主人公が覚えているサブカル知識の再現として登場したりします。キャラクターそのものは登場しません。
自分自身に発生していた傷と毒などのバッドステータスを治した俺は、【飛行】の効果時間が切れる前に地上へと降下を続けていた。
…………どの……
……んどの……
だが、途中で月読様の幻聴が聞こえてきて降下を止めた。
「月読様? もしかして月読様ですか?」
聞こえている声が幻聴かどうか確かめるために声を上げると、俺が発動している魔法とは違う何かが俺を包み込んだ。そして、俺の目の前の空間から月読様が現れた。
「月読様!!」
「純殿! すまない、女神とのやりとりは全て聞いていた。心配になって様子を伺っていたが、まさかこのような暴挙に出ようとは……」
現れた月読様は俺に謝罪をしてくれた。どうやら、あいつとのやりとりを聞いていたらしい。
「なんなんですかアレ!? 本当に月読様と同じ神様ですか!? あと、魔法を使ったのですが……」
「本当にすまぬ。それと、魔法に関しては問題ない。純殿が魔法を使えることは知っていたし、あの女神があれほどの暴挙に出たのならむしろ足りないくらいだろう」
「そうですか……良かったです」
月読様は俺が魔法を使えることは知っていたらしい。加えて、あいつに放った分は全く問題なく、むしろ足りないくらいらしい。次はロンギビームを当ててやろう、うん。
「それより伝えたいことがあるのだ。あの女神、純殿を召喚する際に世界が繋がっていたのをいいことに……向こうの世界から二人ほど攫って行きおった!!」
「は!? まさか二人って……」
「いや、純殿の身内ではない。だが、一人は近い位置にいた人間だ。君の知人かもしれない」
「えぇ…………」
「既に各々大国の城に召喚され、無事にヒューマンと接触しているようだ。その……女神から多大な加護を与えられて」
うん。今度、あいつに会ったら絶対にロンギビームを当てる。これはもう、決定事項だ。
「だが、純殿は独自の魔法を使えるし特殊な才能を持っている。それに加えて、あの世界で無事に育ったものはかなり丈夫になる上に、私が力を与えている。あのような女神に加護で劣るようなことはない!」
おお、月読様自信満々だな!! というか、あの世界で無事に育つだけでこの世界では丈夫になるんですか。どんだけキチぃ世界だったんですかね。
「……だから、もし他の二人に出会うことがあれば、同じ世界の者としてできれば気にかけてやってほしい」
なんと、月読様は優遇された二人の勇者の心配までしておられた。どこまで優しい神様なのか……どこかの誰かとは大違いだ。…………ん?
「月読様、なんだか消えかかっているような……」
「ああ。実はかなり無理をして交信している。私はこれから数百年の眠りにつく。おそらく、純殿の生きている間に会うことはもうないだろう」
「そんな……」
「だが、今回のことは知己の神々に話し対応をお願いしておく。いくら創造を何度か行ったことがある女神とはいえ、これほどの蛮行……相応の罰はあるだろう」
「月読様……」
「このような事態だ、もう遠慮はいらぬ。汝、深澄純よ……月読の名において新たなる世界での自由を認める!」
「……はい!」
月読様は俺の自由を認めくださると消えてしまったが、俺は宣言の意味も込めて大きく返事をした。自由を認められたんだ、魔法も見稽古も全て使って自由にいきていこう。
――――――――――――
女神に落とされ、月読様に自由を認められて早3日。いくら歩いても人里どころか動物……いや、虫一匹すら出会えていない。どうなっとるんじゃ!
しかもこの荒野、太陽が出てる間はクッソ暑いのに、夜は体が震える程寒い。温度差は砂漠とそう変わらないんじゃないだろうか。
「腹減った………………ん?」
それは、グウゥゥゥ!と体が空腹を訴え、意識が朦朧としてきていた時だった。
…………助けて…………
いろいろと限界が近かったにも関わらず、俺の耳はその声を聞き逃すことはなかった。空腹による幻聴ではない。ないと信じたい。
どこ!? どこからだ! どこから聞こえた!
「【
聴力を強化する魔法を発動し、頭の上にウサミミが生えるが気にせず耳を澄ます。
………誰か、助けてッ!
「了ォ解ィしましたァー!! 【
魔法を使って強化された俺のウサミミは、助けを呼ぶ声の主の位置を正確に割り出した。
異世界に来て初の知的生命体との接触の可能性。三日間誰にも合うことが出来なかった俺にとってもはや、相手が人の形をしていなくとも構わなかった。お話しできるなら誰でもいい。
テンションを上げて、声の主がいる場所へと転移で向かう。魔法を発動し、一瞬で景色が切り替わるとそこには、女性が着ていそうな服を着た二足歩行の豚が、二つ首の大きい黒犬によって壁際に追い込まれていた。状況的には、豚の方が助けを呼んだと考えられる。
『ヒイィ!!』
「ヒイィ!!」
しかし…………おかしいな。なんで俺が来たら、両方とも悲鳴を上げて俺にビビっているんだ? そんな怖がられるような現れ方したか?
まぁ、いいや。それよりも……
「助けを呼ぶ声が聞こえたんだが、呼んだのは貴女なのか?」
多分女性であろう豚さんに話しかけた。格好が女性っぽいんだよね。花とか着けてるし。
「は、はいぃ……」
「あ、そうなんだ。えっと……この犬ッコロをどうにかすればいいのかな?」
『「ッ!?」』
二ツ首の犬を指差しながらそう言うと、なぜか両方ともビクンッ!ってなる。一体、何をそんな怖がるんですかね……もしかして人間がこの世界では恐怖の象徴なのか?
まぉいいや、とりあえず状況を進めよう。このままだと限界が近い俺はもちろん、豚さんも困るだろうし。
そう思って犬ころに魔法を発動させようとしたが、殺すか否かで悩んで一旦止めた。見た感じあまり強くはなさそうだから、犬ッコロを殺すのは簡単なんだが…………三日間彷徨って出会った久々のモフモフだ、勿体ない気もする。いろいろと疲れた俺の心と身体にはモフモフの癒しが必要だろう。
うーん………………そうだ! テイムしてしまえばいいんだ! 魔法を使ってテイム……いや、まずは一度聞いてみるのもありか。
「よし! なぁ……お前、俺のペットにならならない?」
『ぺ、ペット……』
「もし嫌なら、残念だけど……」
『ヒィッ!? 喜んで貴方様のペットになります!!』
「えっ」
えらくビビられたけど、なんか上手くいったからヨシッ!
ところで、なんで君はお腹をみせてるんだ? え、そんなに怖いの? マジ?
「とりあえず、危機的状況は脱したみたいだし、助けたお礼としていろいろとお話を聞きたいなーって……あと、できれば何か食べ物を」
「…………はい、わかりました」
気を取り直して、豚さんの方に改めて話を聞きたいという事と食事の件を伝えると、少し間を置いてから何かを諦めたかのように返事をした。
そして、俺とペットの犬は豚さんの案内に従って、豚さんの住んでいる集落へと向かった。集落にはかなりガタイの良いイノシシみたいな獣人……ハイランドオークがたくさんいて、エマさんが門番のハイランドオーク二人に話をすると、歓迎された。料理や飲み物を出してくれて、三日ぶりかつ異世界初の食事を取ることができた。空腹と喉の乾きを満たすことができた俺は、そこで自己紹介を行い、いろいろと話を聞かせてもらった。
まず、この場所が《世界の果て》と呼ばれる不毛の荒野であることを知ることができた。有言実行していたあのクソ女神は必ず処す。
次に、この世界について。この世界は人間が一番多く勢力も強いことがわかった。豚さん……いや、エマさんのような亜人は人間にくらべてたくさんの種族があることも。エマさんは、ハイランドオークというオークの上位種にあたる種族で17歳らしい。俺より一つ下のようだが、見た目では全くわからない。犬ころはリズーと呼ばれる種族で、名前は特に無いらしい。後で名前をつけてやるか。……あと、この世界の人間はヒューマンって呼ばれてるみたいだ。
さらに、この世界にはゲームのようにレベルが存在してるらしい。偶々、エマさんが昔ヒューマンが落としたレベル判別紙なるものを持っていたから早速測ってみたんだが、俺のレベルは測定不能だった。残念無念。ちなみに、俺のペットになったリズーはこの辺じゃそこそこ強く、武器なしのエマさんでは対処不可能なレベルだったらしい。今も俺に大人しく撫でられているこいつがそんなに強いとは、意外だった。
あと、俺のいた世界とは違う、この世界独自の魔法があることを知ることができた。俺の扱う魔法とは違い、結構融通が利きそうな魔法だったのは幸いだな。教わったのは『ブリッド』という初級魔法で、自身のイメージで形をある程度変えることができる魔法だった。魔力で魔法を発現させる鍵と属性や変化を加える役割を持つ呪文があり、それ唱えることで発動するようだ。ハイランドオークの言語とも違う特殊な言語で、覚えるのに時間がかなりかかるものらしい。だが、見稽古を持つ俺には関係ない。一度エマさんのを見てるから、無事一発で習得できた。それに、あのクソ女神のおかげで、呪文も何を意味するのかすんなり理解できるしな。なお、呪文は口に出さなくても大丈夫だった。いわゆる無詠唱というやつだが、エマさんは「初めてで無詠唱まで……!?」とかなり驚いていたな。
その後、エマさんから他の魔法のリストを貰った俺は、こっそり蜃の住処へと向かっていた。歓待を受けた時点で日はすっかり落ちてたから、夜明けの少し前に出てきたんだ。
エマさんは、神山に住むとされる蜃とやらの生贄として向かっていた最中にリズーと俺に出会ったと言っていた。何故怒りを買ったのかわからないが、ここ数年は村が霧に包まれて作物もろくに実らなくなり、半年に一度……蜃とやらに若い娘を生贄として差し出すことで霧が収まっていたようだ。
エマさん達の歓待は嬉しかったし、この世界の魔法も教えてもらった。そのお礼をするのは当然のことだろう。んで、思いついたお礼の仕方が、蜃というやつからの解放だ。一応、魔法の首輪をつけさせたリズーに伝言を残したから大丈夫だろう。
「『
遠くから魔法を使って偵察してみたが、蜃のような生物は見当たらなかった。青い肌の奴らは十数人いるが、エマさんが様をつけるような強さや貫禄を感じない。……直接聞いて確かめるか。
「その前に準備はしておかないとな……【
いつもの準備を整え、念の為に鎧と武器を創造し、魔法を付与する。鎧は、『オーバーロード』でツアーが使っていた白金鎧のデザインにした。カッコイイからね。武器も同じように、槍と刀、大剣、ハンマーにしてある。
魔法を付与したことで、俺の周囲をゆっくりと回転しながら浮遊する四つの武器。そして、我が身にかけた複数の魔法によるバフ。身に纏っている白金の鎧。こんだけ準備すれば、例え不測の事態が起こっても対処できるだろう。
「さて…………行くか!」
蜃の住処とされている場所を見ながら準備を終えた俺は、気を引き締めてそう言うと、魔法を発動させた。
一部の魔法の効力は、主人公に合わせて多少変化しています。レベルはあっても職業とか種族レベルはないからね。