「はいはーい。休憩終了!じゃあ早速行ってみよう」
リーダーのコーナー
「いきなり私か。あんなことがあった後だというのに。まあ、台本を逆らう必要もないか」
「こらー!メタいこと言うな」
いきなり私の出番となる。休憩中にグダグダして離れそうになる視聴者を引き留めるには、インパクトが必要だ。
「さて、食料確保のために歩き回った者たちは見るからに色の悪いきのみを見つけたと思う。これもポケモン世界に由来するもので、そのまま《きのみ》と呼んでいる。私たちが発見したものは概要欄のリンク先に載っているので、詳しくはそちらを見るとして今回は重要な効力の物をピックアップしていこう」
そうして机の上にきのみを並べていく。カラフルな色にコメントの勢いも減少気味だ。まあ、見るからに食用ではない。
「右からオボンの実、オレンの実、カゴの実、キーの実、クラボの実、チーゴの実、ナナシの実、ヒメリの実、モモンの実、ラムの実だ」
『まずそう』『明らかに毒物』『え、食べるの?』『見たことある』『食べ物?』
コメントはほとんど半信半疑である。
「もちろんすべて食べたとも。ここに見せていないものはかなり尖ったものもあるので気を付けてほしい。味はオボン、オレン、キー、ヒメリ、モモン、ラムあたりが無難だろう」
『つまりリーダーはこれを食料にすべきと?』
「ああ、今コメントに合った通りきのみの力は素晴らしい。水を与えずとも1日で収穫可能である。水を与えると収穫が早くなるが、水を与えすぎると枯れるよくわからない植物だ。最適水量は載せてあるので確認するように」
『さすがリーダー』『この短期間で水の量まで』『これで食糧問題がなくなる』
「栄養などは学者さんが調べるだろう。安全性はよくわからない。少なくとも短期的には問題ないと思う。学者さんお願いします」
たぶん安全だろうが。混乱するものもあるが、すぐに回復したし。その混乱も歩けなくなるほどではない。少し酔った感覚だ。
この世界の人の体は意外と丈夫だ。最強クラスの毒キノコ:カエンタケを丸呑みして、腹痛ですむのがこの世界の住人である。
「それより注目すべきは効果だ。特にこのオボンの実は複雑骨折を治すほどの回復能力を与える。まさに医者いらずだ」
「リーダー。君の複雑骨折は添え木したりと最低限の知識は使ったからね」
「だそうだ。私は気絶していたからな」
『やば』『さらっと流したけどリーダー大けがじゃん』『え、大丈夫?』
心配のコメントが流れていく。何があったかを聞くコメントもあるが、そこは今は無視させてもらう。
「私たちも平穏とはいかなかっただけだ。さて次は………」
参謀のコーナー
「ボクはポケモンと仲良くなる方法と行こうかな。一番手っ取り早いのは力の差を見せることだね。従えば強くなると認めさせれば、仲間になってくれる。ただ人知を超えた力に生身で挑むのは無謀だろう。だからまずは友達になる方法かな」
『…友達』『に…人間強度が下がるから』『ボ、ボッチじゃないし』
「君たち、わざわざ点々をつけるあたり、実は余裕がないかい?ごほん。最初は小さなポケモンをお勧めするよ。大きなポケモンは力を求めることが多いけど、小さなポケモンは餌を取ることも一苦労さ」
そういってリラは足元にいるブースターに目線を合わせる。
「ポケモンは確かに人間以上の力を持っている。かといって自分の何倍も大きな生き物に無警戒とはいかないのさ。それが彼らの生存戦略だからね」
リラはオボンの実をかじり、残りをブースターの足元にきのみを置く。そのまま少し離れる。
「直接渡すのはNG。まず自分で食べて安全なことを見せる。食事時は無防備になるからちょっと離れる。ここからは我慢の時間だね。食べてくれれば少しは信頼してくれた証さ。後はスキンシップなどで距離を近づけていけばいい。あ!たべていいよ」
「ブー」
ブースターがきのみにかじりつく。そのブースターを愛おしそうにリラが撫でる。
「ポケモンは賢い。だからこちらが誠意を見せれば誠意で返してくれることが多い。例外もあるけどそれは人間も同じだろう?だから「シャー!」「シー!」ちょ!今配信中!顔舐め「ブー!」こらブースターも」
『ぱんつが』『見え』『見え…ない』『変態どもが』
こらえきれなかったようでシャワーズもサンダースもリラに飛び込んで行った。事前のリハーサルでは一番我慢強かったブースターに決定したが、我慢できなかったようだ。もともと彼らはリラが大好きだ。きれいな画面映えを気にしたリラの負けだろう。結局わちゃわちゃしている。
コメントも小動物と子供の戯れとして、微笑ましそうにしている。
「リーダー助けて」
「さて、次行ってみよう」
「裏切者ー!」
ストーンのコーナー
「僕のコーナーは摩訶不思議な石たちを紹介しよう。きのみと違ってすぐ必要なものではないけどね」
ダイゴさんはそう言って袋から進化の石を取り出す。
「ポケモンたちには進化と呼ばれるパワーアップ方法があるんだ。この石たちはその進化を起こさせるものだね。ただし、進化条件が石ではないポケモンのほうが多いから、詳しくは僕たちのホームページを見てね。」
『進化?』『一世代で進化とは?』『成長では?』
「当たり前の疑問だね。例えば僕のメタング。一度進化しているけど、進化前はこんなんだったよ」
ダイゴさんのセリフと共にダンバルの写真が写される。
『別物じゃん』『これは進化』『変身だね』
「全く別物なのさ。ちなみに進化したては、体が大きく変わるから満足に動けない。でも進化出来たらその戦闘力は大きく向上する。戦闘経験で進化するものはいいけど、知識がないと石進化はできないからね。これを教えていこうと思う。まずは………」
閣下のコーナー
「おい誰だ勝手にテロップを書き換えたのは!!」
「わたしだよー。閣下って呼ばれるのわかっていたじゃん。こういう運命だよ」
『閣下来たー』『どんな摩訶不思議を見せてくれるんだ』
昔からアイはいろいろやらかしている。謎の安心感がある。
「ッチ。ではまずは刃物一本でできる簡単工作からだ。ナイフがないものは後日見返すんだな。では早速、人類に最も大きな英知を与えたものは何だと思う?答えは火である。ゆえに簡単に火が出せるフャイヤーピストンを教えよう」
火があれば食糧事情は大きく変わる。生肉を食すほど人の体は強くない。
「まずは木の棒を用意して、こうして、こうして、ここを切って、完成だ。後は木くずを入れて押せば火種ができる」
『できるかー!!』『早すぎる』『なんて早い手さばき、俺でも見逃しちゃうね』『暗殺者いて草』
ほんの数秒で出来上がる。これをまねしろは無理だろう。やり直し。
「むう。ではもう少しゆっくりと………」
ルチアのコーナー
「わたしのコーナーは少し違うんだ。これはみんなにお願い。ポケモンには後天的に特別な力を得た通常種とは違う異常個体が現れることがある。その情報をホームページから教えてほしい。写真だけでもいい。オンリーワンなポケモンはわたしたちもまったく情報がないから」
『希少種か』『一狩り行こうぜ!』
「絶対やめてよ!わたしたちが会った異常個体は本当に恐ろしかったんだから。あれが特別なのか、異常個体がすべてそうなのかはわかんないけど。自衛隊の人たちが一蹴されてたんだから」
『マジ?』『しょ…証拠は?』『銃があるでしょ』『私の避難所。ポケモンを銃で追い返しているんだけど』
「映像あるけど見る?けっこうグロいよ。今からは自己責任ね」
最後のサザンドラの残虐性はカットしたが、まあOUTだろう。あいつはヤバすぎる。
『ヤバ』『なんていうか、生物として格が違う』『銃効かないじゃん』『自衛隊が情けないなんて言えない』『むしろよく戦った』『家から出られないじゃん』
「情報がないことが一番ヤバい。わたしたちはこいつの住処も大体の行動範囲もすでに把握している。決して入らないようにしているから安全なんだ」
所詮大体の場所であるが、間違ってないだろう。一定範囲から一切生物の気配がなくなるのだから。怖くてそれ以上進めていないが。
『むしろルチアちゃんはどうやって助かったの?逃げれたの?』『バカ、逃げれなかったら配信していないんだよ』『隙ついて逃げたんだよ』
「そんなわけないじゃん。こんなヤバいのからただで逃げれると思う?リーダーが囮になったんだよ」
『さすがリーダー』『そこにしびれる』『あこがれる』
「あんまり茶化さないでよ。本当にぎりぎりだったんだから。さっきリーダーが複雑骨折したとか言ってたけど、そんなレベルじゃないからね。ウインディに背負われてきたとき、両手両足は変な方向に曲がっていたし、頭から血を流していたし、本当にヤバかったんだから」
コメント欄が絶句している。正直意識がなくてわからないんだけど。
「きのみの利点が実感できたと言っているけど、生きた心地がしなかったんだ。だから情報が欲しい。本当にお願いします」
真摯にルチアが頭を下げる。誠意は伝わるだろう。
この配信の裏の目的。異常個体の発見。ホームページには伝説などは情報に入れていないが、彼らの位置情報が分かるだけでもいい。とにかく情報が足りてないのだ。
『任せろ』『ちょっと行ってくる』『先を越されるな』
「でも慎重にね!本当に!…もう会えないなんて寂しいんだから」
『『『イエスサー!!』』』
あの時の私の状態を思い出して、涙目のままそんなことを言えば、イチコロだろう。
私も不覚にもときめいてしまった。
あっ、目薬もってやがる。
「さてさて、濃密な時間をみんなと過ごしてきたね。役立つことも役立たないこともあったけど「おい!チラ見するな歌姫!」みんなが精いっぱい生きてくれる手助けになればいいな!名残惜しいけど最後のコーナーにして最大の企画!ポケモンバトル!!!」
コメント欄が?で埋め尽くされるが、ここは勢いで行く。子供が戦うという拒否感を与えたくない。
「ポケモンが戦闘本能を持っていることはロトムの説明であったけど、それを解消しつつコミュニケーションを取れるのがポケモンバトル!さあ!時間も押しているし早速レッツゴー」
笑顔のルチアがアップで指をさす。そのまま橋を渡るとフットサル場が現れる。事前にゴールはどけてあるので、ある程度の広さが確保されている。
私とダイゴさんがそれぞれゴール跡地に歩いていく。お互いに振りむけば準備完了だ。
「映像に残るのは初でしょう!ポケモントレーナー同士によるポケモンバトル。あなたは歴史の証明者になる!!審判は参謀!実況は私ルチア。解説は閣下がお送りします「おい」では審判!!」
「バトル開始」
「ウインディ!君に決めた!」
「メタング!行け!」
どさくさに紛れてポケモンバトルの形を作る主人公たち。