梅雨はめんどくさい気持ちにさせる。雨だけでもめんどくさいのに、今年の梅雨はポケモンたちにどのような影響を与えるか分からないからだ。それを言ったら、四季全てが危険かもしれないが。それでも梅雨はかなり神経質に監視していたのだ。だからこそ今回の騒動の初動に気が付けたのだろう。
「メノクラゲの大量発生?」
『ああ、とある港町でメノクラゲが大量発生しているらしい。おかげで漁に出向できていないそうだ』
恒例のカゲツとの連絡会。その中で不穏なセリフが含まれていた。
「メノクラゲだけなら何とかなりそうだけど」
『ゲンジさんとボーマンダが今回の収拾に赴いたんだが、敗北したそうだ』
「?!」
ゲンジさんとは四天王のドラゴン使いである。ポケモンパニック初期から港町を中心に活動していたおじさんであり、その冷静な判断力と実力で九州の海を守る存在である。
私たちもゲンジさんに初めて会ったときにドラゴンタイプの珍しさから、比較的人に肯定的なフライゴンを触らせてもらったが、それでも背には乗せてもらえなかった。そんな気の難しいドラゴンタイプを3匹(ボーマンダ、フライゴン、キングドラ)を操る正真正銘の実力者である。個々の実力はまだ低く(それでもレベル50は超えている)、メガシンカも取得していない彼が負ける要因は限られてくる。
「野生のメガシンカによる異常回復か、準伝説や異常個体や伝説の能力か」
『夜間に赤く輝く3つの光。体調は40Mほど。そして大量のメノクラゲを率いている。ここから導き出されるのは』
「『異常個体ドククラゲ』」
カゲツも予想はしていたのだろう。そして、彼らに対抗するには匹敵する力をぶつけるしかない。現在メガシンカを使えるものも少なく、使えるものも自分の町の防衛のため、離れるわけにはいかない。私たちに声をかけたのはそれが理由だろう。
『他の援軍も何人か声をかけている。頼めるか?』
「断れない依頼は依頼ではないぞ。報酬は奮発してくれよ」
『ああ!最高のAVを用意しよう!』
「それ止めろよ!!普通の報酬に当たり前のように紛れ込んでいて、女性陣の冷たい視線がやばかったんだぞ!!」
『中身は普通のアニマルビデオだぞwww』
「なら目録にAVなんて書くんじゃねえ!!!!」
ちなみに動物の構造や狩りの様子は、私のポケモン育成をさらに一段高いものにするので、やめるつもりはない。
「海だー!!」
「「だー!!」」
数日後、私たちはとある港町に来ていた。かなりの発展具合であり、元研究所を利用した工場は化学製品を中心にしており、莫大な利益を上げているらしい。そのおかげか、かなりの人口を誇っており、普通に街中にポケモンと人が共生できている。
「それにしてもよかったのかフヨウ。ここに来て」
「全国お化け協会(6人)は現在開店休業状態!つまり暇なのだ」
安定してきたとはいえ、そんな仕事で生活が成り立つのか。などと思っているとアイから補足が入る。霊という今まで存在が確認できていなかったゴーストポケモンたちに有効な手段を持っている者たちは大変重要らしい。街づくり初期は墓地の位置など大変お世話になる存在らしい。そして今は新しい街が生まれていないから暇なだけで、人やポケモンが亡くなれば、すぐに仕事が舞い込むということだ。お坊さんの亜種のような仕事のようだ。
え、九州全土を6人で回すとなると、逆にかなりの激務になるんじゃ。
私がひそかに戦慄していると、リラから質問が入る。
「で、どうするの」
「なんでも他の援軍をここで待ってゲンジさんの所に向かうらしい」
「その通りさ☆」
キラーん!!
そんな擬音語が流れるようなセリフが背後から聞こえる。ああ、こいつが来ているのか。
帰ろうかな。
「叔父様?!」
「やあ!ルチア。そしてご一行!みんなのアイドル、ミクリだよ!」
「キューン」
ポケモンパニック前からトップアイドルとして存在していたルチアの叔父であるミクリとミロカロスである。その付き合いはパニック前からであり、私たちをTV関係者に勝手に紹介した大バカ者だ。本人は善意しかないところがさらにたちが悪い。そして、ダイゴさんの同級生だということを知ったのは最近である。
「ミクリはどこでもアイドルだね」
「ダイゴだって石への愛は変わらないだろう」
何やらお互いに握手している。もう勝手にしてほしい。ミクリ独特のミクリワールドはあまり得意じゃないんだ。そしてこいつがいるならあいつもいるのだろう。
「アッハッハ!ヒースも居るのさー!これで注目も喝采もヒースの物」
「ラグ!」
はあ。この自信家もいると。ヒースとラグラージは何やらポーズを決めている。そしてこいつは何か突掛かってくる。何でも私たちの人気が気にくわないらしい。初対面の第一声が子役の寿命は短いものさ!なんて言ってくるのはこいつくらいだろう。
二人とも邪魔ばかりするなら邪険に扱えるが、非常事態には冷静に対応でき、能力も高く悪い人ではない。せめての抵抗としてため口を使っているが、むしろ二人とも楽しんでいるふしすらある。
めんどくさいので参謀にでも押し付けようと探すが、リラはもう一人の援軍と話しているようだ。
「へえ?楽しそうな光景だね」
「………」
「ナギならできるよ」
「………」
「その意気だよ!」
なぜ会話がつながるのか。一人気ままに旅をする少女ナギは、エアームドの背に乗ってよく空を飛んでいるので、寒さ対策か、よく分からないゲーム時の服装を常用している。このエアームドは他の個体よりも大きいが、一応個体差であり異常個体ではない。
「ハイハイ!全員揃ったのでゲンジさんのところに行きますよ」
「「「はーい」」」
返事は立派だな。おい。
ゲンジさんの下に訪れれば、毒に侵されていたゲンジさんとポケモン三匹がいた。事前に聞いてはいたが、私のお手製のモモンのみですら、解毒不可能な猛毒を相手は使ってくるらしい。
リラのスイクンの状態異常回復により、毒を抜くことが出来たが、今回のバトルにゲンジさんは参加できないだろう。
ただ、戦闘情報は大いに助かった。
メノクラゲは数が多いが、そこまで脅威ではない。町の被害をキングドラ一人で抑えることが出来たみたいだ。
そして肝心の異常個体ドククラゲだが、毒を纏っていない通常の触手に触れただけでフライゴンは猛毒状態になった。そして技に触れるだけで異常個体特有の猛毒(超猛毒)に侵される。ボーマンダの翼にドククラゲのたたきつけるがかすっただけで、超猛毒に犯されたようだ。
奇妙な点があり、どれらで避けてもどれだけ離れても一切毒技は使わなかった点だ。ここが特に大きな弱点になりそうだ。
作戦としては街に被害は出せないので、数と質のあるリラが防衛。同じ異常個体で壁役になれる私がメイン盾。熱操作で氷の足場が作れるとは言え、ウインディの補助役にルチアとナギ。メインアタッカーのダイゴさん。サブアタッカーのヒースとミクリ。アイはいつものごとく環境作りに動いてもらう。誰かが毒になれば後方で防衛しているスイクンに治療してもらう手はずになっている。この隙間埋めに変幻自在のゴースト使いであるフヨウがいる。後は臨機応変に行こう。