霊夢の賽銭箱に、お金を入れ続けてみた   作:sayutan

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永遠に続く夜は無い

 夕御飯。

 

 日が暮れて人間の活動時間から妖怪達の活動時間へと移り変わるもっともな境目の時間に食す食事は、妖怪にとってはようやく狩りへと向かえる時刻であり、今日の初めての食事となる。逆に人間達は昼の行動に要した体を休ませ、明日への備蓄として食す物だ。

 

 

 

...が、ここは違う。

 

 鍋を見つめたるは6人

 

 一人は団子屋居候、串多通。

 

 一人は永遠亭薬師、八意永琳。

 

 一人は月のかぐや姫、蓬莱山輝夜。

 

 一人は人里徘徊薬売り、鈴仙・優曇華院・イナバ。

 

 一人は迷いの竹林の兎長、因幡てゐ。

 

 一人は毒も恋する人形妖怪、メディスン・メランコリー。

 

 今、鍋取り合戦の幕が開けるっ!!

 

「3」

 

 何人か唾を飲む。

 

「2」

 

 数人、目を瞑ったままだ。

 

「1」

 

 俺は、鍋だけを見て、ただひたすら煮えた具材を...

 

「ゼロッ!!」

 

 『取る』...ただ、それだけだっ!!

 

 

 

 

 結果:タケノコひと切れ

 

 

 

 

「ぐおぉ...。」

 

「あっははは!!残念だねぇトオル!また次頑張りなよ~♪」

 

 そういって俺を励ましてるのかけなしてるのかわからないが、鍋取り合戦の結果、4位ほどのてゐが声をかけてくる。

 

「なんだかなぁ...皆さん早すぎて取れないんだよなぁ。」

 

「そうかしら?」モグモグ

 

「輝夜さんの手、毎度の事ですが物理的に見えてないんですよね。何か細工でもしてるんですか?」

 

「なぁんにも~♪」

 

 と、完全にとぼけている輝夜さんは堂々の1位である。さっきの話をもう少し詳しく言うと、手捌きが見える見えないより、そもそも腕から先が動いてるようには見えないのである。何がどうなっているんだ...

 

「あー、こいつは時間に干渉できる能力だからな。トオルがいるのに手加減なんて知らないからこうなるのさ。」

 

「そりゃ勝てないわ...」

 

「うるさいわね妹紅。アンタはカウントダウンの為だけに呼んだんだから、もう帰りなさいよ。」モグモグ

 

「カウントダウンする代わりに鍋以外の食事多目に頂くって約束してんだよ。そこのお医者さんとな。」

 

 と、輝夜さんに対してふんぞり返って飯を食らっているのは、今回鍋取り合戦の開戦を指示する役割を買って出てきた妹紅。鍋取り合戦自体には参加しない。輝夜さんとは相当仲が悪いが、大抵食事の場に居る気がする。

 

「なっ、永琳そんな約束してたの!?」

 

「まぁ、折角来ていただいたし、何もご馳走せずに帰れって言うのはお互いの為になりませんから。」

 

 そう言いながら、静かに舌鼓を打っているのは輝夜さんに次いで二位の永琳さん。永琳さんの手の動きは見えはする。実体じゃなくて残像が。自分の箸が永琳さんにぶつかったと思ったら、通り抜けていったときの衝撃は今でも鮮明に覚えている。

 

「それにしてもうどんげ。貴女、トオルが居るときはブービーだけど、そろそろちゃんと食べないと倒れるわよ?」

 

「いや、次元が違うんですって。いろんな意味で...」

 

 結果は5位という、まさしくブービーを勝ち取ったのは鈴仙だ。格好は幻想郷の中では現代的だが、身体能力はここに居る人たちに比べて低い方らしい。普通に鍋取り合戦をした際の最下位は常に鈴仙だとか。

 

「永琳さんや輝夜さんに勝てないとはいえ、てゐに勝てたことはないのか?」

 

「それがないのよねぇ...ねぇ、なんでなの?」

 

「年の功うさ♪」

 

「で、その功を越えるのがメディスンと...」

 

「お鍋美味しいね♪」

 

 何故か鍋取り合戦3位はメディスン。聞くところによると、メディスンが居る日は輝夜→永琳→メディスンとまでは順位はほぼ定石らしい。原因はスーさんが物凄い勢いでメディスンの為に動いているからだ。おいスーさん。あんたメディスンが寝てるときにしか意識無いんじゃなかったのかよ。

 

「ふぅ...ご馳走さまでした。」

 

「おいしかったねー♪」

 

「はいはい、お粗末様でした。」

 

「いつもありがとう、うどんげ。」

 

「いえいえ、これが私の役目ですから!それじゃ後片付けしますね。」

 

「あ、じゃあ俺も...。」

 

「え?大丈夫ですよ。今トオルはお客さんなんだし。」

 

「え?そ、そうか...?なんか悪いな。」

 

「それじゃあ私はおじ様の様子を見てくるわね。」

 

「あ、じゃあ俺も...。」

 

「大丈夫。毒が移る可能性だってまだあるわ。ゆっくりしてって。」

 

「え、あっ、はい。」

 

「それじゃ、私たちは風呂にでもはいるウサ。」

 

「わー!お風呂だーお風呂だー!」

 

「よっし、私が冷めちまった風呂を一気に暖めてやるよ。」

 

「あ、じゃあ俺...」

 

 

 

「...え?一緒に入るウサ?いいウサよ~♪」ニヤニヤ

 

「トオルも一緒に入ろ!もっと楽しくなるね♪」

 

「はっ!?ま、マジか...の、のぼせないようにしろよ?」

 

「...変態。」

 

「あらあら、後で私も混ざろうかしら♪」

 

「と、殿方と入るのなんて考えてみると初めて...ちょ、ちょっと体洗ってく...」

 

 

 

「俺は縁側で月でも眺めてきますねー。」スタスタスタ

 

「「「.........。」」」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「ひゃー。今日は満月が明るいぜ!」

 

「これは絶好の月見日和ね。」

 

「アリス!団子はないのか!?」

 

「それが丁度無くってね。団子屋にも寄ったんだけど、今日は閉まってたのよね...。」

 

「そっかぁ。まぁ、いいか。拝めただけでも良しとするのぜ。」

 

「まぁ、そんな月に何の関心も抱いてない巫女がいるんだけどね...。」

 

「.........。」ジーーーッ

 

「おい霊夢。まだお賽銭待ってんのか?いい加減にしないと風邪引くぜ?」

 

「.........まだよ。空に昇る満月なんかより、目の前に落ちてくるはずの満月を見逃すわけにはいかないわ.........。」

 

「こりゃダメだ。満月より銭の丸みに惹かれてやがる。」

 

「でも、最初の宴会の時だけ夜に賽銭が入って、それ以降って日が昇っている内に入ってたわよね?」

 

「そうなんだよなー。もしかして今日は賽銭入らないんじゃないか?」

 

「そんな筈ないわ!一回は夜に入ったんだもの。きっと入る筈だわ!」

 

「そうかい。んじゃ、頑張って待ってなー。で、アリスはどうする?家に帰るか?」

 

「そうするわ。最近宴会続きで人形達の整備がきちんと出来てないのよ。今日は特に無さそうだから、明日に備えようと思うわ。」

 

「そうした方がいいぜ。」

 

「魔理沙はどうするの?」

 

「私はここで満月と霊夢を眺めて、ついでに犯人も眺めてやるさ♪」

 

「できれば退治して欲しいんだけどね。」

 

「もちろんそのつもりだぜ!」

 

「風邪、引かないようにね。」

 

「霊夢の布団にくるまってるから大丈夫だ。」

 

「それは霊夢にかけてあげなさいよ?」

 

「敷き布団でもいいだろ。霊夢は布団に敷かれても微動だにしないだろうしな。」

 

「まったくね。それじゃぁまたね、魔理沙。」

 

「それじゃあなー。」

 

 

 

ピューン...

 

 

 

「さてさて、月が山に沈むが先か、賽銭が箱に沈むが先か、見物だぜ...。」 

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「...ダメだ、寝付けない...。昼間に寝たから目が冴えちまってんな...。」

 

「しかし、もう皆寝ちゃったし、暇を潰すにしてもなぁ...。」

 

 

 

トットットッ...

 

 

 

「んぁ?足音?こんな時間に何を...。」

 

 

 

カラララ...

 

 

 

「あの音は玄関の...。ちょっと外に出てみるか。」

 

 

 

□□□

 

 

 

「ふぅ...かなり冷えてるな...。まぁ冬だし仕方ないか...って、あれ?鈴仙...?」

 

「.........。」

 

「おーい。鈴仙?」

 

「.........。」

 

(なんだ?月をじっと見て動かない...。月に見とれてる?にしてはやけに真剣な表情だな...。)

 

「おーい!鈴仙さんやーい!」

 

「うわぁっ!!?トオル!?どうしたの!?」

 

「いや、それは俺が聴きたいんだけども。鈴仙こそなんでこんな真夜中に庭の真ん中で突っ立って月を見てたんだ?」

 

「あっ、いや、それは...。」

 

「それは?」

 

「...ううん。なんでもない。」

 

「そーゆー時は絶対何かあるって村の御老人様方がぼやいてたぞ。」

 

「その人達、きっと台詞を言葉通りに受け止めちゃって、後悔してるんでしょうね。」

 

「多分な。で?結局なんなんだ?俺は聴かずに後悔したくはないぞ?」

 

「あはは。そんなことしたら私に嫌われちゃうんじゃない?」

 

「そう思って身を引いて後悔したらしいじゃん?御老人様は。」

 

「ふんふん。それは確かに言えてるかも。そうねぇ...月から何か聴こえないか試したの。」

 

「あぁ、ついに鈴仙が壊れちゃったか...明日永琳さんに診てもらうよう頼むか...。」

 

「ねぇトオル?ちょっと一発殴っていい?」

 

「ごめんごめん。真面目だったのね。てっきりフリかと思っちゃってさ。」

 

「ま、フリなら私も笑い飛ばせたんだけどね~。」

 

「それで、真面目なお話の続きは?」

 

「はいはい。私たちがどこから来たのかは知ってるでしょ?」

 

「月だよな。輝夜さんが物語のまんまでびっくりしたのを覚えてるよ。」

 

「まぁ、びみょーに違うんだけどね。で、私も月から来たんだけど...逃げてきたんだよね。私。」

 

「ふ、ふむふむ。ちょっと後悔し始めちゃったぞ☆」

 

「流石にここまで聴いたら逃がしませーん♪」

 

「ですよねー。で、逃げたのは別にいいとして、その理由は?輝夜さん達と同じで地球に興味が湧いたとか?」

 

「いーや、月で戦争が始まろうとしたから逃げてきたんだよ。姫様がいるこの地球(ほし)に。それでまぁ、色々あったんだけど、満月の夜はなんだか落ち着かなくってね。何だか見られてるような気がするんだよ。満月がまるで目のように感じるくらい。思い込みかもしれないけどね。」

 

「そっか...。」

 

「あれ?今度は馬鹿にしないんだ?」

 

「あんな表情で話した後に『はい、うっそぴょーん!』って言ってきたら名女優になれるぞ?」

 

「あー、はい、うっそぴょーん。」

 

「こりゃ迷女優待った無しだな。」

 

「あははー...。」

 

「ま、それが鈴仙なりの向き合いかたなんだろ?いいんじゃないのか。それでさ。」

 

「ふぅ~ん。そうね。そうかも。じゃぁ、乙女の秘密を知ったトオルには私の質問に必ず答える義務を言い渡しまーす♪」

 

「すんません。鈴仙さん今何歳...」

 

「殺すぞ♪」ジャキッ!

 

「はい。質問をどうぞ、乙女の鈴仙さん。」ガクブル

 

「よろしい。それじゃぁ...トオルは未練とかないの?外の世界にさ。」

 

「未練かぁ...あるっちゃあるよ。何の予告もなく突然無縁塚にひょっこりだからな。両親にも友達にすら何にも言って無いんだからな。」

 

「ふぅん。じゃ、外の世界に帰りたいと思ったり?」

 

「最初の頃はそう思ってたけど、今は今で充実してるからな。こっちに来たのも何かの縁。縁が無くなってからできた縁も大事にしたくなったからさ。」

 

「そっかぁ...なら、たまには永遠亭に来なさいよ?今度はお客としてじゃなく、ね?皆トオルが久しぶりにきたーって思ったら、お客として来たことに残念がってたんだから。」

 

「あっ、もしかして妹紅が言ってた実家って...」

 

「そーゆーこと。幻想郷で最初の縁を結んだこの場所、軽く見たらバチ当たるからね?」

 

「最初の縁はメディスンなんだけど...」

 

「もういっぺん殺すぞ♪」ジャキッ!

 

「もう既に死んでた!?」

 

 

 

「...なんだか叫び声が聞こえたと思ったら...」

 

「なんだかとってもいい雰囲気ウサねぇ...。」

 

「あらあら、鈴仙ったらなかなかやるじゃない♪」

 

「ウフフフフ♪うどんげったら調子に乗っちゃって~♪でもお師匠様だからここは恋のキューピッドとやらになってあげるわ~♪感謝なさ~い♪」ギリギリ...

 

「おい、その矢先どう見ても鈴仙ヘッドショット行きなんだが?」

 

「あら?間違っちゃったみたい♪じゃあトオルのハートを射抜くわね♪」ギリギリ...

 

「キューピッドどころかただの狩人ウサ...」

 

「はいはい、二人の邪魔しないの。もう鈴仙には気付かれてるだろうけど、トオルが気付かない内に戻るわよ。」グイッ

 

「ハッ!?ひ、姫様!?なんで引っ張っ...というか私は一体何をぉぉぉ!?」

 

「さ、妹紅も戻るウサよ~。」

 

「へーへー。」

 

 

 

「ぷくくっ...///」

 

「え?なんか笑うところあったか?」

 

「あー、いえいえ、何でもありませんよ~何でも♪」

 

「いや絶対なんかあるだろ、教えろよ。」

 

「えー、じゃあまた私の質問に答える覚悟があるのならいいですがぁ?」

 

「いやさっきのは絶対鈴仙の秘密とは関係ない笑いだろ!?」

 

「あはー、流石にそれはバレちゃいますよね。」

 

「ま、いいけどな。で、鈴仙はまだ月見てるのか?」

 

「ええ。もう少しだけ。」

 

「そ。俺も少し見ておくかな。外の世界の人達も、この満月を見てるかもだし。少しだけ思いを馳せてみるわ。」

 

 

 

「「今を、後悔しないように。」」

 

 

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

チュンチュン...チュチュン...

 

「お陰さまで、こうしてまた団子作りに精を出せます。ありがとうございました。」

 

「いえいえ、私たちは役割を果たしたまでです。」

 

「そういうことでしたら...あ、今度腕によりをかけた団子、トオルに持ってこさせますんで、その時は可愛がってやってください。」

 

「あら、それじゃあお言葉に甘えさせてもらいましょうか。」

 

「三日ぐらいで許すわ♪」

 

「え?輝夜さんそれは長...」

 

「構いません。なんなら一週間くらい...」

 

「おいいい!?またぶっ倒れる気か親父ぃ!?」

 

「ああ!?おれぁ今まで一人でやってこれたんだ!1ヶ月位一人で大丈夫だぁ!」

 

「延びてる延びてる!!期間延びてる!!」

 

「半年あれば立派な兎の世話がかりにウサ...」

 

「一年あれば立派な薬剤師に...」

 

「五年あれば立派な兵士に...」

 

「十年あれば立派な難題解きに...」

 

「延びすぎぃ!?というかなんか変な思考入ってません!?」

 

「あっはっは!んじゃ、そろそろおいとまさせていただきます。」

 

「トオルー!ばいばーい!」

 

「おー!またなメディスン!さ、妹紅、道案内よろしくな。」

 

「.........。」

 

「あれ?どうした妹紅?」

 

「百年あれば立派な案内人に...」

 

「まだ延びるのかよ!?」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「うそだぁ...こんなことって...こんなことって...」

 

「あら?どうしたの霊夢?」

 

「信じない...信じないぃ...。」

 

「あー、おはようなのぜ。華仙。霊夢は昨日からお賽銭が入るのをずーっと待ってたんだが、月が沈んで日が昇ったらこの有り様さ。」

 

「ついに入らなかった1日があったのね。なるほどそれで...。」

 

「だめ...あれは太陽なんかじゃないわ...あれは月、月なのよ...。」

 

「なかなかの重症みたいね。」

 

「ま、こうなるまでは私たちの肝臓が重症になりかねなかったんだがな。まぁ、休肝日ってことで、あと数日賽銭が入らなかったら異変...かどうかはわからんが、自然消滅してくれたらありがたいんだけどな。」

 

「これでお賽銭の有り難みを思い知ってもらって、修行に励むようになるお灸になればいいんだけどね。」

 

「まったくだぜ。」

 

「.........違うわ」

 

「え?」

 

「これは.........へんよ...」

 

「なんだ?はっきり言ってくれよ?」

 

「これ.........い......よ......」

 

「はぁ?なんだって......

 

 

 

 

 

 

「これは、異変よ!!!」

 

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