side○○でしか表せない自分の力量がむなしい。
ショッピングモールで迎えた朝は最悪にだった。
目覚まし時計が仲間の悲鳴なんて最悪すぎる。
「きゃー!!!!」
「?!」
包まっていた布団を蹴飛ばし、とにかく悲鳴のあったほうに向かう。
何か考える余裕はなく、体が勝手に動いていた。
「大丈夫か!!」
たどり着いた先には、倒れて呆然としたルチアと血だらけの男とチルットがいた。
どゆこと?
SIDEルチア
わたしはアイドルとして人一倍気配には敏感であった。ただ極限状態での行動に体は、かなりの疲労を迎えていたようだ。そうでなければこんなことにはならなかったのに。
臭く生暖かい風が顔にあたり私は目を覚ます。すると目の前には脂ぎったおっさんがいた。
「?!?!」
あまりの事態に声を上げられなかった。いや上げなくて正解だろう。声を上げればおっさんの拳が飛んでくる。そういう危ない雰囲気を醸し出していた。
「ぐふぐふ、いやあ。あのルチアちゃんがこんなところにいるなんてね。声は上げないでね。どんなことをするかわかんないから。こんな世界だし、神様は微笑んでくれているのかなあ」
最悪!!こんな変態が紛れ込んでいたなんて。周りとみると寝た場所とは違っていた。
運ばれていたことに気が付かないなんて、わたしの間抜け。
「さあ。痛いのは一瞬だからさ」
「痛いのはあんただけよ!!」
油断だらけで近づく男にわたしは思いっきり蹴り上げ、男の弱点を直撃した。その隙に離れる。
さらにわたしは大声を上げる。
「きゃー!!!」
声を上げればこのおっさんは何をしでかすかわからない。それでも離れたのなら、他の人が来るまでくらいならなんとかなる。ユウちゃんの提案でわたしたち全員体は鍛え、護身術も会得している。
悲鳴に反応した人が来るまでもってみせる。
「このガキが!!」
「うるさい!変態」
おっさんが右腕を振りかぶってくる。ただその動きは大きく、簡単に躱すことができる。
むきになったのか、何度も拳を振り下ろすがわたしには当たらない。
いける。
そこで調子に乗ったのがいけなかった。ここはいつも練習しているところではなく、障害物の多い場所であることを失念してしまった。
床に落ちていた布を踏んでしまいそのまま尻もちをつく。
力では勝てない。だから逃げていたのに。
「このガキ!!」
ゆっくりとすら感じる中、拳が振り下ろされる。
そんなわたしを助けたのは白い雲をまとった青い鳥であった。
「チルル」
SIDE ユウ
なるほど、この男はギルティだな。すでに気絶しているので問題ない。
問題は人間を攻撃するこのチルットだろう。
結果的に助かったが、次の矛先がこちらに向きかねない。
私がどう排除するか考えていると、剣呑な雰囲気を感じたのかルチアが私の腰に飛び掛かってきた。
「違うの!!このチルルちゃんは友達だから」
「…説明。あと重い」
「失礼ね!えっと、昨日自由行動したでしょ。その時窓の外にこの子がいて、ビスケットがあったから、えっと、その、え、餌付け、しま、した」
その言葉を聞いて私の怒りボルテージも上がっていく。それに伴ってルチアの言葉も力を失っていくが、加減はしない。
「勝手に、一人で、野生のポケモンに、近づくなって!言っただろうが!!!!!」
「だって、お腹が空いてそう、痛、ご、ごめんなさーい!!!」
私のぐりぐりがルチアに当たった。効果は抜群だ。
私はルチアを説教していたが、ようやく悲鳴を聞きつけた人たちもやってきた。この環境であまりに動きが遅いのではないだろうか。
正座をし、頭を垂れる彼女の上にチルットが丸くなっている。話を聞いた先ほどの勇敢な姿とは打って変わって今はのんきだ。こいつの性格が分からない。ただこちらを害する気持ちはなさそうだ。
やはりポケモンは良き隣人に成れる可能性がある。あとあの男を攻撃して、私の説教はスルーしていることから、予想以上に人間の感情に敏感なのだろう。よかったよかった。
問題は後ろの避難民だろう。状況を理解してか、男を庇うものはいないが、見知らぬ生き物と仲良くしている私たちを警戒している。こんな環境なら当たり前か。これは早くここから離れたほうがいいだろう。
「ちょっと!!なんで化け物がここにいるのよ!!さっさと殺しなさいよ!」
「落ち着いてください。相手は子供ですよ」
声に出す人もいる。声をあらげるこのおばちゃんは、昨日も同じようなことをしていた。
警察官の人に止められてもお構いなしだ。ここは、私から切り出すべきだろう。
「では、今日中にここを立ちます。それでいいでしょう」
「いや、それでは君たちが」
「精々するわ!!」
「では失礼します」
頭を下げると、ルチアとリラを連れて離れる。
「よかったのかい?」
「現実から目を背けている人たちと一緒にいても、大変なだけ。これでいいよ。それよりルチア、こんな状況だ。安定するまでは、できるだけ隠し事は無しで頼むよ。君の観察力は頼りにしているんだから」
「ぐ。わかっているわよ」
おい、視界の端で顔を背けたリラ。お前もなにか隠しているのか。
おう。ブルータス。お前もか。なんて言えばいいのか?
昨日目星は付けていたため、そこまで出発の準備に時間は掛からなかった。
そしてリラの隠し事は1階のペットショップの中にポケモンが混じっていたという情報だ。なにやらポケモンと動物どちらもいたようだ。
ケージの中にいたため、餌と水だけ与えたらしい。お前もか。なぜ餌付けする。そういう情報もすぐに伝えてくれ。それにしてもケージの中にいたということは、ポケモンは動物と入れ替わったりするのか。それも全てではなく、一部だけ。
リラの先導についていき、ペットショップに行くと何やら騒がしい。
ポケモンが見つかったのかと頭を抱えていると、数人の男たちが何かを蹴っている。
なぜかケージの外に出されているポケモンが。
発見したと同時に隣にいたリラが駆け出す。
「おい!」
リラは私の制止も振り切り男たちの前に飛び出していった。両手を広げポケモンを庇う。
「やめなさい!!」
「邪魔すんな!!化け物退治をやっているんだよ」
「これじゃあ、ただの弱い者いじめよ!!」
「この!!」
頭に血が上っている男はすぐに腕を振り上げる。躱すわけにもいかず、ルチアは目をつぶり耐えようとする。
まったく、せめて目は開けて防げよ。何のための護身術だ。そんなことを思いながら、男の振り上げた腕に自分の手を伸ばす。
勢いの乗った拳は9歳の体では止められないが、その前なら簡単に止められる。前提に身体能力向上(小)があるが。
「大の男がみっともない」
私はそのまま男を押す。殴るために重心が高くなっている男は簡単に、よろける。
バカにされたと感じたのか、すぐにほかの男たちも殴りかかろうとしてくる。
「やめといたほうがいい。こちらに君たちのいう化け物がいることは、朝の騒ぎで知っているだろう?」
「チッルル!!」
チルットが勇ましく羽を広げる。私たちから見ればかわいらしい仕草だが、男たちには威嚇しているように見えたのだろう。
ポケモンに恐怖を持っている男たちは、悪態をつきながら去っていった。
私はため息を吐きながら、リアに拳骨を落とす。
「勇み足」
「ユウがいるから大丈夫さ」
一切詫びれないリラ。
もう一度ため息をつきながら、今度はポケモンのほうを向く。
憔悴したイーブイが三匹身を寄せ合っている。そして、男たちに殴られていたのは、ガーディであった。正義感のあるこのポケモンらしいものだ。
「リラ」
「わかっているよ」
リラをイーブイたちのところに行かせる。ポケモンの気持ちのわかる彼女しか、あのイーブイたちはダメであろう。
そして私は傷だらけになりながらも、悠然と男たちと戦った小さな勇者に目線を合わせる。ぼろぼろになりながらもイーブイ達を守り切った姿は誇らしげだ。
「よく頑張ったな」
「ガウ!」
頭に手をのせれば、モフモフした毛が気持ちいい。ガーディも受け入れて気持ちよさそうにしている。
「わあ、ありがとう!似合う?」
「ブイ!」
リラも問題なかったようだ。何やらイーブイ達からプレゼントを貰っているようだ。髪飾りにしている。私の目にはその髪飾りが虹色に輝いている羽に見える。
このショッピングモールのどこにあったんだよ!
「今回は本当に済まない」
「気にしないでください、警察官さん。私たちは何とかできます。心強い仲間がいますからね」
「そのようだ。これからはその姿が正しくなるのかもな」
あの後あまり時間を置かず私たちはショッピングモールを後にすることにした。あれだけ騒ぎを起こせば当然だろう。大き目の荷物を全員が持っている。そして周りにはルチアのバックの上にチルット、私の足元にはガーディ、リラの周りにイーブイ達がいた。彼らもついてくれるそうなので、私たちは一気ににぎやかになった。
「ではお元気で」
「ああ、君たち3人の武運を祈る」
敬礼をしながら、警察官さんは私たちを見え送ってくれた。
目指すはキャンプ場。まっすぐ進めれば、昼前にはつくだろう。私たちはそろって歩き出した。
「待って、アイは?」
「「あ!!」」
「盟友の馬鹿野郎!!!!」
あ、よかった。アイもちゃんと来た。目の下のクマは一日寝ていないのだろう。
ショッピングモールの出来事が濃かったのだから、忘れていたのは仕方がない。アイのドロップキックは甘んじて受け「ぐえ」
「みぞおちに入っ…た」
「ふん!!」
「ごめんごめん」
「あははは、で君の後ろの人の紹介もしてほしいんだけど」
そう、アイと一緒に高校生くらいの青年がいた。いかにもなイケメンで、気品からお金持ちの雰囲気を出している。
「聞いていた通り、仲がいいんだね。では自己紹介させてもらうよ。僕はツワブキ ダイゴ。趣味は石集め。アイ君にいろいろ聞いているよ。よろしくね」
「大誤算だ」
「…ん?なんかイントネーションが違ったような」
まさかの原作キャラの参戦である。え、でもなんで。
「ああ、君たちと同じく僕もポケモン?と一緒に行動しているからね。あそこは居づらかったのさ」
「バルバル」
ダイゴさんの背後からダンバルが現れる。なるほどまあ、納得のペアである。
強力な助っ人をつれて来たからか、アイが胸を張っている。
素直にすごい。
「やるなあアイ。ついでに背中に背負っているものの説明もお願い。あと、ロトムを冷蔵庫にした理由も」
そうアイは身長よりも大きな箱を背負っている。違和感がすごい。その横にはフロストロトムがいた。
「くくく。さすがの盟友も解らないか!この箱こそはポケモンパソコンver1.02なり!!」
「まじか!たった一日でできたのか!!」
ポケモン界の不思議の一つ。パソコンを完成させたのか。
まともな施設がないのに、原理も解らないものを作り上げるのか。
素直にこいつはチートだわ。
「そして盟友は生鮮食材のコーナーは行ったか?」
「いいや。保存ができないから見てもない」
「甘い。甘すぎるぞ盟友。ここはポケモンの世界、なればきのみがあるとは考えなかったのか?」
「?!でも腐…なるほど!!」
「全ての野菜や果物がきのみになっていたわけではないがな。そしてそのためのフロストロトムよ!パソコン内できのみが腐るかどうかはまだ不明だが、こ奴がいれば保存は問題ない」
「ロトー!!」
すごい。すごすぎる。きのみはゲームでも万能であった。現実でも同じ効果は分からないが、期待はできる。それはそれとして
「で、移動は?今からロトフォンの出番だぞ。このでかい冷蔵庫は誰が持つんだよ」
「くくく。我が考えていないと思ったか。お願いします!大誤算」
「アイ君、君もイントネーションがおかしくないかい?まあそういうことだね」
………最後は人力かい!!
ダンバルのねんりきは便利すぎた。
Q,ポケモンパニック物の相棒は?
A,作者の回答はガーディです。
四足歩行で自分より速く、正義感も強いので守ってくれる。
火で食糧や飲み水の確保もしやすい。
何より電気が使えなくなった時、凍え死ぬことがない。