黎明のポケットモンスター   作:チリラーメン

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34話 思龍

Side アイ

 

 別にこの作戦に不満はない。我の、いや私の思いに蓋をすればこの作戦の成功率は高いと思う。それだけポケモンに触れてきたと思うし、この世界に慣れてきた。

 前の世界よりも暖かくて優しいこの世界。本当の悪意ある人がここまで少ない世界で、なぜ世界大戦なんて起きたんだろうと歴史の勉強をしていて思った。前の世界なんて出る杭は打たれ、道化を演じなければ大人すら忌み嫌い、道化に対しても押さえつけてくる。

 一方この世界は、能力の高い人が生まれやすいからか、かなり寛容な世界になっている。もちろん、人によって性格の違いもあるし、ルールを逸脱したら裁かれるけど、いつぞやのインテリヤクザがあの性格でナンバー2に成れるほど組織という物は甘くない。

 だからこそ我らのチームは居心地がいい。全員が全員を尊重し助け合っている。

そんなやっとできた私の居場所を壊す存在は絶対に許さない。

 

 

 

「正直、ここまで残ってくれて嬉しいよ。貴様だけは我の手で討ちたいと思っていた」

 

 日本によくある細い木が乱立している山の山頂付近に我らは居た。サザンドラは急に外に放りだされた状況についていけていないようだ。ただし、立ち直させるつもりはない。

 

「ドククラゲ!どくづきでたたきつける」

 

 もともと木々によって日の光は当たりにくい。だからサザンドラも気が付くのに遅れた。

 ドククラゲの持つ超猛毒を纏ったたたきつけるが、地面に放射状の罅を作り、周りの木々を吹き飛ばす。

 続けて第二打を放とうとするが、土煙を翼で吹き飛ばしたサザンドラがあくのはどうで迎撃しようとする。が、そんなことはさせない。横からキングシールドを維持しながらギルガルドがサザンドラの横顔に突撃する。

 ダメージはない。そもそも異常個体に一般ポケモンが有効なダメージを与えられることは少ない。サザンドラなら急所にフェアリー技でも当てればダメージになるだろうが、我のメンツにフェアリー技を覚えているポケモンがいない。

 しかし、無意味ではない。ポケモンはポケモンの技の影響は受ける。横から殴られればさすがにサザンドラもあらぬ方向に攻撃を放ってしまう。そのままギルガルドは抜けていく。

 サザンドラの目線がギルガルドを追うが、その隙にドククラゲの第二打が撃ち込まれる。

 勢いを逃がせない位置で同格の異常個体の攻撃。さすがのサザンドラも堪えてきている。

 

「そして超猛毒ったか」

 

 今のドククラゲは、スイクンのおかげで昔のようにすべての有機物を溶かす猛毒性は持っていないが、それでも異常な猛毒性は、一度受ければ急激に体力を削っていく。

 

「ガアアアア!!」

 

 自分のダメージに構わず吠えるサザンドラ。自分を鼓舞するためか気合を入れるためか知らないが忘れているのか。ドククラゲの攻撃手段の触手は複数あるのに。

ドククラゲの攻撃は連撃が基本だぞ。

 サザンドラの横合いから木々を吹き飛ばしながら、どくづきをお見舞いする。ただ相手も怪物である。長い尻尾を地面に突き刺し、勢いを殺すと反撃に出ようとする。

 させるわけないだろう。転送装置を起動してサザンドラを数十メートル移動させる。さすがに二度目は効果が薄いのか、的確にドククラゲを攻撃するが、向きも方向もおかしくなった攻撃だ。

 

「キングシールド」

 

 強力なあくのはどうも受け流すようにギルガルドが流す。このために異常個体の仲間たちに受け流しの練習に付き合ってもらったのだ。

 そしてこちらの手は三つあるのだぞ。

 

「ふぶき」

 

 サザンドラの背後に隠れていたフロストロトムのふぶきが直撃する。ダメージを負いながら尻尾で薙ぎ払おうとするサザンドラであったが、すでにロトムは転送されてその場にはいない。

 そして、サザンドラの背後から茂みの鳴る音がする。間を置かずそこにあくのはどうが撃ち込まれるが、もちろんダミーであり、技を放った後の硬直したサザンドラにドククラゲの一撃が叩き込まれる。

 

「ふん。我に三日与えられたのだぞ。この一帯には貴様をはめる罠が満載に決まっているだろう」

 

 我の声も木霊したようにどことなく聞こえいるはずだ。そこら中に設置した熱源のせいでピット器官も役には立たない。

 サザンドラは倒れたまま攻撃を放ってきた。少しでも早く攻撃を打ち込みダメージを与える算段か。無駄だ。

 ドククラゲの巨体が消え、あくのはどうが空に放たれる。

 サザンドラが急に現れた陰に気が付く。

 

「ガア!」

 

 サザンドラの振り向きざまに、またしてもどくづきのたたきつけるが撃ち込まれる。

 サザンドラは地面をバウンドし、斜面を滑り落ちる。

 木のおかげで止まるが、立ち上がる気配はない。毒も回ってきたようだ。だからといって油断はしない。油断なくドククラゲに指示を出し、たたきつける。

 力をしっかり貯めたため、今までで一番の土煙が上がる。

 

「ふぶきとシャドーボ―ル」

「「?!」」

「ふん。業腹だが、異常個体の中でもトップクラスのやつだ。頭と胴体が離れるまで攻撃の手を止めるな」

 

 我のポケモンたちも戸惑いもあったが攻撃してくれた。起き上がってきたときのために次の戦略を考える。

 まだまだ山には仕掛けが満載である。ドククラゲを中心として必ず息の目を止めてやる。

 

 

 

Side ???

 

負けるのか。死ぬのか。せっかく楽しい戦いがここで終わってしまうのか。いやだ!いやだ!!いやだ!!!

 そんなことは認めない!もっとこんな楽しい戦いを味わい尽くしたい

 

 

 

Side ユウ

 

 スピアー戦でアイが爆発させた時に匹敵する振動を感じる。

 この洞窟の細い道は崩れているんじゃないかな。

 さらに過去感じたことのない重圧が離れていても感じる。

 

 可能性はあった。

い つかアイが言っていた。異常個体はかなり狭い門であるのに対して、メガシンカは過剰なエネルギーとそれを操れる資質さえあれば誰だってなれる可能性もある。だから手持ちを全てメガシンカ個体で埋めることは可能だと。

 その時は聞くことはしなかったが、もう一つの仮説が私の中には浮かんでいた。

 

 異常個体のメガシンカ

 

 ウインディと修業した実感としては可能であるということだ。

 ただし全く異なる理を両立しようとすれば、破綻してしまうだろう。事実、ウインディはメガシンカしようとしたら大ダメージを受けてしまう結果になった。

 できる可能性はあるのだ。そしてそれに至った存在が現れた。

 

「ウインディ行けるか?」

「ガウ!!」

 

 相棒の頼もしい返事がかえってくる。

 正直予測が当たり、異常個体のメガシンカに至ったら、サザンドラに勝つ可能性は限りなく低くなる。

 参謀の最初の作戦通りになることを祈るだけか。

 

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