霊夢の賽銭箱に、お金を入れ続けてみた   作:sayutan

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毒と薬は表裏一体

「おい輝夜。トオルを落っことすたぁいい趣味してんじゃねぇか。」

 

「えっ!?妹紅が二人!?」

 

「いや、その反応はおかしいだろ。」

 

「え?てっきり、何をとち狂ったか自分を寸分の狂いもなく縦割りにして、複製を生み出して遊んでるのかと思ったのだけど?」

 

「...あ?人間の体が左右非対称にできてるのを知らないのか?ったく、これだから竹から産まれた奴の頭は竹の中身っぽく空っぽなんだよなぁ。」

 

「あら?遊んだことを否定しないのね?それに、その竹の子を食べて生活しているのはどこの誰かしら?」

 

「200年前にやったよ...お前を徹底的に殺して高笑いするためにな。それと、筍食べてんのはお前も一緒だろうが。自分で墓穴(ぼけつ)掘ってんのも気づかねぇのか?死なない御身分で墓穴(はかあな)掘るたぁ洒落が聞いてんな。こりゃ傑作だぜ!箱入り娘の頭の中は空っぽとは、ただの木偶人形だな!」

 

「あらら?お高い御身分の娘で、文字通りの箱入り娘だったけど、その頭の空っぽなお人形の同じ土俵にわざわざ立って遊んでもらっている構ってちゃんは誰かしらねぇ?」

 

「あ?」

 

「うふふ♪」

 

「...おい輝夜。今日も構ってやるからついてこい。それ以上話せないよう殺しきってやる。」

 

「あら?それは嬉しいわね。今日()構ってあげさせるから、せいぜい頑張ってね?」

 

 

 

 

 

あはははは...

 

うふふふふ...

 

 

 

 

 

「...よっこらせっと。ありがとう、てゐ。」

 

「なぁに、軽いもんウサ。というか、悪かったね。姫様に頼まれた『妹紅絶対落とし穴Ver.178』に掛けちゃって。」

 

「それはいいんだが...相変わらずなんだな...あの二人。」

 

「喧嘩するほど仲が良いって言うウサ。あれはその理想形だと思うウサよ?」

 

「あんな理想形は嫌だなぁ...」

 

「トオルも多分、不死身になれば分かるんじゃないかウサ?」

 

「今は遠慮しておくよ。」

 

「そっかぁ。さ、姫様達のじゃれ合いに巻き込まれる前に、さっさと避難するウサ。それに、その人も永琳に診て貰うウサ。」

 

「そうだな。」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「お久しぶりです。永琳さん。」

 

「あら?トオルじゃない。どうしたの...って、聞くまでもないか。そこに寝かせて。」

 

「はい...よいしょっと。」

 

 永琳さんに言われるがまま、診察用のベッドに親父を寝かせる。それと同時にカルテらしきものを取り出して俺の方に視線を向ける。

 

「さて...それじゃ症状を聞かせてもらえる?」

 

「はい。発熱に頭痛と吐き気、あとは立つと眩暈がすると言ってましたね。」

 

「ふむ。やけに症状が多いわね...」

 

 と、眉間にシワを寄せながら、親父の手首に指を当てると、はっとした表情になって、

 

「脈が安定してないわね...これはちょっと重症かも。トオル。この人に昨日何があったか教えてくれる?」

 

「あっ、それが...昨日は冥界に行ってたのでよくわからないんです。」

 

「え?冥界?なんでまたそんなところに...」

 

「まぁ、色々ありまして...」

 

「そう...じゃぁ、おじ様?昨日は何か変わったことはありませんでしたか?」

 

「変わったこと...そうだな。ちっこい人形を浮かべた嬢ちゃんがおいでなさった位か...」

 

 

 

 

「え?それってもしかして...」

「え?それってもしかすると...」

 

 

 

 

 と、二人して誰かを思い浮かべたその時...

 

「こんにちはー!今日は『彼岸花』の毒を持って...って、あれ?トオルいたんだ!どうしたの?」

 

「あー、メディスン。久しぶりだな...」

 

「あら、今日は彼岸花の毒ね。ありがたくいただくわ。ところであなた、昨日このおじ様のところへ行った?」

 

「んー?あっ!覚えてるよ!昨日トオルに会おうと団子屋に寄ったら居なくって、かわりにそのおじさんから団子ご馳走になったんだー!」

 

「はぁ...多分そのときに鈴蘭の毒を何かしらの拍子に摂取しちゃったのね...わかったわ。解毒薬を用意しましょう。」

 

「ありがとうございます。」

 

「でも変ね。鈴蘭の毒の症状に発熱は無いんだけど...」

 

「あ、私が会ったときからちょっとだけ辛そうにはしてたよ?」

 

「え!?そうなのか親父!?」

 

「あー、まぁな。だるさがあったのは間違いないな...」

 

「となると、疲労と毒の症状が重なった形かしらね。」

 

「まったく。俺が冥界に行くときに見栄張ってたのかよ。」

 

「ははっ、安心して行って欲しかったんだよ。」

 

「ったく...。」

 

「とりあえず、解毒薬は当然として、今日はここで休んでもらいましょう。症状が完全に回復するまでは絶体安静でお願いしますね。」

 

「くっ、団子屋皆勤賞が...俺の代で潰えるたぁ...すまねぇご先祖様...」

 

「いや、親父初代だよね?永琳さん。ついでに親父のボケを治せませんか?」

 

「ごめんなさい。それを治す薬はまだ無いの。まぁ、ボケは一時的なものかもしれないから、ツッコミを入れずに様子を見ましょうか。」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

 親父を客人用の部屋に寝かせた後、診察室で薬の説明をするからと永琳さんに呼ばれたので、そそくさと向かう。

 

「...と、こんなとこかしら。まぁ改善したら仕事に戻って良いと言っているけど、その後の保険のための薬と思ってもらえればいいわ。」

 

「何から何までありがとうございます。」

 

「どういたしまして。ところで、あの人がトオルの居候先の主人さん?」

 

「そうなります。」

 

「そう。団子屋のところに厄介になったのね。あなたも人里にはもう慣れたかしら?」

 

「えぇ、おかげさまで。」

 

「そう。それはよかった。ごめんなさいね。ここに住まわせても良かったのだけど、幻想郷のルールで、人は人里へって事になってるから。特に、外の世界からの人間となるとね。」

 

「いえいえ。こちらも仕事とはいえ、報告に来ないままでしたし...。」

 

「それはそうね。結構心配してたのよ?うどんげから伝え聞いていたとはいえ、ちゃんと来てもらわなきゃ。」

 

「も、申し訳ないです。」

 

「人里で上手くいってなかったら、蓬莱人にしてここに住まわせようかと考えていたんだけどね?」

 

「不老不死になるつもりはまだ無いですねぇ...」

 

「そう?まぁ元気で何よりね...あぁ、それとトオル。あなたもここで休んで行きなさい。一晩中看病してたんでしょ?目の下にクマが出来てるわ。」

 

「そうですね...そうさせてもらいます。」

 

「部屋はおじ様の隣のとこで。布団は自前で持ってきてるだろうから、それでいいわよね?」

 

「はい。ありがとうございます。では失礼します。」

 

 

 

トコトコ...

 

 

 

「あ、師匠。これから薬の配達に行ってきますね。」ヒョコッ

 

「あぁ、うどんげ。ちょっと待ちなさい。」

 

「はい?」

 

「メディスンが人里に行ったみたいで、毒の影響を受けた人が他にもいるかもだから、この薬を持って行きなさい。」

 

「え?あ、はい。わかりました。」

 

「それじゃ、よろしくね。」

 

 

 

~青年睡眠中~

 

 

 

「んー、今日は荷物が多いなぁ...早く届けて帰ろ...って、ん?あれは...」

 

 

 

 

 

「最初はグー!!」

 

「じゃんけんぽん!!」

 

 

 

 

 

「あぁ、姫様と妹紅さんか...あの二人、妙に波長が合ってるからなぁ...というか、勝負の仕方が子供っぽくてかわいい...」

 

 

 

 

 

 

「あっちを...向けやああああああああああっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッ!!バキッ!!ゴシャァッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...見なかったことにしよっと。」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「ん?もう夕方かぁ...時間の流れって早いもんだなぁ...」

 

 目が覚めると、太陽が畳を夕焼け色に染め上げると同時に、俺の(まぶた)に起きろと言わんばかりの熱線を注いでいた。

 

「すぅ...すぅ...」

 

「おぅ?メディスンも寝てたのか。」

 

「そうウサ。トオルが寝息を立ててる間に、そいつも寝始めたウサよ。」

 

「ん?てゐも寝てたのか?」

 

「いんや。ちょっと思うところがあって眺めてただけウサ。」

 

「思うところって?」

 

「なんでしょうねぇ?っと、私は兎達の様子を見てくるウサ。今日はゆっくりしていくといいウサよ。」

 

「お、おう。ありがとう?」

 

「どういたしましてウサ。」

 

 

 

トコトコ...

 

 

 

「...なにかあったのかな?」

 

 と、隣で寝ているメディスンの頭をゆっくりと撫でながら、てゐの言葉を頭に巡らせていると...

 

「マッタク、アノ御嬢サン、気ヲ使ワナクトモ良カッタノニ。」

 

「ん?誰だ?」

 

 突然の男性の声に驚いて、声の主を探すも、辺りに人影は無い。居るのは俺とメディスンだけ。なのになぜ?

 

「アァ、私ダ私。スーサンダ。」

 

 と、俺の目の前に現れたのは、メディスンの周りに浮かんでいる人形。通称『スーさん』だった。

 

「キェェェェェェアァァァァァァ!!シャァベッタァァァァァァ!!?」

 

「黙レ小僧、コリーガ起キルダロウガ。」ギュウッ

 

()ムグググッ(すみません)

 

「ワカレバイイノダ。」パッ

 

「ぷはぁっ、で?スーさんいきなり喋り出してどうしたのさ?」

 

「イヤ何。コリーガ寝テイル間ハ私ノ自由ガ解放サレルノダ。コノ時シカ喋レナイノダヨ。」

 

「そうなの?いつも操られていたのか...。」

 

「マアナ、シテ、トオルヨ。カネガネオマエ二伝エタカッタ事ガアル。」

 

「なんだ?あの半人半霊の人みたく、メディスンを軽々しく撫でるな~とか言うのか?」

 

「ソレハ...違ウガ...」

 

「何さっきの間!?私怨入ってるのがバレバレだぞ!?」

 

「イヤ、スマナイ。コレモ親ノ性トイウ物ダロウ。」

 

「親ぁ?何か?メディスンの産みの親とでも?」

 

「正確ニハ違ウガ、マァソウダ。コリーハ生前ノ私ガ作ッタ人形ナンダヨ。」

 

「えっ!?メディスンって人形だったの!?」

 

「ソウダ。コリーハ捨テラレタ人形ガ、鈴蘭ノ毒ニヨッテ妖怪化シタ姿ナノダ。」

 

「そうだったのか...」

 

 少し、撫でる手に力が入る。

 

「...ヤハリ知ラナカッタカ...イヤ、ムシロ知ラナクテ良カッタト言ウベキカ。ダガ、オ前ニハ知ッテ置イテ欲シカッタ。」

 

「どうしてさ。変に同情してしまうじゃねぇか。」

 

「ソレガ狙イダ。下手二同情サセテ、コリーカラ離レナイヨウニナ。」

 

「そんなことしなくっても、邪険に扱ったりしないっての。」

 

「ソウダナ。オマエハソウイウ奴ダ。ダガ、不安ノ芽ハ摘ミタクナルノダ。許シテクレ。」

 

「はぁ、で、さっきは遮っちゃったけど、本当は何が言いたかったのさ。」

 

「ソレハナ、オマエノオ陰デコリーノ人間ニ対スル姿勢ガ変ワッタコトヲ感謝シタカッタノダ。」

 

「俺がか?」

 

「ソウダ。昔ハ今ノヨウナ笑ミヲ浮カベルコトハ無カッタ。捨テラレタ憎悪ニ駆ラレ、毒ヲ振リ撒クコトシカ頭ニナカッタ。」

 

「そんなバイオテロやってたのかよメディスン...」

 

「後ニ閻魔カラ諭サレ、コノヨウナ事ハ無クナッタモノノ、人里デハ要注意妖怪トシテ本ニ載セラレ、人間ニ関ワロウトシテモ関ワレナカッタノダ。」

 

「ま、当然っちゃ当然の仕打ちだな。」

 

「ソンナトキニ、オ前ガ手ヲ差シ伸ベテクレタ。コリーヲ妖怪トシテデバナク、タダ一人ノ少女トシテ。」

 

「ま、あの時は無縁塚で目を覚ましたばっかの頃だしな。というか、その時既にここの人と親交あったんだろ?それで十分だったんじゃ?」

 

「ソウナノダガ...彼女ラハ少ナクトモ人ノ道カラ外レテイル。イワバ我ラト同ジナノダ。感ジルモノハアッテモ、満タサレルコトハ無カッタ。」

 

「ふぅん。ここの人がよっぽど人らしいような気もするけどね。」

 

「...マァ、色々言ッタガ、コリーハオ前ノ事ヲトテモ気ニ入ッテイル。ドウカコレカラモヨロシク頼ム。」

 

「そのくらいならお安い御用だ。」

 

「コリーハ安クナイゾ?丁重ニ扱ッテモラワネバ。」

 

「気兼ねしないで付き合うって意味だっつの。つかスーさんも変な因果だな。作った人形に連れられるんだからさ。」

 

「マァナ。ダガ、私ハコノ奇跡ヲ嬉シク思ウ。作ッタ人形ヲ捨テラレタノハ残念ダガ、人形師ノ夢ノヒトツ、『人形ニ命ヲ吹キ込ム』ガ、過程ガ(いびつ)ダッタトハイエ叶ッタ。ソノ夢ガ体現シタ姿ヲ側デ見ラレルダケデ、コノ姿ニナッテ良カッタト思ッテイルヨ。」

 

「...そんなもんなのかもな。」

 

「ット、モウコリーガ起キソウダ。マタイツカ話ソウ。アリガトウトオル。」

 

「俺は特になにもしてないがな。メディスンをちゃんと見守ってくれよ。スーさん。」

 

「アァ...」

 

 その後、スーさんはゆっくりと床に寝そべって動かなくなったと思ったら、まるで吊るし上げられるように宙に浮かぶ。そして、

 

「んぅ?あっ、トオルおはよう!」

 

「お、メディスン起きたか。やけにぐっすりだったな。寝る前何してたんだ?」

 

「んとねー、てゐと遊んでたんだー!でねでね!夢の中でトオルと一緒に寝てたんだー!」

 

「それは現実かなぁ?」

 

「え?あ、ほんとだ!まるでお人形ごっこのお父さんとお母さんみたいだね!」

 

「あー、アリスの人形劇で知ったのかなぁ?...って、スーさんがめっちゃ睨んでる気がするぅ!?」

 

「あ、あれ?スーさんどうしたのかな?」

 

 

 

「おーい!トオルー!メディスーン!夕御飯が出来ましたよー!」

 

 

 

「お、夕御飯ができたってさ、行くか。」

 

「うん!」

 

 そう言って立ち上がり、手を繋いで行く俺たちの背中を、一体の小さな人形と地平線に消えかかった太陽が、温かく見守っていた。

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