両方ともそんなに詳しくないので、名称が間違ってたらごめんなさい。
見稽古はおまけ。
月が導く異世界の女神はクソ
真っ白な空間。上も下も、左も右も、全てが白い不思議な空間。足下には薄く霧のようなものが漂っている。
信号無視をした大型トラックに挽かれたことまでは覚えている。タイヤに自分の足が踏み潰されて…………これ以上は思い出したくないな。少なくとも、俺が確実に死んだということはわかっている。
なら、死んだはずの俺が意識を保った状態で存在しているこの空間は何なのだろうか?
天国か地獄か、この何もない場所で考えても仕方がないと判断した俺は、歩きまわってみることにした。歩いていれば、景色が変わるかもと思ったのだ。
そうして、宛もない状態でしばらく歩いた。一時間……いや、それ以上かもしれない。この空間はどうにも時間の経過がわからない。変化がないからだ。だから、俺の主観でしか時間もわからない。あと、どれだけ歩いても疲れることがないというのがわかった。生きていた頃はあんまり運動をしてなかったから、一時間も歩けば息切れしていた。なのに、今は汗一つ流さず息切れもしていない。
考えるのを止めて、景色に変化が起きるまで歩き続けることにした頃だった。4台のガシャポンが設置されているのを見つけたのは。
4台のガシャポンの内、3台は同じ規格かつ青色のようで、残り一台が他のに比べて大きく虹色で塗装されていた。なんなら、少し発光までしているように見える。目に優しくない。
「これは……回せってことなのか……?」
説明してくれる相手がいないからよくわからない。神でも何でもいいから、この状況を説明してほしいところだ。
ガシャポンのハンドルを握って少し回してみると、何の抵抗も感じなかった。コインの投入口もないし、値段表示もない。内部はどの角度からも見ることができなかった。
他に説明書か何かないかガシャポンの周囲をウロウロしてると、何故かガシャポンを早く回せという意思をどこからか感じた。心なしか、大型のガシャポンの発光も強くなっているように感じる。
ガシャ……ガシャ……ポンッ!
何者かの意思を感じながら回し、取り出し口から出てきたカプセルを手に取る。すると、ボールは俺の掌の上でボフンッと煙に変わり、何かが書かれている紙だけが残っていた。たぶん、元々カプセルの中に入っていたものだろう。
「うーん…………わからん。 おおッ!?」
紙に何が書かれているのか気になり見てみたが、何らかの文字らしきものが書かれているだけで他には何もなかった。文字らしきものと言っている時点でわかると思うが、俺には何の文字かも、なんて書いてあるのかわからなかった。だけど…驚くことに……しばらくしたら読めるようにったのだ。
やっぱり作為的なものを感じる。俺にはどうしようもないが。
【全魔法使用可(『オーバーロード』のみ)】
この文を見た瞬間、凄まじい痛みと吐き気が俺を襲い、それが収まる頃には魔法の使い方がわかるようになっていた。ただし、紙にも書かれていた通り、何故か『オーバーロード』という作品に登場する魔法のみだったが。
俺……『オーバーロード』は途中まで、しかもアニメだけしか見てないんだが。魔法の効果とか条件とかはわかるようになったし、使用可能な分だけ魔力も増えたみたいだからいいんだが……
あの痛みをあと3回も味わう可能性があることに対して、憂鬱になってしまいそう。でも、全てのガシャポンを回さなければこの状況は変わらないのだろう。俺がさっき回したガシャポンが、いつの間にかなくなっていたからだ。
ガシャ……ガシャ……ポンッ!
痛いのは嫌だなぁ……と思いながらも回して、コロコロと出てきたカプセルを手に取り、煙に変わるのを待つ。数秒してカプセルが煙に変わったので、中の紙を開いて読めるようになるまで待つ。そして…………
【見稽古】
今度は、まるで心臓発作が起きているかのような胸の痛みが俺を襲った。痛み自体は1回目と比べると随分マシになっていたから、より最悪だった。例えるなら、1回目は全身火だるま状態で、二回目は箪笥の角に小指をぶつけて悶絶する感じだ。……前言撤回、どっちも最悪だわ。
ガシャ……ガシャ……ポンッ!
痛みが引いてきたので、3台目のガシャポンを回した。出てきたカプセルが数秒して煙に変わり、中に入っていた紙を手に取って書かれている文字を読んだ。
【記憶の継承】
俺は襲いかかってくるであろう痛みに対して、歯を食いしばって我慢しようとした。だが、いつまで経っても痛みはやって来なかった。2回目までは読んだ瞬間に痛みが襲ってきていたのに…………なんでだ?
痛みがやってこないことに疑問を抱きつつも安堵し、最後のガシャポンの前に立つ。今までのガシャポンに比べてかなり巨大だ。俺の身長より少し大きい程度のサイズで、ハンドルも両手でないと回せない程だった。生きていた頃でさえ見たことないガシャポンに、思わず後退りしてしまった。
しかし、これが最後なんだと俺は覚悟を決めてハンドルを全力で回した。大きい分だけハンドルも重たかったんだ。
ガシャ……ガシャ……ポンッ!
デカい取り出し口からデカいカプセルがコロコロと転がって出てくる。バランスボールくらいのサイズはあるか?
「あれ? 煙にならない…………開けてみるか」
今までのようにカプセルは煙になると思っていたのだが、一分経っても変化が起きず、訝しんだ俺はカプセル持ち上げ直接開けることにした。カプセルの下半分を押さえて、上半分を全力で引っ張る。
「ふんッ! くうぅ……うおおぉぉぉ……!」
たぶん、今の俺の顔はトマトやリンゴのように真っ赤に染まってることだろう。それぐらい力を込めている。
「ッ! しゃあぁ! 開いたウォッ!?」
だんだんとカプセルの上半分が動き始め、ようやく開いたその瞬間、カプセルの中から溢れ出した光に目がやられ、そのまま意識を失った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「純殿? 少しボーッとしていたようですが、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫ですよ月読様」
「そうか……良かった」
あれから、俺は現代日本に再び転生していた。顔面偏差値の高い深澄家の長男として生まれたが、俺と弟はフツメンだった。ちぇっ!
魔法だったり見稽古だったりで、高校3年生になった今までいろいろと紆余曲折あったが、それでもある程度平和に過ごせていた。
「では、改めて……そなたの両親が交わした契約によって、これより異世界へと行ってもらう」
なのに、いつものようにゲームをしようと思ったら、夢の中で神様に異世界にほぼ強制的に向かわされるってどういうこと!?
「あの……俺はその契約について何も聞いてないのですが……」
「む? 本当に何も聞いてないのか?」
「はい……」
この世界に超能力を扱う人間が存在することは弟のおかげでわかっていたが、ウチの両親が神様と何らかの契約を結んでいたことはマジで知らなかった。ウチの両親何者……?
「どうやら本当に聞いてないようだな。……順に話そう」
俺がマジで知らないことを確認し、契約の内容について話してくれた神……月読様。曰く、両親は元々こことは違う異世界の人間だったということ。そして、当時の両親は切羽詰まっていて、そのために「いつか大切なものをひとつ捧げよ」という契約を異世界の女神と交わして日本へ来たらしい。あと、二度と元の世界戻ることはできないとも。
なるほど……両親にとって大切なものが子供である俺達であり、月読様は長男である俺に最初話を持ってきたのか。
「もしかして、ここで俺が拒否した場合は弟や妹達が……?」
「そうなる」
「家族以外で大切なものっていうのは……」
「残念ながらそうもいかぬ」
マジかー。弟の真は長谷川ちゃんと青春を謳歌してるからダメ。妹達は論外。危険な目には合わせられん。となると、俺しかいないわけか…………しゃーなし。
「わかりました……俺が行きます。ただ、お願いがあるのですが……」
「案ずるなかれ純殿……純殿が所有する数々の禁断の書物、ゲームソフト、HDDの中身は私が責任を持って処分しよう」
さすが神様ァ!! 俺が言わずとも考えていた一番の懸念を察してくれているゥ! そこに痺れるゥー!! 尊敬するゥー!!
―――――――――
「準備は整ったようだな」
「はい」
月読様から渡された承諾書にサインをした俺は、月読様に承諾書を返した。家族には月読様の温情で手紙を残すことができたので問題ない。
「純殿、こちらへ……」
「はい? ッ! これは……」
「こちらの都合で今までの世界を捨てさせるのだ。せめて私の力をできる限り与えよう」
月読様に呼ばれて近寄ったら、何らかの力をくださった。今のところ、どのような力なのかわからないが、きっとどこかで役に立つだろう。てっきり、ヒノキの棒と鍋のフタだけを持たされて連れて行かれると思ってたから、かなり助かる。
「ふむ。随分時間がかかったがようやく担当の女神が来たようだ」
「そうなんですか?」
「うむ。契約上の事とはいえ請われてゆくのだから、女神からも力を……」
「うお!? 体が透けてきてる!?」
「なに!? 私に挨拶もせず連れて行く気か!?」
「えっ? えっ?」
「すまぬ! これから純殿が会う女神はかなり問題のある女神なのだ。だが、その……できる限り大目に見てやってほしい」
話の途中で体が透け始めて困惑していると、月読様が爆弾を落としてきた。かなり問題のある女神って…………いや、弟や妹達に話がいかなくて良かったと思うとしよう。
「月読様」
「うん?」
「色々とありがとうございました。月読様の言う通り、どんな女神かわかりませんが、できる限り大目に見ようと思います」
「そうか……ありがとう」
その言葉を聞いた直後、俺は非常に眩しい場所に連れてこられた。そして俺の頭へと直接響く甘ったるい言葉と腹立つ態度に、俺はしばらく何も言えなくなった。
『こっちの世界、私がちょっと目を離したスキに魔族やら亜精霊が好き勝手始めちゃってさぁ、種族間のバランスが崩れて私の美しい世界の住民・ヒューマンが大ピンチなのよぉ。
んで、そっちでは深澄とか名乗ってたっけ? あんたの両親との間に交わした契約を思い出してね、あんたをこの世界に喚んで勇者としてヒューマンを手伝わせようかと……ん?
アハハハハハ!! あんた本当にあの二人の子供ぉ!? 不っ細工ねぇ〜、どこの醜いアヒルの子よ!』
こんなのが女神……? いや、神のほとんどはクズだって創作の世界では有名だが……マジか?
『白鳥成分ゼロ! ちょっと確認……あらやだ、ちゃんと血は繋がってるようね。悲っ惨ね〜! 長女と次女は良い線いってるのに、どうしてこっちをよこさないのかしら。
はぁ、あんたに力を与えるとかマジ無理。さっさと視界から消えてくれる? 存在がキモイし……って言っても、もう来ちゃってるもんなぁ……召喚にもクーリングオフシステムを作ってほしいわね』
「さっきから大人しく聞いてたらさぁ、妹達をよこせだの、キモイだのと……そっちの都合で喚んどいてそれはねぇだろ!」
我慢できず言ってしまった。何なんだこの屑神は? とっておきの魔法を食らわせるぞ? 存在ごと消してやろうか? たぶん、神でもいけるぞ?
『うっわ野蛮! 声すら醜いとかどうしようもないわね。ホーント、他に保険かけておいて正解だったわねぇ』
「は? 保険……!?」
『私の世界にふさわしい勇者は別に手配したから、あんたは私の世界を汚さないよう世界の果てでじっとしていなさい。いいわね!』
「いやいやいや! いいわけあるか! 元の世界を捨てて来てんのにそんな……」
『ああそうだ。あんたに力渡すなんて物凄く嫌だけど、妥協して【理解】を与えるくらいなら、まぁいいかな。今後のためにも……』
「いや、話をきけよ!!」
『ちょっと聞いてる? あんたが魔族や魔物と話せるようにしてあげるって言ってんの。だから、できるだけ低位のオークやゴブリンにまじって暮らすのよ? 結婚も勘弁してよね。間違っても私のヒューマンにあんたの醜い胤をばら撒くんじゃないわよ?』
「は?」
『じゃ、行け』
「ちょっ!?」
糞塵屑神が言い終わると同時に俺の足下に大きな穴が空き、俺は穴の下へと落ちてしまった。
「はあぁぁぁぁ!?」
超高所からの落下。眼下には雲と大地が果てしなく広がっている。このままでは間違いなく死ぬだろう。ならば……
「『
第3位階魔法『
轟ッ!! と激しい音と光が最初に発生し、その後に凄まじい爆風が様々なデバフを伴って襲ってくる。『
「……カハッ! クソッ……『
『
上空を見ても俺が落とされた穴は見当たらない。爆発で吹き飛ばされてかなり距離が空いたから見えなくなったのか、それとも魔法の影響で穴が崩壊したのか……どちらにせよ、俺が今あいつにできる嫌がらせはないので諦める。ただ、せめてあいつに様々なバッドステータスが発生していることを祈っておこう。
オバロの魔法が使えるなら、魔力の上限増やし放題じゃん! って思った。