虹色の約束
幻想郷。それは忘れられた存在が最後の宿り場として住まう場所。
妖怪や妖精、はたまた亡霊といる中、人間もまたそこに住んでいた。
そんな人間が集う場所、人里に、一軒の団子屋があるそうな...。
「クシナぁ!!オススメあがったぜ!持ってってくれ!」
「はーい!!...っとと!!お、お待たせしました!!オススメセット1つですね!!」
「おおっ!嬢ちゃん今日は落とさなかったな!!」
「毎日落とすわけないですよっ!!もーっ!!」
「わりぃわりぃ。あ、お茶頼んでいいかい?」
「はいはい!すぐ持ってきますね!...はい!もってきまっはぁ!!?」コケッ
バッシャーン!
「あっちゃあああああああ!!?」
「きゃああああああ!?ごめんなさいいい!!」
これはそんな団子屋に住む、一人の青年の
「はっはっは!またこけたのかクシナ!打ち水でもするつもりか?」
「しませんよぉ!!って、大丈夫ですかお客さん!?」
「あちゃちゃ...あー、あっちぃ。まぁ悪気があってやった訳じゃないし、クシナが接客やる以上、こうなることは予想してたからな。厚着してきてよかったよ。ハハッ!」
「むー、良かったですけどなんだか心外です...。」
「なら早くもの運び上手くなんな♪」
「はーい。」
「返事はいいんだけどな。ま、しょげんなよ!」
「そうだぜクシナ、おめぇは元気だけが取り柄なんだからよ。」
「失礼ですね!元気だけじゃないって所、見せてあげますっ!!」
「おう!その意気だ!頑張れよ~!」
■■■
「うぅ...なんで転ぶんでしょうか...。」
「今日だけで湯飲み10回は溢したな。割れてないのが奇跡だぜ。」
「それが救いなんですが...うぅ。」
「はっはっは!まぁ大事には至ってないし、失敗するのも一興だ。頑張れよクシナ。」
「うぅ...。」
バァン!!
「ふぇっ!?」
「んぁ?この開け方は...。」
「トオルーーー!!この妖精の中で最強と謳われてるチルノ様が遊びに来てやったぞーーー!!」
「ち、チルノちゃん、この開け方はしちゃダメだってトオルさんに言われたでしょ?」
「え?そうだったっけ?うーん。忘れた!!」
「はぁ...チルノちゃんってば...。」
「お、いつもの氷の妖精か!!寺子屋帰りかい?」
「おう!今日も最強に磨きがかかったぞ!!」
「チルノちゃん寝てたよね?」
「おー、そうかそうか。なら、1+8は?」
「9でしょ?」
「3×3は?」
「9じゃん。」
「√81は別の形にすると?」
「9でしょ?なに?あたいを舐めてると承知しない...」
「3-1は?」
「ごめん大ちゃん助けてわかんない。」
「ええっ!?」
「はっはっは!元気があって何よりだ!!クシナ、こいつぐらい元気なら転けるのも気にしないで済むかもな!」
「えっ!?」
「む?お前も最強なのか?」
「いや、違うけど...。」
「そうか。で、トオルはどこだ?」
「あぁ、トオルなら今出掛けて居ないぜ?」
「えっ!?なんで!?今日遊ぶって約束したのにっ!?」
「えっ?そうだったのチルノちゃん?」
「んぁ?トオルはそういうこと忘れねぇ筈だが...。」
「うん!約束したもん!さっき寝てるときに夢の中で!」
「チルノちゃん...それはいくらトオルさんでも守れないよ...。」
「ええええええ!!?絶対遊ぶって約束したのにぃ!!」
「はっはっは!さすがに居ない奴とは遊べないしな。今日は大人しく帰んな!」
「大人しくってなんだ!?私は子どもだぞ!大人しくなんてできるかっ!!トオルは今どこにいるっ!?」
「トオルはなぁ...今、紅魔館に行ってんだ。」
■■■
「と、言うわけでやって来ました紅魔館。そして見慣れた光景がそこにありました。」
「グー・・・グー・・・。」
「変な姿勢で寝てるからイビキ出ちゃってるぞ~。つか、毎度毎度よく寝てられるな。いつ起きてんだ?」
「ムニャムニャ...。」
「おーい。起きろ
「はっ!?それは勘弁してくださいよ咲夜さーん!!...ってあれ?トオルさんじゃないですか。おはようございます。」
「もう日が暮れかけてるんだけどな?おはよう美鈴。」
「んあ!?もうそんな時間なんですか!?なんで起こしてくれなかったんですか!?はっ!まさか私の寝顔に見とれて...!!」
「見慣れちまったわバカ。」ポカッ
「あだっ!!痛いですよぉ...で、今日は何のご用件で?」
「あぁ、今日は図書館に来たんだよ。来れるときには来るようにするってパチュリーに言ったからな。」
「へ~、そうなんですかふぅ~ん。」
「...なんかあったのか?」
「いえいえなんでもありませんよ~。で、恒例の匂いチェックですが...。」クンクン
「お前は番犬かっ!」ポカッ
「あだっ!!うー、すぐ手を出すのは良くないんですからねぇ?二つの意味で。」
「なんで二つも意味があるんだよ。」
「知りませーん。っと、肝心の匂いですが...あっるぇ~?他の女の匂いに違いないんですが、どこかで嗅いだことあるような...?」
「えっ?そうなの?パチュリーから貰った香水をつけてるだけなんだが...他の女性?どゆこと?」
「えっ!?あっ、あっはぁ~♪なぁるほどぉ♪パチュリー様も中々大胆ですねぇ♪」
「え?それってどういう...。」
「さぁさ、図書館に用があるんでしょう?行ってらっしゃいませぇ~♪」
「別に用があるってわけじゃ...って、押すな押すな!!」
■■■
「で、美鈴に押されるがままやって来た訳ですが...以前来たとき小悪魔さんがご乱心だったからなぁ...。パチュリーがなんとかしてるなら大丈夫なんだろうけど...ま、考えても仕方ない。入るか...。」
コンコン
「はーい...あっ!トオルさん!待ちくたびれましたよもー。」
「よっ。小悪魔...って、え?待ちくたびれたってどういうこと?まだ一週間も経ってない筈だけど...?」
「はぁ...あのですねぇ、ちょっと聞いてくださいよ。パチュリー様ったら、あれから朝起きる度に一時間も部屋から出ないんですよ!」
「え?そうなの...って!?」
「...。」(←パチュリー)
「しかも出てきたと思ったら『ねぇ、おかしな所無いわよね?』と、再三に渡って聞き返してくる始末でして...何度も答えるこっちの身にもなってほしいですよ!」
「...む...。」
「ちょっ、小悪魔さんタイム!」
「たいむ?あぁ、時間と言えば、ずっと懐中時計を気にしては溜め息ばっかりついて、もうそれ見てるこっちが焼き餅焼いちゃうくらいで...。」
「...むきゅ...。」カァーッ
「焼けてる!今顔面真っ赤に焼けちゃってる!!」
「そうですねぇ、ほんと、夕焼けを眺めたときなんかの落胆ぶりは見るに耐えませんよ。魔女も心までは魔女になりきれず乙女だなんて、やってられませんよ全く。」
「ーーーっ!!」プルプル
「おい小悪魔!お前パチュリーが居ることに気付いてて言ってるだろ!」
「えへへぇ?なぁんの事ですかぁ?まっさかパッチュリィー様が後ろにいるわけ...あら!ごきげんよう♪」
日符「ロイヤルフレア」!!!
「「ですよねぇーーー!!?」」
ピピチューン!!
■■■
ドゴーン...
「あらあら、またパチェったら照れ隠しかしら?」
「どうやらそのようでございます。」
「全く、素直になればいいものを。」
「おそらく素直すぎるのではないかと...。」
「そうかもね...でも、今回はパチェには悪いけど、トオルはこちらの都合に付き合わせてもらうわ...咲夜。」
「はい。」
「気絶したトオルを例の場所まで運んでちょうだい。」
「かしこまりました。」
シュン
「...さて、トオルの運命の歯車は、フランのそれと噛み合ってくれるかしら。」
■■■
「あてて...パチュリーのやつ、やりすぎだっつの。スペルカードだからまだ無事だけども...って、ここどこだ?」
しん...と静まり返った空間に、自分の声が木霊しているのを感じて驚く。
「や、やけに涼しいな...パチュリーのアレくらった後だから、温度差が激しく感じるだけか?」
立ち上がって辺りを見渡すと、どうやら石壁の通路のようだ。声の響きや気温からおそらく地下のようだが...。
「...なんでこんなところまで吹っ飛んだんだ?地下の扉を突き破って来たわけでも無いっぽいし...うーん、謎だ。」
見上げた先には階段と、その先にある扉、もしそこから入ってきたのなら、あんなに綺麗に閉まっている筈は無い。
「とりあえず地上に戻りますかねっと...ん?あ、あれ?開かない?おやおや?これはちょっと不味いのでは?」
階段を登り、扉を押したり引いたりしてみるが、まるでびくともしない。
「これは...閉じ込められた?不味いな...おーい!!誰かいませんかぁ!?」
「...その声...団子屋のおにいさん?」
「へ?」
声が聞こえたのは叩いていた扉とは反対方向から聞こえてきた。そこにいたのはレミリアさんの妹であるフランちゃんだった。
「あれ?フランちゃん?どうしたの?」
「どうしたのって...ここは私のお部屋だよ?おにいさんこそどうしてここに?」
「へ?お部屋って...あっちの方の扉の?」
「そ、あの先のお部屋。」
「そうなんだ...俺はパチュリーのスペカをくらってここまで吹っ飛んできたみたいなんだ。記憶は無いけどね。気絶してたっぽいし。」
「そう。じゃあ続きをしに戻るの?」
「弾幕ごっこをしてた訳じゃないんだ。ただ、小悪魔がパチュリーをからかった結果と言うか...。」
「ふぅん。」
「で、とりあえず外に出ようと思ったら扉が開かない始末って訳さ。」
「そう...なら、私の後ろに...。」
「ん?開けてくれるのか?」
「うん。」
「そっか、助かるよ。」スタタ...
「じゃあ...。」ギュッ
バガァン!!
「うおっ!?扉が壊れた!?」
「...はい。これでいいでしょ?」
「う、うん。でも良かったのか?扉壊しちゃって。」
「うん。どうせある意味はあんまりないから...。」
「んー?よくわかんないけど、ありがとなフランちゃん。」
「...ん。じゃあね。」
「...。」
「...どうしたの、おにいさん?」
「フランちゃんは外に出ないの?」
「...特に興味も無いから...別に。」
「そっか...あ!そうだ、一緒に団子食べないか?フランちゃんの好きな三色団子、ちょうど持ってきてたんだよ。」
「え?...う、うん。食べたい。」
「よっし、なら外へ出発!!」グイッ
「へっ!?」
■■■
「いやー、冬の夜は寒いねぇ...。」ガクブル
「...なら外で食べなきゃいいじゃん。」モグモグ
「フランちゃんは寒くないの?」
「別に...。」モグモグ
「そっか。」
「...。」モグモグ
「...。」
「...で、どうして外なんかに連れ出したの?」
「うーん。なんでだろね?外に興味がないって言うから、実際に出てみたら、何か一つくらいあるんじゃないかと思ってさ。」
「...それで?」
「それでって...あっ!星空なんかどうだ!綺麗だろ?」
「...そうかな?黒い空に白の点々があるだけじゃん。」
「あっるぇ~?フランちゃんならきっと興味が湧くと思ったんだけどなぁ...。」
「...どうして?」
「いや、団子を味じゃなくて見た目で好みを選んでたから、きっと綺麗な物に興味があるんじゃないかと思ってさ。」
「ふぅん...。」
「あれか、星が色んな色だったら興味が湧くとか?」
「...そうかも。」
「おっ!ならトオルの豆知識!空に浮かぶ星ってな、一見全部白っぽく見えるけど、よくよく見てみると青や黄色、赤に見えるんだ。」
「...ほんと?」
「おう!...まぁ、望遠鏡とかあればちゃんと見えそうだけど...今は冬で晴れてるし、よく見たらわかるんじゃないか?」
「...あっ!本当だ!」
「えっ!?見えたの!?すごいな...。」
「...ん?おにいさんは見えないの?」
「んー、見えないな。言ってみたはいいけど、俺には白くしか見えないなぁ...残念。」
「そう、じゃあ、お礼に魅せてあげる。」
「へ?」
禁弾「スターボウブレイク」
フランちゃんが空に手をかざすと同時に、七色に煌めく星空が現れた。
「うおぉ...綺麗...。」
「...どう?綺麗でしょ?」クスクス
「...。」
「...うん?どうしたのおにいさん?」
「いや、やっぱ澄まし顔よりも笑った時のフランちゃんがいいと思ってな。」
「...そうかな?」
「俺的にはね。やっぱ笑顔が似合ってるわ。」
「...そう。」
「あ、そうだ!こんな綺麗なの魅せてくれたお礼に、今度『虹』をフランちゃんに見せてあげるよ。」
「『虹』?」
「そうそう。見たことある?」
「...ううん。ない。」
「そっか、虹ってのはな、ちょうどフランちゃんの羽根みたいに七色でさ、それがこう、円みたいな橋?になってたまーに空にかかってるんだ。」
「...見たい。」
「だろ!うーん、でもホントにたまーにしかでないからなぁ、その時はフランちゃんの所へ知らせに来るよ。」
「...ホント?」
「おう!約束するぜ。」
「...わかった。楽しみにしてるね。」クスッ
「...うん、やっぱり笑った顔が一番だ。」
「...そうかな...へへ♪」
「うんうん。そう...へ、へ、へっくしっ!!ううー、かなり冷えてきゃったな...。」
「...大丈夫?」
「うーん、そろそろ戻らせて貰おうかな。一緒に戻るか。」
「...うん!」
■■■
「うーん、だからぁ、軽々しく手を出すのはよくない...むにゃむにゃ...。」
ヒューン...ゴンッ!!
「あだっ!?何ですかトオルさんまた...って、あれ?誰もいない?ならどうして...ん?あれは...。」
ひゅるるるるるる...
「げっ!?星が空から降ってきたぁっ!?ちょっ、あの数は避けきれな...あっ。」
あああああああああああっ!!!
ピチューン!!
■■■
「『虹』...キリスト教の創世記において、ノアの大洪水の後、神が再び大洪水で地を滅ぼさない事を約束する象徴として、空に『虹』を掛けた...。確かそうだったわよね、パチェ?」
「えぇ、合ってるわ。」
「ふふ、そう...なら、トオルの虹を見せるという約束が、破滅をもたらす側のフランにどういう影響を与えるのか...楽しみで仕方ないわね♪」
「そんな伝承でフランの能力云々がなんとかなるとは思えないけどね。」
「なによパチェ、拗ねてるの?」
「...。」
「わかったわかった。次からはもうしないから。」
「はぁ...わかったわ。あと、拗ねてないから。」
「はいはい。そういうことにしておくわ♪」
「そうですよ!パッチュリィー様が拗ねるわけ無いじゃないですか!いくら今日肌艶が良かったからってそんな...」
「レミィ?ちょっと小悪魔との契約を解除してくるわ。」
「行ってらっしゃ~い♪」
「ちょぉっ!?待ってくださいそれはマジで勘弁してくださいいいいっ!!!」
ピューン...
「ふふ、本当、私達の歯車まで強引に回していくなんて...大したものだわ♪」
□□□
「あ、そういえばお嬢様。」
「ん?何かしら?」
「今日は夜までトオル様をお引き留めしてしまいましたが...いかがしたしましょう?」
「...あっ、考えてなかったわ...。」
□□□
「うーん。さすがに眠くなってきたな...。」
「...もう眠たいの?まだ夜は長いのに...。」
「まぁ人間は夜に寝る生き物だからなぁ...。」
「そうなんだ...じゃあ...。」フワリ
「ん?」
「弾幕ごっこで遊んだら、きっと眠気も吹っ飛ぶわ♪」
「お、おやぁ?」
「さぁ、遊びましょ?
「いや、ちょっと待った。なんか弾幕の密度が桁違いに高...あっ!?」
ピピピピピピピピピピピチューン!!!
■■■
~ある日の夕暮れ時~
「ふいーっ、今日も売った売った!」
「まぁ、売ったとはいえ、昼間は雨降ってたからな。むしろ売り切れたのが不思議な位よ。」
「そうだな...っとと、空の確認確認っと...。」
「...なんだか最近、トオルさんよく空を見てますけど、昔からああなんですか?」
「いや?そんなことはなかったぜ?なんか約束だとか言ってたが...。」
「あっ!出てるっ!!」
「えっ?何がだ?」
「虹だよ虹っ!!ちょっと紅魔館行ってくる!!」ダッ!!
「おい、ちょっ!?もう夕方だぞ!?」
タッタカタ-...
「...あー、行っちゃいましたね。」
「はぁ...全く、虹がなんだってんだぁ?」
■■■
「はっ...はっ...まだ消えてない...あと少しで...ん?」
「あっ!お兄様っ!!」
「あっ、フラン!待ってたのか?」
「うん!待ってた!お兄様を!」
「そっかそっか。で、どうだ虹は。」
「うん!とっても綺麗!!」
「...なんだかフラン、明るくなったな。」
「うん!お兄様のおかげ!!」
「うーん。俺は特になにもしてないような?」
「そうかな?いっぱい綺麗なの教えてくれたじゃん。で、次はどんなものを見せてくれるの!?」
「そうだなぁ...。」
「あ、でも...。」
「でも?」
「見るなら絶対、お兄様と一緒がいいっ♪」
短編:フラン