戦争は数である。たとえ一人一人が弱くても、数がいれば多少の兵器差は覆る。
戦争は質である。強力な兵器は、時としてすべてをひっくり返せる。
戦争は政治である。逃げばかり選択すれば、搾り取られるだけである。
だからこそ、この戦い逃げることはできない。人類にとっても、他のポケモンにとっても、スピアーたちにとってもいい結果にはならない。異常発生は最後には何も残らないのだから。
ここで止める。たとえどんな方法を使ったとしてもだ。
開戦の狼煙は、スピアーの巣に向けて大きな杭が飛ぶ。投石機を改造して作り上げた投杭機は、数十の杭は正確にスピアーの巣を含め周辺に突き刺さる。
ドーン!!!
直後、爆音が響く。爆弾。実は日本の教科書レベルの知識で作成できる爆弾を、アイが作れないはずがない。先制攻撃としては十分だろう。
無数のスピアーたちが見えてくる。規則正しく空を覆う姿は、空に絨毯を敷くようだ。あまりの戦力差に笑いたくなる。ここから先は何があっても止まることはできない。それでも、ここまで来て逃げることはしない。
「ウインディ!かえんほうしゃ!!」
相棒の口から炎の柱が生まれる。その柱は群れの先頭を超え、中央すら超え後方ではじける。距離により威力が減ったこともあるが、これは後方に本陣があるのだろう。ロズレイド達を襲う時も、主力は後方にいた。リラの読み通り。
「作戦道理行くぞ!」
「チルル!空へ行くよ!」
「チルル!!」
チルタリスはルチアを背に乗せ、ウインディの開けた空の穴に突っ込む。
Sideルチア
ウインディの開けた穴はわずかであるが、青空が見えている。ここにチルルと一緒に飛び込む。チルルの速度に振り落とされないように、しっかり首に手を回す。
先に上空で待機すれば、スピアーたちはわたしたちを警戒する。でも開始早々制空権は取りたい。わたしが失敗すれば、地上に残るみんなは無残な結果になるだろう。
スピアーたちによって、上空の穴はすでに閉じかけている。だから何だ!みんなの期待に応えるのがアイドルだ。
「チルル!回転しながらブレイブバード!」
「チル!!」
「アイドルを舐めるなー!!!!」
回転も炎もアイドルの派手な登場には必須なんだ!
こじ開けた穴を突き抜け、空に舞い上がる。ブレイブバードの名残の火の粉を振り払い、チルルは羽を広げる。背には朝日を感じる。敵であるはずのスピアーも戸惑いが感じられる。これがわたし史上最高最大のステージだ。
わたしはポケットから無数のボールを取り出し、放り投げる。もちろんただのボールではない。中には高濃度の殺虫剤が入っている。ポケモンであろうと、似た生物の特性は有している。これはユウが命を賭けて持ってきた情報だ。難しい理屈は分からないけど、使えるなら今は十分。
「チルル!ボールごとぼうふうを!」
「ル!」
ぼうふうは命中率が低いが、これだけ居れば関係ない。ボールから噴霧された殺虫剤がスピアーたちにダメージを与えている。個体によっては倒せているが、雀の涙でしかない。
初動は十分だろう。
「さあ行こうか」
「チル?」
「大丈夫!チルルは自由に空を舞って!未来の最高のアイドルは、どんな足場でも踊ってみせるんだから!」
「チル!!」
わたしはアイ特製の撃退アイテムを取り出す。みんな死んだら許さないからね。
Sideリラ
「君たちは軍隊よりも機械のようだね」
ボクを囲むスピアーは、同時に距離を詰めてくる。敵意は一定で、規則正しく攻撃してくる。上位存在がいなければ、工夫もできないようだ。そっと、一体のスピアーの針をそらせば、それだけで他のスピアーの邪魔になり、回避もしないため、陣形が崩れる。その隙をするりと抜ければ、スピアーたちはまとめて団子状態になる。
「ブースター、ほのおのうず。サンダースはスピードスター。シャワーズはもう積み終わった?」
「ブイ!」「シャ!」「シィ!」
「よろしい!シャワーズはだくりゅう。他は戻って」
積み技は積む余裕があれば最強の技である。これがボクの出した結論だ。策を使っても、最後にモノを言うのは自力である。スペックを上げる積み技をおろそかにすることはできない。
「シャワーズをメインに、サンダースは遊撃。ブースターは迎撃」
必要以上の火力は必要ない。各々の利点を生かすだけ。相性によりブースター単体でスピアーに迫れる。サンダースの速度には誰も追いつけない。積み切ったシャワーズは鉄壁要塞のように僕たちの肝となる。後はボクがミスしなければいい。
確かに細い。しかし、勝利の道は閉ざされていない。今できるのは時間を稼ぐことだけである。
「だから、君が頑張ってくれよアイ。安全圏に居ようと君が今回のメインアタッカーなんだから」
Sideアイ
そこは防空壕のような場所であった。そこには無数のモニターがあり、逐一戦場を監視している。そこで叫び声が響く。
「あー!もう!盟友は動きすぎ!もう少し落ち着かんか!」
「ろ、ロト。そんなこと言っても」
「反論いいから、2番、10番、310番作動!!」
「ロト!」
画面の向こうでは爆発が起こり、殺虫剤がまかれ、粘液水が機動力を削ぐ。我の作成した罠が連動して、スピアーたちにダメージを与える。過去最大の創造物。上からの奇襲を防ぎ、様々な妨害をし、敵に大ダメージを与える。ここから的確に援護するのは、創造主である我にしかできない。それでも、あそこに立ちたかった。
「我をのけ者にしたことを一生後悔するといい」
この防衛陣地のすべてを把握しているのは我しかいない。後で何と言われようとも、全員で生き残るのだ。
Sideダイゴ
僕の仕事は単純。みんなが陽動している間に、敵女王を叩く。指揮系統が混乱すれば、勝利への道が開く。そう思って、孤軍奮闘していた。
攻められる意識があまりなかったからか、敵大将の周りには護衛はほとんどいなかった。いや、これは自信か。
なんたって、今僕は膝をついているんだから。
「まいったねこれは」
取り巻きはすぐに倒れた。後は大将メガスピアーのみ。前日に付けたやけどはまだ、癒えてはいない。これだけで、攻撃力は半減しているはずだ。こちらも多くの攻撃を加えた。スリップダメージもある。それでも、メガスピアーは堪える様子が見えない。
トレーナーのいないメガシンカしたポケモンは、身に余るほどのエネルギーでダメージを常時回復させている。当たってほしくない仮説だった。これを超えるには、高火力攻撃か同等のエネルギーをぶつけるしかないだろう。はっきり言ってどちらも今の僕では用意できない。
1対1で負けることもないだろう。敵はメガシンカの影響か、単純な攻撃しか行わない。毒技しか使ってこず、僕のメタグロスには効果はない。ただ、時間をかければ負けるのは僕たち全員だ。数で攻められれば、生き残る手段はない。
「でも、みんな頑張っているんだ。僕だけ下を向くつもりもない」
「メッタ!」
「みんなに負担ばかりかけておきながらだけど、大人としての責任を放棄したつもりはない。信頼して任せてくれたんだ」
初めての強敵サザンドラ。まだあの時は信頼関係はなく、積極的に意見を言うのは憚れる状況だった。でももう違う。誇りをもって、みんなの仲間だって言える。
そういえば、ユウ君とアイ君はよく変なセリフを僕に言わせていたな。こんな状況だからこそ、笑っていってみようか!
「けっきょく ぼくが いちばん つよくて すごいんだよね」
首から下げたキーホルダーが、光り輝く。
Sideユウ
アスレチックのような施設を縦横無尽に駆け回る。直線スピードでは子供の私では敵わない。小回りこそが、最大の利点だ。
「うお!危ない!」
頭上にスピアーの針が突き刺さる。その針は私の胴体より太い木の杭に穴をあける。一つ穴が開いたぐらいで崩れはしないだろうが、やり過ぎはよくない。
「ていうか!お前絶対幹部クラスだろ!いたぶりやがって」
「ビビ!」
周りのスピアーよりも、動きがよく、判断が早い。周りのスピアーも攻撃に加わらず、私の動きを制限させる動きしかしない。十中八九こいつが指示を出しているのだろう。
ウインディも邪魔が多く、すぐにこちらには来れない。だからこそ、命がけの鬼ごっこをしている。
「こういう役回りが多い気がするぞ」
「ビビ」
その辺に立てかけてある槍を使い、牽制しながら距離を詰められないようにする。振り回すのではなく、突くだけなら素人の真似事でも十分効果が出る。
ウインディなら匂いで何とかわかるだろうと、入り組んだ施設をかけ回る。向こうも頭に血が上ったのか、激情的な動きが多くなってきた。
そろそろか。
私はあえて、直線に走る。せっかく開けた距離が瞬く間に詰められる気配がする。そのままスライディングで、クロスに交わった杭の間を抜ける。私しか見ていなかった幹部スピアーは杭にぶつかった。
杭にぶつかり目を回している幹部スピアーに秘策をぶつける。
「紫外線ライト(強
「ガウ!!」
さすが相棒。幹部スピアーが目がくらんだタイミングで炎を纏い、攻撃してくれた。
急所に効果バツグン。さしもの幹部も一発KOである。
「ただし、敵さんに乱れ無し。これは複数幹部がいるな」
「ガウ!」
さあ、もう一戦だ。と言うところで、目の前が真っ暗になった。
裏設定 メガシンカ
本文でもあると通り、野生のメガシンカはオートリジェネを持っており、状態異常にはなるが、一般ポケモンの技はほとんど無効化する。
しかし、体内のエネルギーをうまく使えていないため、種族値の上がり幅はそこまでない。
これがトレーナーとのメガシンカなら、オートリジェネが無くなり、エネルギーを十分に回し、種族値が上昇する。