黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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32話 始龍

 私たちの拠点に戻れば慌ただしい様子であった。私たちの拠点も、人口は増えて村と言ってもいいレベルまでは人が住んでいる。住民はそれぞれポケモンと一緒に何やら広場に集まっている。その中心にいるのはルチアであった。

 

「みんな!準備はいい!!リーダーの弔い合戦だよ!」

「勝手に殺すな!」

 

 とりあえずルチアの頭に拳骨を叩きこんでおいた。

 

 

 

 今回のプチ騒動は、出迎えを派手にしようといったルチアの案だったらしい。住民全員が私の無事を知っており、のんびり歩く私のGPSもどきからの情報で危険性もないと判っていたらしい。

 とりあえず、もう一発拳骨を叩き込んでおいて今回の情報交換を行う。

 アイ曰く、弟子トレーナーは登場人物らしい。名前はヒガナ。そうでもないとボーマンダなんて一級品のポケモンは使えないだろう。安堵から未だ気絶しているが、命に別状はないようだ。

 そして私の方も情報を渡す。予想以上の予想外の情報に、全員言葉をなくす。それだけ私たちにとって異常個体サザンドラは特別だった。この村だって、今では砦の役割も持っており、サザンドラが山から下りてきた場合の防衛ラインになる予定だったのだ。

 

「勘違いの可能性は?」

「ない。あいつは腹芸を好まない。罠があっても踏みつぶす王者だ。そんな奴があからさまな落胆なんて見せるものか」

「参謀よ、策は?」

「……方針を転換しよう」

「と言うと」

「戦いの飢えを満たしたうえで、殺すではなく倒す楽しさを教えるのさ」

 

 今まで以上によからぬことを考えているリラが印象的だった。

 

 

 

 

 

Side ユウ

 

「相変わらず圧巻な滝だなあ」

 

 リラの作戦を聞いてから3日の間を置いた。各々準備を整え、今日を迎えた。起きたヒガナの騒動と指導もあったが、万全の準備はできた。

 各方面に情報を共有し、もしもの時には援軍の要請はしてある。最悪人里に奴は降りるだろう。援軍は必須だった。それでも、今回のサザンドラはできるだけ私たちで倒したいため、作戦の概要などは伏せている。

 そもそも負ける可能性は低いのだ。レベルはサザンドラの方が高いだろう。一対一ならだれも勝てない。しかし、同じ強さのステージに立つ異常個体のウインディを持つ私、異常個体ドククラゲを持つアイ、異常個体と同等の力を持つ準伝説を三体も持つリラ。さらに一歩スペックが劣るとはいえ、メガシンカできるメタグロスを持つダイゴさんと、チルタリスを持つルチア。すでに経験も十分な私たちが、束になれば勝つことはできる。

 でもそんなことはしない。私たちもトレーナーとしてプライドも因縁もあった。これで今でも非道を繰り返していたらその限りではなかっただろうが、サザンドラは強敵を待っている。

 

「なんだ、前とは違うな。うれしそうな気配の質が全然違うぞ」

 

 振り向けばサザンドラがうれしそうな気配を発している。もうそのレベルは狂気の域だろう。そんなに私が生きていたことがうれしいか。

 懐からオボンのみを取り出し、齧って残りを二つに分ける。片方をウインディに、もう片方をサザンドラに投げる。サザンドラも中央の顔が素直に受け取る。他の顔から不満たらたらな視線がささる。

 おまえら腕の頭は思考能力がないってロトム図鑑に書いてあったんだけどな、と思いながらオボンのみをもう一つ取り出すと半分に割り、両腕の顔に投げれば嬉しそうに食べる。

 この行為に意味はない。しいて言えばお互いに完全な状態で戦いましょうだが、ここからは何でもありの戦いだ。

 お互いがそのつまりだからだろう。攻撃開始のタイミングは同時だった。

 

「かえんほうしゃ」

「ガウ!!」

「ガアアアア!!!」

 

 ウインディのかえんほうしゃとサザンドラの三つのりゅうのはどうがぶつかり合う。青黒い炎と真っ黒なエネルギーが激しく衝突する。余波だけで周りの地面に亀裂が入る。

威 力ではサザンドラの方が高い。ぶつかり合う技は少しの間拮抗するが徐々にあくのはどうが押してくる。

 もともと威力勝負するつもりはない。私とウインディが散開すると、間にりゅうのはどうが突き刺さる。その攻撃はそのまま滝に衝突し、莫大な量の水を真っ二つにする。

 宙には大量の水がはじけ飛んでいる。

 

「れいとうビーム」

 

 私の指示が響く。基本的に私が指示を出すのは、要所要所に絞っている。そもそも一定以上のポケモンの戦闘スピードに人間はついてこれない。しかし、機転と言う点でトレーナーはポケモンバトルに大きく貢献できる。

 

 ウインディのれいとうビームが水を凍らせ、凶器と化す。そのまま落ちてきた凶器をサザンドラはあくのはどうで迎撃する。安易に炎技は使わないようだ。体内のエネルギーをそのまま放つ炎技は出が速いが、過去ガーディ時代の特性もらいびを覚えているのだろう。

 あくのはどうで一掃し氷粒が舞う。その中にりゅうのはどうが突き刺さる。目視できないはずだが、サザンドラの感覚は騙せない。氷粒を突き抜けるとそこにいたのは身代わりだった。隙をついた身代わりは消えてしまうが、サザンドラは無防備となる。

 しんそくにより背後から強襲したウインディは、後方に飛ぶ。

 

「重ねてほのおのうず」

 

 空中で放てる技には限りがある。しかし、組み合わせによっては隙無く放つ連続技になりうる。ミクリが考案した同じ技を重ねる技術。質量をもつ技ならぶつかるエネルギーが増大し、回転ならギアがかみ合うように威力を上げる。

 簡単なようで難しい技術をウインディは3つ放つ。ミスれば格好の的だが、決まれば大ダメージとなる。

 ほのおのうずとは思えない爆炎と共にサザンドラが炎に包まれる。しかし、気にするそぶりを見せずサザンドラが距離を詰めようとする。

 サザンドラが視覚とピット器官に感覚を頼っているのは前回の戦いで解っている。この状態で突っ込んでくるとは、サザンドラも頭に血が上っているのか。

 ウインディはルチア直伝のステップを刻みながら距離を詰める。目測を誤らせるステップは急に目の前に現れたように見えるだろう。そのままじゃれつくを叩き込もうとする。

 バキバキバキ

 地面を砕いてサザンドラの長い尻尾がウインディの胴体に絡みつく。

 

「なあ?!」

 

 炎のせいで尻尾の目測を誤ったか。そして無理やり地面を砕きながら尻尾を前に出す機転とパワー。前回とは戦いの質が違い過ぎる。

 そしてサザンドラの三つの首に集まるエネルギーにも驚愕する。

 私のチートは育成。ゆえに直感的な知識と感覚は優れている。技の起こりでどんな技かぐらい瞬時に理解できる。

 

「ほのおのちかい、くさのちかい、みずのちかい、だと。サザンドラの覚える技じゃないだろ!!!!」

 

 ゲームでは同時に放てば倍になる技が3つ分。相互作用により威力は桁外れとなる。苦し紛れのれいとうビームも居に返さず、三つのちかいを至近距離で受けウインディは倒れる。

 

 

「ガアアアア!!!」

 

 歓喜に震えたサザンドラの雄たけびが響く。咆哮が止まればこちらを見てくる。

 

「……完敗だな。しかし、次はそうはいかないぞ」

「その通り!ルチアの登場ってね!」

 

 すでにメガシンカ、こうそくいどうの積んだメガチルタリスが主人をのせたまま、かぎ爪でサザンドラを持ち上げ戦場を後にする。

 

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