まだ薄暗いキャンプ地は、木の杭でできた防衛陣地が出来ていた。
空を飛ぶスピアーには、平面の陣地はあまり意味をなさない。丈夫さをメインに特に空中行動を阻害する木の杭が、組みあがっている。安全性はともかく、大掛かりなアスレチックのようだ。そして無数の槍が立てかけてある。
前日の戦闘からたった一日でできたとは思えない出来である。
その所々にはカメラが設置されており、すべて生放送されている。
事情は事前に告知されており、グロテスクな光景になるのは確実だ。それでも放送するのは、どのような結果になったとしても、今後に役立てたいからだ。役立てるのが、私たちか、視聴者かはまだ分からないが。
「あー、あー、マイクテスト中。うんOKみたいだね。じゃあ行こうか!最後のライブに」
「ルチア、縁起でもないぞ。リラの作戦を信じろ。私はそうやって生き残った」
「過大評価だねえ、リーダー。正直生存確率2割だね。戦力差が大きすぎる。ダイゴさん次第かな」
「リラ君は、プレッシャーをかけてくるね。単独突入、単独ボス撃破。相性がいいとは言え、厳しい状況には変わりないんだけど」
「なら、諦めるかい?」
「まさか!やっと年長者らしい姿を見せれるんだよ」
すでに準備は整っている。連日続いた雨の影響もほとんどなく、戦いはいつでも起こせる。
「なぜそんなに冷静なんだ!」
アイの悲痛な叫びが、響く。振り向けばアイの泣きそうな顔が、目に映る。彼女の役割を考えれば,当たり前なのかもしれない。
「死ぬかもしれないんだぞ!もう会えないかもしれないんだぞ!!みんなで逃げればいい!」
「これ以上大きくなったスピアーたちを止める手段はないよ」
「なら、せめて、せめて我も一緒に!」
「アイ。君は一晩でこの陣地を築き上げた。そんな寝不足状態で戦場には出せない」
「陣地内のさまざまなトラップを的確に作動させる人も必要だからね」
「生き残って情報を伝える人も必要だしね」
たった一人。残される彼女は、辛そうだ。しかし、戦場に寝不足で立ち、ミスをすれば、そこから戦線は崩れるだろう。陣地構築も手は抜けない。この配置が最適なのは、彼女も分かっている。一晩でできることなど限られているのだ。
私はアイの前に立つ。
「アイ」
「聞きたくない!!」
「アイ。今後を考えればスピアー達の癖を知る者を残すものは必要だ。私たちも最善は尽くす。君も考えられる最善を尽くせ」
アイは、私を軽く蹴ると、そのまま背を向けて所定の位置に向かった。彼女も分かってはいるのだ。情報を残す意味も生産系を残す意味も。
リラが横に来る。
「いいの。あれが最後の言葉で」
「なにを言っているんだ?また数時間後には、ここで祝杯を挙げれるさ」
「だといいね」
「ふう。さて、行こうか!!」
「「「おう!」」」