「けっきょく ぼくが いちばん つよくて すごいんだよね。…ってなにこれ」
「ダイゴさんと言えばこのセリフですし」
「うむ」
「いや、意味が解らないんだけど」
原作キャラにあったら有名なセリフは、言ってほしいじゃん。
キャンプ場を目指す私たちは、順調に進んでいた。パソコンがあるため、寄り道して物資の回収にもいそしむ。
その道中でポケモントレーナーをやってみた。いやー、ポケモンに指示を出すのは興奮するね。これぞポケモンって感じだ。
ようやく私の知るポケモンに近づいてきた。
とりあえずこの戦いの中で私のチート能力が一部判明してきた。育成(中)は技マシンがなくても、タマゴ技であってもポケモンがゲームで覚えるは、技を覚えさせることができる。残念ながらゲームのように一瞬で覚えるとまではいかないが、それでも訓練したら使えるようになった。
そして技を4つ以上覚えさせることが可能であった。まあ、使えるから使いこなす、応用するまでは長い時間がかかりそうだが、楽しみがいっぱいである。
私たちの陣形はガーディが先頭に立ち、上空にチルット、中央にダンバル、索敵がイーブイ達となっている。
ガーディはあさのひざしによる継続戦闘能力。唯一空から攻撃できるチルットが上空から遊撃、ダンバルがとどめ要因。残念ながらイーブイたちは戦闘には消極的だ。ショッピングモールでの出来事が尾を引いている。まあ、きっかけがあれば戦えるだろうと、今できる最善を取っているつもりだ。
このフォーメーションがうまく型にはまり、現在負けなしである。野生のポケモン1匹に対して、こちらは3匹掛りは少し卑怯だが、安全には変えられない。群れるポケモンが少ないのもありがたい。先に見つけた群れはこちらで迂回して回避している。
現状は野生のポケモンを殺してはいない。これはかわいそうだとか、倫理観とかではない。血の匂いにつられて他のポケモンを集めないためだ。拠点ができれば、躊躇はしない。
順調である。別に油断しているわけでもない。だからこそ、このかすかに聞こえた銃声は私たちの足を止めた。
タタタタタン!!!
「「「!!」」」
銃声が聞こえる。それも連続でだ。ハンドガンなんかじゃない。マシンガンとかの類だろう。
私たちは初めての音に戸惑うポケモンたちを連れて、物陰に隠れた。
「奇想天外?」
「アイちゃん、動揺して変な言葉使っているよ」
「でも、どうするんだい」
「まっすぐ進まないとキャンプにはつかない。ここから別の場所を目指すのはさすがに遠すぎる。行くしかないだろう」
「ユウ君はイケイケだなあ。まあ、自衛隊とかだったら保護してもらえるかもだしね」
手早く相談した私たちは、さらに慎重に進んでいく。
音の現場についても銃声はやむことはなかった。少し離れた位置から覗けば、恐ろしい光景が待っていた。
まず、戦っているのは自衛隊。それも小隊レベルで戦っている。絶えず動きを変えて相手を翻弄する様はまるで一つの生き物のようだ。現状怪我もなく優勢にことを進めているようにも見える。
問題は相手だった。三つ首の龍。圧倒的な威圧感。たぶんサザンドラである。しかし、たぶんをつけさせてほしい。なぜなら推定サザンドラの三つの顔はすべて同等に発達しており、口から常に黒い炎が出ている。背には翼が8つも生えており、尻尾は地面につくほど長い。明らかに私の知っているサザンドラではない。
「やばいロト!異常個体だロト」
なるほど、あれが異常個体。ロトムの説明で存在は知っていたが、今までのポケモンとは格が違う。戦うなんてできそうにない。
今もリフレクターのような壁を展開し銃弾を防いでいる。そしてまれに黒いエネルギー弾を放っている。あくのはどうのようだ。建物を豆腐のように壊す技は、当たればひとたまりもない。
サザンドラはゆっくりと自衛隊との距離を詰めていく。やろうと思えば一瞬でけりが付く戦いだ。証拠にサザンドラの顔には愉悦が浮かんでいる。
明らかに自衛隊をもて遊んでいる。それ以前にリフレクターは技マシンだろ。野生がレベル技以外を使うなんて、私が言うのもなんだが、自重しろ。
さらにサザンドラが何やら周りに電気を放つ。これを浴びた自衛隊員たちは、しびれてしまっている。でんじはか!
それでも自衛隊員は銃を構える。もう逃げてもいいだろうにとすら思ってしまう。すると今度は銃が爆発した。
「っ?!」
「銃が爆発!」
「たぶんさっきの電気の攻撃だね。銃は精密機械。内部の金属に電気が流れて磁性を持てば使えなくなる」
「ダイゴさん、詳しいですね」
「くう、防電対策は必須か」
一部別のことを考えているが、私たちの意見は一緒であった。つまり強力なポケモンには銃が効かない。
今後が不安になってくる。なんだかんだ銃というものがあるので、人類がある程度有利に立ち回れると考えていたからだ。
つまりこれからはポケモントレーナーの重要性がさらに上がっていくだろう。
「な!!」
さらに信じられないことが起こった。サザンドラが倒れてしまった自衛隊員の足だけを長い尻尾でたたきつけた。あれでは死ぬことすらできない。サザンドラはそのまま他の自衛隊員に攻撃を開始する。そこからは一方的な蹂躙であった。かえんほうしゃで丸焼きに、りゅうのいぶきで吹き飛ばす。最悪なことに殺しはしないのだ。いたぶってやがる。
自衛隊員たちの断末魔を、私たちは目を背けて耳をふさぐしかなかった。
「最悪としか言いようがないな」
私たちは話し合うが、言葉に力がない。あの場面を見てしまったのだから、仕方がないだろう。
私も考えていなかった。人間だって千差万別。ならポケモンにも破壊を楽しむやつがいてもおかしくないのかもしれない。
「サザンドラは本来洞窟に住むポケモンロト」
「つまりまだ住処を決めていないってことかな?」
「獲物がこちらに来たから追ってきた可能性もあるぞ?」
「幸い、山があるのはキャンプ地側とは反対。つまり僕たち側というわけだ。1度隠れてやり過ごせれば問題ないかな。ここからキャンプ地までに大きな林もあるし」
「なら隠れて、も無理そうだよね。たぶん気配とか匂いとかで気取られちゃうよ」
自衛隊との戦闘で死角からの攻撃も対応していたことから、何かしらの知覚手段はあるだろう。
いや、最善手は分かっている。誰も口に出さないなら、私が出すしかないだろう。時間は決してこちらに味方しない。日が暮れて獲物がいなければ山に向かうだろう。リミットは日が傾いてくる15時くらいかな。約4時間
「一人がおとりになって逃げる。その間にほかのみんなが抜けるしかない」
「「!!!」」
「…ユウ君の言うとおりだね。なら僕が行こう。一番の年長者だし」
「いや、私が行きま「盟友!!」…可能性がゼロでないなら全員が生き残る道を探すべきだ。この中で私が一番生き残れる」
「しかし!!」
「アイは昨日から寝ていないから、集中力が続かない。ダイゴさんは私たちの予定のキャンプ地の正確な位置を知らない。再び合流は絶望的。ルチアはアイドル活動もあってこのあたりの地理に詳しくない。残るは私かリラだ」
「ならボクだって!!」
「でもリラのポケモンは戦えない。あんな威圧感のポケモンに今は立ち向かえないだろう。対して私はこの辺も詳しく、相棒は特性もらいび。サザンドラのかえんほうしゃは問題なし。しかも隠れ特性はせいぎのこころ。発現はしていないけど問題なく動ける、よね」
「ガウ!」
ガーディが追従してくれる。こいつも死の危険性は分かっているだろう。それでもついてくれるのは、トレーナー冥利に尽きる。まだ出会って1日もたっていないというのに。
まったく最高の相棒だな。
「議論している時間はない。今から作戦と仕込みを考える。手伝ってくれるよね」
「くっ」「わかった」「時間がないのはその通りだが」「…ああ」
そんな泣きそうな顔をしなくても、生き残るさ。
私たちの戦いはこれからだ!!
裏設定
転生者は、ポケモンに対して好戦的かつ友好的になるように誘導されている。