黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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33話 次龍

Side ルチア

 

 正直言って今回の戦い、全員で一気に倒せばいいんじゃないとも思っている所もある。わたしのアイドルとしての部分が冷静に数字だけを見るべきだと言ってくる。

 そしてわたしのトレーナーとして、さらにユウちゃんたちの仲間としての魂が言っている。

 もうここにはリーダーを犠牲にせずとも生き残れるわたしがいると。

 最後にわたしのすべてが訴えている。

 最後に目指すべきは大団円がいいと!

 

 

 

 かなりの速度でサザンドラを掴みながら飛ぶチルル。ただ反撃は恐ろしいため、比較的硬い岩盤に叩きつけた。

 ポケモンの技を介さない攻撃は、高レベルのポケモンにはあまり効果はない。ポケモンそのものが物理現象を超えかかっているのだ。だからと言って物理現状を逸脱しているわけではない。重力の影響はあるし、こうして叩きつけられれば脳が揺れ、すぐには動けない。

 

「ハイパーボイス!!」

 

 メガシンカにより新たに得た特性フェアリースキンはノーマル技をフェアリータイプに変える。そしてサザンドラの弱点はフェアリーである。さらにアイドルでもあるチルルの音技は、他の技より練度も高い。

 チルルの背から飛び降りて、再度指示を出す。

 

「もう一回!」

「チルル!!」

「ガアアア!!!」

 

 ただ相手もなすがままというわけではない。すぐに体制を整えあくのはどう三連発を放ってくる。

 さすがは怪物。相性は完全に有利なのに、どんどん押されていく。ただ、チルルだけ見てていいのかな?

 

「ロズレイド!やどりぎ、どくどく、しびれごな、やどりぎのタネ!最後にベノムトラップ!!」

「?!」

「ロズ!」

 

 知ってるよ。今まで一対一しか経験がないんでしょ。だから突然背後に現れたロズレイドの対処はできない。

 ロズレイドの攻撃は全て当たる。が、カウンターまがいに振られた尻尾が直撃し、跳ね飛ばされる。

 

「ロズレイド!!」

 

 慌てて駆けよれば、目を回して気絶している。知ってはいたけど、一般ポケモンではいくら強くなってもこれが限界か。悔しさも後悔も湧き上がってくるが、今は戦闘中。途中退場なんてアイドルがやるもんですか。

 馬鹿の一つ覚えと言われるかもしれない。それでも長所を最大限輝かせるのもアイドルなんだ。

 

「ハイパーボイス!!」

「ガアアアア!!!」

 

 先ほどの光景がまた広がる。何度放とうが、サザンドラのあくのはどうの方が威力が高いため、いずれ押し負けるのはチルルの方。

 それでも何度も続ける。

 そしてついにチルルの目前まであくのはどうが迫ってきた。距離を測る。

 

「今!!エコーボイス!!!」

「ルー!!!」

 

 瞬間。巨大な一撃があくのはどうを突き破り、サザンドラに直撃する。サザンドラも驚いたことだろう。

 種明かしをすれば、ここは洞窟で音が響く。たとえハイパーボイスであっても、音は残って響いていた。そしてエコーボイスは残った音を巻き込んで放つ技。今までの音技を上乗せして、相手見ぶつける。

 

「はあ、はあ、はあ」

「チ、ルル」

 

 ただし本来の使い方ではないため、わたしにもチルルにもダメージが入り次は放てない。

 わたしたちの渾身の一撃、少しは堪えてて欲しいけど。

 

「ガアアアア!!!」

 

 瓦礫を突き破りサザンドラが現れる。まったく本当に力量不足に嫌になる。わたしたちのなかで一番相性がいいのがわたしなのに、倒すことが出来なかった。だけど。

 

「ざまーみやがれ」

 

 舌を出して皮肉を言ってやる。

 サザンドラが反応するよりも早く、サザンドラは念力により洞窟の奥に引きずり込まれていった。

 

「あーあ。勝ちたかったなあ」

 

 わたしもチルルの大の字になって地面に倒れるのだった。

 

 

 

 

Side ダイゴ

 

 今でもたまに夢に出ることがある。まだ付き合いが短く、責任を押し付けやすい年上の僕ではなく、たった10歳の少年が死地に向かっていったことを。そんなリーダーを無駄にはしないと必死に前を向こうとしていた少女たちの事を。そしてそんな中、何も支えることが出来ずにただ戦うことしかできなかった自分を。

 そんな悪夢とはおさらばさせてもらおう。

 この洞窟は一直線であり、お互いに攻撃を避けることはできない。メガシンカと異常個体との力の差は歴然であるが、めいそうを6段階積み、サイコパワーを充満させたこの洞窟なら話は変わる。

 サザンドラの最大の強みは遠近両方とも高いレベルで扱えることだろう。その反面防御能力は比較的低い。そしてこの狭い洞窟では接近しての攻撃は愚策になる。

 タイプ相性が良くはないが、自分の有利なフィールドがどれほど恐ろしいか、流星の滝の主に教えてあげよう。

 

「ラスターカノン」

「メッタ!」

「ガアア!!」

 

 不意打ち気味に放ったラスターカノンが、とっさに放たれたあくのはどうに相討つ。メガメタグロスの万全の技が異常個体のサザンドラのとっさの技と同等であった。三つの首から放たれる技は3倍分の威力になるとはいえ、こっちは万全の準備をしたんだけど。

 ただこの連戦かつ環境の変化。先ほどまでの圧倒的相性の悪さから同等レベルで相性有利の敵。サザンドラの意識に油断が生まれる。もし、トレーナーがいれば簡単に気の引き締められるほどの小さいものではあるが、この場では悪手である。悪タイプにエスパータイプの技が利かないことは事実だが、先ほどねんりきで回収されたことを忘れたと見える。

 

「君にトレーナーがいたら手も足も出なかっただろうね!ミラクルアイ」

 

 ミラクルアイ。悪タイプのポケモンにもエスパー技が当たるようになる変化技。こんな技を野生が使うはずがない。それだけ使いどころの少ない技だ。つまり、サザンドラは生まれて初めてエスパー技を食らうのだ。

 

「サイコキネシス」

 

 サザンドラが壁に叩きつけられる。サイコパワーの充満している空間ではエスパー技は全て先制技に変わる。あの大きなサザンドラがくるくる回り、初めて受ける技に目を白黒させている。あの怪物でもこんな状態は初めてらしい。

 しかし、苦し紛れに放たれたあくのはどうがメガメタグロスを打ち抜き、解放された。

 これがユウ君の言っていた狩人の本能ってやつかな。

 お返しとばかりに口にエネルギーをためるサザンドラ。迎え撃っても破られるのが落ちだろう。

 

「サイドチェンジ!」

 

 だからサザンドラとメガメタグロスの位置を変える。目標を見失ったサザンドラが振り向く。状況が分かっていなくても本能で敵の位置を把握したらしい。

 ただし、振り向く動作が余分となり大きな隙が生まれる。

 

「バレットパンチ!」

 

 先制技で急加速し、一撃叩き込む。振り向きざまに受けた一撃は、技を中断させるのに十分だった。

 

「ここが勝負所!コメットパンチ連打!!!」

 

 メガシンカした影響で四本の腕があるメガメタグロス。そのすべてが光り輝く。

 連打連打連打!!!

 

「崩れた!ここだ、直接じしん!!!」

 

 体制の崩れたサザンドラに直接じしんを叩き込む。じしんの振動が強靭なサザンドラの外皮を貫いて内部にダメージを与える。

 サザンドラの体がくの字に折れる。

 

「終わらせっ?!!」

 

 顔を上げたサザンドラの口には莫大なエネルギーがあった。先ほど技をキャンセルさせたが、そのエネルギーが消えたわけではない。ここまで貯めていたのか。

 攻撃はもう止められない。メガメタグロスは、カウンター気味にあくのはどうに飲み込まれた。

 これが異常個体サザンドラ。こいつの執念を甘く見ていたか。

 

「まいったね。なら次の勝負だ」

 

 懐からボタンを押せばサザンドラの姿が消え、次の所に転送された。アイ君特製の転送装置である。

僕の戦いはこれで終わり。ただ、ここで勝っておきたかった。次の彼女は勝負ではなく勝ちを優先するだろう。

 僕にはその姿が、ひどく危うく見えたのだ。

 

 

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