霊夢の賽銭箱に、お金を入れ続けてみた   作:sayutan

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救急車は自前で用意しよう

「おいっ!?親父大丈夫か!?」

 

「むぅ...トオルか...?すまねぇ、大口叩いといてこれたぁ、情けねぇなぁ...」

 

「軽口叩く余裕があるならさっさと寝とけばいいものを...ったく...」

 

 とりあえず親父に肩を貸して寝床まで運ぶ。その間に聞こえてくる息づかいから、やけに辛そうなのがわかる。

 

「どれどれ熱は...って、あっつ!?こりゃ異常だな。今すぐ診てもらうよう手配するか...」

 

「やめとけ、今は夜だ。迂闊に出るんじゃねぇ...」

 

「そんな夜に博霊神社までお賽銭入れに行かせたのはどこの誰ですかねぇ...っと!」

 

 親父の体に負担をかけないよう、ゆっくりと布団に寝かせる。いつもなら団子作りに役に立つ筋肉が、自身で支えきれてないんだろう、俺の方に体重が余計にかかってくる。

 

「よっ...と、大丈夫か?親父?」

 

「ああ、助かったぜ...」

 

「じゃあ、店の後片付けしてくっから、今はゆっくり寝とけよー。」

 

 そう言って寝床から離れ、表に掛けてあった暖簾を取り込み、使われた食器などを洗っていく。

 

「ふむ、客はまぁそこそこって感じか...ま、明日は店閉めないとなぁ...俺はまだ半人前だし。」

 

 店の団子は基本的に親父が作り、接客や清掃、配達などは俺の仕事となっている。幻想郷に迷い混んで、親父のとこで世話になってから、一年くらい団子作りに精を出しはしたが、元の世界で料理をしてこなかったこともあり、今は半人前程度で終わっていて、自分で作ったものを売った試しはない。

 

「さって、(かゆ)でも作りますかねぇ...」

 

 とりあえず弱った人間には粥と定番なので、米を洗って炊き始める。もはや手慣れたもので、次々と段取りをこなしていく。

 

 というのも、団子作りは親父に比べれば半人前レベルだが、毎日の食事は料理の練習も兼ねて俺が作ってるから、慣れてるのは当然と言えば当然だ。

 

「ふむ、こんなもんかねぇ...」

 

 若干のとろみが出るくらいの柔さに整った粥を、適当な皿に移して親父のもとへ持っていく。

 

「親父、食欲はあるか?」

 

「まぁ、少しはな...てぇか、それは粥作る前に聞けよ...」

 

「いや、これ俺の夕飯の粥でもあるから...か、勘違いしないでよね(棒)」

 

「そうか...まぁいい、少しいただくぜ...」

 

「ほいほい。どうぞ。」

 

 親父にはわからない、元の世界のテンプレを下手にかませながら、俺も粥をよそって食べる。

 

「ん。まぁまぁいけんじゃねぇか...」

 

「まぁ、さすがに粥くらいは作れるさ。」

 

「なに粋がってやがる...俺に比べたらまだまだだな。」

 

「親父...俺がここの世話になり始めたときの献立、覚えてる?」

 

「覚えてるぜ...団子だ...」

 

「うん、知ってた。」

 

 そう、親父は本当に、文字通りの意味で『団子一筋』なのである。それ以外を作ることは出来るそうだが、自分の作った団子を毎日食事として食べ、味の変化を確かめているんだとか。

 

 まぁ、俺がそれに耐えかねて食事担当になったのが本命の理由だったりする。

 

「もう十分だ...下げてくれ...」

 

「了解。んじゃ横になって寝とけ。」

 

「あぁ...」

 

「頭冷やしたいなら、布と氷、持ってこようか?」

 

「すまねぇ...頼むぜ...」

 

 そんなこんなで、親父の体調を伺いながら、氷水に浸け、冷やした布を額から貼り替えながら夜を過ごした...

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「うーん。熱が下がらない...か...」

 

 夜の間、親父の様子を伺っていたが、熱が引くことはなく、親父は寝てるのか寝てないのか半々の状態をさまよいながら、うんうん唸るばかりであった。

 

「はぁ...はぁ...」

 

「一晩寝かせたら良くなると思ったんだが...カレーみたいにはいかないな。というか、余計に悪化してきてるっぽいし...」

 

 熱が下がらない状態が続いてるということは、それだけ体力を消耗し続けているということ。家の置き薬から風邪薬を取り出して飲ませたものの、これといった変化がない。

 

「こりゃ人里じゃ手に負えないかもなぁ...」

 

 以前、人里に病院のようなものはあるのかと聞いた事があるのだが、何かの異変後に現れた施設から支給される薬が、人里に出回りはじめてから、人里のそういう職の人は消えていったらしい。もっとも、職としての医者とは名ばかりの法術師...もっと言えば(まじな)い師のようなもので、昔からあまり期待はされて無かったようだ。

 

「よし、親父。ちと出掛けるぞ。」

 

「なぁに...これしき、もう一晩寝て過ごせばなんとかなるさ...」

 

「もう一晩とか、さすがに俺の方が持たなくなるわい。それに、手は早めに打っといた方が良いからな。つーわけで、準備準備っと...」

 

 

 

青年準備中...

 

 

 

「よし。これでいいだろ。親父、ここに寝ろ。」

 

「これってお前...荷台に寝ろってぇのか!?」

 

「当たり前だ。親父をあそこまで背負って運ぶ自信はこれっぽっちも無いからな。」

 

「だからってよぉ...」

 

「仕方ないじゃん。即席だし...」

 

 そんな俺と親父の前にあるのは、荷台に二人分の布団が敷かれている木製のリヤカーだった。このリヤカーは主に団子や材料を運搬するのに用いているものなんだが、どうやら幻想郷には長距離移動をする必要があまり無いので、人力車のような人を運搬する道具が無く、とりあえずリヤカーの荷台に親父を乗せようという算段だ。

 

「しかしよぉ...これはちと恥ずかしくねぇか?」

 

「病人になってまで威厳やプライドを守りたくなる気持ちはよーくわかるが、仕方ねぇだろ?配慮として人気(ひとけ)の少ない早朝に人里を出るからさ。な?」

 

「...わりぃな。そこまで気ぃ使わせちまって...」

 

「なぁに、病人なんだからよわっちくなってろって。無理されて悪化される方が余程面倒だわ。」

 

「...そうかい。んじゃ、頼むぜ...」

 

 そういいつつ、荷台の方へ乗り込んで、身を横にする親父。それを確認して、俺はリヤカーの持ち手部分を握る。

 

「んじゃ、行きますか...」

 

 

 

青年&中年移動中...

 

 

 

ガタッ...ガタガタッ...

 

「おい...なんとかならねぇのか?この揺れ...」

 

「無理に決まってんだろ。せいぜい草が取り除かれてるって以外は土の地面。舗装なんてされてねぇし、石ころだってあるんだ。そりゃ揺れもするさ。」

 

「そりゃそうなんだが...寝てると余計にクるものがあるな...」

 

「吐くなら道にしてくれよ~。布団の代えは無いんだからさ~。」

 

「...わかったよ...」

 

「とはいえ、もう少しだぜ...っと。」

 

 道のような道を進み、見えてきたのは竹林。それもだいぶ広い範囲にわたって生成している竹林。ここに入った人間は、奇妙な地形と単調に続く竹の配列によって、位置感覚を鈍らせ、目的の場所にたどり着くことはおろか、出ることすら苦労を強いられる。通称、『迷いの竹林』。

 

 そんな竹林に続く道の側に見える小屋に向かってノックしながら声を掛ける。

 

「おーい。妹紅?いるかー?」

 

「...んあぁ?誰だぁ?こんな朝っぱらから私を呼びつけるやつは...?」

 

「朝っぱらって言うけど、もう日はとっくに昇ってるけどな。」

 

「お?その微妙に私を小馬鹿にしたような台詞を吐くのは...やっぱりトオルか。」

 

「どんな覚え方してんだよ。」

 

「まぁまぁ、で?今日は何のようだ?実家にでも帰んのか?」

 

「実家は外の世界にあるんですが。」

 

「トオルがここ(幻想郷)に来て最初の寝床があそこだったんだから、ここ(幻想郷)のトオルの実家はあそこさ♪」

 

「そうなるのかなぁ?ま、その実家の行き帰りの道案内を頼む。」

 

「了解。で、代金は?金?筍掘りの手伝い?」

 

「『梅枝』特製団子。ツケで。」

 

「ほう、それは楽しみだ...って、ツケ?ツケってどういう事だ?」

 

「あぁ、それはこのリヤカーの荷台を見ればわかるさ。」

 

「リヤカーぁ?...あー、親父さん。いい死に顔じゃないか。いいねぇ...」

 

「何羨ましがってんだよ。死んでねぇよ。急患だっつの。」

 

「へーへー。了解。じゃあ案内するけど、私から出来るだけ離れんなよ?それと、リヤカー引ける道のりで行くから、少し時間がかかるが、そこは勘弁してくれ。」

 

「ありがとう。早速頼む。」

 

 

 

竹林通行中...

 

 

 

「しっかし、相変わらずの竹林だなぁ...」

 

 辺り見渡す限り竹、。見張らしは最悪、見上げても青空が少し垣間見える程度で、同じ景色の繰り返し。しかも...

 

「以前と景色が変わってるから、困ったもんだなぁ...」

 

「まぁ、竹の成長は早いからな。余程この竹林に慣れ住んでないと、そうそう理解できねぇよ。」

 

「まぁ、理解する気はないけどな。で、妹紅は昼近くまで寝るほど、昨日は何してたんだ?」

 

「あー、ちょっと遊んでたんだ...あいつと...」

 

「あー、なるほど。」

 

「で、結果はいつものごとく引き分け。」

 

「だろうな。どっちも引き下がらないだろうし。」

 

「そういうこと...っと、着いたぜ。」

 

「お、ありがとう、妹紅、助かったよ。」

 

「礼なら帰りまで送った後ででいいよ。さぁ、行ってきな。」

 

「...相変わらず妹紅は入らないのか...。」

 

「入ったら面倒起こすが...いいか?」

 

「よくないな。んじゃ...」

 

 と、妹紅に返事をしながら向けた視線の先にあるのは、迷いの竹林の中心部に位置し、白玉楼程ではないものの、広い敷地を構えた純和風の屋敷、『永遠亭』。

 

 その屋敷の門の前に立とうと、一歩足を踏み出した途端...

 

 

 

「すみません。どなたかいらっしゃいまっはぅああっ!!?」ストーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 ...いきなり足場がなくなり、重力に逆らうことができない俺は、綺麗かつ華麗に、まんまと落とし穴へと落ちてしまった。

 

「ちょっ!?落とし穴っ!?す、すみませーん!!どなたかいらっしゃいませんかぁ!!?」

 

 訪問に対して使うはずだった台詞を、助けを乞う台詞に置き換えて叫んでいると...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウサウサウサ♪ものの見事に引っ掛かったウサ♪」

 

 

 

 と、ケラケラと笑う白兎と、

 

 

 

「ふふふ、どうかしら?穴の底から私を見上げる屈辱は...?ねぇ?妹紅?」

 

 

 

 と、にやにやと挑発的な笑みを浮かべるお姫様が、そこにいた。

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