黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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16話 激戦

 ミツハニーが来てから三日。この三日間、雨は降り続いている。

 そんな雨を窓から憂鬱気味にルチアが見つめている。

 

「はあ、大丈夫かな。ミツハニー」

「歌姫、心配するな。しっかりと指導したのだろう?」

 

 そう、つい先ほど雨に紛れてミツハニーは、ビークインに挑みに行った。雨がビークインのスペックを落とし、こちらは雨の中でも動ける修業を積んできた。

 少しでも勝率を上げるためである。

 

「もうボク達にできることはないさ。後は祈ることぐらいだね」

「これ以上野生のポケモンに肩入れすれば、その後の群れの世話もする義務が生まれるだろう。ルチア君、自分の力で勝ち取ることにも意味はあるんだよ」

「むう!分かっているけどさ」

 

コンコン。

 唐突に起こるノック。しかし、ミツハニーが戻ってくるには早すぎる。それ以前に彼女は、勝ったとしても負けたとしても、今後自分の群れを率いて生きていくだろう。ここに戻ってくることはない。

 ならばこのノックは誰なのか。ノックはドアの下の方で起こった。つまり人間の可能性は少ない。ポケモンだろう。

 私たちの間に緊張が生まれる。私はダイゴさんに目配せをすると、向こうもうなずいてくれた。ウインディとメタグロスを伴って、ドアに向かう。他のみんなも窓や、裏口にポケモンを伴って監視する。これが襲撃の可能性もあるのだ。

 準備が出来たら、意を決してドアを開ける。

 

 そこには傷だらけのスボミーがいた。

 

 

 

 

 

 スボミーはほとんど瀕死であったが、事情を聴くことはできた。

 

 スピアーの襲撃だ。

 

「!!すぐに助けに行かなくちゃ!」

「ルチア!!」

 

 慌てて飛び出そうとするルチアを私が呼び止める。

ルチアは私を責める目で見つめる。ここで助けないかと。しかし、冷静になるべきだ。

 助ける判断はもう遅すぎる。

 

「あのロズレイドが伝令として非力なスボミーを送る。そんなことはあり得ない。群れの長として伝令ならロゼリアの方がいいはず。それでもスボミーが来たということは」

「…すでにロズレイドたちは壊滅している」

「見る限り外にスピアーの姿はない。なのにスボミーたちは一匹しかこちらに来ていない。森ですべて止められている戦力を持っている。楽観できる状況ではない、か」

「じゃあ、見捨てろっていうの!」

「ユウ君もアイ君もそうは言ってないよ。ただ落ち着いて行動するべきなのは変わらない」

 

 ダイゴさんの言葉にようやくルチアも落ち着きだす。ただ、何かあれば動くのは変わらない。

 私は黙っているリラに視線を向ける。彼女の頭の中では様々な策とリスクがめぐっているはず。リラから頷き返される。

 

「アイ。ミツハニーが勝利したとき用に花火作っていたよね。防水性の」

「うむ。ただ、他のポケモンを刺激しすぎるからと却下を食らったがな」

「うん。いつでも打てる?」

「我を誰だと思っている」

「ユウとダイゴさんは、ドクケイルの林を燃やしてきて。林の外にスピアーが居なところを見ると、ドクケイル達はもうやられている可能性の方が高い。ならば補給線をぶった切る。ルチアはチルルと共にロズレイドの林に暴風を。地面は狙わないように。木々を倒していいから。アイは林を攻撃したタイミングで花火を打ち上げて。ここまで隠密に徹底しているんだ。私たち人間の何かを警戒しているはず」

 

 リラから指示が飛ぶ。ここで意見を言う余裕はない。失敗すれば一蓮托生。全員仏になるが、そんなこと前からである。

 作戦開始だ。

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

「ウインディ!だいもんじ」

「ガウ!」

「メタグロス、サイコキネシスで雨をはじいて」

「メッタ!」

 

 ドクケイル達がいたはずの林は、すでに生物の気配はない。たった三日である。私たちが別のことに集中していたとはいえ、この行動力は脅威しかない。

 林は火に包まれる。ポケモンの火力は強力だ。雨の日でも火をつけることが出来るのだから。

 突然、あたりをプレッシャーが襲う。あのサザンドラを経験していなけば動けないほどの殺気だ。

 炎の中から一匹のスピアーが現れる。

 

「あれはスピアーなのかい?」

 

 ダイゴさんが困惑するのは無理もない。スピアーの持つ両手と下腹部にあった毒針は大きく成長し、両足が毒針に変化している。

 

「いえ、あれはメガスピアーです」

 

 メガシンカ。ゲームでは一時的に強力な進化を行うものである。ただ、ゲームの図鑑説明には、人間を介さないメガシンカには多大なリスクがあったはず。それが現実になったのなら、スピアーの凶暴性にも説明が付く。一番上が暴走しているのだ。従う部下も暴れるのだろう。

 メガスピアーは、こちらに向けて突撃する。その速度は、進化前とは比べ物にならない。私とダイゴさんは左右に避ける。分断されるが、四の五の言っていられない。

 手早く方針だけ伝える。

 

「ダイゴさん!メガスピアーの特性は適応力。虫タイプ毒タイプの威力が上がります。どちらも受けられるメタグロスが守備を私たちが攻撃を」

「ああ!メタグロス!バレットパンチ」

 

 優先度の高い技が、本来の素早さを逆転し、不自然な加速でメガスピアーに当たる。

 急な緩急に、メガスピアーは目を白黒させる。やはり野生は突発的な動きに弱い。ここで畳みかける。

 

「ウインディ!神速」

「メタグロス、アイアンヘッドからのしねんのずつき」

 

 こちらの連続攻撃にメガスピアーに怯みが生まれる。そこにしねんのずつきが入り、大ダメージが入る。ただ、ここで正気に戻ったようだ。毒針を紫に染め上げ、連続でメタグロスに攻撃をする。しかし、ポケモンにはタイプ相性が存在する。鋼タイプに毒タイプの攻撃は無効だ。

 自慢の攻撃が利かず、明らかな隙が生まれる。

 

「ウインディ!あなをほる、続けてかえんぐるま。離れ際におにび!!」

 

 大ダメージを与えたメタグロスに集中していたメガスピアーは、この一連の攻撃を無防備に受ける。急所にあたった。たまらず下がるメガスピアーにメタグロスの一撃が襲う。

 

「サイコキネシスで地面に叩きつけるんだ」

「動きを止めたところに、もえつきる!」

「よし!ウインディごと、じしんで攻撃!」

 

 メタグロスのじしんによりウインディもダメージを負うが、もえつきるにより炎タイプを失っているウインディは、元気にこちらに戻ってくる。

 かなりの連続攻撃。しかし、土煙からは悠然とメガスピアーが現れる。

 

「確かに、強いけど」

「そうですね。巨大な力を振るっているだけ。力に振り回されている印象ですね。このまま畳みかければ、っ!!」

 

 唐突に炎の壁から、5匹のスピアーが現れる。雨のせいで火の勢いも弱くなってきた。それに新しく現れた5匹も、かなりの力を持っている。幹部といったところだろう。他にも羽音がたくさん聞こえてくる。

 こちらがかなり不利になった。が、ここで連続で花火が上がった。

ドーン!!

 突然の騒音にメガスピアー達の動きが止まる。ここでウインディがほえる。

 こちらの手札を警戒したのだろう。逡巡したのち、メガスピアー達は去っていった。

 初戦の遭遇戦は、向こうの戦力の大きさを確認しつつの引き分けで終わった。

 




初めに主人公たちを襲うと、視界が良いため、たとえ雨であっても襲撃がばれる。
勝ったとしても、ドクケイルとロズレイドの挟み撃ちになる可能性が高い。
一方、ドクケイル側なら雨音で戦闘音が、林で姿を隠せる。奇襲に成功しそのままロズレイドの下へ。
戦争は各個撃破が理想なり。
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