黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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箸休め回


27話 肝試し

 月華騒動から早一か月。そろそろ5月も半ばに突入する。ただし、こんな環境ではゴールデンウィークも存在しない。私たちも様々な所に出張して、休みなく働く。月華が安定したことで、行動範囲が拡大した。月華が周りを探索し、貧窮している場所があれば私たちは東に西に飛び回る。その道中で適当に木の実が育ちやすい土壌を作ることで、九州全体の食糧事情はかなり改善しただろう。

 九州の有名な組織のほとんどと私たちと面識を得ることが出来た。私は知らない人もいたが、アイ曰くリーダーのほとんどがゲームの登場キャラクターということで、能力の高さを思う存分発揮している。ただ、在野にもまだまだ有名人は多くいることだろう。そんな人達ともつながりを作ることで、いずれは九州全体で一大組織ポケモン協会を作りたい。

 現状では夢物語だが、完成すれば大人たちに運営を任せ、私たちも一トレーナーとして大会に参加してみたい。そんな夢の実現のため奔走する中、カゲツから連絡が入った。私たちに依頼するのは珍しい廃病院の調査であった。

 

「調査を私たちに依頼するのは珍しいな。強力なポケモンがいるのか?」

『いや、初期探索はめんどくさそうだがけが人はいなかった』

「ならわざわざ私たちに依頼せずともいいのでは?依頼料は安くはないだろう?」

 

 一応線引きとして、依頼には報酬を貰っている。アイテムや情報や研究結果など様々だが、ただではない。月華も余裕があるわけではないはずなので、自分たちでできる範囲は自力で行っていたはずだ。

 

『おめえら、前回の休暇はいつ取った?』

「………10日前です」

『お前らの力が唯一無二なのはわかっている。野生ポケモンとの交渉も街の復興も今までは時間との勝負な所もあった。ただ、今はかなり安定してきている。ここいらで休暇まがいなことをしてもいいだろう。未だ10歳のガキなんだから』

「そういえば10歳でしたね」

『おい!まあ、そんなわけだ。肝試しでも楽しんで来いよ』

「肝試しには早すぎる気がしますが」

 

 

 

 

 

 せっかくの気遣いである。ありがたく頂戴しよう。

 

「そういうわけで来てみたわけだが」

「うん。僕も言いたいことは分かるよ。事前に貰っていた写真と違い過ぎるね」

 

 事前に貰っていた写真には廃病院と言っても、ポケモンパニックで廃病院になっただけで、今からでも使えそうな病院であったはずである。そんな病院が何やらおどろおどろしい赤黒で染められ、黒いオーラが物理的に見えている。よく分からない現象で割れている窓からも室内の様子を見ることが出来ない。そして一番異様なのは入り口に[welcome]と書かれたカラフルな看板である。その横にはデフォルメされは魔女のアイが一人と一匹で入ってねなどとコメントしている。。そしてアイは仕事の関係で現場に前乗りすると聞いている。今はどこにもいない。

 

「あの楽しそうな声色から察することが出来ただろうに。参謀失格だね」

「ねえ、まさか本当にここに入るの!!」

「「「もちろん」」」

「なんでみんな楽しそうなのさ!!!」

 

 ルチアの悲痛な叫びが響き渡る。ただ、誰も反応しない。アイのことだ。ムカつくぐらい安全面は配慮していることだろう。

 

「ウインディ。一番に行くぞ」

「じゃあ二番目はボクだね。連れていけるのは一匹までらしいから、前回の任務で出番がなかったライコウに頼もうかな」

「メタグロス、お化け屋敷っていうのはね……」

「ねえ!なんで一人ずつ入る必要があるの!!みんなで行こうよ!!!!」

「「「看板に書いてあるし」」」

「イヤー!!!!」

 

 

 

 

Side ユウ

 

 病院内もかなり改造されている。看板には上を目指すように書いてあったので、素直に向かう。隣のウインディも一切怖がっていない。むしろ雰囲気を楽しんでいるようだ。

 暗く薄暗い廊下に一気に青白い炎がいくつも現れる。唐突に生まれた炎に本来なら驚くはずが、私もウインディも戦闘勘ですぐさま正体を見破ってしまう。

 

「ヒトモシか。へえ、九州にもいるんだな」

「ガウ」

 

 強すぎる感は、こういう場を楽しむことが出来なくなってしまったかもしれない。それでも周りに潜むポケモンたちは真剣に楽しそうに潜んでいる。その様子にこちらも楽しくなってきた。さて、折角の休暇だ。存分に楽しんでいこう。

 

 

 

 

Side リラ

 

「へえ。ゴーストタイプって愉快なポケモンが多いんだね」

 

 ボクは自分の特殊能力でお化け屋敷を純粋に楽しむことはできない。それは今までもこれからも変わらないだろう。昔ユウたちといったお化け屋敷もそれなりで終わってしまった。むしろ、怖がらせようと頑張る職人たちの心意気の方が楽しかったぐらいだ。

 だからこそ、今回はとても楽しい。たくさんのポケモンたちが真剣に遊んでくるのだから。

そして、隣も面白い。自分は伝説になったのだからと気を張るライコウの内心はかなりビビっているのだから。かみなりを現していると思われるギザギザの尻尾がふにゃりと垂れ下がっている所なんて、かわいらしいとしか言えない。

それはそれとして、こういう時だからこそ言えることもある。

 

「ライコウ。確かに君は強力な力を手に入れた。力を持つものには相応の責任もある。だからと言って常に気を張っていたら疲れちゃうよ。適度に気を抜かないとね」

 

 最近ボクのポケモンたちは急激に力を手に入れた。それもどちらかと言えば外部からの影響である。自力で得た力でないためか自信があまりない。その分頑張りすぎる姿が散見できた。こういう息抜きは確かに必要そうだ。エンテイ、スイクンにも今度話す機会を設けてもいいだろう。

 

「だから」

バンバンバン!!!!

「シャ!?!?!?!」

 

 急にガラス窓に人型の手が無数に現れる。突然現れた手形に驚いたライコウは、かみなりをぶつけると思いっきり飛び上がって頭を天井にぶつけて悶えている。かみなりに無傷なガラス窓など言いたいことはあったが、それよりもライコウの慌てふためき方に思わず爆笑してしまった。

 その後機嫌の傾いたライコウを半笑いでなだめるのだった。

 

 

 

 

Side ダイゴ

 

 僕の相棒はかなりの臆病なのかもしれない。恐怖のあまり自力でメガシンカすれば誰だってそう思うだろう。自力のメガシンカは自分にかなりの負荷をかけ、さらに能力の上昇率もよくない。その分回復能力があり、すぐに体力を半分くらいは回復する。今はその回復能力が欲しいのか、自力のメガシンカに固執していた。普段のクールな姿からは想像のできないものだ。

 それにしても、相棒のこんな姿を僕は今まで知らなかった。それもこれも今まで日常生活があまりに少なかったからだろうか。これからはこんな生活も多くしていきたいなあ。

 そんなつぶやきに、背後を警戒していたメガメタグロスが驚愕な視線で僕に振り替える。

 僕はそんなメガメタグロスを撫でるのだった。

 

 

 

 

Side ルチア

 

「ぐぐぐ、みんなスイスイ行っちゃうし。アイドルがお化け屋敷が怖い?そんなことはあり得ない!」

「チルル!」

「だから行くよ!チルル」

「チルル」

 

 そしてどちらも動かない。譲り合いの精神って大事だよね。そうなんだよ。だからかれこれ10分は入り口で止まっているけど、大事なとこなんだ。

 そんなわたしたちに業を煮やしたのだろう。多分こんにゃくだろう。ひんやりして滑っとしたものが首筋に当てられる。

 

「「ピギャー!!」」

 

 わたしたちが地獄が手招きしている入り口に突入するのだった。

 

「ギャー!いろんな炎が追いかけてくる!!」

 時には様々な炎に追われたり。

「突然電話が鳴った!!!」

 部屋に入れば突然電話の音が響き。

「窓から黒い手がどんどん現れた!!」

 かぎづめ状の手が現れたり。

「骸骨の顔が急に!!」

 天井からすり抜けたヨマワルの顔に驚いたり。

「人体模型がばらばらに」

 もはや学校にあるはずの人体模型が置いてあるだけだったり。

 

 様々な刺客に、わたしたちは行き絶え絶えだった。もはや走る余裕もすでにない。わたしもチルルも地面にへたり込んでいる。

 ただ、こんなとこで座っていたら、ゴーストポケモンのいい餌食である。立ち上がろうとする。

 ズルズルズルズルzrzr

 何やら引きずった音が背後から聞こえてくる。振り向きたくはない。振り向きたくはないが、恐怖を把握しようとする本能が後ろを振り向かせる。

 真っ白なワンピースを着た長髪の人が這いずっている。これだけでも恐ろしいのにその身長は半分ほどしかない。いや、下半身がない。そしてまだ距離があるのに声は鮮明に聞こえた。

 

「ねえ?私の下半身はどこ?」

「「zaqxsw?!?!?!」」

 

もはや言語ですらない。わたしとチルルは抱き合う。過去一番にわたしたちは分かり合っているだろう。ここから逃げたいと。

 莫大な音色が日々渡った。

 

 

 

 

 Side ユウ

 

 肝試しはいろいろあったが、一応怪我無く終わることが出来た。

 

「いやあ!十分楽しませてもらったぞ」

「うんうん楽しかった!!」

 

 野生のゴーストポケモンたちはすでに解散している。

 仕掛け人の二人もずいぶん楽しそうだった。アイの横には健康的に日に焼けた私たちと同じくらいぐらいの少女がいた。名前はフヨウ。ゲームで四天王を務めていた少女である。

 少し前に仲良くなった二人は、折角の機会と合流し今回のイベントを開催したようだ。二人の背後にはヨノワールとギルガルドが楽しそうにしている。ヨノワールはフヨウのポケモンだが、ギルガルドはアイのポケモンだ。ゲームでも最前線を走りぬいたポケモンだ。いつの間にかアイの戦力が強化されていた。そしてもう一つ私たちの戦力は強化された。

 

「アーイ!!」

「うむ!いい反応がよかったぞ」

「アイ!!」

「まあまあついに壁を破れんだし。メガシンカおめでとう」

 

 私のフォローはあまり意味をなさないようだ。メガチルタリスもルチアも恨みを籠った視線がこちらにささる。あまり触らない方がよさそうだ。

 フェアリータイプともこもこの追加されたチルタリス。もはや、チルットのノーマル飛行の面影は存在しない。メガチルタリスの実力はすでに背後にある完全に壊れた廃病院が証明している。アイも一応様々な防御仕様にしていたみたいだが、音攻撃の前には意味をなさなかったようだ。

 いつの間にかアイとルチアのポケモンバトルに発展している。すでに十分ギルガルドもメガチルタリスも十全に動けているようだ。この二人はそのままにしておこう。

 そして、残った者たちで廃病院の後片づけをするのであった。

 

 

後日

 カゲツから廃病院の魔改造について文句の連絡がきたが、十分楽しませてもらったといえば引き下がってくれた。なぜか報酬はなくなっていたが。

 

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