…………というか、この後は確か偽アンセム(ゼアノート)が来るはずなんだが……まだですかね?
「俺は闇の回廊を通ってきたのさ。この闇を払う衣があれば、闇に侵食されることも無いからね」
「闇の回廊を……!?」
「そっ! 可能なら君を光の世界に返してあげたいけれど……キーブレードを失い、心が弱っている今の君では闇の回廊は通れない」
「ッ! なぜ、キーブレードのことを……」
「まぁまぁ、そこは気にしないで」
とりあえず、ここに来た方法と闇の回廊を通してアクアさんを光の世界に戻すことができないことを伝えた。闇の回廊で戻せないのはマジ。強い光の心を持っていたり、光の守護者なら大丈夫なんだけど……今のアクアさんはキーブレード持ってないからね。加えて、一人ボッチで闇の世界にいたから精神が弱ってる。まず無理だね。
というかさぁ……アンセムさんがここにいないから、偽アンセムもここに来なくね? 闇アクアさん誕生しなくなっちゃうよ。どうしよう……
いや待てよ……? 別に闇アクアさんが誕生しなくとも問題なくね? アクアさんの本音をミッキーとリクが聞けなくなるくらいで、蝶の羽ばたきも少ないはず。アンセムさんが気がかりだけど、優秀なゼアノートならもうとっくに見つけてるでしょ。
「大丈夫、もうすぐ来るはずだよ」
「一体誰が……? いや、それよりもなぜキーブレードのことを?」
「アクアッ!!」
「えっ……ミッキー!?」
前世の知識から、王様とリクがこの海岸にやってくるはずだと思ってアクアにぼかして伝えたら、本当に来た。スゲェ。生ミッキーだ! 王様だ! いや〜やっぱ画面越しと生だと全然違うな。
王様がアクアさんの名前を大きな声で呼び、その呼び声に反応したアクアさんが王様を見て驚いている。そして、驚いているアクアさんへと駆け寄っていく王様。その後ろからリクも来ているみたいだ。ちゃんと来てくれて良かったよ。
「ッ!! おっと……危ない危ない、大丈夫?」
「すみません、助かりました」
「シャドウ! それもこんなに多く……」
「気をつけて! 闇の世界のハートレスはシャドウでも強敵だ!」
感動の再会を腕組みしながら見てたら、海岸から飛び出てきたシャドウがアクアさんを背後から攻撃しそうだった件について。まぁ、アクアさんが攻撃される前に俺が魔法で消滅させたから大丈夫だったみたいだけど。ただ、そのすぐ後に大量のシャドウに囲まれちゃった。見えているだけでも100近くいるんじゃないかな。
ンンンンンン! 多すぎますねぇ。拙僧の知識ですと、この場面で出現するシャドウはここまで多くなかったはずですが……アンセムさんが来なかった蝶の羽ばたきでしょうか?
いかん、動揺で道満口調になってしまった。えっ、何に動揺したのかって? バタフライエフェクトさ。闇の世界とはいえ、シャドウごときにはビビらんよ。鍵を使う必要すらないしね。というわけで、指パッチン。
「すごい……!」
「一撃であの大量のシャドウを倒したのか。そういえば、王様も確かホーリ系魔法を使えたよな」
「うん。確かに使えるけど、僕でもこれ程のホーリ系魔法は使えないよ」
俺の溜め無し【ホーリーライズ】によって、周りを囲んでいた大量のシャドウは一撃で消滅。闇の世界でも、俺にかかればシャドウなんてこんなもんよ。……さて、この場にこれ以上留まっていると面倒なことになりそうだから、こっそりフェードアウトしようかな。スピードワゴンはクールに去るぜ……
「ありがとう、助かりまし……っていない!?」
「いつの間に……」
「…………」
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
「ふぅ……ようやく、マスマスロールを止められる」
闇の回廊を使って別の世界に移動し、一人になった俺はフードを外して一息ついていた。マスマスロールって疲れるんだよね。俺のキャラじゃないし。でも、緊張して話せなくなるよりはマシなんだよなぁ……。
「……声も戻しておくか」
独自に開発した魔法で声も変質させていたんだが、それも解いた。俺の顔ってなぜかゼムナスとクリソツだからさ、声もゼムナスっぽいんだよね。だから、声とか顔をそのままにしてると面倒なことになりかねないから隠してたんだ。フード被ってれば謎補正がかかって顔がわからなくなるから、声だけ変えれば大丈夫やろってさ。
「これからどうしようかなぁ」
まだ光と闇の戦いが終わっていないとはねぇ……観戦しようかな? 画面越しで見るのと、生で見るのとでは臨場感とか全然違うし。でも、さっきみたいに巻き込まれることもあるからなぁ…………待てよ? 結末が変わったら怖いとかバタフライエフェクトが怖いと思ってるわけだが、そもそもアンセムさんが闇の世界に来なかった時点で、既に流れがある程度変化している可能性があるんじゃないか? うん、マジであり得そう。
「観察しながら、ヤバそうな時は干渉するか」
これしかないな。声を変えとかないといけないのは面倒だけど、しゃーなし。
「そうと決まれば、早速動くかぁ……」
どこがいいかなぁ……忘却の城がいいか? ヴェントゥスがちゃんと目覚めるか分からないし、ヴァニタスが強くなっててソラ達じゃ対応できない可能性もあるしなぁ。
移動しよ。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
というわけで、やってきました忘却の城。中には入らないで、バニッシュしながらアクアさん達が来るのを待つ。
しかしなぁ……この不思議な形をした忘却の城がBbsで登場したあの城だったとはなぁ……初見で気づいた奴いるんやろか? ちなみに、俺は全く分からなかった。まぁ、後出しだったから気づくのは無理だと思うんですけどね。ゼムナスはどうやって気づいたんだろう? 特に、目覚めの部屋とかは忘却の城となったことで誕生した部屋なのに。
ホロウバスティオン——今はレイディアントガーデンか?まぁ、どっちでもいいが——にある眠りの部屋と関係してるのか? あの部屋は結局謎のままだし。後で確かめてこようかな……
謎と言えば、ルシュが与えられた黒い箱も謎だよなぁ。開けちゃいけないとかマスマスは言ってたわけだし、開けられるものなんだろうけど……何が入ってるんだろう? 闇に覆われた先が大事とか言ってたマスマスだし、一つの世界が入ってるとかかな。箱が開かれたとして、箱自体は闇に覆われても大丈夫だけど、中にある世界が闇に飲まれちゃうからダメとかそういう感じかな?
うーん……ちゃんとゲームやっとけば良かったなぁ。多分、俺が見逃したところとかで物語の鍵を握る重要なシーンとかあったかもしれないし。
「大丈夫、アクア? やっぱり、王様とリクと一緒にイェン・シッド様の所で休んでた方が良かったんじゃない?」
「うんうん」
ソラとグーフィーの声が聞こえてきた。声のした方を見ると、アクアさんとグーフィーもいるみたい。いろいろ考察してたら、いつの間にか来てたみたいだ。そういえば、この世界じゃ闇アクアさんになることがなかったから、ソラとの接点てないと思うんだけど、なんか親しそうな雰囲気を感じるな。
「ありがとう。でも、ヴェンに約束してたの、すぐ起こしにくるって……10年以上経っちゃって、全然すぐじゃないけど……休んでたら叱られるわ」
アクアさん……良い人すぎるッ!惚れちゃいそうだ。顔がいい。声もいい。スタイルもいい。性格もいい。こんな満点な人に惚れない人はいないでしょ!原作キャラは惚れてる感じしないけど。
お? 俺が悶々としてる間に、アクアさんが忘却の城の封印を解いたみたいだ。城と周りの風景が本来の状態に戻っている。四人にバレないようにこっそり城に侵入して、玉座に向かおーっと。
「長い間、待たせてごめんね……」
はい。只今、先回りして玉座の間で隠れてたら、アクアさんとヴェントゥスの感動の再会を目撃しました。ヴェントゥスに意識ないけど。アクアさんに「起きて」と言われながら何度も揺さぶられるヴェントゥス。だけど、ヴェントゥスが目覚めることはない。ヴェントゥスの心がソラの中にいるままだからね。
「こういう仕掛けか、これじゃ誰も見つけられないわ」
「ヴァニタス!」
「何しに来た!」
おーッと、ここでヴァニタス選手が登場! 相変わらず、筋肉を模したかのような赤と黒を基調とした謎スーツを着用しており、フルフェイスヘルメットを被っています。私の知識では、モンスターズインクの世界まで闇を払う衣を上から着用していたはずなのですが、なぜか今はつけていません。というか、そもそもなぜ着けていたのでしょうか? 彼は純粋な闇存在なので、闇を払う衣など不要だと思うのですが……
「感動の再会に水を差して悪いが、俺も兄弟として参加させてもらうよ」
「なっ!?」
ヴァニタス選手、絶対そう思ってないだろお前ってセリフを放ちます! ソラ選手、グーフィー選手、ドナルド選手、それぞれ武器を構えてヴァニタス選手へと突撃していきますが、ヴァニタス選手は高速移動で華麗に回避してみせましたー! これには私もカッコイイという思いを隠せません!
さらにヴァニタス選手、高速移動でヴェントゥスが眠る玉座の背もたれ、その天辺に座った状態で現れました! 背もたれの天辺は尖っているので、お尻に刺さってしまいそうですが、ヴァニタス選手は見る限り平気そうです。尻を鍛えているのでしょうか?
「やっぱりヴェントゥスは目覚めないか……出来の悪い兄弟を持つと苦労する」
「くっ! 黙れ!!」
「ハッ! このマスター様は血の気が多いなぁ!!」
ワンピースのエースみたいなヴァニタス選手のセリフに怒りを覚えたアクア選手、ヴァニタス選手にエラクゥスのキーブレードで斬りかかるも、防がれてしまいます! そしてヴァニタス選手、ここでアクア選手を煽ったー! これには怒りを抱えずにはいられないかッ!?
「アクア! ここは俺が……」
「ううん。私がケリをつける」
「でも、まだ体が——」
「大丈夫、私はキーブレードマスターだから」
アクアさん……あんだけ闇の世界で心身ともに疲弊してたのに強がってみせ、その上でソラ達を巻き込まないように障壁を張るなんて……凄ぉい。実況・解説は止めよう……
主人公はなぜゼムナスに似ているのだろうか