黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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26話 月華4

 あの怒涛の一日から一夜明けって、月華の住民たちに、結局何も知らさることはしなかった。暴走したのが一部であり、大多数は無関係だった。たとえ、この一件がインテリヤクザの思い通りになったとしても、遠からず破綻していただろう。

 ただし、月華の構成員は違う。今回のことを重く受け止め、ポケモンに好かれない人物は実権から遠ざけるという大胆な方針転換に出た。これは正式にポケモンと歩むとともに、大規模な組織でもポケモンと歩めるというモデルケースになってもらった。

 モデルケースとして恥じない姿を見せるため、構成員がモラルに反する行為をした場合は、かなり厳しめに対処することになった。脱退メンバーも居たが、全体では多くはない。いや、そういう人物はあの事件にかかわっていたのだろう。

 

 もちろん私たちに対してもかなりの援助を約束してくれた。このご時世お金は意味がないので、労働力をかなり借り受けることになった。特に私も教育するが、ポケモンとチームを組み、周辺の治安維持部隊にはかなりの期待を寄せている。

 農家部隊も様々な所で畑を作り、いずれは食料での争いがない環境にしたい。

 他のメンバーも思い思いの無茶ぶりをカゲツさんにしていた。

 そう、新しく月華の頭としてカゲツさんが就任した。本人はかなり嫌がっていたが、周りの期待もあり本人の責任感もあり収まるべくして収まった。ただ、かなりフットワークが軽く、よく私のところに愚痴を言いに来ている。リーダーとして弱みを見せにくいのは分かるが、実年齢10歳の小学生に相談するんじゃありません。

 

 

 

 そして私たちの新たな力を得たポケモンたちの事もよく分かってきた。

 伝説の三犬は、さすが準伝説の力を持っている。全員がゲームの設定と類似しながら拡大解釈した様な固有の能力を持っている。スイクンは霧を操ったり浄化能力ですべての状態異常を癒したり、ライコウは体内で常に高圧の電気を生み出し背に貯めることで最速の攻撃を可能にし、エンテイは地面からエネルギーを吸収し地面に足をついていれば無敵の要塞と化す。

 

 ウインディは私のチートによる数値上で体力が20,防御が20,特殊防御が20上昇している。上昇率はメガシンカには及ばない。ただ、異常個体の本質は能力にあった。ウインディの力は熱を操ることで、応用すれば氷の技まで使える。イメージは攻撃するときだけ、追加で炎タイプと氷タイプが追加されるようなものだ。氷技は1.5倍、炎技は2.25倍まで威力が上がる。攻撃を受けるときは炎単タイプになるぶっ壊れ能力である。常に1/8の回復能力も持っている。

 

 実際の戦闘でも相性差もあるだろうが、レベル的には格上のメガメタグロスに対して異常個体のウインディが圧勝するようになった。力関係はメガシンカよりも異常個体の方が強いことを実感できる。

 対してスイクン、ライコウ、エンテイ達(準)伝説と異常個体のウインディはどっこいどっこいである。

 

 つまりポケモンは、

 一般ポケモン≦野生のメガシンカ≦トレーナーとのメガシンカ≦準伝=異常個体≦伝説のポケモンという力関係があるみたいだ。

 さらにこの上に、生まれながらの異常個体である準伝説のポケモンと叩き上げの異常個体では経験も違うだろうし、レベル差もあるだろうし、相性もある。

 一概に最強を決めるのは難しいだろう。ただ、目安にはなる。

 今回の出来事をぼかしながら、配信で伝えていく。また今回の経験で誰でもできるきのみ講座も開設し、少しでも食糧不足を解消させたい。

 波乱万丈だったが、結果だけ見ればいい方向に向けたのだろう。

 

 

 

 

Side カゲツ

 

 ユウたちはとっくに自分たちの拠点に戻っている。希望してきた何人か人を連れているが、そろそろ拠点に着いたところか。

俺 は離れにある鉄の牢獄に来ていた。ユウたちは怒りを飲んでくれたが、彼らに配慮して滞在中はここに来ることはしなかった。いくつかの大部屋で構成されているが、他人との共同作業が彼らの罰になるだろう。もともと性格に難がある奴ばっかなのだから。

 そんな中、一つだけ個人の部屋が用意されている。かしら、いや、元頭の牢獄だ。分厚い鉄の扉に背を預ける。

 

「なあ、なんで事を起こしたんですか」

「…言っただろう。これが効率的だと。ここから先ポケモンとの融和は最優先だ。特に月華は人数が多い。不和が広がれば全滅もあり得た。だからこそ癌は早急に切り取らねばならなかった」

「でもあんたなら」

「時間は有限だ。どんな襲撃が起こるか分からない現状悠長なことはしてられん。バカ者と一緒に心中して、希望を繋げれるなら本望だ」

「………」

「あとは好きに道を作るがいい」

「…ああ」

 

 鉄の扉からカゲツは離れる。見えないのは分かっているし、言葉にするのも頭として許されない。ゆえに扉に向けて軽く頭を下げると、出口に向かって歩いて行った。

 

 

 

「ユウ君の見せてくれた異常個体だったか。同じ異常個体でもサシであの時見た三つ首竜に敵うとは思えん。が、それを覆すのが知恵であり絆だ。人とは元来、群れることでその地位を保ってきた。そこに罅はいらないのだ」

 

 扉の中で静かに独白するカシラ。パンデミック初日に、自身の優秀な息子と部下達を暴君に奪われた男は、それでも復讐ではなく希望への未来を望むのだった。

 

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