黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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25話 月華3

 ついに月華での生活も6日目に突入した。そして私たちは、とある廃墟に呼び出されていた。何でもリラとカシラさんとの交渉が成立し、その交渉のアイテムがそこにあるらしい。

 交渉はリラに一任していたので、何を貰おうとしていたかまでは知らないが、リラが無駄なものを貰うわけがないだろう。

 ただ、わざわざ雨の中呼び出さなくてもいいだろうに。後日ではいけなかったのか。

 

 さすがに6徹は無理だったのかアイは布団に沈んだが、ルチアやダイゴさんと一緒に向かう。

 目的地は廃墟のビルが立ち並ぶ場所だった。少々月華本拠地から遠いが、ここに何があるのだろう。生き物の気配はするが、息をひそめている。私たちの連れているポケモンの気配に怯えているのだろう。私のチートによると、ゲーム換算でウインディは60レベルを、メタグロスは70レベルを超えている。それだけ強敵たちと戦い続けてことを喜べばいいのか、悲しむべきなのか。それでも異常個体や伝説、準伝説に勝てる気がしないのは、それだけ数値以上のものが離れているのだろう。

 目的地にはカゲツさんも居た。向こうもこちらに気が付き、何故か首をかしげる。

 

「なんでユウさんたちがここにいるんだ?俺はカシラに呼ばれただけなんだがな」

「私たちもカシラさんに呼ばれたんだけど」

 

 この生活でカゲツさんともかなり親密になった。お互いにかなり砕けた会話になっている。そして、カシラさんも会った。何か底知れぬものを持っている印象だったが、表面上はにこやかで気のいいおじさんだった。だからこそ、騙す印象はない。

 

「それはねえ!私が呼んだからですよ」

 

 ビルの影から何やらインテリヤクザぽい人が現れる。誰かわからず首をかしげていると、カゲツさんから説明が入る。何でも月華のナンバー2らしい。カゲツさんがその地位にいないことに驚いたんだが。

 そしてナンバー2さんは何用なのか。

 

「化け物使いはこれを見てください」

 

 そうインテリヤクザが声を上げると、四方八方より武装した集団が次々と現れる。全員銃をすでに構えている。彼らのそばにポケモンは居なかった。

 そして最後にはカシラさんが現れた。これは完全にはめられたか。

 

「なん…で」

「カゲツ。効率を考えればこれが最善なんだ」

 

 無常に言い放つとカシラさんは口を閉ざす。代わりにしゃべるのはインテリヤクザの方だ。

 

「邪魔なんですよカゲツ。ついでに化け物を使役している君たちも。我々人間は生物の頂点なんですよ!なぜ駆除ではなく手を取り合うのか!全く分からない!!」

「どうでもいい内輪もめに私たちを巻き込まないでいただきたい。それにリラはどうした!!」

 

 そう、ここにはリラがいない。こいつらが何かしたのは明白だ。

 返答は大きなモニターに映し出された。ぐったりとした様子の縛られたリラだった。

 

「「「な?!」」」

「君たちは能力だけはありますからね。これからも私が使ってあげますよ。彼女はこの周辺の一室に監禁させてもらいました」

 

 わざわざ隠し場所のヒントを晒すとは、よほどの自信家か。ただ、ここを何とかすればどうとでもなる。悪いがさっさとアイを連れて退散させてもらおう。

 ダイゴさんとアイコンタクトを取る。

 

「おっと!無駄な抵抗をしないで頂きたい。ここにいない彼女も犠牲になりますよ」

「屑が」

 

 アイも向こうに取られているのか。しかし今の状況ならともかく、いずれ挽回の機会は無数に訪れる。それほどまでポケモンの力は大きのだ。ポケモンの力を過小評価しているこいつらにはわかないだろう。

 インテリヤクザは何やら内ポケットから取り出す。なんかのスイッチか。嫌な予感がするぞ。ウインディ、しn

 

「それでもいずれ反抗されそうですからね。我々の本気を見せなければ」

 

ドゴーン!!!

 

 あるビルが爆発し、吹き飛ぶ。モニターも完全に沈黙した。

 

「は?」

「おい!!」

「頭、落ち着いてください。人質はもう一人います。それにあの頭脳は今後の障害になります。ここで摘み取るのが最善ですよ」

 

 私の理解を超えた。私の耳には雨音だけしか聞こえない。は?あいつらはナニヲ、ナニヲシテイルンダ。

 理解した瞬間、怒りにより真っ赤に染まった。それは私だけに留まらず、ウインディにも流れていった。ヘイガニ戦からあさのひざしを常用していたウインディ。その身には莫大なエネルギーが内包していた。今までのウインディには力を使うことはできなかった。ただ、怒りをきっかけとして、ウインディの中にあった枷が強引に引きちぎられる。

 

 

 

 

 

 巨大で青黒い炎が立ち上る。炎そのものからは熱は感じない。いや、炎に触れた雨は一瞬で蒸発し、折れた電柱が触れれば一瞬で溶解する。熱を完全に操っているのだろう。

 青黒い炎が晴れれば、現れたウインディ。体格は二回りは大きくなっただろう。たてがみも含めてかつて白かった毛は真っ黒に染まり大きく増量している。所々青い毛がコントラストを生み出している。オレンジぽかった毛は黒めの赤に染まり、ユウたちは知らないが配色はヒスイの姿に青黒さを混ぜた姿だ。

 

 異常個体ウインディ。この世界で初めてのトレーナーのポケモンが異常個体に至った例である。

 

 

 

 

 目の前が真っ赤だ。この世界に転生させてきたあいつらの精神操作のかけらも感じない。

 ルチアやダイゴさんが何か言っているが耳に入らない。

 ただ、殺すべき存在だけよく見える。

 

「化け物が!!討てえ!!」

 

 インテリヤクザの掛け声で、ウインディに弾丸が撃ち込まれるが、意味をなさない。触れた瞬間に金属が蒸発してダメージにならないのだ。人間の科学では今のウインディに傷をつけることはできない。ウインディの選別の下、すべてを焼き尽くす。例外はウインディが選んだものとポケモンのみである。ポケモンという独自のルールは物理法則を超越するが、ポケモンを持たない彼らに例外はない。

 ただ、焼き尽くすのみ。

 

「使い手を狙え!!」

 

 小賢しい。ウインディほのおのうず。

青黒くなったほのおのうずが私たちの周りに展開される。銃弾は届かない。熱も私たちは感じない。後はもうコロスダケダ。

 

「この!落ち着けって言っているでしょうが!!!」

 

 ルチアの頭突きが私に突き刺さる。予想外の攻撃に私も目を白黒させ、ウインディも技を失敗する。ほのおのうずが消え、私たちがさらされた姿に銃弾が撃ち込まれるが、強力なメタグロスのリフレクターと、サイコキネシスの前に地に落ちる。

 

「ここで暴れてどうするの!!アイまで殺されるよ!いつもの冷静なリーダーはどこ行ったの!!」

 

 ルチアのおかげで少し落ち着く。しかし、怒りが消えるわけではない。

 

「だからと言って拳を下ろせと言うのか!」

「そんなこと言ってない!すでにカゲツさんから部下へ緊急信号が行っている!時間はこちらに味方するの」

 

 カゲツさんの方を見れば頷いてくれる。さすがにカゲツさんを慕う部下は手下にできなかったのだろう。この場にいないのがいい証拠である。そもそもポケモントレーナーを見下しているみたいだし。

 冷静になれば、確かにこちらに好転してくるだろう。だからこそ今度は無力感が沸いてくる。仲間をこんなことで失うなんて。私がもっと。

 ルチアの右ストレートが突き刺さる。

 

「この馬鹿リーダー!リラもアイも居ないからわたしが言うけど!ユウはリーダだよ!!こんな戦場の真ん中でうつむいている暇はない!わたしたちが付いて来て正解だったと!命を賭けて正解だったと!その姿で見せつけるのが!わたしたちのリーダー!ユウだよ!!」

「………まったく。気軽に命預けないでよ」

「だから全員で背負うんでしょ」

 

 まったく女ってやつは強いなあ。気合を入れるためにも頬を叩く。

 

「すまん助かった!ダイゴさんもカゲツさんも」

「いやあ。改めてユウ君に背負わせていることを自覚させられたね。その謝罪はいらないよ」

「ああ(女って怖え)」

 

 立ち上がれば、しかし、いまだ状況は変わらない。途切れなく弾丸が撃ち込まれている現状、メタグロスの四方の壁を取り除くことはできない。従ってウインディも攻撃に移すことが出来ない。あなをほるでもその残った穴から反撃される可能性を考えると、安易には使えない。

 かと言ってこのままにするつもりもない。

 

「どうするのリーダー?」

「横も下もダメなら上しかないだろう?ウインディ!上空にかえんほうしゃ」

 

 特大の青黒い炎が、上空の雨雲を突き抜け、吹き飛ばす。暗くよどんだ空は一気に快晴となる。これが目印になれば、カゲツさんの部下もすぐに来れるだろう。

 

 

フォオオオ――ン

 

 

 晴れた大空に、聞いたことのない声が響く。ウインディのかえんほうしゃでその場にいる全員が空を見上げていたからか、この甲高く気高い声に、姿に戦いの手は止まる。

 空を優雅に飛ぶポケモン。その姿は自身の熱によるためか黄金に輝いて見える。

 にじいろポケモン。ホウオウ。ジョウト地方に伝わる伝説のポケモンだ。

 そしてその姿に呼応したのか、いまだ黒い煙が立ち込めるビルから黄金の輝きが満ちおる。

 

「これは奇跡か」

「うっそ」

「虹色の羽は確かにリラの下にあったけど」

 

 たしか、ブイズとの出会いでリラは虹色の羽を手にしていた。所詮はゲーム内でホウオウと出会える可能性があるアイテム程度の認識だった。

 

 黒い煙から一人と三匹が現れる。

 

「さあ行くよ!スイクン!ライコウ!エンテイ!」

 

クーン!

 まず地上に降り立ったのがスイクン。一瞬で周りに霧を発生させる。この霧には粘性を付与できるのか、敵の動きを阻害する。

 

シャー!

 次に降り立つはライコウ。目にもとまらぬ速さで走り抜ければ、電気により銃を使えなくさせ、さらに動きもマヒさせる。

 

ウォン

 最後に降り立つはエンテイ。その声は熱を持ち衝撃となって伝わる。わざわざ殺さないように手加減したとしても伝説。手下たちは意識を失う。

 

 いつの間にか戻ったライコウに乗ったリラが優雅に地面に下りる。いつも見慣れている私たちが、声を失っている現状だ。インテリヤクザも同様だ。しかし、カシラさんは違った。素直に両手を上げている。

 

「リラ君の好きにするといい」

「そう」

 

 リラはそれ以上何も言わなかった。一番の被害者が一言で終わらせているのだから、私たちも怒りを飲む。

ただし、空気の読めていないインテリヤクザ。戦力差も状況も見ずに吠える。

 

「ふ、ふざけるな!ま、まだこちらには人質が」

「ほう?それは我の事か?」

 

 いつの間にかフロストロトムの上に座るアイの姿が。無事だったようだ。本人はかなりご立腹のようだ。まあ、今回は知らずにすべてが始まりすべてが終わったのだから当然か。

 インテリヤクザは最後にカゲツさんに縋る。

 

「なあカゲツ!このままだと月華は終わるぞ!私と共に行こう」

「歯あ食いしばれ!下種野郎!!!」

 

 カゲツの拳がインテリヤクザの捉え、衝天させる。

 こうして怒涛の一件は幕を閉じた。

 

 

 




折角、進化した主人公の異常個体ウインディ。ほとんど出番なしW
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